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公正証書遺言とは?自筆した場合との違いや書き方を解説

川村 勝之
監修記事
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公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)とは、公証役場の公証人が作成して、公正証書という形で残す遺言書です。

公正証書とは「公証人が作成する文書」のことで、公証人とは「公証事務をおこなう法律の専門家」を指します。

遺言者自身が作成する自筆証書遺言とは異なり、公正証書遺言では公証人のチェックが入り、原本が公証役場で保管されるという点が特徴的です。

記載内容の不備などで効力が無効になる可能性が低く、特に「特定の誰かに確実に遺産を渡したい」「自分の気持ちをきちんと文書で残したい」という場合に向いています。

この記事では、公正証書遺言のメリット・デメリット、作成方法や費用、作成時の注意点などを解説します。

遺言書の作成を検討している方へ

遺言書の作成を検討しているが、作成する必要性やどのような手続きをするのかわからずに悩んでいませんか?

結論からいうと、法的に有効な遺言書の作成には専門知識が必要になるため弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

 

弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遺言書を作成する必要性があるかがわかる
  • 遺言書を作成するための手続きがわかる
  • 依頼した場合、遺言書の作成や保管などの手続きを任せることができる

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目次

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは

遺言書は、大きく分けて公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類あります。

特徴としては以下のとおりで、ここでは各遺言書について解説します。

 

公正証書遺言

自筆証書遺言

秘密証書遺言

作成者

公証人

遺言者

自由

保管場所・保管する人

公証役場

遺言者自身または法務局

自由

証人の有無

2名以上必要

不要

2名以上必要

検認手続き

不要

必要

※法務局で保管した場合は不要

必要

効力が無効になるリスク

基本的にない

可能性あり

可能性あり

作成費用

財産額によって異なる

筆記具代のみ

※法務局で保管する場合は1通につき3,900円

1万1,000円

公正証書遺言

公正証書遺言とは、以下のような遺言書を指します。

  • 証人2名が立ち会って作成する
  • 公証役場で保管される
  • 作成時には費用が発生する

公正証書遺言では、公証人が作成に関与するため、執筆内容や遺言能力の確認・保管面などの点で確実性の高い遺言書です。

自筆証書遺言の場合、遺言書を開封する前に家庭裁判所にて検認という手続きが必要ですが、公正証書遺言の場合は不要です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、以下のような遺言書を指します。

  • 原則自筆で作成する
  • 自宅で管理する
  • 開封の際は家庭裁判所にて検認が必要

なお、相続に関する民法が改正されたことで、現在では以下のように変更されています。

  • 財産目録部分は、パソコンでの作成や通帳のコピー利用などが可能(2019年1月より適用)
  • 手数料を支払うことで、法務局で保管してもらうことも可能(2020年7月より適用)
  • 法務局で保管した自筆証書遺言については検認不要(2020年7月より適用)

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、以下のような遺言書を指します。

  • 証人2名が立ち会って作成する
  • 証人と公証人には遺言内容を公開せず、遺言書の存在のみを証明してもらう
  • パソコンでの作成や代筆も可能(自筆での署名は必要)

秘密証書遺言は「遺言書が存在している」という事実だけを確実にするものであり、公証人も遺言内容を確認しません。

公正証書遺言の効果

公正証書遺言には、ほかの遺言書と異なる特別な効力などはありません。

ただし、2名の証人が立ち会って、法律の専門家である公証人が作成するため、曖昧な表現や形式不備などで遺言内容が無効になるリスクを抑えられるというメリットがあります。

たとえば、相続分や遺産分割方法の指定・推定相続人の廃除・祭祀継承者の指定・遺言執行者の指定などの相続手続きについて公正証書遺言に記載しておくことで、遺言者の生前の意思を明確に示すことができます。

ただし例外として、相続人のほかに遺贈を受ける人がおらず、相続人全員の同意がある場合には、遺言内容と異なる方法で遺産を分割できます。

公正証書遺言はほかの相続人に対して遺言内容を秘密にできる

自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、遺言内容は遺言者が作成するのが通常です。

遺言書を自宅に保管している場合、同居している親族にうっかり話してしまったり、遺言書を見られてしまったりして、遺言内容を秘密にしておくことが難しいこともあります。

しかし、公正証書遺言の場合、遺言者と公証人のほか、相続に関して利害関係のない証人2名しか遺言内容を知ることができません

したがって、遺言者が黙ってさえいれば、相続人に対して確実に遺言内容を秘密にしておくことができます。

また、公証人や証人には秘密保持義務があるため、交付された公正証書遺言謄本の保管にさえ気をつけていれば、遺言内容が他人の目に触れることはありません(公証人法第4条)。

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言を作成する際は、証人2名以上の立ち会いのもと、遺言者が公証人に遺言内容を口頭で伝えて、それに基づいて公証人が作成するのが一般的です。

また、1999年の民法改正によって、聴覚や言語機能に障がいのある人でも作成できます。

聴覚や言語機能に障がいのある人が作成する場合は、公証人に遺言の趣旨を自書する「筆談方式」や、手話通訳士などの通訳人と証人2名以上の立ち会いのもと、遺言者が公証人に遺言内容を伝える「手話通訳方式」などで作成します。

公正証書遺言の大まかな作成手順は、以下のとおりです。

  1. 遺言者が遺言内容を考えて原案を作成する
  2. 公証役場に連絡して、①で作成した原案を伝えて、公証人と内容を確認・検討する
  3. 公証人から指定された必要書類を用意して、公証役場へ届ける
  4. 遺言作成時に立ち会ってもらう証人2名を決める
  5. 公証役場に行く日程を調整する(平日のみ)
  6. 遺言者、証人2名で公証役場に行く
  7. 遺言内容を確認して間違いがなければ、遺言者、公証人、証人2名が署名・押印をする
  8. 公正証書遺言の正本が遺言者に渡され、公証人の手数料を現金で支払う

遺言書の原案はメモ程度でもよく、公証人と相談しながら作成することもできます。

なお、遺言書作成のために公証役場に行けるのは平日のみです。

日程調整の都合や、相続人の数・相続財産の内容などの状況によって遺言書作成にかかる日数は異なりますが、長い場合は1ヵ月以上かかることもあります。

公正証書遺言を作成する場合には、時間的に余裕をもって動くことをおすすめします。

公正証書遺言の作成に必要な費用と書類

公正証書遺言を作成するためには、費用や書類を準備する必要があります。

ここでは、具体的な金額や必要書類などを解説します。

公正証書遺言の作成費用

公正証書遺言を作成するには、公証人に手数料を支払う必要があります。

手数料は、遺言書に記載されている財産の価額に応じて、以下のようとおりに決定されます。

目的財産の価額

手数料の額

100万円まで

5,000円

100万円を超え200万円まで

7,000円

200万円を超え500万円まで

1万1,000円

500万円を超え1,000万円まで

1万7,000円

1,000万円を超え3,000万円まで

2万3,000円

3,000万円を超え5,000万円まで

2万9,000円

5,000万円を超え1億円まで

4万3,000円

1億円を超え3億円以下のもの

4万3,000円+超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額

3億円を超え10億円以下のもの

9万5,000円+超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額

10億円を超えるもの

24万9,000円+超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

※遺言加算:目的価額の合計額が1億円以下の場合は、上記手数料に「1万1,000円」が加算されます。

これらの手数料は、遺産全体の合計額にかかるわけではなく、相続人や受遺者ごとに相続させる財産の価額に応じてかかります。

計算方法が複雑ですので、以下の計算例を参考にしてください。

例1)相続人Aに1,100万円、相続人Bに4,000万円を相続させる場合

 

相続額

手数料

相続人A

1,100万円

2万3,000円

相続人B

4,000万円

2万3,000円

遺言加算

※目的価額の合計額が1億円以下のため

 

1万1,000円

合計

5,100万円

6万3,000円

例2)相続人Aに6,000万円、相続人Bに5,000万円を相続させる場合

 

相続額

手数料

相続人A

6,000万円

4万3,000円

相続人B

5,000万円

2万9,000円

合計

1億1,000万円

7万2,000円

手数料のほかには、以下の費用もかかります。

  1. 公正証書遺言の謄本の発行手数料:250円/枚
  2. 公証人による自宅や病院などへの出張:日当2万円
  3. 遺言者が病気などで公証役場に行けず、公証人が病院・自宅・老人ホームなどに行って作成する場合の病床執務手数料:手数料の50%
  4. 証人を紹介してもらう場合の日当:1人あたり5,000円~1万5,000円程度
  5. 交通費、送料実費など

公正証書遺言の作成に必要な書類

公正証書遺言を作成する際は、以下の書類が必要です。

ただし、公証役場や遺言内容によっては必要書類が異なることもあるため、不安な方は公証役場に直接確認しましょう。

  1. 遺言者の実印
  2. 遺言者の印鑑登録証明書(遺言作成日より前3ヵ月以内のもの)
  3. 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本(遺言作成日より前3ヵ月以内のもの)
  4. ※相続人以外の人に遺贈する場合は受遺者の住民票(法人の場合は資格証明書)
  5. 証人の確認資料やメモ(住所・氏名・生年月日・職業など)
  6. 証人の認印(シャチハタ不可。朱肉をつけて押印するもの)
  7. 相続財産のなかに不動産があり、遺言書に特定不動産を明記する場合は、登記簿謄本および固定資産税評価証明書などの課税関係書類
  8. 不動産以外の相続財産がわかるメモや資料
  9. 遺言執行者を指定する場合は、遺言執行者の特定資料やメモ(住所・氏名・生年月日・職業など)

公正証書遺言を作成する際の注意点

公正証書遺言を作成する際の注意点

公正証書遺言を作成する際はいくつかの注意点があるので、知っておきましょう。

  1. 公正証書遺言の作成には2名の証人が必要
  2. あらかじめ遺言執行者を決めておく
  3. 遺留分は公正証書遺言よりも優先される
  4. 公正証書遺言を閲覧・検索するには特定の条件を満たす必要がある
  5. 遺言内容を訂正したい場合は新規作成する必要がある

①公正証書遺言の作成には2名の証人が必要

公正証書遺言を作成するには、2名以上の証人が必要です。

ただし、誰でも無条件で証人になれるわけではありません

証人になれない人が立ち会って遺言書作成すると、その遺言書は無効になってしまいます。

証人については民法974条に規定されており、以下に該当する場合は証人になることができません。

(証人及び立会人の欠格事由)
第九百七十四条  次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一  未成年者
二  推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三  公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
引用元:民法974条

もし証人が見つからない場合は、公証役場に相談することで証人の紹介が受けられます

公証役場で証人を紹介してもらうと日当が発生しますが、確実に遺言内容を秘密にしたいのであれば紹介を受けることをおすすめします。

②あらかじめ遺言執行者を決めておく

遺言執行者とは、遺言者が死亡したあとに遺言内容を実行する人のことです。

「遺言書で指定された人」または「家庭裁判所で選任された人」が務めるのが一般的で、遺言内容を実行する重要な役割を担っているため、誠実で実行力のある人が遺言執行者に適しています。

なかには、公正証書遺言の作成を弁護士に依頼し、その弁護士を遺言執行者として指定する場合もあります。

遺言執行者については、必ず誰か特定の人物を遺言書に記載しなければならないというわけではありません。

遺言書で指定された人が、遺言執行者になることを拒否することもできます。

ただし、あらかじめ遺言書で指定しておけば、一部の相続人が遺言内容を無視して財産を処分したりすることを防止できるなど、円滑な相続手続きが望めます。

③遺留分は公正証書遺言よりも優先される

遺留分とは、「兄弟姉妹以外の法定相続人について、最低限の取り分を確保する制度」のことです。

一定の相続人には最低限受け取れる割合が定められており、もし遺留分を無視した相続がおこなわれた場合には、侵害された分を請求できます。

遺留分を侵害するような遺言内容の場合、遺言書自体が無効になることはありませんが、遺留分の侵害部分については金銭の支払いを請求できます。

つまり、公正証書遺言よりも遺留分の権利が優先されるということです。

遺言者の立場としては、遺留分のことも配慮したうえで作成することが重要です。

④公正証書遺言を閲覧・検索するには特定の条件を満たす必要がある

公証役場では、公正証書遺言の原本と電子データの2種類が保管されます。

公正証書遺言については閲覧・検索システムが設けられており、以下のような利用条件があります。

  • 遺言者が存命中の場合:遺言者のみ利用できる
  • 遺言者が亡くなっている場合:法定相続人・受遺者・遺言執行者など、法律上の利害関係を有する人のみ利用できる

「遺言者が存命中の場合は遺言者以外に利用できない」というのは、相続人などからの不当な圧力を防ぐのが大きな理由で、基本的に例外はありません。

なお、遺言者が亡くなる直前に公正証書遺言を作成した場合には、登録作業が間に合わないこともあるため、数日程度経ってから検索することをおすすめします。

公正証書遺言は、どこの公証役場でも閲覧・検索できますが、利用時は以下の書類が必要です。

  1. 遺言者の死亡が記載されている資料(除籍謄本など)
  2. 請求者が相続人であることを示す資料(戸籍謄本など)
  3. 請求者の本人確認資料と印鑑 (3ヵ月以内の印鑑登録証明書+実印、または運転免許証やマイナンバーカードなどの官公庁発行の顔写真付き身分証明書+認印)
  4. 委任状・代理人の本人確認書類・印鑑証明書(代理人が申請する場合)

閲覧・検索システムで確認できるのは、遺言者の氏名・生年月日・公正証書を作成した公証人・作成年月日などで、遺言内容までは確認できません。

遺言内容を確認するためには、遺言書が保管されている公証役場で閲覧手続きをおこなう必要があり、その際は手数料として200円かかります。

謄本を印刷する場合は、さらに手数料として250円かかります。

⑤遺言内容を訂正したい場合は新規作成する必要がある

場合によっては、「一度作成した公正証書遺言の内容を訂正したい」ということもあるでしょう。

しかし、公正証書遺言の原本は公証役場にあり、基本的に書き直すことはできません

遺言内容を訂正したい場合は、新しく遺言書を作成する必要があります。

遺言書の優先順位としては、基本的に最新のものが優先されます。

なお、公正証書遺言ではなく自筆証書遺言で新規作成することもできます。

ただし、その場合は記載内容などに不備がないように注意して作成する必要があります。

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公正証書遺言が無効になるケース

次のようなケースでは、公正証書遺言が無効になる恐れがあります。

  • 公証人が不在の状態で作成した場合
  • 証人になれない人が立ち会って作成した場合
  • 公証人に口授せずに身振り手振りなどで伝えて作成した場合
  • 証人が席を外している間に作成した場合
  • 遺言者に遺言能力がなかった場合

①公証人が不在の状態で作成した場合

公正証書遺言の作成にあたっては、公証人が遺言者の口述を筆記する必要があります(民法969条3号)。

したがって、公証人が不在の間に遺言者や証人が勝手に筆記した場合には無効になる可能性があります。

②証人になれない人が立ち会って作成した場合

証人2名のうち1名が、民法974条で定められている「証人になれない人(欠格者)」に該当する場合、その遺言書は無効になる可能性があります。

なお、「証人が3名以上おり、そのうち2名以上が証人適格を有している」という場合には、その遺言書は無効にならないとされています。

ちなみに、過去の判例では「目の見えない人であっても民法974条に該当しない限り証人になれる」との判断が下されています。

③公証人に口授せず身振り手振りなどで伝えて作成した場合

公正証書遺言では、遺言者が公証人に口頭で遺言内容を伝えて作成するのが原則です。

耳が聞こえない人や口がきけない人については、通訳人を介した申述や筆談などの方法が認められていますが、これらはあくまでも例外です。

単に身振り手振りなどで遺言内容を伝えることは認められていないため、そのような方法で作成した場合は遺言内容が無効になる可能性があります。

④証人が席を外している間に作成した場合

公正証書遺言では、作成開始から終了まで、常に遺言者・公証人・2名以上の証人が立ち会わなければなりません

誰かが席を外したりして欠けている状態で作成した場合、その遺言書は無効になる可能性があります。

もっとも、公証人と2名以上の証人が常に立ち会っていれば、形式的には作成要件を満たしていることになります。

ただし、無用なトラブルを避けるためにも、作成中は証人や公証人の動向に気を配り、誰かが席を外している間は作業を中断するなどの対応をおすすめします。

⑤遺言者に遺言能力がなかった場合

なかには、遺言者の状態によって無効になることもあります。

たとえば、「遺言者が遺言書作成時に認知症やアルツハイマーなどを患っていた」というようなケースでは、遺言書無効の争いによって作成時に遺言能力がなかったことが明らかになれば無効となります。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言のメリットとしては、以下の4つがあります。

  1. 偽造や変造の恐れがない
  2. 公証役場で保存されるため紛失の恐れがない
  3. 家庭裁判所による検認が必要ない
  4. 署名などの文字が書けない、口がきけない、耳が聞こえない人でも作成できる

①偽造や変造の恐れがない

公正証書遺言は公正証書という形で残される遺言書であり、作成時は公証人が関与します。

遺言者は遺言内容を公証人に口頭で伝えて、公証人はそれを筆記する形で作られるため、偽造や変造の恐れがないというメリットがあります。

②公証役場で保存されるため紛失の恐れがない

公正証書遺言の原本は公証役場で保存され、遺言者には原本の写しである謄本が交付されます。

遺言書の死亡後に紛失した場合も相続人が交付請求でき、紛失の恐れがありません

なお、公正証書遺言の原本は、原則20年間は公証役場で保管されます(公証人法施行規則27条1項1号、2項)。

また、何らかの特別な事情がある場合などは、さらに長期間保管されることもあります(公証人法施行規則27条3項)。

③家庭裁判所による検認が必要ない

公正証書遺言は、家庭裁判所で検認する必要がないという点もメリットです。

検認とは、相続人に遺言書の存在や遺言内容を知らせて、その時点での遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防止する手続きのことです。

公正証書遺言では、公証人と2名以上の証人が立ち会って作成されるため、遺言書の真正が問題になることは少なく、効力に疑義が生じにくい遺言書とされています。

また、公正証書自体が裁判などで高い証拠能力をもつ書類でもあるため、改めて家庭裁判所で検認を受ける必要がないのです。

④署名などの文字が書けない、口がきけない、耳が聞こえない人でも作成できる

自筆証書遺言では、遺言者が全て自筆することが前提であり、秘密証書遺言の場合でも遺言者の署名が必要です。

しかし、公正証書遺言の場合、文字が書けない人・口がきけない人・耳が聞こえない人でも作成できます(民法969条、969条の2)。

病気や怪我などの事情で公証役場に行けない人でも、公証人に出張してもらって自宅や病院などで作成することもできます(その場合は日当が発生します)。

遺言者が文字を書けずに署名できない場合は、公証人が署名できない事由を付記すれば問題ありませんし、耳が聞こえない人や口がきけない人の場合は、通訳人を介して作成できます。

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言のデメリットとしては、以下の3つがあります。

  1. 手続きや手間がかかる
  2. 作成費用がかかる
  3. 2名以上の証人の確保が必要

①手続きや手間がかかる

公正証書遺言は、思い立った当日に作成できるものではありません。

公正証書遺言を作成したい旨を公証役場に連絡して、作成内容や手続きする日などを決めることから始める必要があります。

最低でも2回程度、場合によってはそれ以上通わなければいけません

ほかの遺言書よりも確実な形で遺言を残せる反面、手続きに手間がかかるという点はデメリットです。

なお、弁護士であれば、代わりに遺言書作成や公証役場とのやり取りを依頼できます

②作成費用がかかる

公正証書遺言を作成する際は、公証役場が定める手数料などが発生します。

特に、相続人や相続財産が多い場合などは高額になりやすいでしょう。

③2名以上の証人の確保が必須

公正証書遺言を作成するには、2名以上の証人を確保しなければなりません

どうしても証人が見つからない場合は、公証役場で紹介が受けられますが、その際は日当を支払う必要があります。

最後に|無効になるリスクを避けたいなら公正証書遺言が向いている

公正証書遺言は、自分の希望通りに相続を進めてほしい人や、相続人同士での相続争いを回避したい人などに向いている遺言書です。

ただし、ほかの遺言書に比べると作成に手間がかかるなどのデメリットもあり、手続きの負担を減らしたい場合は弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士であれば、面倒な手続きを一任できるだけでなく、法的視点から適切な内容を記載してくれるため、相続トラブルの防止なども望めます

公正証書遺言の作成が得意な弁護士を探して、適切な遺言書を作成しましょう。

遺言書の作成を検討している方へ

遺言書の作成を検討しているが、作成する必要性やどのような手続きをするのかわからずに悩んでいませんか?

結論からいうと、法的に有効な遺言書の作成には専門知識が必要になるため弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

 

弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遺言書を作成する必要性があるかがわかる
  • 遺言書を作成するための手続きがわかる
  • 依頼した場合、遺言書の作成や保管などの手続きを任せることができる

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川村 勝之 (千葉県弁護士会)
相談者に選択肢を提示し、最も理想に近い解決法を共に考えることを心がけており、コミュニケーションの取りやすさに定評あり。税理士・司法書士・公認会計士などの他士業と連携したトータルサポートも魅力。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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