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相続放棄の却下率はどれくらい?却下されるケースや注意点を解説

ゆら総合法律事務所
阿部 由羅
監修記事
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相続放棄は却下される場合もありますが、実際の却下率は低く推移しています。

そうはいっても、相続放棄の手続きをおこなう際には、却下されないように慎重に準備を整えましょう。

本記事では相続放棄の却下率や、どのような場合に却下されるのかなどを解説します。

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相続放棄の却下率はどのくらい?

相続放棄の却下率は例年0.2%前後で推移しており、きわめて低水準で推移しています。

相続放棄には一定の要件が設けられているものの、家庭裁判所は事実関係に深く立ち入った調査・検討をおこなうことなく、相続放棄の申述を広く受理する運用をおこなっているためです。

相続放棄の却下率は0.2%程度

相続放棄の「却下率※」は下表のとおり、2018年から2020年まで0.2%前後で推移しています。

※却下率=既済事件の総数に対する却下件数の割合

 

既済事件の総数

却下件数

却下率

2018年

215,153件

509件

0.24%

2019年

222,924件

538件

0.24%

2020年

233,325件

426件

0.18%

上記のデータからは、相続放棄が却下されることはあり得るものの、その件数はきわめて少ないことが分かります。

相続放棄の却下率が低い理由

相続放棄の却下率が低いのは、家庭裁判所が事実関係に深く立ち入った調査・検討をおこなうことなく、相続放棄の申述を広く受理する運用をおこなっているためです。

相続放棄が受理されないと、相続人はすべての遺産を相続することになります。

特に被相続人が多額の借金を負っていた場合には、意図せずその借金を返す義務を負うことになってしまいます。

このような相続人の不利益は、非常に大きなものです。

そこで家庭裁判所では、相続放棄について事実関係に深く立ち入った調査・検討をせず、一応の審理をするにとどめる運用をおこなっています。

その結果、要件が欠けていることが明白でなければ、相続放棄の申述を広く受理しています。

相続放棄が受理されたとしても、法定単純承認(後述)などを理由に、債権者は相続放棄が無効であると主張する余地があります。

相続放棄の受理に関する家庭裁判所の運用は、訴訟手続きなどによる充実した審理の機会に判断を委ねる趣旨によるものです。

このような家庭裁判所の運用により、相続放棄の却下率は非常に低く推移しています。

相続放棄が却下されるケースの例

相続放棄の却下率は低いとはいえ、却下されるケースが全くないわけではありません。

以下のいずれかに該当する場合には、相続放棄の申述が却下されることがあるので注意が必要です。

  1. 相続放棄の期限が経過した場合
  2. 相続財産を処分した場合
  3. 提出書類の不備を補正しなかった場合

①相続放棄の期限が経過した場合

相続放棄は原則として、自己のために相続が開始したことを知った時から3ヵ月以内におこなわなければなりません(民法915条1項)。

この期間を「熟慮期間」といいます。

熟慮期間が経過した後になされた相続放棄の申述は、却下されるおそれがあります。

ただし家庭裁判所では、相続放棄の手続きが遅れた事情を考慮して、熟慮期間経過後の申述も柔軟に受理する運用をおこなっています。

特に被相続人の借金が後から判明した場合には、判明後3か月以内に申述をおこなえば、相続放棄が受理されるケースが大半です。

家庭裁判所に対して合理的な理由を説明すれば、相続放棄が受理される可能性が高いでしょう。

熟慮期間が経過してしまった場合でも、相続放棄をあきらめずに弁護士へご相談ください。

②相続財産を処分した場合

相続財産の全部または一部を処分すると、原則として法定単純承認が成立し、相続放棄が認められなくなります(民法921条1号。ただし、保存行為と短期賃貸借は例外)。

相続財産を処分したことがあるかどうかについては、相続放棄の申述をおこなった後、家庭裁判所によってなされる照会において質問されます。

照会は書面でおこなわれ、申述者は回答しなければなりません。

<相続財産の処分に関する照会書の質問例>

被相続人の死亡後、被相続人の財産を処分したことや、債務を弁済したことはありますか。

※ある場合は「ある」として具体的な内容を回答し、ない場合は「ない」と回答する

照会に対して虚偽の回答をすることは厳禁ですが、相続財産を処分したことがないにもかかわらず「ある」と回答すると、相続放棄が認められないおそれがあるので注意が必要です。

弁護士に依頼すれば、照会に対する回答についても代わりに対応してもらえます。

回答方法が分からなければ、弁護士にご相談ください。

③提出書類の不備を補正しなかった場合

相続放棄の申述に当たっては、以下の書類を提出する必要があります。

<共通>

(1)相続放棄の申述書

(2)被相続人の住民票除票or戸籍附票

(3)申述人の戸籍謄本

<配偶者・子が相続放棄をする場合>

(4)被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等

<孫・ひ孫などが相続放棄をする場合>

(4)被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等

(5)被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本等

<父母・祖父母などが相続放棄する場合>

(4)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本等

(5)死亡した子の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本等

(6)先順位直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本等

<兄弟姉妹が相続放棄する場合>

(4)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本等

(5)死亡した子の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本等

(6)直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本等

<甥・姪が相続放棄する場合>

(4)被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本等

(5)死亡した子の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本等

(6)直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本等

(7)被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本等

相続放棄の申述書に不備がある場合や、添付書類(戸籍謄本等)が不足している場合には、家庭裁判所に補正を指示されます。

適切な補正がなされなければ、相続放棄の申述は受理されません。

いつまでも補正をおこなわずに放置していると、相続放棄の熟慮期間が経過して、申述の不受理が確定してしまうおそれがあるので要注意です。

相続放棄が却下された場合の異議申立て|即時抗告が可能

相続放棄の申述を却下する審判に対しては、即時抗告によって異議を申し立てることができます(家事事件手続法201条9項3号)。

即時抗告の期間は、審判の告知日から2週間以内です(家事事件手続法86条1項、2項)。

即時抗告によって相続放棄を却下する判断を覆すためには、却下が不当である理由を説得的に主張しなければなりません。

弁護士のサポートを受けながら、どのような理由を主張すべきかについてよく検討しましょう。

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相続放棄の却下に関するよくある質問

相続放棄の申述の却下について、よくある質問と回答をまとめました。

  1. 形見分けを受けたら、相続放棄は却下される?
  2. 遺産から葬儀費用を支出したら、相続放棄は却下される?
  3. 期限後に被相続人の借金が判明した場合、相続放棄は却下される?

形見分けを受けたら、相続放棄は却下される?

形見分けは相続財産の処分に当たると判断され、相続放棄が却下される原因になり得ます(=法定単純承認)。

ただし、経済的に無価値な物の形見分けを受けたに過ぎない場合は、例外的に相続放棄が認められる可能性があります。

たとえば写真や、減価償却が完了している家財の形見分けを受けたに過ぎない場合には、相続放棄が受理されることが多いです。

相続放棄をする場合は、形見分けについても慎重な検討が必要となります。

判断に迷う部分がある場合は、弁護士にご相談ください。

遺産から葬儀費用を支出したら、相続放棄は却下される?

葬儀費用が社会通念上相当な金額であれば、相続財産の処分に当たらないとして相続放棄が認められる可能性があります。

その一方で、葬儀費用が不相当に高額である場合は、法定単純承認に当たるとして相続放棄が却下される可能性が高いでしょう。

葬儀費用の金額が相当であるか否かの判断は難しく、後に相続放棄の有効性を争われてトラブルになる可能性も否めません。

そのため基本的には、葬儀費用は相続財産から支出せず、相続人が負担することが望ましいでしょう。

どうしても相続財産から葬儀費用を支出する必要がある場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。

期限後に被相続人の借金が判明した場合、相続放棄は却下される?

相続放棄は原則として熟慮期間内(=自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内)におこなう必要がありますが、手続きが遅れたことについて合理的な理由があれば、相続放棄の申述が受理されることがあります

熟慮期間の経過後に被相続人の借金が判明した場合は、相続放棄の申述が遅れたことについて、合理的な理由が認められる可能性が高いです。

この場合、借金が判明してから3か月以内に相続放棄の申述をおこなえば、多くのケースで申述が受理されています。

熟慮期間経過後に相続放棄の申述を受理してもらうには、家庭裁判所に対する合理的な理由説明が必要です。

弁護士に依頼すれば、家庭裁判所に対する理由説明についても適切におこなってもらえるでしょう。

まとめ|相続放棄を依頼する弁護士を探すなら「ベンナビ相続」

相続放棄が却下されるケースは少ないとはいえ、家庭裁判所に対して申述をおこなうに当たっては、慎重な準備が求められます。

そもそも相続放棄をするかどうかについては、相続財産の調査を適切におこない、資産と債務の状況を比較したうえで判断しなければなりません。

また、多岐にわたる必要書類を計画的に揃えることや、相続財産の処分など法定単純承認に当たる行為をしないようにすることも大切です。

相続放棄に関する注意点を踏まえて、適切に検討や準備をおこなうためには、弁護士に相談することをおすすめします。

相続放棄に当たってやるべきこと・やってはいけないことについてアドバイスを受けられるほか、スケジュールを立てて適切に手続きを進めてもらえるでしょう。

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相続放棄をご検討中の方は、「ベンナビ相続」を通じて弁護士へご相談ください。

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この記事の監修者
ゆら総合法律事務所
阿部 由羅 (埼玉弁護士会)
不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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