ホーム > 相続コラム > 遺産分割 > 遺産分割が未了のまま先に進まない|生まれる問題とその対処方法
公開日:2022.6.2  更新日:2022.6.16

遺産分割が未了のまま先に進まない|生まれる問題とその対処方法

六甲法律事務所
松田 昌明
監修記事
Miryo
注目 遺産分割に関する弁護士相談をご検討中の方へ
Person
電話・メールOK
夜間・休日も対応
累計相談数
9万件超
遺産分割が得意な
弁護士から探せる
遺産分割が得意な
弁護士を探す

遺産分割を未了のままにしておくことには、デメリットがあります。

被相続人が遺言を残さずに死亡した場合、相続人だけで遺産分割のための協議をしなければなりません。

しかしこの話し合いは、ときに心情的な対立を生み、長期化することも珍しくありません。

遺産分割協議自体に期限はありませんが、長期化することで税制優遇を受けられなくなったり、協議している間に新たな問題が発生したりすることもあります。

この記事では、遺産分割を早期に解決する方法や、分割協議に時間がかかる場合にとるべき対策について解説します。

遺産分割が未了のデメリット

遺産分割が未了であることのデメリットは主に以下の2つです。

  • 未分割遺産の管理や相続関係が複雑化
  • 税制優遇が受けられない

具体的には、以下のような場面でデメリットが大きくなります。

未分割遺産の管理、処分、有効活用に支障

遺産分割で誰のものかを確定していない不動産などの遺産は、相続人全員の共有財産となります(民法898条)。

遺産分割前の共有財産を管理、処分する場合には、民法上の決まりにより、他の相続人の意向を確認することが必要です。

未分割遺産の管理

共有財産の管理は、各相続人が単独でできる「保存行為」と、相続人による多数決で決める「管理行為」があります。

保存行為とは家の雨漏り修繕や草刈りなど、遺産の現状を維持・向上させるための行為です。

管理行為とは共有財産を利用または改良することです。

不動産の場合、誰かに貸したりするためには相続人の法定相続分に応じた持ち分価格の過半数の同意が必要となります。

未分割遺産の処分

共有財産を処分する行為は、民法上は「変更行為」となり、相続人全員の同意が必要です(民法251条)。

不動産を売却してお金に換えたり、駐車場として有効利用したりする場合には、相続人全員の同意を得なければなりません。

未分割遺産の使用

共有財産を自分の持ち分を超えて使用する場合は、超えた部分の使用対価を他の相続人に支払う義務があります(民法249条)。

たとえば亡父名義の不動産に相続人Aが住んでいる場合、他の相続人に対して持ち分に応じた対価を支払う義務があります(最判平12.4.7)。

しかし、他の相続人がAに立ち退きを請求することは現状を変更するため「処分行為」(民法251条)となり、相続人全員の同意が必要です(最判昭41.5.19)。

ただ、自分の持ち分を超えて使用する場合は、相続人Aには善良な管理者の注意力を持って共有財産を管理する義務があり(善管注意義務)、注意不足で共有財産に損害が発生したら、他の相続人から損害賠償請求をされる可能性があります。

数次相続になり、さらに複雑に

数次相続が発生すると、遺産分割協議がさらに困難になります。

数次相続とは、相続手続きが終わらないうちに相続人が死亡し、新たな相続が発生することです。

遺産分割が終わらないうちに他の相続が始まってしまうと、相続人が増えるうえにお互いの関係が希薄になるため、遺産分割がさらに難しくなります。

相続税の問題

遺産分割が未了の場合に起こる2つめのデメリットは、相続税に関することです。

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です(相続税法第27条)。

遺産分割を未了のままにしておくと、相続税の優遇措置を受けることができなくなります。

配偶者の税額軽減の特例の適用が受けられない。

配偶者の税額軽減の特例とは、配偶者の相続分が以下の要件を満たす場合に相続税が免除される制度です。

  • 1億6,000万円まで
  • 配偶者の法定相続分相当

この特例は残された配偶者の生活を保障するための優遇措置ですが、期限内に相続税の申告が終わっていなければ適用を受けることができません。

小規模宅地の評価減の特例が受けられない

相続税を計算する際に、以下の条件を満たす宅地に限り、評価額を最大で80%減額できます。

  • 被相続人が居住していた宅地
  • 被相続人が事業用で使っていた宅地
  • 貸していた被相続人名義の宅地

不動産の評価額が減額されると、評価額を基準に算定される相続税も減額されます。

税金が払えないために土地を失くす状況に追い込まれないようにこの特例制度が設けられました。

しかし、この特例を利用するためには、期限内に遺産分割を終えていなければなりません。

物納することができない

相続税は現金納付が基本ですが、現金納付ができないときは物納が許可されます。

これは、相続財産が不動産や動産ばかりで分割が難しいときの救済手段として設定されています。

ただし、物納が許されるには相続税の申告期間内に物納申請をすることが必須です。

農地の納税猶予の特例の適用が受けられない

農地の納税猶予特例は、被相続人が営んでいた農業を引き継ぐ場合に適用され、農地にかかる相続税の納税が猶予されます。

この適用を受けるためには相続税の申告期限内に申請しなければなりません。

この特例は、農地を引き継ぐ際に莫大な相続税がかかり、農家離れが進んでしまうことを防ぐために制定された優遇措置です。

非上場株式の納税猶予の特例の適用が受けられない

中小企業の経営者が亡くなったとき、事業を相続人が受け継ぐ場合には相続税が猶予または免除されます。

相続開始後8ヶ月以内に経済産業大臣の認定を受け、相続税の申告期限内に提出することが条件です。

この特例措置は2027年12月31日までに発生した相続に適用されます。

期限内に遺産相続が未了になるときの相続税の申告方法

以上のように、申告期限内に遺産分割が未了だと、遺産管理が煩雑になり、相続税法上の優遇措置が受けられなくなるというデメリットがあります。

遺産分割が間に合わない事情がある場合には、あらかじめ申請しておくことで、後からでも税法上の優遇措置を受けることができます。

「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する

遺産分割が期限内にできない場合は、いったん法定相続分で相続したことにして相続税の申告と納付をしましょう。

そして、遺産分割協議が成立した時点で修正申告をし、還付請求または追納をします。

未分割のまま仮の申告をすると相続税の特例が受けられません。

しかし、同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくと、後日協議がまとまり修正申告する際に、配偶者の特例と小規模宅地等の特例のみ遡って適用を受けることができます。

遡って特例を受けるには、3年以内に協議をまとめて4ヶ月以内に修正申告をする必要があります。

「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する

税務署の承認を受けることができれば、3年経過しても遺産分割協議がまとまらない場合でも、特例の適用をさらに延長することができます。

税務署の承認を受けるためには、3年経過してから2ヶ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出しなければなりません。

やむを得ない事情とは、裁判で争っている場合や、遺言によって一定期間遺産分割することを禁止されている場合などです。

やむを得ない事情が解消してから4ヵ月以内に修正申告をすれば、配偶者の特例と小規模宅地等の優遇措置が適用されます。

進まない遺産分割をまとめるためには|弁護士に相談するメリット

遺産分割を困難にする大きな原因としては、手続きが煩雑であることと、相続人同士に感情的な対立が生まれやすいことの2点が挙げられます。

どちらも弁護士に依頼することで解決できる問題です。

専門的な手続きを活用して、遺産分割をスムーズに進めてくれる

相続人同士で話がまとまらない場合でも、弁護士に依頼することで遺産分割調停・審判など法的手続きを活用してスムーズに遺産分割を進めることができます。

調停では論点整理や主張書面に沿った証拠収集が重要です。調停での話し合いがまとまらずに審判に移行すると、主張書面や証拠書類が最終的な審判を下すうえでの重要な材料となります。

面倒な手続きを代行してくれる

相続はやるべきことが多く、面倒な手続きも多いです。

しかも、手続きの中には期限付きのものもあります。

弁護士に依頼すれば、期限のあるものから逆算して手続きを進めることができ、また、手続きの漏れもなくなることでしょう。

遠方に住んでいる相続人がいたとしても、弁護士が拠点となって必要書類のやりとりや協議書の作成をまとめてくれます。

精神的ストレスが軽減できる

遺産分割が進まない原因には、相続人同士の心情的な対立もあるでしょう。

対立している場合、お互いに特別受益や寄与分などを主張しがちになりますが、その論点を裁判で争うと、司法判断が出るまでかなりの時間がかかります。

心情的に対立する相手と長期間話し合いを続けることは、精神的に大きなストレスになります。

弁護士に依頼することで、相手と直接交渉をしなくてよくなるため、精神的なストレスは大きく軽減されるでしょう。

また、話し合いが長期化した場合でも、法律的に妥当な落としどころを探ってまとめることも可能です。

さいごに|遺産分割が未了の時は弁護士に相談!

遺産分割は、困難なものほど弁護士に相談しましょう。

弁護士に依頼することで、遺産分割が長期化することを避け、スムーズに手続きを進めることができます。

遺産分割を相続税の申告期限までに終わらせることは、税制の優遇を受けるためにも大変重要です。

税法上の優遇措置は、相続人が大きな相続税負担を負うことの救済手段として設けられています。

そのため、優遇措置が使えなければ、相続人の税負担は過酷なものになってしまうでしょう。

相続業務に注力している弁護士は、相続税の知識も豊富です。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、遺産分割が未了で困った場合には相談だけでもしてみましょう。

参考文献
野々山哲郎、仲隆、浦岡由美子「Q&A 未分割遺産の管理・処分をめぐる実務」新日本法規出版株式会社

 

【最短30秒】ユーザーアンケートに回答する

 

 
 相続弁護士ナビでは、よりよいコンテンツを提供するためにアクセスいただいたユーザーの声を募集しております。
 8問選択式の簡単なアンケートですので、ぜひご協力ください。
 
アンケートに回答する
 
東京
神奈川
千葉
埼玉
大阪
京都
Office info 2691 w220 弁護士 松岡太一郎(あさやけ法律事務所)

【本郷三丁目駅】【弁護士直通電話】【安心の料金設定】 遺産分割、遺留分、遺言、成年後見人、相続問題はお任せください。経験豊富、交渉が得意な弁護士が初回無料相談にて解決プランをご提示いたします。

事務所詳細を見る
Office info 202012231601 31191 w220 【不動産の相続なら】岡本政明法律事務所

◆創業30年上の歴史ある事務所◆初回面談無料◆不動産の相続/高額な遺産による相続争い/事業承継などでお困りならお任せを!長年、様々な相続トラブルに注力してきた当事務所が、全力で対応し、解決へ導きます

事務所詳細を見る
Office info 202102172123 25561 w220 【新宿本店】弁護士法人東京新宿法律事務所

【遺産分割・遺留分請求でトラブルの方】無料面談をご活用ください。身近にご相談いただける法律事務所を目指しています。

事務所詳細を見る
Office info 202110131407 26831 w220 弁護士法人はるかぜ総合法律事務所

24時間電話相談受付中●外出が難しい方へ:出張相談も可能です●書籍執筆多数●休日対応可●遺産の分け方での対立、兄弟の遺産独り占めなど、相続トラブルはお任せください。調査段階からでも対応可能です

事務所詳細を見る
東京都の弁護士一覧はこちら
弁護士費用をカバーする保険「ベンナビ弁護士保険」
弁護士費用を補償

親族・親戚間の遺産争い・兄弟間での遺留分の争い・相続放棄による争い・遺言書に起因する争いなど、遺産相続トラブルが発生した際に、専門家に相談したくても費用がネックになり、自分で解決しようとして余計に問題がこじれてしまうというケースが多くあります。

いざという時のための保険が弁護士費用保険です。
遺産相続トラブルに限らず、労働問題や離婚トラブル、交通事故など様々な法律トラブルでも利用可能です

弁護士費用保険について詳しく見る ≫

KL2021・OD・157

この記事の監修者
六甲法律事務所
松田 昌明 (兵庫県弁護士会)
財産の取り分を巡る紛争/相続放棄/遺言書の作成など幅広い相続問題に対応します。

遺産分割に関する新着コラム

遺産分割に関する人気コラム

遺産分割の関連コラム

相続トラブルに巻き込まれてしまった方へ

何かと相続トラブルに発展するのは遺産の割合に不満がある・納得いかないケースです。

例えば、下記などが該当します。

・思ったより相続される遺産が少なかった
・揉めたくないので、泣く泣く遺産の配分に納得した
・遺言書に他の兄弟姉妹に遺産を多く渡す旨が書かれていた

遺産相続では法定相続分といって、民法で定められている割合の通りに遺産を公平に分割しましょうという一応の定めがありますが、生前に被相続人(亡くなった人)の介護をしていた、被相続人の事業を手伝っていれば寄与分という制度で多くの財産をもらう権利があります。

また、他の相続人が生前に財産を多く受け取っていたのであれば、遺産分割協議の際に相続財産を減らすこともできます。ただ、こういったルールは相続人全員が知っているわけではありませんから、あなたが主張しても聞く耳をもたれない可能性もあります。

その場合、弁護士に相談することで法的な観点から主張をしてくれますし、トラブルになっている場合はその仲裁に一役買ってくれるでしょう。

当サイトでは、無料相談(一部)を行っている弁護士事務所を数多く掲載しています。

まずは下記よりお近くの弁護士を探して相談してみましょう。

SNSで記事をシェアする

相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
遺産分割

遺産分割をもっと知りたいあなたに

Icon search white 相談内容から弁護士を探す
Category souzokutrouble normal Category tsukaikomi normal Category isanbunkatsu normal
Category iryubun normal Category souzokuhouki normal Category yuigon normal
Category daisyusouzoku normal Category seinenkouken normal Category fudosan normal
Category souzokunin normal Category souzokuzaisan normal Category souzokutouki normal
Category shintaku normal Category jigyoushoukei normal
Sidebar writer recruit