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預貯金相続は名義変更が必須!|相続人のあなたがまずやるべき事3選

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相続財産のうち、最もわかりやすいものが「預貯金」ですが、預貯金を相続する際には銀行等の金融機関での手続きが必須になります。

被相続人が死亡すると、被相続人名義の口座は凍結され入出金が一切できなくなるのですが、この凍結は自動的に解除されることはなく、相続人等の預貯金を相続した人が解除の手続きを行わない限りそのお金は使えないということになります。

今回は、預貯金相続のための手続きや知識について、最新の判例とともにご紹介いたします。

預貯金の相続分に納得いかない・不満がある方へ
  • 遺産分割協議で相続する財産が少なかった
  • 他の相続人は生前贈与をもらっているのに財産の割合が同じなのは納得いかない
  • 被相続人(亡くなった)の介護をしていて寄与分が発生するはずなのに、他の相続人と財産の割合が同じなのはおかしい

上記のようなお悩みも、弁護士に相談をすることで法律に基づき公平な財産分配ができます。

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被相続人の預貯金を相続する際の全知識

被相続人の預貯金は、典型的な相続財産として相続開始後真っ先に調査を行う方が多いかと思います。

実は、相続における預貯金の取り扱いについて、最高裁判所は2016年12月19日決定で判例変更を行い、従来と異なる見解を示したことをご存知でしょうか。

ここではまず、被相続人の預貯金を相続する際の全知識と題して、相続における預貯金の取り扱いについてご紹介いたします。

相続における預貯金の取り扱い

従来、預貯金は他の金銭などと同様に可分債権(分割が容易な債権)とされており、相続が始まると同時に当然に分割されて、各共同相続人がその相続分に応じた権利を承継するものとして扱われてきました(最判昭和29年4月8日)。

これが何を意味するかというと、預貯金は相続開始時点で各共同相続人の相続分に応じて自動的に分割・帰属することになり、特別受益を考慮した遺産分割を当然に行うことはできないということです。

実務上は、当事者間で預貯金等についても遺産分割の対象に含める合意があれば、遺産分割の対象財産として預貯金の分割を行うことはできるとされていますが、従来の判例では預貯金は何らの分割手続きを経ずして自動的に帰属割合が決まる性質を持っているということになっていました。

今回の判決では、

預貯金について「現金との差をそれほど意識させない財産である」としたうえで、「普通預金債権及び通常貯金債権は、いずれも1個の債権として同一性を保持しながら、常にその残高が変動し得るもの」であり、「預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、同一性を保持しながら常に残高が変動し得るものとして存在し、各共同相続人に確定額の債権として分割されることはない」

と判断しています。

そして、「相続開始時における各共同相続人の法定相続分相当額を算定することはできるが、預貯金契約が終了していない以上、その額は観念的なものにすぎない」として、これら預貯金は可分債権ではないとの結論を出しています。

少しわかりにくいかもしれませんが、簡単に言えば「預貯金について法定相続分相当額を算定することはできるけれど、預貯金契約を解約するには共同相続人全員の合意が必要なので、預貯金は可分債権とはいえない=不可分債権になるから、遺産分割の対象財産になる」ということです。

遺産分割の対象財産については、具体的な相続分算定の際に特別受益を考慮して公平な遺産分割を行うことが可能になるので(民法903条)、画期的な判決と言うことができるでしょう。

参考元:裁判所|遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

預貯金はなぜ相続発生時に凍結されるのか?

預貯金口座は、金融機関等が被相続人の死亡を確知した時点で凍結されることになっています。

これは、相続人にとっては被相続人との関係や自己の相続権の有無を簡単に判断することができますが、金融機関等の第三者にとって誰が相続人であるかを知ることは容易ではありません。

相続人間への二重払いや誤って無関係の人に払い戻しなどをしてしまう危険性が高いこと、共同相続人間の紛争へ巻き込まれることを防ぐためにも、共同相続人が遺産分割についての客観的な証拠を提出するまで一切の入出金取引を行わないことで、被相続人の財産を保全するという理由が挙げられます。

また、今回の判例変更により、遺産分割協議成立前の法定相続分での払戻し請求が難しくなることが予想されますので、預貯金については遺産分割協議が成立し、相続人全員の合意がなければ口座の凍結解除は難しくなるかと思います。

預貯金の相続手続きを放置するリスク

預貯金の相続手続きを放置するリスクとしては、「理論上は預貯金についても時効消滅の危険性がある」ということが挙げられます。

銀行等の預貯金は5年間の消滅時効にかかる「商事債権」で、信用金庫等の協同組織への預貯金は10年間の消滅時効にかかる「通常債権」に該当するため、理論上は最終入出金日からこれらの期間が経過することで、金融機関側は時効消滅を主張できることになります。

もっとも、金融機関が消滅時効を援用する(消滅時効を主張する)ことは基本的にはありませんが、2016年12月2日に「休眠預金活用法」が成立し、施行後は10年以上放置された預金がNPO等に貸し出されることになりますので、相続手続きを放置することはあまりおすすめできません。

※休眠預金活用法で休眠預金と判断されても、預金者からの払戻し請求には応じてもらえるようです。

故人の口座からむやみに出金するのはおすすめできない

故人の預貯金を勝手に出金すると、遺産分割協議の際に揉める原因になったり、預金の移動を税務署に脱税と疑われたりする可能性があります。

また、相続財産を処分したとみなされ、故人に多額の借金があったときに相続放棄や限定承認ができなくなるかもしれません。

もし、故人の預貯金から葬儀費用などを支払いたい場合は、金融機関に問い合わせてみましょう。

原則、口座の凍結後にお金の引出しはできませんが、金融機関によっては引出しに応じてくれます。

預貯金を相続したらまずやるべき3つのこと

相続財産の中に預貯金がある場合には、最終的にそれらの名義変更手続きをすることになりますので、どこの金融機関にどれだけの預貯金が残っているのかを把握する必要があります。

また、名義変更の際には遺言書や遺産分割協議書、相続人全員の同意書などの提出が求められるほか、印鑑証明書や戸籍謄本類の有効期限が金融機関ごとに異なる場合があり、注意が必要です。

そこで、預貯金を相続したら真っ先にやるべき3つのことをご紹介いたします。

1:預貯金の口座がどの金融機関にどれだけあるのかを調べる

まずは、被相続人の通帳やキャッシュカード、証書などを探して預貯金口座がどの金融機関にどれだけあるのかを調べ、取引金融機関がわかったらその金融機関で被相続人死亡日時点の「残高証明書」を取得します。

残高証明書は、「その金融機関内にある被相続人の全ての預金やローンの残高」を示す書類で、死亡日時点のものを取得すると相続財産の特定や遺産分割協議の際に役立ちます。

相続による残高証明書の取得には、被相続人の死亡のわかる戸籍謄本、取得手続きをする人の身分証明書、相続関係を表す書類(戸籍謄本など)、印鑑証明書、被相続人の通帳などのほか、500円~900円程度の手数料が掛かります。

また、残高証明書の発行までに日数が掛かる金融機関もありますので、このあたりは手続き先の金融機関に確認するのが確実でしょう。

2:遺産分割協議で相続分を決定する

次は、遺言書があれば遺言内容に沿って、なければ遺産分割協議によって、誰がどの預貯金を相続するのかを早めに決定しましょう。

実務上は法定相続分での払戻し請求に応じる金融機関もありましたが、判例変更も行われたため、今後はこのような払戻し請求は難しくなることが予想されます。

相続手続きが完了しないと被相続人の口座は凍結されたままになってしまいますし、相続税等の手続きも滞ってしまいますから、できるだけ早期に相続分を決定したほうが良いかと思います。

3:口座の名義変更を行うための書類を集める

各相続人の具体的な相続分が決まったら、最後は預貯金の名義変更手続きです。

名義変更というよりは、被相続人の口座を解約し、各相続人の銀行口座等へ相続分を振り込んでもらう手続きになりますが、窓口等での手続きよりも書類を集めたり作成するのに時間がかかります。

預貯金の名義変更を行う場合は、金融機関所定の相続届や相続による名義変更届といった書類を提出するケースが多いのですが、これらの書類には相続人等全員の署名押印や相続人等の戸籍謄本・印鑑証明書の添付が必要になったりします。

そのため、まずは手続き先の金融機関に連絡して相続のための書類を請求するとともに、どのような添付書類が必要になるのかを確認するのがおすすめです。

金融機関で預貯金の相続手続きを行う際に知っておくべきこと

預貯金の相続手続きは、基本的に金融機関窓口が営業している平日に行わなければならないため、案外面倒なものです。

手続き自体が難しいわけではないのですが、窓口営業時間内といったように時間の制約があったり、金融機関ごとに準備しなければならない書類が若干異なってきたりするので、厄介に感じる方もいらっしゃるかと思います。

そこで、預貯金の相続手続きを始める前に知っておいていただきたいことをまとめてみました。

銀行預金の相続手続きが大変な理由

銀行預金の相続手続きが大変な理由としては、①ほとんどの場合に一度は平日の手続きが必要になる②添付書類(特に証明書系の有効期限)が金融機関によって異なるといったことが挙げられます。

大手金融機関では相続担当部署へのフリーダイヤルなども準備していますが、土日祝日の受付がなかったり、平日も17時までに終わってしまったりと使い勝手がイマイチなことも多いです。

そのため、特に会社勤めをしている方の場合は、預貯金の相続手続きが大変に感じられるかもしれません。

被相続人が多くの預貯金口座を有していた場合には、手続き先の金融機関も多くなりますので、まずは相続で使う書類を請求しましょう。

また、相続人で手分けして書類を集めたり手続きをするといった方法を採ることで、スムーズに預貯金相続が進められます。

相続人間で紛争が起こっている場合には、弁護士等に相続手続きを一任するのも良いでしょう。

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相続における預金・貯金払戻請求権とは

従来の判例では、預貯金払戻請求権は「可分債権」として相続開始と同時に各相続人に相続分に応じて帰属するものとされてきましたが、判例変更によって預貯金払戻請求権は遺産分割の対象財産に組み込まれることになりました。

そのため、以前は可能であった遺産分割協議成立前の法定相続分での払戻請求が難しくなるので、葬儀費用などを用立てたい場合には、相続人間で話し合って分担するか、金融機関等に相談しましょう。

金融機関によっては、凍結された口座からも葬儀費用だけは引き出せる場合がありますので、焦らずに担当部署に連絡するのがおすすめです。

金融機関ごとの手続き方法

金融機関での相続手続き自体は特に難しいわけではありませんが、相続人全員の署名押印や印鑑証明書の提出が必要になる場合が多いので、余裕を持って手続きを進めるのが無難です。

ここでは、銀行での相続手続きの流れと、大手金融機関ごとの手続き方法をまとめてみました。

銀行での相続手続きのプロセス

銀行等の金融機関で相続手続きを行う場合は、「被相続人の取引支店」・「手続きをする人の最寄り支店」・「金融機関の設けている相続担当部署」のどれかを選んで相続が発生した旨を連絡することからスタートします。

相続の連絡をすると必要書類や添付書類を案内されるので、言われた書類を揃えて窓口に持参するか郵送での提出をします。

基本的に、大手金融機関では相続担当部署から必要書類が後日送られてくるので、余裕を持って相続手続きを行うほうが良いでしょう。

また、多くの金融機関では、所定の相続届などの書類に相続人・受遺者全員の署名押印を求めてくるので、遺産分割協議前に書類の請求だけは済ませておいたほうが楽かもしれません。

提出書類に不備がなければ、その後1~2週間で相続手続きが完了することになります。

なお、金融機関によっては被相続人の取引支店での手続きが基本になる場合もありますので、あらかじめ電話等で確認するのがおすすめです。

必要書類

詳細は各金融機関によって異なる場合がありますが、銀行預金の相続手続きには概ね以下の書類が必要になります。

  1. 銀行が用意している預金名義書換依頼書や相続届
  2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  3. 相続人全員の戸籍謄本
  4. 相続人全員の印鑑証明書
  5. 被相続人の預金通帳、キャッシュカード、証書など
  6. 遺産分割協議書(または相続人全員の同意書)や遺言書

このうち、戸籍謄本や印鑑証明書に関しては、発行からの期間や必要な範囲が異なる場合がありますので、手続き先の金融機関で確認が必要です。

また、相続の連絡をする際には、できれば被相続人の預金通帳やキャッシュカードなどを準備してから行うほうがスムーズです。

ゆうちょ銀行の場合

ゆうちょ銀行の相続手続きは、「相続確認表」という所定の書類を記入し、ゆうちょ銀行の貯金窓口へ持参または郵送送付を行い、返送されてきた必要書類を再度提出してから1~2週間程度で完了となります。

具体的な方法については、ゆうちょ銀行ホームページほか、相続コールセンターで確認することができますので、下記のリンクを参照していただければ良いかと思います。

参考:ゆうちょ銀行ホームページ「相続手続き」、相続確認表(書式記入例

三菱UFJ銀行の場合

三菱UFJ銀行の場合は、どの店舗でも相続手続きが可能になっていますが、被相続人の通帳やキャッシュカードなどの口座番号のわかるものを準備して、来店またはフリーダイヤルの相続センターへ電話して相続が発生した旨を伝えます。

三菱UFJ銀行では「相続オフィス」という部署が一括して相続手続きを担当していますので、来店での連絡の場合もテレビ電話で「相続オフィス」のスタッフとやり取りをすることになります。

その後は必要書類が送付されてくるので、必要事項を記載し、添付書類(戸籍謄本など)を揃えて支店窓口へ提出します。戸籍謄本などの返却を希望する場合には、提出時にその旨を伝えましょう。

書類に不備がなく、提出が済めば2週間程度で手続きは完了です。

参考:三菱UFJ銀行「相続のお手続き

三井住友銀行の場合

三井住友銀行の場合は、被相続人の通帳やキャッシュカードなどの口座番号のわかるものを準備して、近くの支店や取引支店へ来店またはフリーダイヤルの「三井住友銀行 相続オフィス」へ電話して相続が発生した旨を伝えます。

三井住友銀行では、遺言書や遺産分割協議書の有無にかかわらず、所定の「委任契約書」の提出が必要になります。

また、遺言執行者以外の人が手続きをする場合には、相続人・受遺者全員の印鑑証明書が必要になりますので、併せて準備しておきましょう。

参考:三井住友銀行「相続の手続方法

みずほ銀行の場合

みずほ銀行の場合は、被相続人の取引支店または相続人の最寄り支店に相続があった旨を連絡し、被相続人の取引内容や相続状況に応じた手続き方法を確認する必要があります。

みずほ銀行の場合、遺言書がある場合は被相続人の戸籍は「死亡の記載のある戸籍謄本」で済み、遺言書がない場合は「16歳以降、死亡までの連続した戸籍謄本」の提出が必要になるという特徴があります。

基本的には他の金融機関同様に必要書類を提出して1~2週間で手続きが完了しますが、みずほ銀行所定の相続関係届(窓口でもらえるようです)の提出が必須になりますので、面倒でも平日に店舗に出向くか郵送請求を行いましょう。

参考:みずほ銀行「相続の手続きをしたい

預貯金の相続税評価

預貯金の相続税評価は、原則として相続開始日時点の残高がそのまま相続税評価額として扱われます。

ただし、普通預金でも既経過利息が多額であったり、定期預金の場合には、相続開始日までの利息からその利息にかかる税金を差し引いた金額を定期預金に含め、相続税評価額とすることになっています。

このあたりの計算は、残高証明書を取得する際に依頼しておくと金融機関でやってもらえるので、忘れずにお願いするのが良いでしょう。

また、外貨に関しては日本円に換算し、相続開始日時点のTTB(電信買相場)により評価することになりますので、この場合も残高証明書を取得し、金融機関に計算してもらうのがおすすめです。

さいごに

預貯金相続手続きは、難易度としてはそれほど難しくありませんが、窓口へ出向いたり書類を揃えるのが面倒なのと、金融機関ごとに若干手続きに違いがある点で手続きにやや手間がかかります。

もし平日の手続きが難しい場合や、手続き先金融機関が多い場合には、弁護士等の専門家に代行を頼むとスムーズに相続手続きが行えるかと思いますので、このようなケースでは無料相談などを利用してみるのがおすすめです。

本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。

預貯金の相続分に納得いかない・不満がある方へ
  • 遺産分割協議で相続する財産が少なかった
  • 他の相続人は生前贈与をもらっているのに財産の割合が同じなのは納得いかない
  • 被相続人(亡くなった)の介護をしていて寄与分が発生するはずなのに、他の相続人と財産の割合が同じなのはおかしい

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この記事の監修者
弁護士法人ネクスパート法律事務所
柴田直哉 弁護士 (神奈川県弁護士会)
年間500件以上の相続に関するご相談をいただいており(2016年3月~2017年2月)複雑なご相談でも対応が可能です。また、横浜、東京、神戸と3つの拠点があり、ご希望の地域にてご相談ができます。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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