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生前贈与を受けたときなどに贈与税のお尋ねがなかなか来ないとしても、贈与税を親告しないままでいるのは危険です。
なぜなら、不動産を取得したり、相続が発生してから数年が経過しても、ある日突然お尋ねが来て過去の無申告が指摘される可能性があるからです。
贈与税に関するお尋ねがきっかけで過去の無申告や過少申告がバレると、延滞税や無申告課税などのペナルティが課されてしまいます。
そのため、初めから適切な納税をしておく方が、結果としてメリットは大きいと言えるでしょう。
そこで、この記事では、贈与税のお尋ねが来たときの対処法や、ペナルティを課されることがなく、さらに贈与税を節税するコツについてわかりやすく解説します。
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贈与税の「お尋ね」とは、「税務署が個人に対して確定申告の中身・内容について問い合わせをすること」です。
なお、同じく税務署から個人に対しておこなわれる働きかけとして「税務調査」が挙げられますが、お尋ねと税務調査はまったくの別物です。
税務署が「お尋ね」を実施する目的は、「確定申告の中身・内容が正しいかを確認すること」です。
つまり、「税務署からお尋ねが届いたから脱税や申告漏れが発覚する」というわけではありませんし、「お尋ねがきたから追徴課税が実施される」わけでもありません。
税務署から送られてくる「お尋ね」では、シチュエーションに応じてさまざまな事項について回答を求められます。
そして、シチュエーションと回答内容を照合した結果、申告漏れの贈与税の存在が発覚します。
たとえば、土地・建物の購入者に対して送付される「お尋ね」では、「不動産の購入資金の調達方法」を記載しなければいけません。
購入者の年収・所得情報は税務署が把握しているので、年収や所得に見合わない価額の不動産を入手している場合には、何かしらの贈与があったのではないかと疑われます。
その結果、申告していない親・親族などからの資金援助が判明した場合には、贈与税の申告漏れがバレて、修正申告や追徴課税の手続きに進むことになります。
税務署から贈与税のお尋ねが届くのは、不動産取得時または相続発生時が大半です。
不動産を取得すると、税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」が届くことがあります。
これは、不動産取得時に投じた費用の工面方法に関する質問をおこない、贈与税の申告漏れがないかを確認する趣旨です。
そもそも、土地・建物という不動産を取得した場合、法務局において所有権移転登記手続きを行わなければいけません。
そして、所有権移転登記がなされると、法務局が税務署にその旨を通知するので、不動産を取得したことを税務署も知ることになります。
たとえば、譲受人の年収・資産状況では到底購入できない不動産を一括で購入したケースや、不動産を共有名義で購入した場合に持分割合と資金の拠出割合にズレがあるケースでは、贈与税の無申告が疑われる可能性があります。
相続が発生したときにも、税務署からお尋ねが来ることがあります。
そもそも、相続が発生したとき(被相続人が死亡したとき)には、地方自治体に死亡届を提出しなければいけません。
そして、死亡届が受理された場合、自治体から税務署に死亡情報が提供されるので、相続発生の事実が税務署に発覚します。
税務署は被相続人の所得情報などを把握しているので、死亡時の財産状況からどの程度の相続が発生したかを推測することができます。
相続税申告書の情報に不審な点があったり、生前贈与の無申告が疑われる場合には、お尋ねをきっかけに税務調査が実施され、贈与税の申告状況にチェックが入る可能性があるでしょう。
贈与税のお尋ねが届くタイミングは、個別事案によって異なります。
たとえば、不動産取得時や相続発生時から1年以内にお尋ねが届くこともあれば、数年後に郵送されることもあるでしょう。
いずれにしても、時効完成(除斥期間徒過)によって消滅しない限りは贈与税の納付義務からは逃れられないので、数年前の出来事に関する「お尋ね」にも誠実に回答するようにしてください。
贈与税に関するお尋ねの有無にかかわらず、贈与税は適切なタイミングで申告・納付しなければいけません。
贈与税は、1月1日から12月31日までの間に贈与を受けたものについて、「翌年2月1日から3月15日まで」に申告及び納税をおこなわなければいけないとされています。
贈与税の申告は、e-Taxを利用したネット申告だけでなく、申告書を郵便で送付したり、税務署の時間外収受箱に投函することも可能です。
また、贈与税の納付は、e-Taxによる方法に加えて、クレジットカード払い・現金払い・コンビニ納付などの方法が用意されています。
贈与税は、年間110万円を超える贈与を受けたときに申告・納付義務が課されますが、申告漏れや申告忘れがあった過去分の贈与税については、「時効(除斥期間)」によって申告義務・納付義務から逃れることができます。
まず、原則として贈与税の時効(除斥期間)は「贈与税の申告期限の翌日から6年」です。
たとえば、2023年6月1日に受けた贈与は、「2024年3月16日から6年が経過した日」と扱われます。
贈与税の時効(除斥期間)の起算点は「申告期限の翌日」であり、「贈与を受けた日」ではない点にご注意ください。
次に、贈与税の時効(除斥期間)は原則6年ですが、偽り、その他の不正の行為によって贈与税の無申告状態が発生しているようなケースでは、贈与税の時効完成(除斥期間)は「例外的に7年」まで延長されます。
以上を踏まえると、贈与税のお尋ねが来ない期間が最長7年を経過すれば過去の贈与に対する課税処分から逃れられると考えられます。
しかし、税務署は徴税漏れがないように粛々と「お尋ね」の送付や税務調査を執り行うのが実情です。
贈与税の「時効逃げ切り」を狙うのはリスクが伴うため、課税対象になる贈与を受けた場合には、適切なタイミングで申告をおこなうことをおすすめします。
贈与税に関するお尋ねが来ないからと言って、贈与税を申告しなかったり納付しなかったりすると、後々発覚したタイミングで重いペナルティが科されます。
贈与税の無申告・延滞に対するペナルティは以下3つに大別されます。
なお、贈与税の無申告・不払いは「脱税」に該当するので、悪質な事案では刑事罰が科される危険性がある点にもご注意ください。
贈与税の申告・納付が遅れた場合、日割り計算で延滞税の納付義務が上乗せされます。
延滞税は、以下の計算式によって算出されます。
そして、延滞税は、贈与税の延滞期間が2ヵ月経過したか否かによって「延滞税の割合」が異なります。
まず、贈与税の納付期限から2ヵ月が経過するまでの延滞税の割合(金額A)については、「『年利7.3%』と『延滞税特例基準割合 + 1%』のいずれか低い割合」が適用されます。
次に、贈与税の納付期限から2ヵ月を経過する日以後の延滞税の割合(金額B)については、「『年利14.6%』と『延滞税特例基準割合 + 7.3%』のいずれか低い割合」で求められます。
なお、延滞税特例基準割合は以下のように年度によって異なる数値が用いられる点にご注意ください。
期間 |
金額A算出時に使用される延滞税特例基準割合 |
金額B算出時に使用される延滞税特例基準割合 |
令和3年1月1日~令和3年12月31日 |
2.5% |
8.8% |
令和4年1月1日~令和4年12月31日 |
2.4% |
8.7% |
令和5年1月1日~令和5年12月31日 |
2.4% |
8.7% |
贈与税の申告書を申告期限までに提出しなかった場合(無申告)や、贈与税の申告書を申告期限までに提出したものの金額が過少だった場合(過少申告)には、延滞税とは別に更なるペナルティが課されます。
ただし、期限後に申告した場合でも、以下の要件を全て満たす場合には無申告加算税は課せられません。
期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合とは、以下のいずれにも該当する状況をいいます。
なお、以下のように、税務調査の事前通知の前後、税務調査後の更正の予知前後によって、適用される税率が異なる点に注意が必要です。
【無申告加算税】
|
贈与税額 |
加算税率 |
税務調査の連絡前に自主的に申告したケース |
区分なし |
5% |
税務調査の連絡後~指摘前に申告したケース |
50万円以下 |
10% |
50万円超 |
15% |
|
税務調査で指摘を受けてから申告したケース |
50万円以下 |
15% |
50万円超 |
20% |
|
短期間に繰り返して無申告または仮装・隠蔽がおこなわれたケース
|
50万円以下 |
25% |
50万円超 |
50% |
【過少申告加算税】
贈与税の計算において、課税対象となる価格は修正後の課税価格から過少対象価額を控除した金額を基に計算されます。
|
贈与税額 |
加算税率 |
税務調査の連絡前に自主的に申告したケース |
区分なし |
なし |
税務調査の連絡後~指摘前に申告したケース |
50万円以下 |
5% |
期限内申告税額と 50 万円のいずれか多い額を超える部分 |
10% |
|
税務調査で指摘を受けてから申告したケース |
50万円以下 |
10% |
期限内申告税額と 50 万円のいずれか多い額を超える部分 |
15% |
贈与税を意図的に申告しなかったり、贈与の事実自体を隠蔽するなどの悪質なケースでは、延滞税とは別に重加算税という形でペナルティが課されます。
以下のように、無申告か過少申告、過去5年以内に無申告課税または重加算税の摘発歴があるか否かによって適用される重加算税率に差が生じる点にご注意ください。
【重加算税】
|
過去5年以内にペナルティ歴あり |
過去5年以内にペナルティ歴なし |
悪質な無申告のケース |
50% |
40% |
悪質な過少申告のケース |
45% |
35% |
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贈与税のお尋ねが来た場合には、記載内容に正直に回答する必要があります。
贈与税に関するお尋ねで問われる内容を解説します。
まず、相続に基づくお尋ねでは、以下の内容について問い合わせがあるのが一般的です。
次に、不動産取得に基づくお尋ねでの質問事項は以下のものが考えられます。
贈与税に関するお尋ねが来たとしても回答義務は存在しないため、無視してもペナルティが課されることはありません。
なぜなら、税務調査とは異なり、お尋ねは「行政指導」として実施されるものに過ぎないからです。
ただし、お尋ねに回答しなければ税務署から目をつけられてしまい、税務調査が実施される可能性が高くなります。
このような手間がかかるおそれがあるため、贈与税に関するお尋ねが来た段階で真摯に対応するべきでしょう。
原則として1月1日から12月31日の間に110万円を超える贈与を受けた場合には、贈与税の申告・納付義務が生じます。
「贈与税を申告せずに時効(除斥期間)で逃げ切りを狙いたい」と考えるのも当然でしょう。
しかし、上述のように、贈与税の無申告をバレずにやり過ごすのは不可能に近いです。
そこで、合法的に贈与税の節税を目指すなら、以下の特例を活用するのがおすすめです。
特例 |
概要 |
相続時精算課税制度 |
60歳以上の父母・祖父母などから、18歳以上の子・孫などに対して財産を贈与した場合に、2,500万円を上限に非課税になる特例 |
贈与税の配偶者控除の特例 (おしどり贈与) |
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に、上限2,000万円まで配偶者控除が認められる特例 |
住宅等資金の贈与税の非課税制度 |
父母・祖父母などから直系尊属に対して、居住用住宅の新築・取得・増改築などの対価に充てるための金銭を取得した場合に、最大1,000万円まで非課税になる特例 |
祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度 |
直系尊属から30歳未満に教育資金の援助を受けた場合に、1,500万円まで非課税になる特例 |
父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度 |
直系尊属から結婚費用・子育て資金の贈与を受けた場合に、1,000万円まで非課税になる特例 |
税務署からお尋ねに関わらず、贈与税の申告は期限内に適切な方法でおこなってください。
「無申告でもバレなければ支払わなくても良い」という姿勢でいても、贈与から数年後にお尋ねがくると、延滞税などのペナルティ付きで重い経済的負担を強いられる可能性があるからです。
贈与税のお尋ねに不安を感じている方や、過去の贈与について申告をしていない方は、まずは弁護士や税理士などの専門家までご相談ください。
利用できる特例制度や贈与税の納付手続きなどに関して、適切なアドバイスが期待できるでしょう。
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