公正証書遺言は、法律実務の経験が豊富な「公証人」が作成に関わる遺言書であり、遺言書のなかでも安全性や確実性が高いというのが特徴です。
しかし、公正証書遺言を作成するには2名の証人が必要であり、作成にあたって「どのような基準で誰が証人になるべきなのか」と悩む方も多いでしょう。
本記事では、公正証書遺言の証人の選び方や、証人がやらなければいけないこと、弁護士に証人を依頼すべきケースなどを解説します。
公正証書遺言は、遺言者の意思を明確に示すために作成される重要な文書です。
公正証書遺言を作成する際は2名の証人が必要で、証人の存在によって遺言書の有効性が確認されます。
証人は遺言書の作成時に立ち会い、遺言者の意思が自由かつ合法的であることを確認します。
以下のような人は公正証書遺言の証人になることができず、そのことを知らずに作成手続きを進めてしまうと遺言が無効になってしまいます。
未成年者は「遺言書作成時に意思を理解して判断する能力が不十分である」と判断されるため、公正証書遺言の証人になることができません。
遺言書には重要な財産や責任が関わる場合もあるため、法的な要件を満たす成年者を証人にする必要があります。
将来相続が発生した際に相続人になるであろう「推定相続人」や、遺言によって遺産を引き継ぐ「受遺者」などは、遺言書の内容に影響を与える可能性があるため公正証書遺言の証人になることができません。
公正証書遺言を作成する際は、中立的な立場の第三者を証人に選ぶ必要があります。
遺言者の意思を尊重し、遺言内容に則った相続を実現するためにも、将来的に遺産を受け取る可能性がある人は証人に選ばないようにしましょう。
「公証人の配偶者」や「4親等内の親族」などの公証人に近しい立場の人は、中立で公正な立場を保つことができなくなるおそれがあるため、公正証書遺言の証人になることができません。
公正証書遺言の証人には、未成年や推定相続人、受遺者や特定の親族・配偶者以外はなることができますが、いざ頼むとなると、誰に証人をお願いするか迷ってしまう方も多いはずです。
ここでは、公正証書遺言の証人を誰に頼むかについて、3つのパターンに分けて紹介します。
公正証書遺言を作成する際、信頼できる知人や親族を証人として選ぶことができます。
関係性が良好な知人や親族であれば、遺言書作成や遺言執行の際も真摯にサポートしてくれるでしょう。
ただし、証人として適格な条件を満たしている必要があります。
未成年者・推定相続人・公証人の配偶者などに該当する場合は証人になることができないため注意しましょう。
公証役場は法律上の手続きをおこなう公的機関であり、遺言書作成や証人の紹介などもおこなっています。
地域によっては異なる場合もありますが、窓口で相談すると適切な証人を紹介してくれます。
公証役場が紹介する証人であれば、中立性や信頼性が確保されており、遺言の実行においても安心です。
なお、証人の紹介を受ける場合、手数料や紹介料などが発生することもあります。
具体的な費用は地域や公証役場によって異なるため、事前に「公証役場一覧」から直接確認しておきましょう。
弁護士や司法書士は法律の専門家であり、遺言書の作成や証人の選定において的確なアドバイスを提供してくれます。
弁護士や司法書士は法律知識やノウハウを持っているため、遺言の内容や法的な要件などを正確に把握できるというのがメリットです。
遺言書作成にあたって、プライバシーや機密情報が外部に漏れることもありません。
ただし、弁護士や司法書士に依頼する場合、遺言書作成や証人選定について費用が発生します。
費用は依頼先や依頼内容によって異なるため、事前に見積もりを出してもらってから依頼しましょう。
ここでは、公正証書遺言の証人を依頼する際にかかる費用を解説します。
知人や親族に証人を依頼する場合、必ずしも依頼費用が必要というわけではありませんが、一定の謝礼を渡すのが一般的です。
ただし、謝礼の金額や形態はケースバイケースで、法律などで明確に規定されているわけではありません。
証人を依頼する場合は、相手との関係性や状況などを考慮し、適切な範囲内で話し合って決めましょう。
公証役場で証人を紹介してもらう場合、公証役場によっても異なりますが1人につき7,000円~1万5,000円程度かかります。
なお、公正証書遺言の作成時は公証人に手数料を支払う必要があり、金額は遺言書に記載する財産の価額によって変動します。
多くの場合、弁護士に証人を依頼する場合は20万円~30万円程度、司法書士に依頼する場合は5万円~20万円程度の費用がかかります。
ただし、事務所によって料金体系は異なるため、上記の範囲内に収まらない場合もあります。
公正証書遺言を作成する際、以下のようなケースにあてはまる場合は弁護士への依頼を検討しましょう。
遺言の内容を外部に漏らしたくない場合には、公正証書遺言の証人を弁護士に依頼しましょう。
弁護士は守秘義務を負っており、依頼者の個人情報や依頼内容に関することを外部に漏らすことが禁止されています。
遺言者の意思を守るためにも、信頼できる弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
証人だけでなく遺言書の作成手続きも依頼したい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
相続では「遺留分」や「法定相続分」などさまざまな用語が登場し、十分な知識がない状態で遺言書の文言を作成すると、遺言者が望んでいたような相続にはならない可能性があります。
弁護士に依頼すれば、遺言者の意思を正確に反映した、法的にも適切な文言で遺言書を作成してくれます。
ここでは、公正証書遺言の証人が何をするのかについて解説します。
公正証書遺言の証人は、遺言書を作成する際に立ち会う必要があります。
遺言書作成の流れとしては、まず公証人が遺言者の希望を聞き取って遺言書を用意します。
そして、遺言書作成の場には遺言者・証人2名・公証人が参加し、公証人が遺言内容を読み上げて遺言者の意思を確認します。
確認がとれたら遺言者・証人2名・公証人が遺言書に署名押印し、これにより公正証書遺言が完成します。
完成した遺言書は公証役場で保管されるため安全性が確保され、遺言者には遺言書の写しが渡されます。
証人が遺言書作成に立ち会うことで、遺言者の意思が適切に反映され、将来的なトラブルなども回避できます。
公正証書遺言の証人は、遺言書作成後にも対応を求められる場合があります。
たとえば、相続人間で遺産相続に関する争いが起こって訴訟に発展した場合、証人は公正証書遺言の有効性を証明するために裁判所にて証言を求められることがあります。
基本的に裁判所から要請があれば欠席できず、違反すると罰則が科される可能性もあるため注意しなければなりません。
証人には法的な責任なども伴うということを念頭に置いて遺言書作成に立ち会い、その後の責任を果たすことが大切です。
ここでは、公正証書遺言に関するよくある質問について解説します。
公正証書遺言を作成する際、公証役場が相続人に対して証人に関する情報を伝えることはありません。
あくまでも公証役場は公正証書遺言の作成・保管が主な役割であり、遺言者が亡くなって相続が発生した際に相続人に対して遺言書の存在を知らせることもありません。
公証役場や裁判所からの指示どおりに対応していれば、トラブルなどに巻き込まれることはありません。
ただし、遺言書作成時に「遺言者の精神状態に問題がある」「公証人が遺言内容を正確に筆記できていない」などの問題点に気付きながら故意や過失により見逃した場合は、のちに損失を被った人から損害賠償請求を受けるおそれがあります。
公正証書遺言の証人には重要な役割と責任があり、公証役場にて遺言書の内容を確認し、署名捺印するなどの対応が必要です。
また、遺言書を作成したあとでも、相続トラブルが起きた際は裁判所で証言を求められることもあります。
遺言について利害関係のない成年者であれば証人になることができ、もし証人が見つからない場合は公証役場から紹介を受けたり、弁護士や司法書士に依頼したりするなどの選択肢があります。
弁護士であれば、証人だけでなく遺言書作成や相続トラブルの対応なども依頼でき、相続手続きをまとめてサポートしてもらいたい場合には特におすすめです。
法定相続人の順位が高いほど、受け取れる遺産割合は多いです。ただ順位の高い人がいない場合は、順位の低いでも遺産を受け取れます。あなたの順位・相続できる遺産の割合を...
遺言書の効力について知りたい人必見!遺言書を作成すれば内縁の妻・隠し子に遺産を渡す・指定した相続人に財産を渡さないことも可能です。ただ書き方に謝りがあるなら無効...
自筆証書遺言書を残す場合、書き方を誤ると無効になる可能性もあるため正しい知識が必要です。また2020年には民法が改正されたことにより、いくつか変更箇所などもあり...
これから遺言書を作成しようと考えている方に向けて、遺言書の種類や作り方、サンプル、ポイントなどを解説します。遺言書で多いトラブルとその回避方法についても紹介しま...
自分が成年後見人になる費用は何十万円もする訳ではありません。しかし、鑑定費用が必要であれば10万円を超える場合もあります。また弁護士・司法書士に依頼した場合は自...
遺言書は、公正証書遺言を含めて3種類あります。そのなかでも公正証書遺言は信頼性が高く、無効になるリスクが低い遺言書です。この記事では、公正証書遺言の書き方や特徴...
エンディングノートの書き方で悩んでいませんか?この記事では、エンディングノートに書いておきたい内容を書き方の例と一緒にご紹介しています。オリジナルのエンディング...
遺言書を見つけたらすぐに内容を確認したいですよね。しかし、遺言書を勝手に開封してしまうと法律違反となります。本記事では、遺言書の正しい開封方法や、勝手に開封した...
相続人の全員が承諾していても遺言書を勝手に開封してはいけないのをご存知でしょうか?遺言書を開封する時は家庭裁判所で検認の手続きをしてからにしてください。万が一、...
公正証書遺言を司法書士に依頼しようと悩んでいる方は必見!この記事では、司法書士はもちろん、弁護士・行政書士に公正証書遺言案の依頼をしたときの費用をまとめました。
遺言書の内容が無効であると法的に確定すれば、当該遺言に基づく遺産分割や相続、贈与などを防止できます。遺言書の無効確認が難しいとされる理由、遺言無効確認が実際に認...
府中市には、無料の相続相談ができる窓口が多く設置されています。 遺産相続について悩んでいる方は、まずは無料の相続相談を利用することで、問題解決につながる有効な...
遺言とは、被相続人の相続財産に関する最終的な意思表示のことで、遺言は民法で定められた方式によっておこなう必要があります。本記事では、公正証書遺言で要求される証人...
遺言書が偽造された時の対処法や、遺言書の偽造者に対して課されるペナルティなどについて分かりやすく解説します。各種相続手続きには期間制限がある以上、遺言書が偽造さ...
遺言公正証書の必要書類は、戸籍謄本・登記簿謄本など多岐にわたります。自分のケースでどの書類が必要なのか、作成前に把握しておくと安心です。この記事では、遺言公正証...
「自分が亡くなったあとスムーズに遺産相続をさせたい」「夫が亡くなったのに遺言書がなくて困っている」など、配偶者に先立たれたときや自分が亡くなった後のことを考える...
本記事では口頭でのみの遺言について効力の有無やどのように扱われるかについて解説します。 法的に効力をもつ遺言の残し方や、口頭でしか遺言が残っていない場合の対処...
自宅などで遺言書を発見した場合は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。本記事では、遺言書の検認手続きの役割・目的、遺言書そのものに認められている効力、遺言書...
遺言の作成にあたり、遺言執行者を指定しようと考えているものの、どの程度の報酬が必要になるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、遺言執行者の...
公正証書遺言を無効にしたい方に向けて、遺言書を無効にしたいときの最初の対応、公正証書遺言を無効にできるケース、遺言者の遺言能力を争う場合に役立つ証拠、公正証書遺...