遺留分権利者(いりゅうぶんけんりしゃ)とは、遺留分を請求し受け取ることのできる権利を持つ兄弟姉妹以外の相続人のことをいい、妻と子が相続人のときは妻と子が、子がおらず、妻と父母が相続人の際は妻と父母が遺留分権利者となります。
もし被相続人が遺言書等により、自分の全財産を相続人では第三者に譲るような指定していたり、特定団体に寄付する旨の遺言書を残していた場合、子や配偶者などの法定相続人は遺留分侵害額請求をすることによって、遺留分(相続できる最低限の遺産)を受取ることができます。
遺留分にはそれぞれ相続できる割合が法律で決められており、誰が遺留分権利者になるかによって変動します。
今回は遺留分権利者が誰になるのか、そして受け取れる遺留分の割合がどう変わるのかを紹介していきます。
そもそも遺留分とは何かについては「遺留分とは|割合と受け取れる人・遺留分侵害額請求の手順を解説」をご覧いただければと思います。
※法改正(2019年7月1日施行)により、遺留分減殺請求は「遺留分侵害額請求」と呼ばれるようになりました。
遺留分は、相続人に最低限確保しなければならない遺産のことで、遺留分を請求できる権利を有する者を遺留分権利者といいますが、遺留分権利者になれる人は誰なのか、紹介していきます。
遺留分権利者になれる人は、以下の3つの項目に当てはまる方になります。
この時、子の代襲相続人も遺留分権利者となることができ、その代襲相続人も子と同じ遺留分を請求することができます。
また、まだ生まれていない胎児でも、生きて生まれてくれば遺留分権利者となることができます。
ただ、相続人が兄弟姉妹の場合には遺留分はありません。
その主な理由については「遺留分と兄弟の関係|兄弟に遺留分が認められていない理由とは」を参照ください。
なお、遺留分は相続人のみに認められる権利ですので、下記の方は遺留分権利者とはなれませんので注意しましょう。
これらに加えて、遺留分を放棄した人も、遺留分権利者とはなれません。
遺留分の割合は法律で決まっており、各相続人の遺留分がどの程度なのかは下記の表に示したものになります。
相続人 |
遺留分の割合(総体的遺留分) |
子どものみ |
1/2 |
配偶者と子ども |
1/2 |
配偶者と直系尊属 |
1/2 |
直系尊属のみ |
1/3 |
基本形は上記の表になりますが、ここでは子どもが2人以上いた場合や、被相続人の父母など、相続する人のケース別の遺留分金額について、パターン別に表したものは「遺留分の割合|ケース別の遺留分獲得金額と計算例」をご覧ください。
遺留分がいくらあるのかを計算する場合、「遺留分の基礎となる財産」を確認することから始まります。
この「遺留分の基礎となる財産」とは、被相続人が相続開始時に持っていた財産に、贈与などの財産を加えた額から、債務を差し引いて算定した財産のことです(民法1043条)。
遺留分の割合は基本的に、法定相続人が親などの直系尊属だけの場合は「遺留分算定の基礎となる財産」の3分の1、それ以外の場合は2分の1になります(民法1042条)。
相続人 |
全員の遺留分 |
相続人の遺留分 |
|||
配偶者 |
子ども |
父母 |
兄弟 |
||
配偶者のみ |
1/2 |
1/2 |
× |
× |
× |
配偶者と子ども |
1/2 |
1/4 |
1/4 |
× |
× |
配偶者と父母 |
1/2 |
2/6 |
× |
1/6 |
× |
配偶者と兄弟 |
1/2 |
1/2 |
× |
× |
× |
子どものみ |
1/2 |
× |
1/2 |
× |
× |
父母のみ |
1/3 |
× |
× |
1/3 |
× |
兄弟のみ |
× |
× |
× |
× |
× |
詳しい基礎財産を算定する流れなどについては「遺留分の計算方法と割合|本来の遺留分を獲得する方法」をご覧ください。
遺留分権利者になれるかどうかの判断は、被相続人が遺言書を作成した時期ではなく、相続が開始した時点で判断することになります。
もし、遺言書を作成した後に子どもが生まれ、遺産相続が発生した場合は、その子も遺留分権利者として扱われます。
ただ、遺留分は贈与や遺贈があったことを知ってから1年間、相続開始から10年間の間に請求しないと時効となってしまいますので、請求するのであれば、できるだけ早めに取り組んでいただくのが良いかと思います。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
引用元:民法第1048条
もし遺留分を侵害されたことがわかった場合、遺留分を侵害している相手方に対して遺留分侵害額(減殺)請求(いりゅうぶんしんがいがく(げんさい)せいきゅう)をすることによって、遺留分を取り返すことができます。
遺留分侵害額(減殺)請求では、まずは自分の遺留分がどのくらいあるのかを確認しておく必要がありますので、遺言書の内容を確認し、誰が相続人となるのか、そして何が相続財産に当たるのかを調査しておく必要があります。
大まかな手順としては以下のとおりです。
調停や裁判となると、弁護士や申し立ての費用などが発生してきますので、なるべく内容証明郵便で通知をおこない、その後の話し合いで解決できるのが理想です。
しかし、相手が応じないことも十分考えられますので、その場合は「遺留分侵害額求を弁護士に相談するメリットと解決までの流れ」を参考にしながら、どうするのがベストな選択なのかをご判断いただくのがよいでしょう。
遺留分権利者しか侵害額(減殺)請求をすることができないのは当然ですが、遺留分侵害額(減殺)請求権は、遺留分を侵害されたことを知ったときから1年間、相続の開始のときから10年たった時に時効消滅しますので注意が必要です。
遺留分権利者についてまとめると、「①配偶者」「②子」「③直系尊属(父母・祖父母など)」になります。
もし遺留分権利者として遺留分侵害額(減殺)請求をする場合は、意外と手間がかかりますし、侵害した相手も要求に応じない可能性もありますので、一度、弁護士へ無料相談をされることをおすすめします。
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