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生活保護受給者でも相続放棄はできる?必要な手続きや相談先を解説

ゆら総合法律事務所
阿部 由羅
監修記事
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生活保護を受給するためには、利用し得る資産・能力等をすべて活用したうえで、それでも最低限度の生活が維持できないことが要件とされています。

そのため、生活保護受給者が相続放棄をすると、生活保護が打ち切られてしまうことがある点に注意が必要です。

本記事では生活保護受給者による相続について、基礎知識や相続放棄ができるのかどうか、必要な手続きや注意点などを解説します。

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生活保護受給者が相続する際の基礎知識

生活保護受給者でも遺産を相続できますが、相続をきっかけに生活保護が停止・廃止されることがあります。

生活保護受給者でも遺産は相続できる

遺産を相続できる相続人は、被相続人との続柄によって決まります。

被相続人の配偶者は常に相続人となるほか(民法890条)、以下の順位に従った最上位者が相続人となります(民法887条、889条)。

第1順位:被相続人の子

代襲相続により、被相続人の孫等の直系卑属が相続人となる場合あり

第2順位:被相続人の直系尊属

※親等の異なる直系尊属の間では、親等が近い者が上位(例:祖父母よりも両親が上位)

第3順位:被相続人の兄弟姉妹

※代襲相続により、被相続人の甥・姪が相続人となる場合あり

遺産を相続する資格について、生活保護受給者であるかどうかは全く影響しません。

生活保護受給者でも、他の相続人と同様に遺産を相続できます

遺産を相続すると、生活保護が停止・廃止されることがある

生活保護受給者が遺産を相続した場合、生活保護が停止または廃止されることがあります(生活保護法26条)。

①生活保護の停止

一時的に生活保護の支給を停止することをいいます。

臨時的な収入の増加等によって一時的に保護を必要としなくなったものの、おおむね6ヵ月以内に再び保護を要する状態になることが予想される場合には、生活保護が停止されます。

また定期収入の恒常的な増加等により、一応保護を要しなくなったと認められるものの、その状態が今後継続することが確実でないために経過観察を要する場合も、生活保護が停止されます。

②生活保護の廃止

生活保護の支給を恒久的に廃止することをいいます。

定期収入の恒常的な増加等により、以後特別な事由が生じない限り保護を再開する必要がないと認められる場合には、生活保護が廃止されます。

また臨時的な収入の増加等によって、おおむね6ヵ月を超えて保護を要しない状態が継続すると認められる場合にも、生活保護が廃止されます。

遺産を相続したことによって財産が増えた場合には、生活保護が停止または廃止される可能性があります。

増えた財産によって3ヵ月から6ヵ月程度生活を維持できる場合は生活保護の停止、6ヵ月を超えて生活を維持できる場合は生活保護の廃止となるでしょう。

これに対して、遺産を相続しても生活保護が停止・廃止されないケースもあります。

たとえば遺産が無価値または少額の場合や、処分が困難であるため生活資金として活用できない場合などには、生活保護が停止または廃止されずに済むかもしれません。

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生活保護受給者でも相続放棄はできる?

遺産を相続したくなければ、「相続放棄」を検討しましょう。

生活保護受給者であっても、相続放棄は可能です。

ただし、生活保護受給者が相続放棄をすると、生活保護が打ち切られる可能性があるのでご注意ください。

生活保護受給者でも相続放棄は可能

「相続放棄」とは、遺産を一切相続しない旨の意思表示です。

相続放棄をした人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。

その結果、遺産分割協議への参加が不要となるほか、被相続人の債務(借金など)も相続せずに済みます

遺産相続に関わりたくない場合や、被相続人が多額の借金を負っていた場合などには、相続放棄が有力な選択肢となるでしょう。

相続放棄は、期限が経過した場合や法定単純承認が成立する場合(例:相続財産を処分したなど)を除き、すべての相続人がおこなうことができます。

生活保護受給者であっても、相続放棄は可能です。

相続放棄をすると、生活保護が打ち切られることがある

ただし、生活保護受給者が相続放棄をすると、生活保護が打ち切られることがあります。

生活保護は、生活に困窮する者が利用し得る資産・能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件としておこなわれます(生活保護法4条)。

言い換えれば、最低限度の生活を維持するために利用できるものを利用し尽くしていなければ、生活保護を受給する資格がないということです。

生活保護受給者にとって、遺産を相続することは、最低限度の生活を維持するうえでプラスに働くことが多いです。

その場合は、遺産を相続して生活の維持のために活用しなければ、生活保護の受給資格を失うことになります。

相続放棄をしても生活保護が打ち切られないケース

生活保護受給者が相続放棄をしたとしても、必ず生活保護が打ち切られるわけではありません。

遺産を相続することが、最低限度の生活を維持する上でプラスに働かない場合には、相続放棄後も引き続き生活保護を受給できます

たとえば被相続人が多額の借金を負っていて、相続財産全体の価値がマイナスである場合は、遺産を相続するとかえって経済的に損をしてしまいます。

この場合は、遺産を相続することが生活を維持する上でマイナスに働くので、相続放棄をしても生活保護を受給し続けることができます。

また、生活のために活用するのが難しく、現金化も困難な遺産があるようなケースも想定されます。

たとえば遠方に所在する老朽化した建物が遺産に含まれており、管理に多額の費用を要する反面、自分で住むこともすぐに売ることも難しいような場合です。

このような場合には、建物の管理に要する支出によって生活が圧迫されてしまうおそれがあるため、相続放棄後も生活保護を受給し続けられる可能性が高いでしょう。

生活保護受給者が遺産を相続する際の手続き

生活保護受給者が遺産を相続する際には、以下の手続きをおこないましょう。

  1. 福祉事務所等への届出
  2. 遺言書の確認
  3. 遺産分割協議・調停・審判
  4. 相続財産の名義変更|金融機関での相続手続き・不動産の相続登記 など

福祉事務所等への届出

生活保護受給者は、収入・支出その他生計の状況について変動があったときは、速やかに保護の実施機関(=都道府県知事・市長・福祉事務所を管理する町村長)または福祉事務所長へその旨を届け出なければなりません(生活保護法61条)。

遺産を相続したことは、「収入・支出その他生計の状況について変動があったとき」に当たりますので、速やかに福祉事務所等への届出をおこないましょう。

遺言書の確認

被相続人が遺言書を残している場合は、原則として遺言書の内容に従って遺産を分けます。

遺言書は、被相続人が自ら保管している場合もある一方で、公証役場や法務局の遺言書保管所で保管されていることもあります。

被相続人の遺品を探すほか、公証役場や法務局にも照会をおこない、遺言書が存在しないかどうか確認しましょう。

なお、公証役場または法務局の遺言書保管所で保管されているものを除き、遺言書については家庭裁判所の検認が必要とされている点にご留意ください(民法1004条1項)。

遺産分割協議・調停・審判

遺言書が存在しない場合はすべての遺産、遺言書によって分け方が指定されていない遺産がある場合はその遺産について、相続人間で話し合って分け方を決めることになります。

これを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議では、各相続人が希望を出し合い、必要に応じて歩み寄って合意を目指します。

話し合いがまとまらない場合は、弁護士にサポートを依頼することも検討しましょう。

遺産分割協議が合意に至った場合は、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印して締結します。

遺産分割協議が決裂した場合は、家庭裁判所の調停・審判によって遺産分割の方法を決定します。

調停は調停委員の仲介による話し合いの手続き、審判は家庭裁判所が遺産分割の方法を決める手続きです。

遺産分割調停・審判においては、調停委員や家庭裁判所に対して、ご自身の主張を説得的に伝えることが有利な遺産分割を実現するためのポイントです。

どのような方針を立てて調停・審判に臨むかについては、弁護士とよく相談することをおすすめします。

相続財産の名義変更|金融機関での相続手続き・不動産の相続登記など

遺産分割協議・調停・審判で決まった内容に基づき、相続財産の名義変更をおこないます。

現金などは、相続することが決まった人が受け取るだけでよく、特別な手続きは必要ありません。

これに対して、預貯金については金融機関での相続手続き、不動産については相続登記の手続きが必要になります。

金融機関での相続手続きについては、被相続人の口座がある金融機関に問い合わせましょう。

弁護士に代行を依頼することもできます。

不動産の相続登記の手続きについては、司法書士に依頼するのが一般的です。

弁護士に相談すれば、提携先の司法書士を紹介してもらえるでしょう。

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生活保護受給者の遺産相続に関する相談先

生活保護受給者が遺産を相続する際には、ケースワーカーおよび弁護士に相談することをおすすめします。

ケースワーカー

生活保護受給者が遺産を相続すると、生活保護が停止または廃止されることがあります。

また、生活保護受給者が相続放棄をする場合についても、生活保護の打ち切りに注意しなければなりません。

遺産相続が生活保護の受給に与える影響については、ケースワーカーに相談すればアドバイスを受けられます。

担当のケースワーカーに早い段階で相談し、遺産相続に関する注意点を理解しておきましょう。

弁護士

生活保護受給者の遺産相続については、弁護士のアドバイスも大いに役立ちます。

弁護士は、生活保護受給者による遺産相続について、法的な観点からアドバイスをおこないます。

また、遺産分割協議・調停・審判や相続放棄などの手続きを、弁護士に代行してもらうことも可能です。

生活保護受給者がトラブルなく相続手続きを終えるためには、弁護士に依頼するのが安心です。

遺産を相続することになった生活保護受給者の方は、お早めに弁護士へご相談ください。

まとめ|生活保護受給中の相続については弁護士に相談を

生活保護受給者が遺産を相続する際には、生活保護の停止や廃止などに注意する必要があります。

遺産を相続する場合でも、相続放棄をする場合でも、どちらも生活保護の打ち切りが問題となり得ます。

ケースワーカーや弁護士に相談しながら、遺産相続についてどのような対応をとるべきかを慎重に検討しましょう。

特に弁護士に相談すれば、法的な観点から遺産相続や生活保護に関する注意点をアドバイスしてもらえます。

遺産相続について必要な手続きも、弁護士に一任できるので安心です。

生活保護の受給中に遺産相続が発生し、対応の仕方に悩んでいる方は、お早めに弁護士へご相談ください。

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この記事の監修者
ゆら総合法律事務所
阿部 由羅 (埼玉弁護士会)
不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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