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公開日:2019.9.9  更新日:2022.8.17

家督相続が行われるケースとは?権利を主張する長男への対策法も解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
Katokusouzoku
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家督相続(かとくそうぞく)とは、明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの間に施行されていた旧民法による遺産相続方法で、被相続人である戸主が亡くなった場合は必ず長男がひとりで全ての遺産を継承・相続するのが原則とされていたものです。

この時に兄弟が何人いようと、基本的は長男が家督相続人となり、その家にあるすべての財産を受け継ぐため、強い権限を持っていました。

しかし、時代とともに状況は変化し、独占的な相続は相応しくないという考えが生まれ、昭和22年に日本国憲法に則った大幅な改正がなされ、現在の民法が翌1月1日から施行されました。

現在では家督相続は利用されてはいませんが、場合によっては家督相続制度を使用しなければならないケースも存在し、今でも旧時代的な考え方で、「遺産は長男が全部もらうもの」と考えている場合も多くありますので、今回は家督相続で相続しなければならないケースと、石頭の相続人を説得するための方法をご紹介します。

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この記事に記載の情報は2022年08月17日時点のものです

家督相続の特徴

現在の民法では、相続は被相続人の死亡時に開始されますが、旧民法で行われる家督相続では、必ずしも被相続人の死亡によってのみ発生するわけではありませんでした。

原則的には兄弟が何人いても長男が財産の全て相続する制度

旧民法化では、戸主の隠居や入夫婚姻、婿入りや離婚、国籍喪失といった理由で、戸主の生前中に家督相続が発生することがありました。また、長男が家督相続するのが大原則とされ、家督相続の放棄は認められませんでした。

しかし、被相続人は家督相続人を指定できましたし、戸主が死亡して家督相続が開始したのに、直系卑属もなく家督相続人の指定もない場合には、家督相続人の選任をしなければならないというルールはありました。

家督相続の効果 

家督相続によって、前戸主が有した一身専属権を除く一切の権利義務を、家督相続人の一人(長男)が、単独で相続することになります。

ただし、前戸主が60歳に達して隠居を届けたり、女戸主が入夫婚姻となったこと等で家督相続が開始する場合、遺留分に反しない限度であれば、確定日付ある証書を使って事前に財産の一部を留保することができました。
家督相続以外の相続に関しては、今も昔も被相続人の死亡によって開始するため、戸主以外が財産を留保する場合に「家督相続」を原因とする登記申請は原則として却下されていました。つまり、財産留保は登記によって対抗することができないので、確定日付ある証書で第三者に対抗するという構図が出来上がったといえます。

一方で、例えば戸主の隠居後に取得した財産については、家督相続を原因とする登記はできず、遺産相続によって引き継がれることになっていました。このため、隠居届と不動産取得の日付の戦後関係によって登記が判断されることもありました。

家督相続の相続順位

第1順位

第1種法定推定
家督相続人

被相続人(前戸主)の直系卑属。複数いる場合は、被相続人と親等が近い者。(男子・年長・嫡出子が優先、また、女子の嫡出子より男子の認知された非嫡出子が優先)

第2順位

指定家督相続人

被相続人(前戸主)が生前(または遺言)によって指定した者

第3順位

第1種選定
家督相続人

被相続人(前戸主)の父母や親族会が同籍の家族の中から選定した者

第4順位

第2種法定推定
家督相続人

被相続人(前戸主)の直系尊属(父母や祖父母、曾祖父母等)

第5順位

第2種選定
家督相続人

被相続人(前戸主)の親族会が、親族・分家の戸主、または本家・分家の家族もしくは他人(正当事由による裁判所の許可が必要)の中から選定した者

旧民法の遺産相続では、兄弟姉妹に相続権はありません。

現在の法定相続分

相続人

順位

法定相続分

子・配偶者

第1位

子(全員で)2分の1、配偶者2分の1

直系尊属・配偶者

第2位

直系尊属(全員で)3分の1、配偶者3分の2

兄弟姉妹・配偶者

第3位

兄弟姉妹(全員で)4分の1、配偶者4分の3

配偶者は常に相続人となり、他の相続人と同順位となります。 兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪までに限られます。

遺産分割でトラブルになるケースは年々増加

遺産分割のトラブル推移

遺産分割金額

家庭裁判所が受け付けた「遺産分割審判の件数」はこの10年あまりで約30%、約2.3倍も増加したことになります。また、審判となる遺産の額を見てみると、1000万円以下の相続で全体の約32%。5000万円以下になると約42%。全体の約74%もの相続争いが小額規模で行われているのがわかると思います。このデータを見る限り、資産の少ない家庭ほどもめているのが分かります。
出典:データで見る遺産相続トラブルの推移

現行民法は平等相続が原則であり、旧民法のような独占的な家督相続に比べれば大分緩和されたように聞こえますが、その分遺産をめぐる相続トラブルは、皮肉にも以前より増えているようですね。

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家督相続は相続登記の際に利用される場合がある

家督相続は昭和22年5月3日以降に廃止された制度のため、今では全く関係ないかと思われていますが、相続によって家や土地の名義を書き換える必要のある「相続登記」については、残念ながら家督相続が適用されるケースがあります。

代々相続登記がされていない場合

被相続人が死亡して遺産相続が行われる際、家や土地を受け継いだ人は相続登記をして名義を自分のものに変える必要がありますが、これは必ずしも行うべき義務ではないため、いざ自分の代で不動産登記謄本を取ってみると何代にも渡って相続登記がされていないといったケースが多くあります。相続登記の必要性については「不動産を相続したら相続登記をすべき理由」をご覧ください。

遺産相続で本来のクリーンな状態にしようと思っても、現民法にあてはめると遺産分割協議書の作成が面倒ですが、先祖の亡くなった日が旧民法の施行範囲であれば、「家督相続」での相続になり、遺産分割協議書の作成も不要になり、長男の名義にするだけなので、手続きとしては簡単です。詳細は「不動産を相続した際の分割方法と登記手続きを解説」をご参照ください。

家督相続を主張する長男への対策

遺産相続で揉めるケースとして、家督相続を主張する相続人(長男など)は今でも少なくなりません。「両親が亡くなりました→子供3人で分け合いましょう→俺、長男だから。」これで普通に揉め事が始まります。データでもありましたが、遺産の多いか少ないかには関係ありません。

誰の遺産であるかを明確に訴える

相続は色々な問題が発生し、それぞれの相続人が己の主張を通そうとします。長男の家督相続主張もその一環でしょう。しかし、揉めた時に大事なのは『誰の遺産なのか?』ということです。

これは当然亡くなった親の遺産ですので、大事なのは『亡くなった親がもし生きていれば、どんな風にするだろうか?』です。お互いの熱が冷めるまで待つと言う選択は絶対に避けましょう。問題が起こったら早いうちに対処し、問題の引き延ばしは一番のタブーです。

理論と感情論で攻める

長男が遺産を多めに、あるいはその全てを主張する以上、長男が遺産の全てを主張するだけの根拠を示してもらいましょう。「生前に父親の仕事を手伝っていた」「老後の介護を全て行ってきたのか」など、「特別の寄与」として認めても良いかの確認をしておくことが大事です。

もしそういった事情が無いのであれば、現在の法定相続分が民法で定められた権利であり、旧時代の制度に縛られる必要が無いことを伝え、「自分の主張ばかり押し付けるな」といった反論もできます。また、相手も人間であり血を分けた兄弟です。

長男が全ての遺産を持って行ってしまったら自分たちはどうするのか、という話は無下にはできないはずです。

遺産分割調停でシロクロつける

話し合いでも解決できない非道な結果になりそうな場合、最終的には調停や審判、あるいは裁判でシロクロつけるしか方法はありません。「遺産分割調停」ともなれば、弁護士を雇う必要も場合によってはありますので、多少の費用はかかります。

しかし、仮に長男が勝手に遺産を全て相続してしまった場合には「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」という方法で最低限の遺産を取りもどすことも考えなくてはなりません。相続人の間で揉めるなど、経験したくは無いことですが、何かしらの解決を望むのであれば、法的な手段を取ることも考えてみてはいかがでしょうか。
参考:兄弟姉妹の遺産相続トラブル|相続の割合や順位と解決方法

法改正により遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」として名前も制度内容も改められました

まとめ

 
家督相続はすでに廃止されている制度ですが、相続登記や兄弟間の主張の際に未だに見られる制度ですので、いざという時の参考にしていただければ幸いです。

また一方的に家督相続を主張してきたり、遺産を要求してくるなど揉めているケースは、弁護士などの専門家に代理人を依頼し、法的な根拠にもとづいて交渉を進めてもらうことも検討してみましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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