相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
「大切な財産を誰かに贈りたい」「子どもや孫に資金援助をしたい」けれど、あとで揉め事にならないか心配…。
そんな時、あなたの意思を明確にし、双方の合意を形に残す「贈与契約書」の作成が不可欠です。
しかし、「贈与契約書なんて難しそう」「何から手をつければいいの?」と不安に感じる方もいるでしょう。
本記事では、すぐに使える贈与契約書の雛形(テンプレート)をご用意し、作成時に必ず押さえておくべき注意点から具体的な作成のステップまでわかりやすく丁寧に解説します。
雛形と解説をセットで活用すれば、誰でもスムーズに贈与契約書を作成できますので、ぜひ参考にしてみてください。
贈与契約書とは、財産を「あげる人(贈与者)」と「もらう人(受贈者)」の間で、「無償で財産をあげます・もらいます」という約束があったことを法的に証明するための大切な書類です。
口約束だけでも贈与は成り立ちますが、書面にしておかないと、財産を渡す前であれば、贈与者が一方的に「やっぱりやめた」と取り消せてしまうことがあります。
贈与契約書を作っておけば、そのような撤回リスクを避け、贈与の事実を明確にし、将来のトラブルを防ぐ上で非常に重要な役割を果たします。
税務署に贈与の事実を伝えるときや、不動産の名義を変えるとき(所有権移転登記)、あるいは将来、相続の話し合い(遺産分割協議)をするときなど、さまざまな場面で「本当に贈与があったのか」を証明する必要が出てきます。
そんなとき、贈与契約書があれば、客観的で確かな証拠として役立ちます。
具体例としては、以下のようなケースで贈与契約書が活躍します。
贈与契約書は、贈与があったことを法的に証明し、将来起こるかもしれない面倒な問題を避け、当事者双方の権利を守るために、ぜひ作っておきたい書類です。
口約束だけでは、後になって「言った、言わない」の水掛け論になったり、税務上のリスクが生じたり、家族間で相続争いが起きたりする原因になりかねません。
契約書を作っておけば、贈与の内容がはっきりとするため、法的な安定性が格段に高まります。
ここでは贈与契約書を作成するメリットについて詳しくご説明していきます。
贈与契約書は、税務署などの第三者に対して「法的に有効な贈与がおこなわれた」という事実を証明する最も強力な証拠となります。
特に税務調査においては、口頭での説明だけでは不十分とされ、客観的な証拠の提出が求められるのが一般的です。
贈与契約書によって、贈与者の明確な「あげる意思」と受贈者の「もらう意思」、そして実際に財産が移転した事実を具体的に示すことができます。
これにより、税務署による恣意的な解釈や、単に名義を借りているだけの預金(名義預金)と疑われるリスクを回避し、予期せぬ課税を避けることに繋がります。
例えば、暦年贈与(年間110万円以下の非課税贈与)を長年にわたりおこなっている場合、毎年贈与契約書を作成しておくことで、それぞれの贈与が独立したものであることを証明しやすくなります。
これがなければ、税務署から「まとめて一度に大きな金額を贈与するつもりだったのでは?(連年贈与)」と指摘され、多額の贈与税が課されるリスクが生じかねません。
また、相続が発生した際、過去の生前贈与が相続財産に加算されるかどうか(生前贈与加算)の判断においても、贈与契約書は贈与の時期や内容を明確にするための重要な資料となり、税務上の手続きをスムーズに進める上で役立ちます。
贈与契約書を作成する大きなメリットのひとつは、将来起こり得る相続トラブルを未然に防ぐ効果が期待できることです。
特に親族間での財産の移動は、感情的な対立を生みやすく、ささいな認識の違いが大きな紛争に発展することも少なくありません。
贈与契約書は、「誰が、いつ、誰に、何を贈与したか」という事実を客観的な形で記録します。
これにより、贈与者や受贈者の記憶違いや、後からの「言った、言わない」といった不毛な争いを避けることができます。
例えば、特定の相続人だけに生前贈与がおこなわれた場合、ほかの相続人から「本当にそんな贈与があったのか?」「不公平ではないか?」といった不満や疑念が生じることがあります。
このような場合に贈与契約書が存在すれば、贈与の事実やその内容を明確にほかの相続人に示すことができ、無用な憶測や誤解を解く助けとなります。
また、遺産分割協議の際にも、生前贈与の事実は考慮されるべき重要な要素です。
贈与契約書があれば、その贈与が特別受益に該当するかどうかなどを判断する上での明確な資料となり、協議の円滑化に寄与します。
口約束だけの贈与では、贈与の事実を証明することが難しく、ほかの相続人の納得を得られないばかりか、最悪の場合、法的な紛争に発展してしまう可能性も否定できません。
大切な家族間で無用な争いを起こさないためにも、贈与契約書によって贈与の事実を明確にしておくことは、非常に賢明な対応と言えるでしょう。
不動産(土地や建物)を贈与する場合、贈与契約書は法務局での名義変更手続き(所有権移転登記)において、原則として必須の書類となります。
なぜなら、登記の申請をする際には「登記原因を証する情報(登記原因証明情報)」を提供しなければならないと定められており、口約束だけでは不動産の名義変更はできないからです。
第六十一条
権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、
その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
そして、この登記原因証明情報に該当するのが、まさに贈与契約書なのです。
具体的には、不動産を贈与によって取得した人が、法務局に対し、贈与契約書を添付して所有権移転登記を申請します。
この手続きを経て初めて、不動産の登記簿上の所有者名義が贈与者から受贈者に変更され、受贈者は法的にその不動産の所有者として第三者に対抗できるようになります。
贈与契約書がない、あるいは内容に不備がある場合、登記申請が受理されなかったり、手続きが大幅に遅れたりする可能性があります。
特に、不動産の表示(所在、地番、家屋番号など)は、登記事項証明書(登記簿謄本)の記載通りに正確に記述する必要があります。
通常、不動産の贈与登記は司法書士に依頼することが多いですが、その際も司法書士は贈与契約書に基づいて手続きを進めます。
事前にしっかりと贈与契約書を作成しておくことで、司法書士への依頼もスムーズに進み、結果として迅速かつ確実な名義変更が実現できます。
贈与契約書を作成する重要なメリットのひとつに、贈与者による一方的な契約の取消しを防止する効果があります。
これは口約束だけの贈与の場合、贈与者が「やっぱりあげるのをやめた」と心変わりした場合、まだ財産を引き渡していなければ、原則として自由にその約束を取り消すことができてしまうということです。
受贈者にとっては、期待していたものが手に入らなくなる不安定な状態に置かれることになります。
しかし、民法第550条の「書面によらない贈与」については、この撤回権が制限されることを意味しています。
第五百五十条
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
例えば、祖父が孫に対して「大学の入学祝いに100万円をあげよう」と口約束したとします。
この時点ではまだ書面がないため、祖父は後日「やはり、あげるのは難しい」と約束を撤回できてしまう可能性があります。
しかし、もしこの約束を贈与契約書という書面にして双方で署名押印していれば、祖父はそう簡単には約束を反故にできなくなるのです。
もちろん、詐欺や強迫による契約など、特別な事情がある場合は書面があっても取り消すことも可能です。
このため、受贈者は贈与契約書を作成することで、もらえるはずの財産を確実に受け取れる可能性が高まります。
贈与契約書の作成は、ポイントを押さえれば決して難しくありません。
贈与契約の内容を証拠としてきちんと残すため、それぞれのステップでやるべきことを確認しておきましょう。
贈与契約書を作る最初のステップは、財産をあげる人(贈与者)と、もらう人(受贈者)の間で、何をどうやってあげるのか、具体的な内容をしっかりと決めて、お互いが「それでいいよ」と納得すること(合意)です。
この合意内容が曖昧なままでは、あとでトラブルの原因になったり、ちゃんとした契約書が作れなかったりします。
お互いの意思が一致することが、契約が成り立つための基本です。
具体的に決めておくべき主な項目は、次のとおりです。
贈与者と受贈者の間で贈与する内容が決まったら、次はその内容に基づいて贈与契約書を実際に作ります。
このとき大切なのは、まったく同じ内容の契約書を2通作ることです。
これは、あげる人と貰う人の双方が、それぞれ契約があったことの証拠となる書類を1通ずつ持っておくためです。
1通しか作らないと、どちらか一方が原本を持つことになり、もう一方はコピーしか持てなかったり、あとで内容を確認するのが難しくなったりするかもしれません。
2通作る主な理由は、あとで「言った、言わない」という争いが起きたときに、お互いに契約書を見せて確認できるようにするため、そして、どちらか一方が持っている契約書が何らかの理由で書き換えられたり、失くしたりするリスクを低減するためです。
契約書の作り方は、手で書いても、パソコン(ワープロソフトなど)で作っても問題ありません。
パソコンで作った場合は、同じものを2枚印刷し、それぞれに署名押印することで2通の原本となります。
どちらの方法で作るにしても、最初のステップで決めた内容(誰が、誰に、何を、いつ、どのようにあげるか)を間違えずに、はっきりと書くことが一番大切です。
誤字や脱字がないか、特にお金の金額や日付、財産の詳しい情報(不動産であれば登記情報通りかなど)に間違いがないかを、念入りに確認しましょう。
話し合った内容に基づいて贈与契約書が2通できたら、次はその2通の契約書それぞれに、財産をあげる人と貰う人の双方が、自分の名前を書き(署名)、印鑑を押します(押印)。
この署名と押印は、その契約書が「私たち二人が本当に納得して作りました」ということを示す、とても大切な手続きです。
名前を書くときは、基本的には本人が自分で書き、印鑑は名前を書いた横か下に、それぞれの印鑑を押します。
普段使っている簡単な印鑑(認印)でも契約は成り立ちますが、特に土地や建物、大きなお金をあげるような大切な契約のときは、役所に登録した「実印」と、その印鑑が本物であることを証明する印鑑証明書も一緒につけると、より安心です。
この署名と押印という手続きをすることで、贈与契約書は法律的な証拠としての価値がぐっと高まります。
万が一、将来契約内容について争いが生じた場合、自署と押印がある契約書は、契約が確かに当事者の合意のもとに成立したことを示す強力な証拠となります。
財産をあげる人と貰う人の双方が名前を書いて印鑑を押した2通の贈与契約書(これを「原本」と言います)は、それぞれが1通ずつ大切にしまっておきます。
このステップは簡単そうに見えますが、将来にわたって契約があったことの証拠をしっかり残しておくために、とても重要です。
なぜ原本を保管することが大切かというと、まず、契約書は二人の間の約束事を証明する一番大事な証拠だからです。
特に、名前と印鑑が押された「原本」は、コピーよりもずっと証拠としての力が強いのです。
また、税務調査で提示を求められたり、不動産の名義変更の際に法務局に提出したり、あるいは万が一裁判になった場合に証拠として提出したりするなど、法律的な手続きで原本の提示や提出が必要となる場面があります。
さらに、契約内容について記憶が曖昧になったり、当事者間で認識のずれが生じたりした場合でも、契約書原本を確認することで、合意内容を正確に再確認できます。
贈与契約書は失くしたり、盗まれたり、火事や水濡れでダメになったりしないように、しっかり保管しておきましょう。
贈与契約書を初めて作る方でも安心して取り組めるように、いろいろなケースに合わせた見本(テンプレート)をご紹介します。
贈与契約書には、お金、不動産、株式、毎年110万円以下の贈与(暦年贈与)など目的に合わせて、それぞれの書式があります。
贈与契約書の書き方で迷った方は、ぜひ参考にしてみてください。
下記のテンプレートは、一般的にお金をあげる場合に使用できる基本的な贈与契約書の見本です。
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贈 与 契 約 書
贈与者 アシロ太郎(以下「甲」という)は、受贈者 アシロ花子(以下「乙」という)と、下記条項により贈与契約を締結する。
記
第1条 甲は、現金〇〇万円を乙に贈与するものとし、乙はこれを受諾した。
令和__年__月__日 (甲)住所 東京都新宿区●—●●—●●
(乙)住所 東京都新宿区●—●●—●● |
「誰が(あげる人)」「誰に(もらう人)」「いくら(あげる金額)」「いつ(あげる日)」「どのように(渡し方)」といった、贈与契約が成り立つために必要な基本情報を全て含んでいます。
具体的には、親子間で生活費を援助するときや、お孫さんへお祝い金をあげるとき、友達同士で少額のお金をやり取りするときなど、比較的簡単な現金の贈与の場面で広く使えます。
1年間に110万円以下の金額をあげる「暦年贈与」をおこなう場合も、先ほど紹介した現金用のテンプレートの贈与額(もらった額)を「110万円」に変更することで利用できます。
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贈 与 契 約 書
贈与者 アシロ太郎(以下「甲」という)は、受贈者 アシロ花子(以下「乙」という)と、下記条項により贈与契約を締結する。
記
第1条 甲は、現金110万円を乙に贈与するものとし、乙はこれを受諾した。
令和__年__月__日 (甲)住所 東京都新宿区●—●●—●●
(乙)住所 東京都新宿区●—●●—●● |
贈与税は1年間に110万円までなら税金がかからないため、贈与契約書を必ず作成しないといけないわけではありません。
しかし、「贈与」であったという事実を証明できるようにしておくと、将来的に税務署との間で問題が起きたときに証拠として役立ちます。
下記のテンプレートは、土地や建物といった不動産をあげる際に使う贈与契約書の見本です。
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贈 与 契 約 書
贈与者 アシロ太郎(以下「甲」という)は、受贈者 アシロ花子(以下「乙」という)と、下記条項により贈与契約を締結する。
記
第1条 甲は、甲の所有する下記の財産を乙に贈与するものとし、乙はこれをした。
第2条 甲は、第1条に基づき贈与した財産を、20●●年●●月●●日までに、乙へ引き渡し、かつ、本件不動産の所有権移転登記手続をおこなう。
令和__年__月__日
(甲) 住所 東京都新宿区●—●●—●●
(乙) 住所 東京都新宿区●—●●—●● |
不動産をあげる場合、贈与契約書は法務局で名義変更の手続き(所有権移転登記)をするときに必要な「登記原因証明情報」という書類の役割を果たします。
そのため、この見本では、名義変更の手続きにも使えるように、不動産の情報を正確に書く欄を設けるなど、法律で求められることを考えた内容になっています。
また不動産をあげる場合には、不動産の価値に応じた「収入印紙」、固定資産税評価額をもとに「登録免許税」や「不動産取得税」といった税金がかかるため注意が必要です。
不動産をあげる手続きは複雑になることがあるので、この見本を参考にしつつ、分からないことや心配なことがあれば、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
下記のテンプレートは、株式会社の株(証券取引所に上場している株・していない株のどちらも)をあげる際に使う贈与契約書の見本です。
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贈 与 契 約 書
贈与者 アシロ太郎(以下「甲」という)は、受贈者 アシロ花子(以下「乙」という)と、下記条項により贈与契約を締結する。
記
第1条 甲は、甲の所有する下記の財産を乙に贈与するものとし、乙はこれを受諾した。
第2条 甲は、第1条に基づき贈与した財産を、20●●年●●月●●日までに、乙へ引き渡すものとする。
令和__年__月__日 (甲) 住所 東京都新宿区●—●●—●●
(乙) 住所 東京都新宿区●—●●—●● |
株もお金と同じように価値のある財産ですので、あげるときにはその内容をはっきりと書面で残しておくことが大切です。
株をあげるとき、特に重要なのは「どの会社の」「どんな種類の株を」「何株」あげるのかを具体的にはっきりさせることです。
これが曖昧だと、あとでトラブルになったり、税金の問題が起きたりする可能性があります。
また、特に上場していない会社の株(未公開株)をあげる場合は、会社によっては株を譲り渡すのに取締役会や株主総会の許可が必要な場合があるため、契約書だけでなく、会社のルール(定款や株式取扱規程など)も確認が必要です。
また、株の価値によっては贈与税がかかり、計算が複雑になるため、専門家(弁護士、税理士、司法書士など)に相談しながら進めるのが安全です。
法律的に問題がなく、あとで困ったことにならない贈与契約書を作るためには、6つの注意点を事前に把握しておく必要があります。
これらの点を守らないと、契約自体が無効だと言われたり、税金のことで問題が起きたりする可能性があるため、贈与契約書の正しい書き方を覚えておきましょう。
贈与契約書をちゃんとしたものにして、誰が見ても内容がはっきり分かるようにするためには、必ず書かなければいけないことがあります。
必ず書かなければいけないことが漏れていると、誰と誰の間で、何についての契約なのかが分からなくなり、契約が本当にあったのか疑われたり、あとで大きなトラブルになったりする可能性があるからです。
このため贈与契約を作成するときには、以下の内容を必ず含めるようにしましょう。
「贈与契約書」と聞くと、何か法律で決められた特別な書き方や用紙があるのではないかと心配になるかもしれません。
しかし、日本の法律では、贈与契約書の特定の書き方や用紙の種類は決められていません。
大切なのは、その「形」ではなく「中身」です。
贈与契約書で最も大事なのは、「誰が誰に」「何を」「いつ」「どのように」あげたか、そして二人がそれに納得したかといった情報が明記され、その契約書が二人の本当の気持ちで作られたことが分かれば贈与契約書として認められます。
ただし、いくら形が自由だと言っても、誰が見ても内容がはっきり分かるような見た目で作ることはとても大切です。
例えば、あまりにも汚い字で書かれていて読めなかったり、必要なことがバラバラに書かれていたりすると、あとでその意味をめぐってトラブルになる可能性があるので注意をしましょう。
贈与契約書を作るとき、手で書くべきか、それともパソコン(ワープロソフトなど)で作るべきか迷うかもしれません。
結論から言うと、どちらの方法で作っても、法律的な効果に違いはありません。
重要なのは、作り方そのものではなく「内容が正確ではっきりしていること」「二人の本当の気持ちが確認できること」です。
強いて言えば、手書きの場合は字の癖から本人が書いたものと判断されやすく、紙とペンがあればすぐに作成できるというメリットがあります。
一方、パソコンの場合は、字が読みやすく見本(テンプレート)を使えば、手早くきれいな契約書が作ることが可能で、同じものを何枚も簡単に印刷できるので「あげる人用」と「もらう人用」に2通作るのに便利というメリットがあります。
どちらの方法を選ぶにしても、最終的に二人が内容を確認し、納得した上で名前を書いて印鑑を押すことが大切です。
誤字や脱字がないように細心の注意を払い、特にお金の金額、日付、財産の詳しい情報については、何度も確認するようにしましょう。
贈与契約書にお金の金額や物の数などを書くときは、あとで書き換えられないように、そして誰が見てもはっきり分かるように書く必要があります。
あいまいな書き方や間違いがあると、あとで二人の間で「そんなつもりじゃなかった」と揉めたり、税務署から指摘を受けたりする可能性が高まります。
こうしたトラブルを避けるためには、漢数字(難しい方の漢字)を使って書き換えを防いだり、誤解が生じないように単位をはっきり書いたりすることが有効です。
また、書き方があいまいだと、税務署から不利なように解釈されたり、土地や建物の場合、広さなどの書き方が法務局の記録と違っていたりすると、名義変更の手続きがスムーズに進まない原因になるので注意しましょう。
契約書を作った後は、必ずあげる人ともらう人の二人で、数字や単位の書き方に間違いがないか、念入りに確認するようにしましょう。
贈与契約書に押す印鑑は、法律上は必ずしも実印である必要はなく、普段使っている簡単な印鑑(認印)でも贈与契約はちゃんとしたものとして成り立ちます。
しかし、特に次のような大切な契約の場合は、後々のトラブルを防ぎ、契約が本当に本人の意思で作られたものであることをより確かにするために、役所に登録した実印を使い、その実印が本物であることを証明する印鑑証明書も一緒に用意することが強くすすめられます。
土地や建物といった不動産をあげるための贈与契約書を作るときは、原則として収入印紙を貼って、消印(割印のようなもの)をする必要があります。
無償贈与の場合は原則として一律200円、負担付贈与の場合は取引金額に応じて印紙代が異なります。
印紙税法では、経済的な取引などに伴って作られる課税文書に対して、印紙税という税金を納めることを義務付けています。
収入印紙を貼り忘れたり、金額が足りなかったりした場合でも、贈与契約そのものが無効になるわけではありません。
しかし、税務調査などで見つかると、本来納めるべきだった印紙税の金額とその2倍にあたる金額を合わせた額(つまり3倍の額)の過怠税というペナルティが課される可能性があります。
収入印紙は契約書に貼り付けた後、契約した人や代理人の印鑑かサインで消印をします。
なお、現金や預貯金、株(株券が発行されていない場合)をあげるための贈与契約書には、基本的には収入印紙は必要ありません。
贈与契約書をきちんと作り、あとで困ったことにならないようにするためには、基本的な書き方のポイントに加えて、いくつか注意点があります。
贈与契約書の作成で失敗して後悔しないように、ポイントをしっかり押さえておきましょう。
不動産(土地や建物)をあげる際に作る贈与契約書は課税文書に該当するため、原則として収入印紙を貼る必要があります。
貼るべき収入印紙の額は、契約書に書かれた不動産の価額(契約金額)に応じて変動します。
収入印紙は契約書2通それぞれに貼付し、消印します。
これを怠ると過怠税が課されることがあります。
なお、現金や預貯金の贈与契約書には原則不要です。
未成年者(原則18歳未満)へ贈与する場合、贈与契約書には法定代理人(通常は親権者である父母)の同意と署名押印が必要です。
第五条
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
贈与契約も法律行為であり、法定代理人の同意がない場合、後から取り消される可能性があります。
契約書には、受贈者である未成年者本人に加えて、法定代理人が同意する旨を記載し、署名押印します。
これにより、契約の有効性を確保し、将来のトラブルを防ぎます。
複数回にわたり贈与をおこなう場合(例:暦年贈与)、贈与契約書は贈与の都度、毎回新たに作成するのが鉄則です。
「今後毎年〇〇万円を贈与する」といったひとつの契約(定期贈与契約)ではなく、各年の贈与が独立したものであることを示すためです。
これにより、税務署から「実質的には一括贈与(連年贈与)である」とみなされ、贈与の合計額に対して一度に贈与税が課されるリスクを回避できます。
手間はかかりますが、将来的な税務リスクを避け、スムーズな贈与を実現するために重要な原則です。
署名押印済みの贈与契約書は、贈与者と受贈者の双方が「原本」を1通ずつ保管します。
コピーではなく、実際に署名や押印がなされたオリジナルの契約書そのものです。
原本は証拠としての価値が最も高く、法的手続き(税務調査、不動産登記、訴訟等)で提出を求められることがあります。
コピーでは証拠力が劣り、改ざんの可能性も指摘されやすくなります。
贈与の事実は将来にわたり重要となるため、安易に処分せず大切に保管しましょう。
贈与契約書作成時には「110万円以下の贈与でも必要か」「現金手渡しはどうか」「国税庁にひな形はあるのか」「印紙はいくらかかるのか」など多くの疑問が生じます。
ここでは、そうした贈与契約書に関するよくある疑問についてわかりやすくお答えします。
結論として、年間110万円以下の贈与(暦年贈与)であっても、贈与契約書の作成を強く推奨します。
贈与税がかからなくても、贈与の事実を明確に証明するため、「名義預金」と疑われるリスクを回避するため(特に親から子・孫への口座入金時)、将来の相続トラブルを予防するため、相続開始前7年以内(2024年1月1日以降の贈与から少しずつ期間が変わります)の生前贈与は相続財産に加算されるというルールへの備えとして重要です。
契約書には贈与日、当事者、金額を明記し、可能なら銀行振込で記録を残しましょう。
複数回の贈与の場合は、都度作成が望ましいです。
はい、現金手渡しで贈与する場合でも、贈与契約書の作成を強く推奨します。
現金手渡しは銀行振込と異なり、客観的な資金移動の記録が残りにくいため、契約書が「贈与の意思と事実」を証明する主要な手段となり、以下のようなメリットがあります。
いいえ、国税庁や法務局のホームページで、そのまま使える贈与契約書の汎用的なひな形(テンプレート)は、通常ダウンロードできる形では提供されていません。
法律で決められた必ず書くべきこと(誰が誰に、何を、いつ、どのようにあげたか、そしてお互いが納得したかなど)が書かれていれば、どんな書き方や用紙でも構わないとされているためです。
また、贈与の内容は、あげる財産の種類(お金、土地、株など)や金額、あげる人ともらう人の関係、あげる目的などによってまったく違ってきます。
一般的なひとつの見本で全てのケースに対応するのは難しいため、もし贈与契約書の見本を探しているなら、この記事で紹介しているようなテンプレートを使ったり、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に作ってもらったり、相談してアドバイスをもらったりするのがよいでしょう。
大切なのは、見本をそのまま使うのではなく、ご自分の具体的な状況に合わせて内容を直したり書き加えたりして、法律的に問題がなく、後でトラブルにならないような契約書を作ることです。
不動産の贈与契約書は、印紙税法上の課税文書に該当するため、無償贈与の場合は原則一律200円、負担付贈与の場合は取引金額に応じた印紙代が必要です。
一方、現金、預貯金、株券を発行していない株式、自動車などの動産(不動産以外の物)をあげるための贈与契約書には、原則として収入印紙は不要です。
贈与契約書の作成は、ご自身でも可能ですが、不動産贈与や高額な贈与、複雑な事情がある場合は専門家への相談が賢明です。
不動産登記なら司法書士、税金問題なら税理士、法的な紛争予防や複雑な条件設定なら弁護士が適任です。
ご自身の状況に合わせて最適な専門家を選び、適切なサポートを受けることで、法的・税務的リスクを回避し、円満かつ確実な贈与を実現できます。
専門家は、あなたの意図する贈与をスムーズに完了させるための心強い味方です。
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