遺言は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類に分類されます。
中でも、公証人役場で所定の手続きをおこなう必要がある公正証書遺言は、遺言書の形式面での不備や紛失・改ざんのリスクを防ぎやすいというメリットがあります。
可能な限りトラブルを回避して満足のいく遺産相続を実現したいなら、遺言書作成の段階で弁護士に相談するのがおすすめです。
そこで本記事では、公正証書遺言についての弁護士と相談できる窓口や、相続問題を弁護士に相談するメリットについて解説します。
まずは、公正証書遺言について弁護士と相談できる3つの窓口について解説します。
ベンナビ相続では、相続問題や遺言作成業務の経験豊富な法律事務所を多数掲載中です。
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各都道府県の弁護士会では、公正証書遺言の作成だけではなく、遺産・相続に関する有料相談を実施しています。
日本弁護士連合会のWebサイトでは各都道府県の弁護士会の連絡先を紹介しているので、希望する拠点の相談時間内に問い合わせてみてください。
また、日本弁護士連合会が運営する「ひまわりサーチ」を活用すれば、取扱業務などから各弁護士会所属の弁護士を検索できます。
なお、中には相談回数に制限がある場合もあるので注意しましょう。
公正証書遺言の作成について不安・疑問を抱えている場合には、お住まいの市区町村が主催する住民向けの相談会を利用するのも選択肢のひとつです。
自治体によって開催日程や相談会の内容は異なりますが、公正証書遺言の作成などの遺産相続の問題について、弁護士や司法書士からアドバイスをもらえる場合があります。
ここでは、公正証書遺言の作成サポートを弁護士へ相談するメリットを解説します。
弁護士は、被相続人・相続人などの関係者が置かれた状況を総合的に考慮したうえで、適切な遺言の方式を選択してくれます。
たとえば、けがや病気で自ら公証役場に足を運ぶのが難しい場合には、遺言書を早期に作成することを重視して、自筆証書遺言を作成するほうが適切な場合もあるかもしれません。
ただ、公証人が病院やご自宅に出張してきてもらって、公正証書遺言を作るということもできます。
一方、不動産・株式・預貯金など相続財産の構成内容が複雑だったり、「どの相続人に、何を引き継がせたいのか」についてこだわりがあったりする場合には、被相続人が亡くなったあとのトラブルを回避するために公正証書遺言を作成しておくのが理想です。
また、遺言者の死亡後に、遺言が有効か無効かが争いになることがありますが、公正証書遺言にしておくと、やはり遺言が無効になりにくいので、遺言者も安心できます。
このように、被相続人側の考えや財産をめぐる状況、いつ相続が発生しそうかなどの個別事情によって、選択するべき遺言書の方式は異なります。
事前に弁護士へ相談をすることで、適した状況で公正証書遺言を作成しやすくなるでしょう。
弁護士は、公正証書遺言の作成手続きに関する相談に対応してくれるだけではなく、遺言書の内容に踏み込んだアドバイスも提供してくれます。
「事業承継の手段として遺言を活用したい」「特定の相続人に財産を信託できるようにしたい」「相続人の廃除をしたい」「相続税や贈与税の節税をしたい」「相続人同士が揉めないように遺産を分配したい」など、依頼者のさまざまな相談にも対応することが可能です。
公正証書遺言について弁護士に相談すれば、遺言書を作成する手間を節約できます。
遺言者の意思を適切に反映した遺言書を作成するには、ご自身の保有する相続財産を正確に調査・把握しなければいけません。
これは、遺言書の中に財産目録を記載する必要があるからです。
また、「誰に、どの財産を承継させるのか」についても、弁護士の専門的な知見が頼りになります。
遺言者の意思だけではなく、相続人などの意見や希望も丁寧に汲み取りながら、争いが起きにくい遺言書の内容を提案してくれるでしょう。
さらに、公正証書遺言を作成するには、必要書類(戸籍謄本、住民票、登記簿謄本など)や証人の準備が必要です。弁護士に依頼をすれば、これらの用意を一任することも可能です。
また、公正証書遺言の案文作成や、公証役場に対する資料の提供、連絡調整、日程調整などの業務を弁護士がやってくれます。
遺言者本人だけで公正証書遺言の作成に必要な事前準備・手続きを履践するのは相当の労力を要します。
日常生活への影響を軽減しながら充実した内容の遺言書を作成したいなら、弁護士の力を借りるのもひとつの手です。
公正証書遺言を作成するには、証人2人以上の立ち会いが必要です。
ただし、選ぶべき証人は誰でもよいというわけではありません。
たとえば、未成年者、推定相続人、受遺者、推定相続人・受遺者の配偶者・直系血族などは、公正証書遺言の証人資格が認められません(民法第974条)。
身寄りや知人が少ない方の場合、弁護士に相談をすれば、弁護士本人や法律事務所の事務員が証人になってくれるので、証人選びの手間をかけずに公正証書遺言を作成できるでしょう。
ただし、弁護士へ依頼する場合は遺言書作成や証人選定に際して費用が発生します。
依頼先や依頼内容によっても費用は異なるため、事前に見積もりを出してもらうようにしましょう。
遺言書を作成するときには、実際に遺言者が死亡して相続が発生したあとに、当然に遺言書のとおりに遺産が分配されるわけではなく、遺言執行者を選任して、遺言執行者が手続きをおこなうことが必要です。
公正証書遺言の作成を弁護士に依頼すれば、その弁護士をそのまま遺言執行者に指名できます。
遺言執行者には、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利が与えられているので(民法第1012条第1項)、弁護士が着任することでスムーズな遺言書の執行が期待できます。
ここでは、公正証書遺言の作成などについて弁護士へ依頼するときの具体的な流れについて解説します。
まずは、法律事務所に問い合わせをします。
法律事務所ごとに受付方法や受付時間が異なるので、アクセスしやすいところに問い合わせをしましょう。
ベンナビ相続を活用すれば、所在地や相談内容から効率的に法律事務所を検索することができます。
予約した日時に法律事務所を訪問し、遺言書について弁護士へ相談します。
法律事務所によっては、オンライン面談やメールでのやり取りにも対応しているところもあります。
なお、事前に持参すべき書類(親族関係図・時系列のメモ書き、財産リスト)などが、弁護士から提示されることも多くあります。
少ない相談回数で効率的に公正証書遺言を作成するためにも、弁護士側からの指示は遵守するようにしましょう。
公正証書遺言をするために、資料を準備して遺言書案を作成します。
一般的に、公正証書遺言に必要になる書類は以下のとおりです。
ご自身で資料収集するのが負担になる場合には、弁護士に一任することも可能です。
弁護士との打ち合わせを重ねて遺言書案が完成したら、公証人との間で事前の打ち合わせをします。
公証人との打ち合わせは、おおむね以下の流れで進められます。
打ち合わせで決定した作成日に、遺言者および証人が公証役場に出向きます。
なお、健康上の理由などで公証役場に出向けない場合には、公証人に自宅や病院などへの出張依頼をすることも可能です。
公正証書遺言は、原則として公証役場で2人以上の証人の立ち会いのもと、公証人がパソコンで作成します。
作成後、遺言者本人が遺言書の趣旨・内容を公証人および証人の前で読み上げます。
公証人は遺言公正証書原本と口授された内容が正しいことを把握したうえで、遺言者本人および証人に読み聞かせるか閲覧をさせて、内容に間違いがないかどうかを確認します。
記載内容に関して確認が取れたら、遺言者および証人がそれぞれ原本に署名・押印します。
その後、公証人が署名・押印をして、公正証書遺言の作成手続きは終了します。
なお、口がきけない者や耳が聞こえない者が含まれる場合には、通訳者などを利用することが可能です(民法第969条の2)。
ここでは、公正証書遺言の作成を弁護士に依頼したときの費用について解説します。
公証役場に支払う公正証書遺言の作成手数料は、遺言の目的である財産の価額に応じて下表のとおり定められています(公証人手数料令第9条)。
遺産の目的の財産の価額 |
手数料 |
100万円以下 |
5,000円 |
100万円超200万円以下 |
7,000円 |
200万円超500万円以下 |
1万1,000円 |
500万円超1,000万円以下 |
1万7,000円 |
1,000万円超3,000万円以下 |
2万3,000円 |
3,000万円超5,000万円以下 |
2万9,000円 |
5,000万円超1億円以下 |
43万,000円 |
1億円超3億円以下 |
4万3,000円に、超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額 |
3億円超10億円以下 |
9万5,000円に、超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額 |
10億円超 |
24万9,000円に、超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
なお、遺言の目的の価額が1億円以下の場合、公正証書遺言の作成に関する公証人手数料は、この表に規定された金額にそれぞれ1万1,000円が加算されます(公証人手数料令第19条)。
また、公正証書遺言は原本が公証役場で保管されるだけではなく、正本・謄本が遺言者に交付されるため、その発行手数料も発生します。発行手数料は1枚につき250円です。
そのほか、遺言者本人が公証役場に訪問できないため、公証人が病院・老人ホームなどに出張するようなケースでは、日当などの諸経費が発生します。
公証役場に問い合わせをすれば費用の全体像を事前に教えてくれるので、あらかじめ確認しておきましょう。
公正証書遺言作成業務に関連して必要になる弁護士費用は、以下のとおりです。
なお、法律事務所ごとに、公正証書遺言作成業務の価格設定は異なります。
ただ、かつては日本弁護士連合会の定める報酬基準があったことから、現在でも当時の報酬基準(旧日本弁護士連合会報酬等基準)を参考にして価格を設定しているのが実情です。
項目 |
費用の目安 |
相談料 |
30分5,500円(受任後の相談料は発生しない。また、初回無料相談サービスを提供している法律事務所も多い) |
遺言書作成業務 |
定型のもので、10万円~20万円程度 非定型のもので、20万円以上 (遺産の内容、事案の複雑さ、遺産総額などによって変動する) |
遺言書の保管(自筆証書遺言の場合) |
年間1万円程度 |
日当 |
3万円~8万円程度(拘束時間によって変動する) |
その他実費 |
必要書類の発行手数料、事務手数料など |
弁護士費用について不安がある方は、弁護士との相談当日に直接費用体系や目安額につい確認しましょう。
さいごに、公正証書遺言の作成サポートを弁護士へ依頼するときの注意点を紹介します。
公正証書遺言は遺言者本人自身でなければ作成できません。
原則として遺言者本人が公証役場に必ず足を運ばなければいけませんし、病気・けがなどの諸事情によって訪問することができないときには、公証人が遺言者本人のもとまで出張してくれます。
そのため、公正証書遺言の作成業務を弁護士に依頼しても、あくまでも本人でなければ作成できない点には注意しましょう。
公正証書遺言の遺言執行についても弁護士に依頼をする場合には、経済的利益の金額に応じて、次のような弁護士報酬が別途発生します。
経済的利益の金額(相続財産の金額) |
弁護士費用の計算方法 |
300万円以下 |
30万円 |
300万円超3,000万円以下 |
2% + 24万円 |
3,000万円超3億円以下 |
1% + 54万円 |
3億円超 |
0.5% + 204万円 |
なお、業務内容が多岐にわたる場合や遺産が多い場合などには増額され、状況によっては100万円を超える費用が必要となる可能性もあります。
全ての弁護士が公正証書遺言の作成や相続問題に強いわけではありません。
というのも、弁護士ごとに専門分野や実績を積んでいる業務が異なるからです。
たとえば、企業法務や刑事事件などに特化している弁護士に相続問題を相談したとしても、スピーディーかつ正確な手続きは期待しにくいでしょう。
ですから、公正証書遺言の作成などについて専門家の力を借りたいのなら、相続問題の解決実績が豊富な弁護士に相談することを強くおすすめします。
公証役場では、遺言書の作成などについて疑問を抱えている方に向けて、無料で法律相談サービスを提供しています。
しかし、遺言者の状況・意思を丁寧に汲み取りながら関係者全員の利益を最大化するには、公正証書遺言を作成する場合でも弁護士のサポートを借りるのがおすすめです。
ベンナビ相続では、遺産相続問題に特化した法律事務所を多数掲載しています。
多くの事務所では無料相談も実施しているので、些細な不安や疑問だけでも気軽にお問い合わせください。
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