「今のうちから子どもや孫のためにお金を遺しておきたい」とお考えの場合、お金の貯め方には注意をしなければいけません。
というのも、親や祖父母が、子ども・孫名義の口座を開設して、そこにお金を入金するという方法で貯蓄をし続けると、名義預金の疑いをかけられる危険性があるからです。
名義預金として扱われると、被相続人が死亡した時点で相続財産に組み込まれるので、相続税が発生します。
そこで本記事では、「名義預金の疑いなく子どもや孫にお金を用意したい」「税務調査で名義預金の指摘を受けて困っている」という方のために、以下の事項についてわかりやすく解説します。
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名義預金などについて少しでも不安を抱いている方は、できるだけ早いタイミングで信頼できる専門家までお問い合わせください。
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人が異なる預金のことです。
一例として、親が子ども名義の口座に預金をしていた場合、祖父母が孫や子ども名義の口座にお金を貯めていた場合、無収入の専業主婦が自分名義の口座で夫の給料を原資として家計管理をしていた場合などが挙げられます。
相続税の対象は、被相続人の財産です。
名義預金が被相続人の財産であると判断されると、名義預金が被相続人の財産に組み込まれて、相続税の課税対象として扱われます。
たとえば親が子ども名義の口座に貯蓄をしていた場合、口座の名義人は子どもですが、口座内の預金を実質的に支出したのは親なので、税務調査で名義預金だと指摘される可能性が高いでしょう。
そして、親が死亡したときに当該名義預金を被相続人の財産として申告していなければ、追徴などのペナルティが課されるリスクに晒されます。
名義預金は、被相続人が他人名義の口座を使って自分のお金を管理している状況でしかありません。
たとえば、親が数十年前から子ども名義の口座にお金を入金し続けていた場合、法定申告期限の翌日から6年後という贈与税の時効は適用されません。
そして、被相続人死亡時に名義預金全てが相続税の課税対象になります。
別人名義の口座が被相続人の名義預金に該当することを理由に相続税の課税対象に含まれるかどうかは、個別の具体的な事情によって判断されます。
ここからは、名義預金と判断される基準について解説します。
名義預金の該当性が判断されるときに重視されるのは、「誰がお金を出したのか、原資はどこか」という点です。
別人名義の口座に入金していた人物が被相続人の場合、預貯金は実質的に被相続人の金銭であると評価できるので、名義預金であると判断される可能性が高いと考えられます。
たとえば、毎月夫が稼いだお金を専業主婦である妻の口座で管理していた場合、夫が亡くなったときには、妻名義の口座の預貯金も相続税の課税対象として扱われます。
被相続人が別人名義の預貯金口座を管理していたと認められる事情が存在する場合、名義預金と判断される傾向があります。
たとえば、別人名義の口座の通帳や印鑑を被相続人が所持していると、その口座の名義人自身は当該口座の出入金を管理できない状況だといえるでしょう。
また、別人名義の口座開設時のお届印が名義人のものではなく、被相続人の印鑑が登録されているときにも名義預金の疑いをかけられる可能性が高いと考えられます。
別人口座の名義人が預貯金の存在自体を認識していないときも、名義預金の疑いをかけられることがあります。
たとえば、祖父母が孫の将来のために孫名義の口座を作って長年貯蓄をしていた場合、この口座の存在を孫自身が知らなければ、名義預金と判断されて祖父母が亡くなった時点で相続税の対象に含まれるでしょう。
別人口座への入金が生前贈与だと評価されると、名義預金には該当しません。
つまり、別人口座の預貯金について生前贈与がなされたという明確な証拠が存在しない限り、名義預金の疑いをかけられる可能性が高いということです。
一例として、被相続人と口座名義人との間で生前に贈与契約書を締結していなかった場合や、年間110万円を超える入金があったときに贈与税の申告納税をしていなかった場合は、生前贈与の証拠がないため、相続税の課税対象に含まれるでしょう。
税務署は徴税業務について広範な裁量を与えられているので、いつ誰に対して税務調査が入るかわかりません。
そして、税務署には強力な調査権限があるので、「どこの金融機関に口座を開設しているのか」「その口座で過去数年間どのような取引が存在するのか」がバレる可能性が限りなく高いでしょう。
また、名義預金の疑いがかかったときに、相続人などの関係者に直接事情聴取が実施されることもあります。
よほど確たる証拠を提示できなければ、追徴課税などのリスクがあります。
以上を踏まえると、名義預金の疑いをかけられないこと、名義預金の疑いをかけられたときに備えて事前に準備をしておくことが重要だと考えられます。
さかのぼって追徴されるリスク軽減を目指すなら、弁護士や税理士の初回相談無料などの機会を活用して、相続税対策を進めておくことを強くおすすめします。
税務調査で「名義預金」だと判断されると、相続税の申告・納付についてさらなる負担が生じます。
税務署から名義預金を指摘されると、修正申告をしなければいけません。
相続税の修正申告とは、一度済ませたはずの相続税の申告内容に過誤があったときに、期限後に申告をやり直す手続きのことです。
なお、修正申告に似たものとして「訂正申告」という方法が存在します。
訂正申告は、相続税の申告期限内に正しい税額に調整する方法のことです。
申告期限前であれば訂正申告、申告期限後であれば「修正申告」と区別されます。
名義預金が問題になる事案では、修正申告によるケースが大半であると考えられます。
税務署から名義預金の指摘を受けて修正申告をするときには、不足していた納税額に加えて、以下4つの罰金が課される可能性があります(追徴課税)。
名義預金がバレたときの状況や、その後の手続きの経過によってどのようなペナルティが科されるかは異なるため注意しましょう。
過少申告加算税とは、相続税の申告期限までに申告・納付手続きを済ませていたものの、税務調査などによって納税額が少なかったことが発覚したときに課される追徴課税のことです。
税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は発生しないのが原則です。
過少申告加算税の計算方法は、以下のとおりです。
たとえば、本来納付するべき相続税額が100万円だったにもかかわらず、実際には80万円分しか申告していなかったとき、過少申告加算税を含んだ支払い総額は以下のように導かれます。
また、本来納付するべき相続税額が100万円だった場合において実際には10万円分しか申告していなかったときの追徴課税額は、以下のとおりです。
税務調査が入る前に名義預金のリスクに気が付いて自ら修正申告をすれば、実務上これらの追徴課税を回避できる可能性が高いと考えられます。
相続が発生したときの預貯金口座の扱いについて少しでも不安がある方は、可能な限り早い段階で弁護士や税理士などの専門家まで相談してください。
無申告加算税とは、相続税の納付期限までに申告手続きをしておらず、税務調査によって相続税の滞納が発覚したときに課される追徴課税のことです。
過少申告加算税との違いは、納付期限までに自主的に申告手続きをしていたかどうかという点にあります。
無申告加算税の計算方法は、以下のとおりです。
※令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する相続税(令和5年分以降)については、50万円超300万円以下の部分に対しては超過金額の20%相当額、300万円超の部分に対しては超過金額の30%相当額に変更されます。
たとえば、相続税の納付期限までに申告・納付手続きを履践しておらず、相続税40万円分の滞納が明らかになった場合、無申告加算税を含んだ支払い総額は以下のように導かれます。
また、相続税の納付期限までに申告・納付手続きを履践しておらず、相続税120万円分の滞納が明らかになった場合、追徴課税額は以下のとおりです。
相続税の納付期限までに申告をしていないという点に悪質性が認められるため、無申告加算税は過少申告加算税よりも重いペナルティが科されます。
そのため、過去に親などから財産を相続したのにもかかわらず、相続税に関する諸手続きを一切していないという方は、名義預金以外の点でも問題が生じる可能性があるので、速やかに相続問題に強い弁護士・税理士に相談してください。
なお、税務調査を受ける前に自主的に期限後申告を済ませたときには、無申告加算税の算定税率が5%まで軽減されます。
さらに、相続税の期限後申告が以下の要件を満たすときには無申告加算税が課されることはなく、本来納付するべき相続税額だけを支払います。
重加算税とは、過少申告や無申告について悪質性が認められるときに課される追徴課税のことです。
相続税について重加算税の対象になり得る具体例として、以下のようなケースが挙げられます。
重加算税率は、次のルールに則ります。
原則 |
期限後申告などがあった日の前5年以内に同じ税目に対して無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合 |
|
---|---|---|
過少申告加算税に代えて課される重加算税 |
35% |
45% |
無申告加算税に代えて課される重加算税 |
40% |
50% |
延滞税とは、相続税の申告・納付期限までに適法な納付手続きが履践されない場合に、延滞日数に応じて発生する利息のことです。
たとえば、法定納期限までに相続税を完納しないとき、修正申告によって追徴される相続税が発生したときには、滞納分の相続税や上述の追徴課税額に加えて、延滞税の支払いが発生します。
ただし、延滞税は本税を対象に課されるものであり、加算税には課されません。
延滞税の計算方法は以下のとおりです。
※延滞税の割合A:「年利率7.3%」と「延滞税特例基準割合 + 1%(2.4%)」のいずれか低い割合
※延滞税の割合B:「年利率14.6%」と「延滞税特例基準割合 + 7.3%(8.7%)」のいずれか低い割合
※これらは令和3年1月1日以後の期間に対応する延滞税の割合です。年度によって適用される延滞税率は異なるので注意してください。
相続税の滞納期間が長期化するほど延滞税額は増え続けるため、名義預金が原因で税務署からチェックが入ったときには、可能な限り早いタイミングで弁護士・税理士に相談し、修正申告などの準備を進めてください。
名義預金は税務署に摘発される可能性が高いので、相続人が税務署から追及されるリスクを回避・軽減するには、生前から相続税対策をしておく必要があります。
ここからは、名義預金と判断されないために役立つ4つの対策について解説します。
名義預金の指摘を回避するには、他人名義の口座の金銭が贈与契約に基づいて入金されたことを示すのが重要です。
贈与契約が存在する場合には、生前に被相続人から相続人に財産が移転していると扱われるため、被相続人が死亡したとしても相続財産に含まれることはありません。
贈与契約は、当事者の合意の意思表示のみによって成立するため口頭でも成立しますが、名義預金の疑いを回避するには、書面で贈与契約書を交わしておくことを強くおすすめします。
というのも、税務調査では「贈与契約の証拠がないと名義預金として相続税の課税対象に含める」という運用が採られているからです。
贈与契約書のフォーマットに決まりはなく、手書きでもPCのどちらで作成しても構いません。
ただし、税務署に対して贈与契約の成立を主張するためには、以下のポイントに留意した贈与契約書を作成する必要があるでしょう。
このように、税務署対策という文脈で贈与契約書を作成するときにはいくつもの注意点を踏まえる必要があるので、必ず弁護士・税理士まで相談してください。
他人名義の口座を被相続人が実質的に管理している状態だと、名義預金と判断される可能性が高くなります。
そのため、名義預金の疑いを避けるには、名義人自身が当該預貯金口座を自由に使える状態にしておくことが重要です。
また、口座開設時の印鑑も、被相続人と相続人とで別のものを利用するようにしましょう。
名義預金の疑いを晴らすには、他人名義の口座への入金が生前贈与であると主張できることが重要です。
他人名義の口座に通帳を利用して直接現金を入金するのではなく、銀行振込で送金しておけば、取引履歴が残るので贈与の証拠として活用しやすいでしょう。
毎年1月1日から12月31日までの間の贈与の合計額が110万円を超えるときには、贈与税の課税対象になります。
つまり、他人名義の預貯金口座に被相続人が入金をしていたとしても、110万円を超える場合に適切に贈与税の申告・納付手続きを履践していれば、被相続人の死亡後に名義預金の疑いをかけられることはないでしょう。
贈与税の申告期限は、翌年の2月1日~3月15日です。
また、納付期限は翌年3月15日に設定されています。
贈与税の申告期限に間に合わないと、滞納分の税金に対して延滞税や無申告加算税などのペナルティが科されるので注意してください。
最後に、名義預金についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
名義預金として扱われる他人名義の口座を使った場合の取扱いは、誰がお金を使い込んだかによって異なります。
まず、他人名義の口座名義人自身がお金を使ったときには、贈与が有効に成立していると判断されるので、被相続人が死亡した段階で当該預貯金が相続財産に組み込まれることはありません。
ただし、贈与税の基礎控除額である年間110万円を超える贈与があったときには、贈与税の申告・納付が必要になるので注意しましょう。
次に、他人名義の口座預貯金を贈与者自身が使用した場合は名義預金の解消として扱われるため、贈与税が発生することはありません。
なお、贈与者が死亡したときは相続税の課税対象になります。
たとえ何十年ものあいだ、口座に入金し続けていたとしても、名義預金は生前贈与が成立しないため、贈与税の時効も適用されません。
名義預金とみなされてしまった場合、全てが相続税の課税対象となってしまいます。
税務署からの指摘を受けないためには、生前贈与であったことを示す客観的な証拠を揃える必要があります。
当事者の判断だけでは相続人が高額の納税義務を課されるリスクがあるので、相続人の経済的負担を減らしたいと考えているのであれば、必ず弁護士・税理士などの専門家の意見を参考にしてください。
税務調査のタイミングで名義預金の指摘を受けると、相続税の申告漏れがあったことを理由に追徴課税を強いられる可能性があります。
延滞金や加算税は厳しい年利率で算定されるので、相続人の家計が逼迫しかねないでしょう。
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