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農地とは、簡単に言えば農業を営む際に利用される土地のことで、耕作、採草、放牧といった用途に用いられる土地のことを指しています。
そして、農地法の適用を受ける農地については、抵当権の設定や売却など「権利の設定や移転」について、原則として市区町村に設置された農業委員会(または都道府県知事等)の許可を得ることが必要になっています。
さて、農地にも通常の土地のように固定資産税などの税金がかかるほか、相続による取得であれば相続税も課税されることになりますが、一定の要件を満たせば相続税の納税猶予の特例を適用できるようになります。
今回は、農地にかかる相続税について、納税猶予の特例の内容や適用方法についてご紹介いたします。
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農地とは、耕作や養畜のための採草、家畜の放牧などに利用される土地のことをいい、ざっくりと言えば農業を営む際に利用する土地です。
農地法の適用を受ける農地は、権利の設定や移転の際に農業委員会等の許可を受ける必要があるのに加え、「農地の所有」「農地の権利の移転」「農地の賃貸」「農地の相続・贈与による取得」のそれぞれの場合に、一定の税金が課されることになっています。
参考:農地にかかる税金
課税原因 |
かかる税金 |
計算式 |
|
農地の所有 |
固定資産税 |
評価額×1.4% |
|
都市計画税 |
評価額×0.3%以下 |
||
農地の権利の移転 |
売却 |
所得税または法人税 |
譲渡益×15% |
住民税 |
譲渡益×5% |
||
交換 |
所得税または法人税 |
譲渡益×15% |
|
住民税 |
譲渡益×5% |
||
登録免許税 |
固定資産課税台帳価格×2% |
||
不動産取得税 |
固定資産課税台帳価格×4% |
||
農地の賃貸 |
所得税・住民税 |
不動産取得として他の所得と合算して計算する |
|
農地の取得 |
購入による取得 |
登録免許税 |
固定資産課税台帳価格×2% |
不動産取得税 |
固定資産課税台帳価格×4% |
||
相続による取得 |
相続税 |
相続財産額×10~55% |
|
登録免許税 |
固定資産課税台帳価格×0.4% |
||
贈与による取得 |
贈与税 |
課税価格×10~55% |
|
登録免許税 |
固定資産課税台帳価格×2% |
||
不動産取得税 |
固定資産課税台帳価格×4% |
まずは農地の相続の際に必要な手続きや、農地にかかる相続税の基礎知識をご紹介いたします。
冒頭で述べたように、農地の権利を移転する際には原則として市区町村に設置された農業委員会(または都道府県知事等)の許可を受ける必要がありますが、相続の場合は許可が不要になるケースがある一方で、届出をしなければならないケースがあります。
農地を相続する際には、主に以下の手順で手続きを進めることになります。
被相続人が死亡し相続が始まると、最初に被相続人が遺言を残していた場合にはその内容を確認し(検認等の手続き)、遺言がない場合には相続人員で遺産分割協議をすることになります。
遺産分割協議自体に期限はありませんが、相続方法の選択や遺留分の請求、相続税の申告・納税等には決められた期限があるので、多くの場合は葬儀等が済み遺族が落ち着いた時点から遺産分割協議を始めることになります。
遺産分割協議等により農地を取得する人が決まったら、農業委員会への手続きを確認することになります。
農地の権利を移転させる場合には農業委員会等の許可が必要とお伝えしましたが、相続の場合は農地を新規に取得したわけではなく、「被相続人からの承継」という性質を持つことから、相続人が相続によって農地を取得する場合に限って、農業委員会の許可が不要ということになっています。
ただ、相続と言っても相続人以外の人が遺贈によって農地を取得した場合には、原則どおり農業委員会等の許可が必要で、例えば祖父が孫に農地を遺贈した場合には、農業委員会等の許可を得なければなりません。
もっとも、相続人が農地を取得した場合でも、農業委員会への届出は必要で、相続開始から10ヶ月以内にこの届出をしなければ、10万円以下の罰金が課される可能性があります。
したがって、農地を取得する人が決まったら、必ず農業委員会等への手続きが必要と言えるでしょう。
農業委員会への手続きと並行して、相続税の申告・納税手続きも進めたほうが無難です。こちらの完了期限も相続開始から10ヶ月以内となっており、過ぎてしまうと延滞税や加算税といったペナルティの課税がありますので、「相続税がかかるかどうか」と「相続税の申告が必要かどうか」について、必ず確認しましょう。
なお、相続税には基礎控除が設けられており、相続財産が【3,000万円+600万円×法定相続人の数】の額で収まっていれば、基本的には相続税がかからないようになっています。
しかし、配偶者や未成年者の控除、農地相続にかかる納税猶予の特例などを利用する場合には、納付額が0円であっても申告手続きが必須になりますので、「相続税がかからない=申告が必要ない」と安直に考えるのは止めましょう。
以上が農地相続の基本的な流れになりますが、相続税の申告について、詳しくは「相続税の申告手続きの手引き|知らないと損する控除制度まとめ」もご覧ください。
農地も不動産の一種なので、相続税評価の際には農地の属性に応じた計算式が決まっています。
相続税法上、農地は以下の4種類に分類され、それぞれに応じた評価・計算方式が採られています。
農地の分類 |
評価方式 |
純農地 |
倍率方式 (固定資産税評価額×路線価に基づく一定の倍率) |
中間農地 |
|
市街地周辺農地 |
その農地が市街地農家であるとした場合の80%に相当する金額 |
市街地農地 |
宅地比準方式または倍率方式
★宅地批准方式:(その農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額―1㎡あたりの造成費の金額)×地積=市街地農地の評価額 |
純農地および中間農地の場合は、固定資産税評価額をベースに比較的計算しやすい倍率方式が採られており、市街地農地および市街地周辺農地の場合には、相続税の申告の際に「市街地農地等の評価証明書」の添付が必要になります。
農地の相続税評価が難しい場合には、税理士等の専門家に相談したり、税務署でわからない部分を尋ねるのがおすすめです。
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相続税を計算する際には、次の3つの手順を踏むことになります。
まずは、相続税がかかる遺産の総額を算出していきます。
相続税がかかる遺産としては、
等が考えられ、これらの合計から相続債務(借金や葬式費用など)と非課税財産を控除します。
そして、それらの価額から基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引き、相続税がかかる遺産の総額を計算します。
次に、①で求めた金額について各相続人が仮に法定相続分で相続したものとして相続税の税率を掛け合わせていきます。このとき、1,000円未満の端数については切り捨てて問題ありません。
各人の仮の相続税額が計算し終わったら、それらを合計して相続税の総額を算出します。
最後に、各相続人が実際に取得した財産の過額に応じて、相続税の総額を按分していきます。人によっては各種控除が利用できる場合がありますので、実際に支払うべき相続税額が分かったら控除制度を確認し、控除できるものは控除したうえで相続税の納付を行います。
なお、詳しくは「【自動計算機付】相続税の計算手順と税額を抑える為のポイント4つ」の記事でも解説しておりますので、もっと知りたい方はこちらもご参照くださいね。
農業を営んでいた被相続人から一定の農地等を相続や遺贈によって取得した相続人は、その後も引き続き農業を営むのであれば、一定の要件を満たすことで「農地等についての相続税の納税猶予の特例」を利用することができます。
農地相続の際に有利な制度なので、ここで詳しくご紹介いたします。
「農地等についての相続税の納税猶予の特例」とは、農業を営んでいた(または特定貸付を行っていた)被相続人から相続人等が農地等を相続(または遺贈)によって取得し、その後も引き続き農業や特定貸付を営む場合には、一定の要件を満たすことで相続税の納税猶予が受けられる制度です。
この特例の特徴としては、基本的な相続税の納税猶予のほか、一定の場合に猶予された納税が免除されることが挙げられます。ただし、特例を利用する際には納税猶予額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があり、特例の適用を受けるためには相続税の申告手続きもしなければなりません。
なお、納税免除の要件としては、平成21年改正によって以下のような内容に変わっていますので、併せて確認することをおすすめします。
納税免除の要件 |
納税が免除される日 |
①特例の適用を受けた相続人が死亡した場合 |
その相続人が死亡した日 |
②特例の適用を受けた相続人であって特定貸付けを行っていない人が、特例の適用を受けた農地等の全部を租税特別措置法70条の4に基づいて農業の後継者に生前一括贈与をした場合 (子どもなどの後継者に農業経営を任せるため農地等を一括贈与した場合) |
一括贈与をした日 |
③特例の適用を受ける農地等のうち都市営農農地等を有しない相続人であって、この特例の適用を受けている人が、相続税の申告期限から20年間農業を継続した場合(※この場合に免除されるのは市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額部分のみ) |
相続税の申告期限から20年を経過した日 |
※③の要件については、特例の適用を受ける農地等の種類によって20年間で済む場合と、終身継続が求められる場合とがあります。このあたりはやや複雑なので、免除が受けられるかどうか知りたい場合には、税理士等に相談することをおすすめします。
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農地等についての相続税の納税猶予の特例を受けるためには、「被相続人の要件」「相続人等の要件」「農地等の要件」のそれぞれを満たすことが必要になります。
なお、生前贈与された農地等で、相続時精算課税制度の適用を受けている場合には、この特例の適用を受けることはできませんのでご注意ください。
「農地等についての相続税の納税猶予の特例」を受けるためには、その農地を取得する人が決まっていなければなりません。
したがって、「農地の取得者の確定」と「相続税の申告手続き」を行うとともに、特例の適用後は「継続届出」をする必要があります。
農地等の特例を適用したい農地については、相続税の申告期限までにその取得者が確定していることが大前提になります。すなわち、その農地についての遺産分割協議が住んでいるか、生前一括贈与によってその農地を取得者が既に取得済みである必要があるのです。
遺産分割協議は一部の財産についてのみ先に行うことも可能なので、相続人間で協議がまとまらない場合には、とりあえず農地についての遺産分割を済ませて特例の適用を受けたほうが無難かもしれません。
なお、配偶者控除や小規模宅地等の特例に関しては、申告時点で未分割であっても「3年以内の分割見込書」を提出することで、後から特例の適用を受けることができますが、農地等の特例に関してはこのような規定がないので、確実に特例を利用するためには申告期限までの遺産分割を徹底するのが良いかと思います。
相続税の申告は、相続開始から10ヶ月以内に行うこととされており、この期限は申告期限が土日祝日等の場合以外で伸びることがありません。
農地等の特例を利用するためには、申告期限までに申告書を提出し、猶予される税額と利子税の額に見合うだけの担保を提供する必要がありますので、以下のような書類を漏れなく揃えることになります。
農地等についての相続税の納税猶予の特例 |
|
相続税の納税猶予に関する適格者証明書 |
|
納税猶予額及び利子税の額に見合う担保についての担保提供書・担保関係書類
|
|
一定の農地や準農地の場合はその旨の市区町村長の証明書 |
|
特定貸付けを大なっている農地または採草放牧地の場合は「特定貸付けに関する届出書」およびその添付書類 |
相続税の申告の際に書類等に不備があると、訂正に時間を取られたり、それによって申告期限・納付期限を超えてしまうと利子税が課されてしまいますので、入念な準備が必要といえます。
もしも申告書の作成に不安がある場合には、税理士や税務署に相談することをおすすめします。
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農地等の特例を受ける場合には、特例の適用を受けている期間中、3年ごとに「引き続きこの特例を受ける旨」と「特例の適用を受ける農地等に係る農業経営に関する次項等」を記載する「継続届出書」の提出が必要になってきます。
このとき、農業委員会発行の「引き続き農業経営を行っている旨の証明書」の添付が必要になりますが、この証明書の発行には約2週間から20日ほどかかりますので、余裕を持って手続きをすることが大切です。
農地等の納税猶予の特例は、一度適用を受ければずっと受けられるというような性質ではなく、3年毎の継続届出が必要になるうえ、一定の事由に該当すると適用の特例が解除され打ち切られてしまいます。
特例の適用が取り消されてしまうと、猶予されていた相続税額に加え、利子税も納付しなければならないため、一時的な相続税負担軽減のためにこの特例を利用するのはおすすめできません。
以下で特例が打ち切られてしまうケースをまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。
なお、特例が打ち切られた際に納付すべき利子税は、相続税の申告期限の翌日から納税猶予期限までの日数に応じて利子税がかかります。
利子税は概ね3.6%×特例基準割合÷7.3%によって計算することができますが、詳しくは税務署に聞いてみるのが良いでしょう。
近年は農業人口が減少しており、90年代に比べて農業を営む人は確実に少なくなっているわけですが、先祖代々の農地を守り相続によって承継させていこうとする人は珍しくありませんので、相続財産に農地があった場合には必要な手続きに注意することをおすすめします。
本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
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