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公開日:2020.5.19 

子供のいない夫婦が遺言書を作成しなければいけない理由

いろどり法律事務所
松島 達弥 弁護士
監修記事
Pixta 42995828 m
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まず、前提として、この記事で「子供のいない夫婦」というのは、亡くなられた方の死亡時点で子供も、孫も、ひ孫も、それより下の代も生存していない夫婦を言います。死亡時に子供がいなくても孫やひ孫が健在の夫婦の場合はこれには当たりません。逆に、現在子供がいなくても、死亡時までに子供が出生していたり、養子縁組によって子供が存在する場合には、この記事に言う「子供のいない夫婦」には当たりません。

さて、本題に入りますが、子供のいない夫婦の相続対策として、生前のうちに遺言書を作成しておくことを強くおすすめします

なぜなら、子供がいる夫婦であれば、配偶者が死亡したときの遺産分割は子供たちと協議すれば足ります。ところが、子供のいない夫婦の場合、法定相続人(民法で相続財産をもらえる権利がある人)の範囲が、配偶者の親・兄弟姉妹・兄弟姉妹の子にまで広がってしまいます。

配偶者死亡後、あなたが配偶者側の親族と配偶者の遺産を巡って円満に話し合いができると胸を張って言い切れるなら、あまり心配はありません。

しかし、多くの家庭において、配偶者側の親族との関係は、配偶者があってこその関係であり、ひとたび配偶者が死亡してしまうと、配偶者の財産をめぐって、円満に協議ができることは少ないといえます。

また、配偶者の兄弟姉妹やその子とはそもそも疎遠なことも多く、遺産分割の話し合いの場を持つことだけでも大変な手間が生じる事案は少なくありません。

そして、疎遠な関係者との遺産分割をめぐる交渉は、人間的な配慮に欠けるドライに経済的利益を追求する交渉になる可能性が高まります。

配偶者の遺産は、婚姻中に夫婦で協力して築いた財産です。配偶者を失ってそれでなくても不安な時期に、配偶者の財産をめぐって不要な紛争を抱えることは本当に大きな負担となります

「遺産相続の問題なんて、資産がたくさんある人だけに限られるのだろう」と考える人もいるかもしれませんが、決してそうとは言い切れません。ご自身は、多額な財産は残っていないと考えているような資産状況であっても、相手が大金と感じれば、権利の主張は全力で行われます。

この記事では、こうした不安を少しでも解消できるよう、子供がいない夫婦が遺言書を残しておくべき理由と、遺言書の作成方法を解説しております。

ぜひ、どのような相続対策を行うべきかのきっかけにしてみてください。

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有効な遺言書の有無で変わる相続の処理

有効な遺言書があるとき

大雑把に説明すると、有効な遺言書があれば、それに沿った相続を実現させれば、相続財産の帰属をめぐる問題は解決します(場合によって遺留分の請求を受ける場合はあります)。これを遺言執行手続と言います。

 

有効な遺言書がないとき

これに対し、遺言書がない場合には、法定相続人全員がそろって遺産分割に関する協議を行い、その協議の内容に沿って遺産を分ける処理をしなければなりません。これを遺産分割手続と言います。

 

法定相続人について

はじめに

遺言書がない場合には、法定相続人が全員そろって遺産分割協議をまとめなければ、遺産を自分のものにすることはできません。そこで、まず初めに、法定相続人と法定相続分について確認しておきましょう。

法定相続人とは、民法によって相続の際に財産を受け取る権利があると認められている人のことです。一方、法定相続分とは、民法によって決められた、被相続人の財産を分配するときの割合のことを言います。

遺言書がない場合には、法定相続人には法定相続分に沿った遺産を受け取る権利があります。この保護された権利を前提に、遺産分割協議を行うことになります。もちろん、思いやりのある話し合いや、付帯条件等を考慮した結果、法定相続分にとらわれない分割は可能です。しかし、どこまでも話が平行線になってしまうと、最終的には、原則として、遺産分割審判という手続きで、法定相続分を目安とした遺産分割の内容が決定されます。

被相続人に子供がいる場合の法定相続

まず、被相続人に配偶者と子がいる場合について説明します。

被相続人が死亡したとして、その被相続人に、配偶者と子供がいる場合には、配偶者と子供が法定相続人になります。そして、配偶者が2分の1の法定相続分を有し、残りを子供の人数で割り付けます。

ちなみに、子供がすでに死亡しているような場合でも、孫がいれば、孫が既に死亡した子供の法定相続分を承継します(代襲相続と言います)。同様に子供も孫も死亡しているが、ひ孫がいる場合、ひ孫は子供の法定相続分を承継します(これを再代襲相続と言います。子供との関係では、再代襲、再々代襲、再々々代襲という形での代襲相続が認められています)。

冒頭でも述べましたが、この記事では、子供という立場の相続人も、孫等の子供を代襲する立場の相続人もいない場合を、「子供がいない夫婦」としています。

では、子供がいない夫婦の法定相続人と法定相続分の具体的な内容はどうなっているのでしょうか。以下で詳しく見てみましょう。

【関連記事】一目でわかる法定相続人の範囲と順位|遺産の割合・よくある疑問も解説

子供がおらず、被相続人の親が存命の場合

被相続人の親が存命の場合には、配偶者と被相続人の親が法定相続人となります。

配偶者の法定相続分は2/3、親の法定相続分は1/3です。なお、被相続人の両親がともに存命の場合には、1/3をさらに1/2ずつした1/6が1人当たりの法定相続分となります。

親が存命の場合の法定相続分

配偶者の両親がすでに亡くなっていて兄弟姉妹がいる場合

配偶者の両親がすでに亡くなっていて、被相続人の兄弟姉妹が存命の場合には、配偶者と兄弟が法定相続人となります。

法定相続分は、配偶者が3/4、兄弟が1/4です。兄弟が複数人いる場合には、1/4をそれぞれで均等に分配します。

兄弟姉妹がいる場合の法定相続分

配偶者の親も兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合

配偶者の親がすでに亡くなっている場合、兄弟姉妹が法定相続人となりますが、兄弟姉妹が子供のいない状態ですでに死亡している場合には、その兄弟姉妹は相続の場面では法定相続人としてカウントされません。

逆に、兄弟姉妹が子供(配偶者から見て甥・姪)を残してすでに死亡している場合には、その子供が代襲相続人として、法定相続人としてカウントされます。

そのため、配偶者と存命の兄弟姉妹、すでに死亡した兄弟姉妹の子(甥・姪)が法定相続人になります。

甥姪のみがいる場合の法定相続分

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子供のいない夫婦が遺言書を残しておくべき理由

以上を理解いただければ、遺言書を残しておくことが次の効果を発揮することをご理解いただけるはずです。

法定相続人のメンバーをそろえる大変さを回避できる

上記の法定相続人の説明は理解いただけましたでしょうか。相続紛争に精通していない方にとっては、大変ややこしかったのではないでしょうか。

実は、この「ややこしい」という問題が、遺産分割で大変厄介な問題を引き起こします。遺産分割協議を成立させるためには法定相続人全員が揃っていなければならないのです。

しかし、子供や自分の親・兄弟姉妹と異なり、配偶者の親や兄弟姉妹はそもそも疎遠なことが多いといえます。

また、兄弟姉妹というのは、同じ両親の子に限られるわけではありません。例えば、片親が異なる兄弟姉妹等が存在する場合もあります。なかには、行方知れずの親や兄弟姉妹(甥・姪)が存在する場合もあります。

行方知れずの兄弟姉妹が子供をのこして亡くなっていた場合には、その子供を交えなければ遺産分割協議をまとめることができないのです。

このように、法定相続人の範囲が広がれば広がるほど、法定相続人がどこにいるかさえ定かではない、といった状況になるリスクも大きくなります。この問題を解決するには、最終的には、専門職に費用を払って相続人調査をしてもらうしかありません。しかし、それでも絶対に相続人全員で協議ができるという保証はありません。

血のつながりのない親族との相続紛争を避けられる

法定相続人の説明でも述べたように、子供のいない夫婦の一方が亡くなった場合、配偶者のほか、被相続人の親や兄弟・姉妹、さらに甥・姪まで相続人に含まれてくる可能性があります。つまり、残された配偶者は、血のつながりのない人と遺産分割の交渉をしなければならないのです。

兄弟間など、血のつながりがある間柄であってもトラブルになることが少なくないのが相続問題です。血のつながりのない間柄であれば、さらに話し合いが難しくなることは容易に相続できるのではないでしょうか。

しかも、遺産分割での争点は、分け方だけではありません。そもそも、どこからどこまでの財産が遺産であるか(例えば専業主婦の妻名義の預金は、亡くなった夫の財産ではないのか)という争点や、生前に出金して費消してしまった金銭がまだ残っているのではないかといったことも争点になり生前の夫婦の金銭管理に対する、ほかの親族からの干渉が始まることもあるのです。

配偶者の親や兄弟は、夫婦の財産状況や生活状況を知らないのが通常です。2人で仲睦まじく暮らしていても、実際にはそれほど収入が多くなかったとしましょう。そのとき、親や兄弟が「子供がいなくて教育費などもかかっていないから、財産はたくさん持っているはずだ」と一方的に思い込んでしまい痛くもない腹を探られ、それがネックとなって一向に協議が進まないという事態は決して珍しくありません。 

このように、血のつながりや生前に交流のなかった遠縁の親族との間で遺産分割協議を行うことが負担となることは容易に想像できるのではないでしょうか。

遺言書を残しておらずトラブルとなってしまう例

こうした問題が具体的にイメージしていただきやすいよう、次のような参考事例を示します。これは実際に起こった事案ではありませんが、これと似た事案は、相続を扱ったことのある弁護士であれば必ず一度は経験しているでしょう。

【設例】

被相続人の遺産が、評価額500万円の戸建て、同評価額4,500万円の敷地、400万円の現金・預金のみであった。法定相続人は配偶者と折り合いの悪い被相続人の母の二人だけだった。遺産分割協議には、母がいつも同じく折り合いの悪い配偶者の妹を連れてくる。

本件では、遺産の合計額は5,400万円で、配偶者の法定相続分は2/3、母の法定相続分は1/3となります。

このとき、関係が良好であれば、母は400万円の預貯金だけを受け取って納得してくれるかもしれません。しかし、本件では、そのようなことは望めず、母と妹はタッグを組んで1,800万円分の遺産を受け取ることを一切譲りません。残念ながら、本件ではこれを遺産の預貯金で賄うことができません。

そのため、のこされた配偶者は、何とかして1400万円を用意しなければなりません。個人的な資産があれば、それを放出したら足ります。しかし、個人資産が足らない場合には、結局、相続財産である自宅を売却したり、自宅を担保に入れてお金を借りたりしなければなりません。

このように、最終的に住み慣れた家を離れたり、不要な借金を抱えなければならないことが起こります。

しかも、この設例は、不動産の評価が5,000万円であることを前提としていますが、実際の紛争では、この不動産の評価額自体をめぐって大きな紛争が生じます。不動産の価値というのは売却しなければ目に見えません。そのため、より多くのお金を手に入れたいとする相手方は、不動産の価値をより多額のものとして主張してきます。結局、のこされた配偶者は、少しでも権利を手もとに残すため、弁護士に依頼して紛争解決を目指さなければならないのです。

遺言書作成の必要性

上記のようなデメリットを回避できる

有効な遺言書を作成しておけば、遺言者死亡時には、遺言内容に沿った遺言執行をすればよいだけですから、こうした血のつながりのない親族との遺産分割の紛争を回避できるという極めて大きなメリットが生じます。

遺留分請求の対策にもなる

相続対策をよく学んでいる方であれば、「それでも遺留分の紛争は残るじゃないか」と考えられるでしょう。確かにそれはその通りです。

民法には遺留分という制度があります。これは、法定相続人のうち一定の範囲の者に認められる権利で、遺産のうちの一定額を取得保持できるという権利です。例えば、被相続人が「財産はすべて愛人に」といった遺言を残していたとしても、遺留分があることから、配偶者や子供は「遺留分侵害額請求」をすれば、遺産の一部を現金として取り戻すことができるのです。

配偶者の父母には、配偶者の遺産に関して遺留分があるため、例えば夫が「すべての財産を妻に相続させる」という内容の遺言を残していたとしても、父母からの遺留分請求を受ける可能性はあります。ある意味、これは遺言書を作成する時点で覚悟しておかなければなりません。

しかし、原則として遺留分の額は法定相続分よりも少額となりますのでそれだけで大きなメリットになります。

また、配偶者の兄弟姉妹(甥・姪)が法定相続人となる事案の場合には、配偶者の兄弟姉妹(甥・姪)に配偶者の遺産の関係で主張できる遺留分はありません。

一般的な平均寿命を前提とすると、遺言者より先に遺言者の父母が亡くなることが多いといえます。そのため、多くの事案では、法定相続人が、配偶者と兄弟姉妹となります。この場合、兄弟姉妹には、遺留分権が認められないため、有効な遺言書の存在によって配偶者の権利が完全に確保されることになります。このように、被相続人死亡時に父母が存命の可能性はあるものの、その可能性は低いため、遺言書を残しておくことで、トラブルなく希望する財産を配偶者に残すことができる可能性が高くなるのです。

付随的な効果

遺言書を作成しようとすると、ご夫婦の将来の財産管理に向き合うことにもなります。この作業を通じて、より安定した将来設計を行うことが可能になります。

まとめ

子供がいない夫婦が遺言書を作成しておく効果は、「配偶者により多くの財産をより確実に残せること」「遺産分割協議におけるトラブルを最大限回避できること」等多岐にわたります。

子供のいない夫婦が一方配偶者の老後の安心を考えた相続を行いたい場合、遺言書の作成は必要不可欠だといえます。

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遺言書は公正証書遺言で作成しましょう

2種類の遺言書

ここからは、子供のいない夫婦がどのように遺言書を書けばよいか確認していきます。 

まず、遺言書の作成方法は大きく分けて2つあります。

1つは自筆証書遺言、もう1つは公正証書遺言です。自筆証書遺言というのは、遺言書を残すご自身が法律上のルールに沿って自筆で遺言書を作成する方式です。公正証書遺言は、公証役場にて公証人の面前で遺言内容を確認し、2名の証人立ち合いのもと遺言を作成させる方式です。

自筆証書遺言は避けるべき

この記事の監修者の意見としては、自筆証書遺言だけを作成するというのは可能な限り避けるべきであると考えています。

その理由は、簡単に思いつくだけでも以下の4点あります。

①自筆証書遺言は有効に作成するのが難しい

自筆証書遺言は民法968条に則った要件を満たしておかなければなりませんが、その要件が欠けたり、疑義があったりすることで、作成した遺言の有効性自体が否定されてしまう場合があります。 

②死後に遺言の有効性が争われやすい

遺言は遺言者の死後に存在確認されることになります。そのため、「本当に本人が作成したのか」「本当に日付の日に作成されたのか」「作成当時、本人に遺言を作成できるだけの能力があったのか」「無理やり作成させられたのではないのか」など、相続開始時点では証明が難しいさまざまな事柄が争点となります。

特に、兄弟姉妹が法定相続人の場合には、遺留分なども請求できないため、遺言が有効なら1円の財産ももらえないが、遺言が無効なら4分の1の財産が得られるという状況が生じます。そのため、財産を得ようとする法定相続人は目の色を変えて遺言書の有効性を争点として掲げてきます。

こうした争点の解決の難しさは、上述のとおりですので、結局、残された配偶者は、親族との本格的な紛争を抱えることになります。

③遺言執行までの手続きの煩雑さ

現在のルールでは、遺言執行を行うためには、裁判所で検認を受けなければなりません。この手続きは、遺言を保管している方が、いちいち家庭裁判所に申し立てなければなりません。

また、遺言書上に遺言執行者が指定されていない場合には、別途遺言執行者を選任する手続きも行わなければなりません。

④遺言の紛失や盗難のおそれ

実際に過去にあった事案として、遺言が紛失されていたり、法定相続人の誰かによって遺言書が盗難されたとしか考えられない状況に陥った方もおられます。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言では、遺言者が原案を作成し、公的な機関である公証役場にて公証人の面前にて遺言書を作成します。公証人は、国の公務である公証事務を担う公務員であり、判事や検事など法律実務を長く務めた人が任命されています。最終的な文案の完成までに法律専門職である公証人が関与してくれるため、形式不備になる恐れがなく安心できる遺言書が作成されます

さらに作成に当たっては、遺言に利害関係のない証人を2人用意する必要もあります。これにより、公証人を含め3人の方が遺言書の作成状況を見守っていることになるため、遺言書が意に反して作成されたなどといわれる可能性が格段に低くなります

また、公正証書遺言の場合、家庭裁判所による検認はせずに遺言執行を開始することができます

また、公正証書遺言は、長期間公証役場に保管されます。作成日当日に「正本」と「謄本」一通ずつを受け取ることができますが、仮に、これが紛失したり盗難されたりしても、公証役場に再発行してもらえます。遺言者生存中は遺言者しか再発行は求められませんが、被相続人の死後であれば、法定相続人の方でも公正証書遺言の再発行を求めることができます。

もちろん、自筆証書遺言に比べ、公正証書遺言の作成は公証役場に支払うべき手数料等費用が余分に必要です。また、文案を完成させるまでの間、公証人との間で文案の調整作業等の打ち合わせが必要となるなど、それなりに手間もかかります。

しかし、配偶者に財産をしっかりと残すという当初の目的を達成したいのであれば、絶対に、公正証書をおすすめします。

これは監修者の意見に過ぎませんが、自筆証書遺言の相談に来られた方に自筆証書遺言の説明だけして終わるのは、プロの法律職としてあってはならないことだと考えています。当事務所では、自筆証書遺言の文案作成の依頼をいただいた場合、「公正証書遺言の有用性について十分な説明を受けたうえで、公正証書遺言の作成に関する業務を委任せず、自筆証書遺言の文案作成を依頼する」という文言の入った委任契約書を準備しているほどです。

相続における紛争を防止し、確実に遺言者の意思を反映させるためには、公正証書遺言を選ぶのが安心でしょう。

【関連記事】公正証書遺言の効果とは|自筆した場合との違いや書き方を解説

遺言書は夫婦でそれぞれ作成しておきましょう

夫婦でどちらが先に死亡してしまうかは誰にもわかりません。

そのため、例えば、「自宅不動産が夫婦共有になっている」という場合や、「不動産は夫名義だが、流動資産は妻のほうが多い」という状況の場合、夫婦がともに「自分の財産を配偶者に相続させる。」という遺言書を残しておかなければ、のこされた配偶者の生活の安定は実現できません。

面倒かもしれませんが、夫婦それぞれで作成しておくことを強くおすすめします。

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遺言執行者を決めておきましょう

遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実行するために必要な手続きを行う人のことです。遺言書には、遺言執行者が誰であるかについても記載しておきましょう。これがなければ、別途、遺言執行者の選任申立という別途の手続が必要です。遺言執行者は、初めから弁護士等の法律専門職を選任することが可能です。他方、遺言で利益を受ける方を選任することもできます。

ただ、配偶者に財産を残す形での遺言に関しては、相続発生時に、残された配偶者の方もある程度高齢になっている可能性が高いといえます。その場合、遺言の執行が難航する場合もあります。そこで、遺言の文案を相談した弁護士等に遺言執行者への就任を打診しておくとよいでしょう。

遺言の文案例

1|配偶者のみにすべての遺産を渡したい場合

まずは、配偶者のみに全ての遺産を渡したい場合の遺言文案例を見てみましょう。このとき、ほかの法定相続人の遺留分を侵害しない文言を追加する必要がありますので注意しておきましょう。

遺言書

遺言者アシロ太郎(昭和○○年○○月○○日生)は、本日まで行ったいかなる遺言も撤回し、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する不動産、動産、預貯金、現金その他一切の財産を、妻アシロ花子(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、この遺言の執行者として前記妻アシロ花子を指定する。

2. 遺言者は、遺言執行者に次の権限を授与する。

(1) 預貯金等の相続財産の名義変更、解約及び払戻し

(2) 貸金庫の開扉、解約及び内容物の取出し

(3) その他本遺言を執行するために必要な一切の行為をする権限

3. 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、専門職の第三者にその任務を行わせることができる。

令和○○年○○月○○日

東京都新宿区○町○丁目○番地○

遺言者 アシロ太郎 印

2|配偶者と親に遺産を渡したい場合

遺産を配偶者のみだけでなく、親(兄弟姉妹、その他第三者)に渡したい場合もあるかもしれません。そういった場合の例も確認しておきましょう。誰にどの財産を渡したいのか、具体的に記載しておくことが重要です。

遺言書

遺言者アシロ太郎(昭和○○年○○月○○日生)は、本日まで行ったいかなる遺言も撤回し、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記財産を遺言者の父アシロ次郎に相続させる。

① ゆうちょ銀行  定期貯金・定額貯金 記号〇〇〇〇〇 番号〇〇〇〇〇〇〇

② 土地

所  在   東京都新宿区○町○丁目

地  番   ○番○

地  目   宅  地

地  積   ○○・○○㎡

所  在   東京都新宿区○町○丁目 ○番地○

第2条 予備的遺言

遺言者が死亡したとき、遺言者の死亡以前(同時である場合を含む。以下同じ)に前記父が死亡している場合には、前条の全ての遺産を妻アシロ花子(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

 

第3条 遺言者は、第1条を除く全ての不動産、動産、預貯金、現金その他一切の財産を妻相続させる。

第4条

1項 遺言者は、この遺言の執行者として妻を指定する。

2項 遺言者は、遺言執行者に次の権限を授与する。

(1) 預貯金等の相続財産の名義変更、解約及び払戻し

(2) 貸金庫の開扉、解約及び内容物の取出し

(3) その他本遺言を執行するために必要な一切の行為をする権限

3. 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、第三者にその任務を行わせることができる。

令和○○年○○月○○日

東京都新宿区○町○丁目○番地○

遺言者 アシロ太郎 印

3|一定の財産を配偶者に渡し、ほかは遺産分割協議に委ねる場合

残された配偶者の生活の基盤保護を目的として、一定の財産、特に自宅が確実に配偶者に渡るようにし、そのほかの財産は遺産分割協議に委ねたい場合もあるでしょう。

そういったときには、自宅を相続させたことが特別受益に該当しないよう、持ち戻し免除することを記載しておかなければなりません。

遺言書

遺言者アシロ太郎(昭和○○年○○月○○日生)は、本日まで行ったいかなる遺言も撤回し、次のとおり遺言する。

第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を遺言者の妻、アシロ花子(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる

所  在   東京都新宿区○町○丁目

地  番   ○番○

地  目   宅  地

地  積   ○○・○○㎡

所  在   東京都新宿区○町○丁目 ○番地○

家屋番号   ○番○

種  類   居  宅

構  造   木造スレート葺2階建

床 面 積   1階 ○○・○○㎡

       2階 ○○・○○㎡

第2条 遺言者は、妻の今後の生活費を考慮して、民法第903条第1項に規定する相続財産の算定に当たっては、前条の遺贈にかかる不動産の価額は相続財産の価額に含まれないものとする。

第3条 遺言者は、この遺言の執行者として前記妻アシロ花子を指定する。

2. 遺言者は、遺言執行者に次の権限を授与する。

(1) 預貯金等の相続財産の名義変更、解約及び払戻し

(2) 貸金庫の開扉、解約及び内容物の取出し

(3) その他本遺言を執行するために必要な一切の行為をする権限

3. 遺言執行者は、この遺言の執行に関し、第三者にその任務を行わせることができる。

令和○○年○○月○○日

東京都新宿区○町○丁目○番地○

遺言者 アシロ太郎 印

遺言書作成は弁護士への相談がおすすめ

上記で遺言書の文例を示していますが、これはあくまで、最低限の文案です。自筆証書遺言にしても、公正証書遺言にしても、遺言書の作成を検討している場合には弁護士に相談することをおすすめします。特に、形式的な不備が遺言の有効無効に直結する自筆証書遺言を作成したいのであれば、必ず弁護士に相談してください。

また、公正証書遺言の作成の場合でも、ご自身の判断で文案を作成と思ってもみなかった不備が後々明らかになることがあります。経験豊富な弁護士に相談すれば、貴方の考えをしっかりと聞き取り、将来起こりうる様々な問題を想起しながら、一番疑義のない形で文案を作成し、さらに、そこから公証人との折衝や必要に応じて証人も用意してもらえます。

最近では相続問題に関して長時間の無料法律相談を受けることができる弁護士事務所も少なくありません。また、すべての財産を配偶者に相続させるというようなシンプルな内容であれば、公正証書作成のバックアップを依頼してもそこまで高額な費用を請求しない弁護士が増えております。そこで、遺言書の作成を検討している場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。

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【迷っている方へ】弁護士に相談するとどんな風に相続問題が解決する?

まとめ

以上、子供がいない夫婦が遺言書を作成すべき理由と、遺言書作成例を紹介しました。

子供がいない夫婦が遺言書を作成していない場合、遺産分割など相続の結果が意図通りにならず、トラブルに発展してしまう可能性があります。それを避けるためにも、事前に遺言書を作成しておきましょう。

作成方法は自筆証書遺言でも公正証書遺言でも構いませんが、紛失やトラブルを防ぐといった観点からすると公正証書遺言をおすすめします。

また、実際に遺言書を作成するにあたっても民法の規定に沿っていなかったり、内容が不明確であったりといった問題のある遺言書が将来の紛争の火種になる事案は少なくありません。そういった事態を防ぐためにも、弁護士等の専門家に相談することをぜひご検討ください。

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この記事の監修者
いろどり法律事務所
松島 達弥 弁護士 (京都弁護士会)
生前の遺言書作成から遺産の分割・取り分についての話し合いまで幅広く対応。税理士、司法書士、不動産鑑定士など他の士業との連携も得意としており、正確な知識・情報に基づいた解決案の提示には信頼が厚い。

相続トラブルに巻き込まれてしまった方へ

何かと相続トラブルに発展するのは遺産の割合に不満がある・納得いかないケースです。

例えば、下記などが該当します。

・思ったより相続される遺産が少なかった
・揉めたくないので、泣く泣く遺産の配分に納得した
・遺言書に他の兄弟姉妹に遺産を多く渡す旨が書かれていた

遺産相続では法定相続分といって、民法で定められている割合の通りに遺産を公平に分割しましょうという一応の定めがありますが、生前に被相続人(亡くなった人)の介護をしていた、被相続人の事業を手伝っていれば寄与分という制度で多くの財産をもらう権利があります。

また、他の相続人が生前に財産を多く受け取っていたのであれば、遺産分割協議の際に相続財産を減らすこともできます。ただ、こういったルールは相続人全員が知っているわけではありませんから、あなたが主張しても聞く耳をもたれない可能性もあります。

その場合、弁護士に相談することで法的な観点から主張をしてくれますし、トラブルになっている場合はその仲裁に一役買ってくれるでしょう。当サイトでは、相続トラブルを1人で解決できるか悩んでいる方へ無料電話・無料相談(一部)を行い、不安解消できるように努めています。

問題解決はもちろん、あなたの状況にあったアドバイスを提供することをお約束します。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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