身近な方が亡くなって相続手続きをしようとしても、法要や遺品整理のほか、仕事や家事などの毎日のことで時間を取られ、なかなか手をつけられないものです。
「それでも何とか進めなければ」と、相続手続きの代行を検討中の方もいるでしょう。
相続手続きの代行は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などの専門家に依頼できます。
それぞれ対応できる手続きが異なるため、相続状況や抱えているトラブルなどに応じて自分に合ったところを選びましょう。
本記事では、遺産相続手続きの代行サービスの選び方や専門家ごとの特徴、費用相場や相続手続きの流れなどを解説します。
遺産相続手続きの代行サービスとは、相続財産調査や遺産分割協議などの相続手続きを専門家が代わりに進めてくれるサービスのことです。
高度な知識やノウハウを活かして対応してくれるため、ミスなくスムーズに相続を済ませられるうえ、相続手続きにかかる手間を大幅に軽減できます。
まずは相談をして見積もりなどを確認したのち依頼するというのが基本的な流れで、費用相場としては数万円~数十万円程度です。
ただし、依頼内容や依頼先によっても大きく異なるため、まずは無料相談などを活用して一度詳しく話してみることをおすすめします。
遺産相続の手続きを代行してくれる専門家は以下のとおりです。
それぞれ対応範囲が異なるため、自分が代行を依頼したい手続きの内容に合ったところを選びましょう。
相続手続き代行の依頼先と対応可能な手続き | |||||
---|---|---|---|---|---|
弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 | 銀行 | |
金融機関での相続手続き | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
相続人同士での紛争解決 | 〇 | × | × | × | 〇 |
遺産分割協議書の作成 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
遺言書の作成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
相続放棄 | 〇 | 〇 | × | × | 〇 |
相続人調査・相続財産調査 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
不動産の名義変更(相続登記) | × | 〇 | × | × | 〇 |
相続税の申告 | × | × | 〇 | × | 〇 |
ケースごとのおすすめの依頼先としては以下のとおりです。
ここでは、各専門家に依頼できることや費用相場などを解説します。
弁護士は法律の専門家であり、ほかの専門家に比べて幅広い相続手続きに対応しているのが特徴です。
特に、全面的にサポートしてほしい方や相続人同士でのトラブルが予想される方などにおすすめです。
弁護士は以下のような相続手続きに対応しており、相続登記や相続税の申告以外のあらゆる手続きを任せられます。
弁護士に依頼すれば自分で対応することはほとんどなくなるため、相続手続きを専門家に一任したいという方におすすめです。
なかには司法書士や税理士などが在籍・提携している法律事務所もあり、そのようなところであれば相続登記や相続税申告などにも適切に対応できます。
また、相続人同士でトラブルが起こった場合、ほかの相続人との交渉や、調停・訴訟などの裁判手続きの代行は基本的に弁護士しかできません。
「遺産分割協議で揉めている」「遺言書があったものの有効性が疑わしい」というようなケースでは、早期解決のためにも早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
依頼内容にもよりますが、弁護士に相続手続きを依頼すると、少なくとも数十万円程度の費用はかかります。
法律相談する際には相談料、相続手続きを依頼する際は着手金、問題が解決した場合は成功報酬などを支払うのが一般的です。
訴訟に移行する場合などは高額な費用が加算されるケースもあるため、依頼前には料金体系を細かく確認しておきましょう。
司法書士は登記のプロフェッショナルであり、主に不動産の名義変更が必要な方におすすめです。
司法書士は以下のような相続手続きに対応しています。
遺産の中に土地や建物などの不動産がある場合、相続してそのまま所有し続けるとしても売却するとしても相続登記という手続きが必要です。
相続登記は自分でおこなうこともできますが、申請書の作成や登録免許税の計算など、慣れていないと難しいことも多く手間がかかります。
また、提出書類にミスがあると法務局で訂正しなければなりません。
ミスなくスムーズに手続きを済ませるためにも、特に遺産の中に不動産が含まれる場合は司法書士に依頼するのが無難です。
司法書士に登記手続きを依頼する場合の費用相場は、数万円~数十万円程度です。
一般的に申請手続きの基本料金は数万円程度ですが、不動産の数や相続人の人数が増えるごとに料金が加算されていきます。
司法書士事務所によっても料金体系は異なるため、見積もりを出してもらってしっかりと比較検討することが大切です。
税理士は、税金の計算や手続きなどのプロフェッショナルです。
相続税に関することは税理士に相談・依頼しましょう。
税理士は以下のような相続手続きに対応しています。
特に、多額の遺産があって相続税がかかる可能性が高い方は、税理士に相談するのがよいでしょう。
税理士であれば、相続税の申告はもちろん、税制上の特例なども漏れなく活用して少しでも節税できるようにアドバイスしてくれます。
遺言書の作成などについても相談でき、相続税を納める必要がありそうな場合は早めに相談するとよいでしょう。
なお、相続税には基礎控除という制度があり、遺産総額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」以下であれば、相続税は課税されません。
自分の場合は相続税がかかるかどうか、一度計算してから相談しに行くことをおすすめします。
税理士に相続税の申告手続きを依頼した場合の費用相場は、遺産総額の0.5%~1.0%程度です。
たとえば、3,000万円の相続税申告が必要であれば、15万円~30万円程度の費用がかかります。
なお、申告期限が迫っている場合や複雑な資産評価が必要な場合、相続人の数が多い場合などは、費用が加算されることもあります。
行政書士は、法的書類の作成などのプロフェッショナルです。
特に、複雑な書類作成が必要な場合などは行政書士も選択肢に入れておきましょう。
行政書士は以下のような相続手続きに対応しています。
「相続手続きはある程度自分でできるため、少々複雑な書類作成のみサポートしてほしい」という方は、行政書士に依頼するのがよいでしょう。
行政書士に相続手続きを依頼する場合、数万円~数十万円程度の費用がかかります。
どのような書類作成を依頼するかによって費用は変動しますが、一つの書類につき3万円程度に設定されているのが一般的です。
銀行・信託銀行でも相続手続きを依頼できる場合があります。
慣れ親しんだ担当者に任せたい場合は、銀行への依頼をおすすめします。
銀行の場合、提携している各専門家に依頼して手続きを進めていくため、相続に関する手続き全般に対応してもらえる点が特徴です。
普段から付き合いのある担当者がいるなら、安心して任せられるでしょう。
ただし、銀行に仲介してもらう形になるため、専門家に直接依頼するよりも費用は高くなる傾向にあります。
銀行に相続手続きを依頼する場合、費用は100万円以上かかると考えておきましょう。
基本的には、遺産総額に応じて料金が加算されていきます。
100万円程度の最低手数料を設定している銀行が多いため、費用面をネックに感じる方もいるでしょう。
遺産相続では、以下のような手続きをおこなう必要があります。
ケースによっては不要な手続きもありますが、概して手間がかかるでしょう。
なかには期限が設けられている手続きもあるため、注意が必要です。
たとえば、相続方法の選択は「自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヵ月以内」、相続税の申告は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内」におこなわなければなりません。
手間や時間がかかる手続きも多く、たとえば相続人調査では「被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類」や「相続人全員の戸籍謄本類」などを集めなくてはなりません。
また、不動産などの評価の難しい財産が含まれている場合は、相続財産調査の際に手間がかかるでしょう。
全ての相続手続きを自分でおこなうには相当な労力を要するうえ、正確性も必要になるため、専門家の力を借りることをおすすめします。
ここでは、相続手続きの代行サービスを利用するメリットを解説します。
費用対効果などをしっかりと吟味したうえで、相続手続きの代行サービスを利用するかどうか判断しましょう。
相続手続きの代行サービスを利用すれば、ミスなくスムーズに相続手続きを進められます。
相続財産の種類や相続人の数、相続人との関係性などによっては手続きが複雑になったりして、自力での対応が難しい場合もあります。
専門家に任せれば、豊富な知識や経験を活かして、必要書類の収集や作成・相続財産などの調査・申請手続きなどを確実に進めてくれます。
手続きで漏れが生じたり、遅延によるペナルティを受けたりする心配もありません。
相続手続きにかかる時間や労力を削減できるという点も、相続手続きの代行サービスを利用するメリットのひとつです。
たとえば、相続手続きでは基本的に被相続人や相続人全員の戸籍謄本を取得することになりますが、1通だけで済むケースはほとんどありません。
場合によっては、複数の役所に連絡したり出向いたりしなければならず、大きな負担が生じることもあります。
相続手続きの代行サービスを利用すれば、煩雑な手続きを一手に引き受けてくれるため、書類の収集作成などに奔走する必要がなくなります。
特に仕事や家事などで余裕がない方は、積極的に利用を検討してみてください。
相続人同士でのトラブルを防止できることも、相続手続きの代行サービスを利用するメリットのひとつです。
専門家に依頼すれば冷静かつ的確にやり取りを進めてくれるため、感情的なトラブルに発展したりせずに穏便な形での解決が望めます。
また、高度な知識をもって確実に各種手続きを進めてくれるため、のちのち誤解や不備などでトラブルが起きるリスクも抑えられるでしょう。
遺産相続が原因で親族との関係性が悪化するケースは少なくないため、少しでも不安な場合は代行サービスの利用をおすすめします。
ここでは、相続手続きの代行サービスを選ぶときのポイントを紹介します。
相続手続きの代行サービスを選ぶ際には、得意分野や解決実績などが重要な判断基準となります。
相続分野が得意で解決実績が豊富なところであれば、ノウハウなどが十分蓄積されており、複雑な案件でも適切な処理が望めます。
遺産相続の対応経験が浅いところなどを選んでしまうと、相続手続きに時間がかかったり、さらなるトラブルを招いたりするおそれがあるため注意が必要です。
得意分野や解決実績は事務所ホームページなどで公開されているため、気になるところが見つかった際は一度確認しておくことをおすすめします。
相続手続きの代行サービスを選ぶときは、料金体系が明確で高額すぎないかどうかも確認しておきましょう。
相続手続きの代行サービスの費用は、依頼内容や依頼先などによって大きく異なります。
料金体系が不明確なところを選んでしまうと、依頼後に予想以上の金額を請求されたりして損を被ってしまうおそれもあります。
依頼前には必ず料金体系の説明を受けて、見積もりを出してもらいましょう。
なお、費用の安さだけで依頼先を決めるのではなく、サービスの質とのバランスなども考慮したうえで総合的に判断することが重要です。
「自身との相性が良いと感じるかどうか」も、相続手続きの代行サービスを選ぶ際のポイントのひとつです。
遺産相続ではプライベートな問題が関わってくることも多く、コミュニケーションのとりにくい相手に依頼してしまうと、情報共有が不十分なまま進行してしまって思うような結果にならないおそれがあります。
「親身になって対応してくれるか」「話しやすいか」など、無料相談なども活用しながら自身との相性を見極めることが大切です。
相続手続きを代行してくれるところはさまざまありますが、専門家に全面的にサポートしてほしいなら弁護士がおすすめです。
弁護士であれば、不動産の相続登記や相続税の申告以外の全ての手続きを代わりに対応してもらえます。
司法書士や税理士などと連携している法律事務所も多く、そのような事務所であれば相続登記や相続税申告などが必要な場合でもスムーズに対応してもらえます。
当サイト「ベンナビ相続」では、遺産相続に強い全国の法律事務所を掲載しており、相談内容や地域を選択するだけで対応可能な事務所を一括検索できます。
初回相談無料や電話相談可能などの事務所も多くあり、相続手続きの代行を考えている方は一度相談してみることをおすすめします。
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