「すでに相続放棄をしたはずなのに、納税通知が届いた!」と、驚いている方もいるのではないでしょうか。
相続放棄をすると債務を返済する必要もなくなり、被相続人が所有していた不動産の固定資産税を支払う必要も、原則ありません。
ただし、役所から納税通知が届いた場合は支払う必要があります。
本記事では、相続放棄をした場合の固定資産税の支払いについて解説するほか、支払いを避けるための対処法についても解説します。
相続放棄後の固定資産税について気になる方や、納税通知書を受け取ってしまった方は、適切に対処するためにも参考にしてください。
相続放棄をすれば、プラスもマイナスも含めた全ての遺産の相続権を放棄することとなるため、原則として固定資産税を支払う必要はありません。
ただし、相続放棄をするには家庭裁判所への申述申立てが必要です。
ご自身が相続人であることを知った日から3ヵ月以内におこなわなければならないため、早めに手続きをする必要があります。
役所から届いた納税通知書によって、初めて自らが相続人であると知った場合は、納税通知の受領から3ヵ月が手続きの期限となります。
すでに家庭裁判所に相続放棄の申述が受理されているにもかかわらず、役所から固定資産税の納税通知が届く場合もあります。
「相続放棄をしたはずなのに」と驚くかもしれませんが、これには次のような理由があります。
役所は固定資産税課税台帳を基に、納税通知を送付します。
これは、課税対象となる不動産の所在や所有者、評価額などについて記載された資料です。
課税の際は、その年の1月1日時点で所有者として登録されている方を納付義務者とします。
不動産の所有者が亡くなると、通常どおり相続した場合に相続人となる方を代わりに登録します。
その方が相続放棄をしたかどうかは考慮されないことから、ご自身の手元に納税通知書が届くということになります。
固定資産税は、その年の1月1日時点で所有者である方に課税されます。
たとえば、前年の12月24日に相続放棄の申述申立てをおこない、翌年の2月22日に受理された場合、課税台帳上の所有者は、役所が推定する相続人のままです。
ご自身が相続放棄をしたという情報が反映のうえ、課税されるのはその次の年からとなります。
そのため、納税通知書がご自身の元に届くというケースがあります。
一方、前年の6月1日に相続放棄の申述申立てをおこない、同じ年の9月1日に受理された場合、翌年の1月1日時点では課税台帳上から相続放棄をした方の情報は除かれています。
よって、納税通知書も届きません。
固定資産税の課税については「台帳課税主義」が採用されています。
すなわち、固定資産税課税台帳に登録されている方が納税義務者です。
納税通知は課税台帳に基づいて発送され、原則として受け取った方が支払わなければなりません。
たとえ相続放棄をしていたとしても、課税台帳に登録されている限り納税義務が課されることとなるのです。
あらかじめ役所に相続放棄をしたことを知らせておけば、納税通知は届きません。
相続放棄の申述が受理されたら、速やかに以下の書類を役所に提示しましょう。
役所がこれらの書類を確認すれば、課税台帳から納税義務者としての情報が抹消されるため、納税通知書が届かなくなります。
相続放棄をしたにもかかわらず、納税通知書が届いてしまった場合は、以下のような対処をするとよいでしょう。
請求された固定資産税を期限までに支払わなければ、遅延損害金など余計なお金が加算されてしまいます。
それでも支払わなければ、最後は財産を差し押さえられるおそれも否定できません。
余計な損害を被らないためにも、ひとまずは請求どおりに支払っておくのが賢明です。
とはいえ、本当はご自身が負担する必要のないお金ですから、支払った分は本来の納税義務者に請求しましょう。
ほかの方が相続した場合はその方に、誰も相続しなかった場合は、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらって請求します。
ただし、特に被相続人が多額の負債を残していた場合などは回収できる見込みは低いといえます。
遺産の状況によっては、請求したとしても必ずしも支払ってもらえるとは限らないことに注意しましょう。
相続財産清算人の選任については、以下の記事も参考にしてください。
債権者によって代位登記をされていた場合、相続放棄によって登記自体は取り消されますが、固定資産税の課税についてはそのままの情報が残ります。
そのため、課税は誤りであるとして、市町村長に対して不服申し立てをしましょう。
審査において、代位登記が失効していること、相続放棄をした方が納税義務を負う法的根拠がないことが認められれば、請求された固定資産税を支払う必要はありません。
ただし、不服申し立てができる期間は、納税通知書を受領した日の翌日から3ヵ月です。
ここでは、相続放棄後の固定資産税の支払いについて、よくある質問とその回答を紹介します。
還付請求自体は、納付期限の翌日から5年以内に、法律上の根拠をもっておこなうのであればできます。
しかし、実際にその主張が認められ、還付を受けられるケースはほとんどありません。
というのも、法律上の根拠を示すことが難しいためです。
その方がその年の1月1日時点で、納税義務者として固定資産税課税台帳に登録されている限り、その方への請求は違法ではありません。
そのため、請求はできたとしても、還付は認められないケースがほとんどでしょう。
生じます。
なぜなら、1月1日時点では相続放棄の手続きが完了していないため、課税台帳には納税義務者としてご自身の名前があるからです。
そのあとに相続放棄の申述が受理されたとしても、固定資産税の納税義務は残ります。
相続放棄をすれば、被相続人のあらゆる遺産についての相続権がなくなります。
被相続人の残した負債を支払う必要もなくなりますが、固定資産税については例外です。
その年の1月1日時点で課税台帳に名前が登録されている限り請求されてしまいます。
相続放棄の申述が年内に受理されそうにない場合など、相続放棄について不安がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。
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