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生活保護受給者でも相続放棄はできる?必要な手続きや相続先を解説

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生活保護を受給するためには、利用し得る資産・能力等を全て活用したうえで、それでも最低限度の生活が維持できないことが要件とされています。

そのため、生活保護受給者が相続放棄をすると、生活保護が打ち切られてしまうことがあります。

本記事では、生活保護受給者による相続について、遺産を相続できるかどうかをはじめ、相続放棄できるのかどうかや必要な手続き、注意点などについて解説します。

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生活保護受給者でも遺産は相続できる

生活保護受給者でも遺産は相続できます。

なぜなら、遺産の相続人は被相続人との続柄によって決まるからです。

生活保護受給者であるかどうかは全く影響しません。

被相続人の配偶者は常に相続人となるほか(民法890条)、以下の順位に従った最上位者が相続人となります(民法887条、889条)。

  • 第1順位:被相続人の子
    代襲相続により、被相続人の孫等の直系卑属が相続人となる場合あり
  • 第2順位:被相続人の直系尊属
    ※親等の異なる直系尊属の間では、親等が近い者が上位(例:祖父母よりも両親が上位)
  • 第3順位:被相続人の兄弟姉妹
    ※代襲相続により、被相続人の甥・姪が相続人となる場合あり

これらいずれかの相続人に該当すれば生活保護受給者でも、ほかの相続人と同じように遺産を相続できます。

ただし、相続をきっかけに生活保護の受給資格要件を満たさなくなる可能性があります。

以下では、生活保護を受給できる資格要件と、どのような場合に生活保護が停止・廃止となるのかについて解説します。

生活保護を受給できる資格要件

生活保護が受給できる資格要件は、以下のように定められています(生活保護法4条)。

  • 生活に困窮するものが、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件としておこなわれる。
  • 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、全てこの法律による保護に優先しておこなわれるものとする。

このため、生活に困窮している方で、利用し得る資産や能力などあらゆるものを活用したり、扶養義務者の扶養などを受けていたりしても、生活に困窮する場合が生活保護を受給できる要件となります。

相続すると生活保護が停止・廃止されることがある

生活保護受給者が遺産を相続した場合、生活保護が停止または廃止されることがあります(生活保護法26条)。

もしくは、相続財産の金額によっては停止や廃止まではされなくても、生活保護費が減額される可能性が考えられます。

なぜなら、遺産を相続したことで、生活保護の資格要件に該当しなくなるからです。

どのような場合に生活保護が停止または廃止となるのかは、以下のとおりです。

生活保護の停止

一時的に生活保護の支給を停止することをいいます。

臨時的な収入の増加などによって一時的に保護を必要としなくなったものの、おおむね6ヵ月以内に再び保護を要する状態になることが予想される場合、生活保護が停止されます。

また定期収入の恒常的な増加などにより、一応保護を要しなくなったと認められるものの、その状態が今後継続するか確実ではなく、経過観察を要する場合も、生活保護が停止されます。

生活保護の廃止

生活保護の支給を恒久的に廃止することをいいます。

定期収入の恒常的な増加などにより、以後特別な事由が生じない限り保護を再開する必要がないと認められる場合、生活保護が廃止されます。

また臨時的な収入の増加などによって、おおむね6ヵ月を超えて保護を要しない状態が継続すると認められる場合も、生活保護が廃止されます。

遺産を相続したことによって財産が増えた場合には、生活保護が停止または廃止される可能性があります。

増えた財産によって3ヵ月から6ヵ月程度生活を維持できる場合は、生活保護の停止、6ヵ月を超えて生活を維持できる場合は生活保護の廃止となるでしょう。

生活保護受給者でも相続放棄はできる?

遺産を相続したくなければ、「相続放棄」を検討しましょう

生活保護受給者であっても、相続放棄は可能です。

ただし、生活保護受給者が相続放棄をすると、生活保護が打ち切られる可能性があるため注意しましょう。

生活保護受給者でも相続放棄は可能

「相続放棄」とは、被相続人の最後の住所地を管轄とする家庭裁判所に、被相続人の相続の放棄を申述することを言います。

相続放棄した方は、はじめから相続人ではなかったものとみなされます(民法939条)。

結果として、遺産分割協議への参加が不要となったり、被相続人の債務(借金など)も相続せずに済んだりします。

遺産相続に関わりたくない場合や、被相続人が多額の借金を負っていた場合などには、相続放棄が有力な選択肢となるでしょう。

相続放棄は、期限が経過した場合や法定単純承認が成立する場合を除いて、全ての相続人がおこなうことができます。

生活保護受給者であっても、相続放棄は可能です。

相続放棄をすると生活保護が打ち切られることがある

ただし、生活保護受給者が相続放棄をすると、生活保護が打ち切られることがあります。

生活保護は、生活に困窮する者が利用し得る資産・能力などあらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが要件とされます。(生活保護法4条)。

いいかえれば、最低限度の生活を維持するために利用できるものを利用し尽くしていなければ、生活保護を受給する資格がないということです。

生活保護受給者にとって、遺産を相続することは、最低限度の生活を維持するうえでプラスに働くことが多いです。

その場合は、遺産を相続して生活の維持のために活用しなければ、生活保護の受給資格を失うことになります。

相続放棄をしても生活保護が打ち切られないケース

生活保護受給者が相続放棄したとしても、生活保護が打ち切られるわけでは必ずしもありません

遺産を相続することが、最低限度の生活を維持するうえでプラスに働かない場合には、相続放棄したあとも、引き続き生活保護を受給できます。

たとえば、被相続人が多額の借金を負っていて、相続財産全体の価値がマイナスである場合は、遺産を相続すると経済的に損をしてしまいます。

このような場合は、遺産を相続することが生活を維持するうえでマイナスに働くので、相続放棄をしても生活保護を受給し続けることができます。

また、生活のために活用するのが難しく、現金化も困難な遺産があるようなケースも想定されます。

たとえば、遠方に所在する老朽化した建物が遺産に含まれていて、管理に費用がかかる反面、自分で住むことも売ることも難しいような場合です。

このような遺産を相続した場合、建物の管理に要する支出によって生活が圧迫されてしまうおそれがあります。

結果として、相続放棄後も生活保護を受給し続けられる可能性が高いでしょう。

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生活保護受給者が遺産を相続する際の手続きの流れ

生活保護受給者が遺産を相続する際には、以下の手続きをおこないましょう。

  • 福祉事務所などへの届出
  • 遺言書の確認
  • 遺産分割協議・調停・審判
  • 相続財産の名義変更|金融機関での相続手続き・不動産の相続登記 など

1.福祉事務所などへの届出

生活保護受給者は、収入・支出そのほか生計の状況について変動があったときは、すみやかに保護の実施機関(=都道府県知事・市長・福祉事務所を管理する町村長)または福祉事務所長へその旨を届け出なければなりません(生活保護法61条)。

遺産を相続することは「収入・支出その他生計の状況について変動があったとき」に該当するので、すみやかに福祉事務所などへの届出をおこないましょう。

2.遺言書の確認

被相続人が遺言書を残している場合は、原則として遺言書の内容にしたがって遺産を分けます

遺言書は、被相続人が自ら保管している場合もありますが、公証役場や法務局の遺言書保管所で保管されている場合もあります。

被相続人の遺品を探すことに加えて、公証役場や法務局にも照会をおこなって、遺言書が存在するかどうか確認しましょう。

なお、公証役場または法務局の遺言書保管所で保管されているものを除いて、遺言書については家庭裁判所の検認が必要とされる点に留意してください(民法1004条1項)。

3.遺産分割協議・調停・審判

遺言書が存在しない場合や、遺言書が存在していたとしても全ての遺産の分け方が全て指定されていない場合には、遺産について相続人間で話し合って決めることになります。

これを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議では、各相続人が希望を出し合い、必要に応じて歩み寄って合意を目指します

話し合いがまとまらない場合は、弁護士にサポートを依頼することも検討しましょう。

遺産分割協議が合意に至った場合は、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印して締結します。

また遺産分割協議が決裂した場合は、家庭裁判所の調停・審判によって遺産分割の方法を決定します。

「調停」は、調停委員の仲介による話し合いの手続きであり、「審判」は家庭裁判所が遺産分割の方法を決める手続きです。

遺産分割調停・審判において有利な遺産分割を実現するためには、調停委員や家庭裁判所に対して、ご自身の主張を説得的に伝えることがポイントです。

どのような方針を立てて調停・審判に臨むかについては、弁護士と相談することをおすすめします。

4.相続財産の名義変更|金融機関での相続手続き・不動産の相続登記など

遺産分割協議・調停・審判で決まった内容に基づいて、相続財産の名義変更をおこないます。

現金については相続することが決まった方が受け取ればよいため、特別な手続きは必要ありません。

これに対して、預貯金については金融機関での相続手続き、不動産については相続登記の手続きが必要になります。

金融機関での相続手続きについては、被相続人の口座がある金融機関に問い合わせましょう。

また弁護士に代行を依頼することもできます。

なお、不動産の相続登記の手続きについては、司法書士に依頼するのが一般的です。

弁護士に相談すれば、提携先の司法書士を紹介してもらえるでしょう。

生活保護受給者の遺産相続に関する相談先

生活保護受給者が遺産を相続する際には、ケースワーカーおよび弁護士に相談することをおすすめします。

ケースワーカー

生活保護受給者が遺産を相続すると、生活保護が停止または廃止されることがあります。

また、生活保護受給者が相続放棄をする場合についても、生活保護の打ち切りに注意しなければなりません。

遺産相続が生活保護の受給に与える影響については、ケースワーカーに相談すればアドバイスを受けられます。

担当のケースワーカーに早い段階で相談し、遺産相続に関する注意点を理解しておきましょう。

弁護士

生活保護受給者の遺産相続については、弁護士のアドバイスも大いに役立ちます。

弁護士は、生活保護受給者による遺産相続について、法的な観点からアドバイスをおこないます。

また、遺産分割協議・調停・審判や相続放棄などの手続きを、弁護士に代行してもらうことも可能です。

生活保護受給者がトラブルなく相続手続きを終えるためには、弁護士に依頼するのが安心です。

遺産を相続することになった生活保護受給者の方は、お早めに弁護士へ相談してください。

まとめ|生活保護受給中の相続については弁護士に相談を

生活保護受給者が遺産を相続する際には、生活保護の停止や廃止などに注意する必要があります。

遺産を相続する場合でも、相続放棄をする場合でも、どちらも生活保護の打ち切りが問題となり得ます

ケースワーカーや弁護士に相談しながら、遺産相続についてどのような対応をとるべきかを慎重に検討しましょう。

特に弁護士に相談すれば、法的な観点から遺産相続や生活保護に関する注意点をアドバイスしてもらえます。

遺産相続について必要な手続きも、弁護士に一任できるので安心です。

生活保護の受給中に遺産相続が発生し、対応のやり方に悩んでいる方は、できるだけ早く弁護士へ相談してください。

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この記事の監修者
インテンス法律事務所
原内 直哉 (第二東京弁護士会)
相続に関する問題は、人生で経験することが少ない問題であるからこそ、納得のいく選択を重ねていただくことによって、ご相談者様の将来にとってよりよい結果となるようサポートしたいと考えております。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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