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相続税の申告漏れ|よくあるケースと申告漏れのペナルティと事前の対策

鈴木まゆ子(税理士)
監修記事
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相続は人生の中でそう何度も経験することではないと思いますが、その際に心配されることが相続税の申告漏れです。

実際に平成25年に相続税の課税対象になった被相続人約5万4千人に対して、平成27年の実地調査(税務調査)の数が11,935件で、約22%が税務調査をされたことになります(相続開始→申告→税務調査までの時間差があります)。

税務調査の割合

また、平成27年に税務調査を受けた11,935件のうち、約82%に該当する9,761件で申告漏れなどの非違(税法に反すること)があったとの報告がされています。

非違の割合

上記は、国税庁の「平成25年分の相続税の申告の状況について」「平成27事務年度における相続税の調査の状況について」をもとに作成したグラフです。

つまり、相続発生件数約5万4千件のうちの約20%に該当する約1万件で申告漏れなどが発生しているということになります。

これはかなり高い確率だと考えられます。

そこで今回は、相続税においてどのような申告漏れが多くて、実際に申告漏れをしてしまうとどのようなペナルティを科せられてしまうのかといったことについて紹介していきます。

また、相続税の申告漏れを防ぐコツも併せて説明しますので、申告漏れで余計なペナルティを科せられたり、手間を取られたりしないようにしましょう。

もし申告漏れをしている可能性が高いと思われる場合は、すぐに専門家を探すことをおすすめします。

*本記事の専門家による監修日は2023年7月3日です。

相続税の申告期限

相続税の申告期限は、相続開始(被相続人の死亡など)を知った日の翌日から10ヵ月以内となっています。

相続が始まってからはなにかとバタバタしてしまいますので、早い段階から遺産分割をどうするかを決めて、相続税の課税となるようでしたら早めに相続税の申告まで終わらせたいところです。

相続税が発生するほどの財産があるということは、揉め事になってしまう事も十分に考えられますので、専門家を交えて手続きなどを進めていくことをおすすめします。

相続税の納付も10ヵ月以内

また、相続税を納付する期限も、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と決められています。

こちらもいざ納税するときに困らないように、早めに相続税を算出し納税できる状態にしておきましょう。

相続税以外にも、相続放棄や所得税申告などの期限も決められていて、期限については下記のコラムで詳しくまとめているのでご覧ください。

相続税の申告漏れでよくあるケース

(付表2) 申告漏れ相続財産の金額の構成比の推移

申告漏れ相続財産の金額の構成比の推移 (グラフ)

引用元:平成27事務年度における相続税の調査の状況について|国税庁

上のグラフをご覧ください。

税務調査によって発覚した、相続税の申告漏れとなった財産の内訳の推移です。

平成27事務年度の申告漏れ財産の構成を見てわかるように、現金や預貯金などの財産が大半を占めています。

次に多い有価証券も合わせると、それだけで7割になります。

一方で、土地や家屋などの高額な財産を申告漏れするようなケースは少ないようです。

それでは、どのようなケースで相続税の申告漏れが発生するのでしょうか。

こちらでは、相続税の申告漏れが発生しやすいパターンをいくつか紹介していきます。

隠れ財産

申告漏れでもよくありがちなことが、相続税の申告期限が過ぎてから高額な財産が見つかったというようなケースでしょう。

上のグラフでもありましたが、土地や家屋などの高額かつ隠しようがない財産についての申告漏れは少ないものの、実は隠れていた(被相続人は隠したつもりなくても)現金や預貯金・有価証券などは、相続税の対象として計上することを忘れてしまいがちのようです。

子どもや孫の預金通帳

節税のための生前贈与の一つとして、子どもや孫の口座などに預貯金を贈与する方もいるでしょう。

しかし、贈与を受けた側がそのことに気付いていなかったり、通帳はハンコを贈与した側である親や祖父母が管理していれば、子どもや孫の口座を利用して預貯金をしていただけとして、相続税の課税対象になってしまいます

このことを「名義預金」といいます。

詳しくは以下のコラムをご覧ください。

趣味で集めていた骨董品など

件数としては少ないですが、高価な美術品や骨董品などが相続税の申告漏れになるケースもあります。

相続人からしてみれば価値がわからなくてそのままにしていただけなのに、実は高値が付くような財産で申告をしていなかった場合です。

相続税の申告漏れでのペナルティ

相続税の申告漏れによるペナルティにはどのようなものがあるのでしょうか。

こちらでは、相続税の申告漏れによるペナルティ(追徴課税)について紹介していきます。

延滞税

相続税の納付期限(相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内)までに、相続税を納付しなかった場合に発生するペナルティです。

実際に納める税金は、足りなかった相続税と下で説明すると加算税に、延滞税を合計した金額になります。

納付が遅れた時期によって割合が変わってきます。

納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までの分 「年7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
納期限の翌日から2ヵ月を経過する日の翌日以後の分 「年14.6%」と延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合

過少申告加算税

期限内に提出した相続税の申告書に記載されていた財産額や税額が、本来の税額より不足していた場合に科せられる加算税です。

修正申告をしたときや税務署から更正されたときに科されます。

過少申告加算税課税の金額は、新たに納税することになった税金の10%相当となります

また、追加納付する税額が期限内申告した税額と50万円のいずれか多い金額を超えるなら、その超えた部分の金額に対しては15%の割合で科されます。

ただし、正当な理由があったり、税務調査の通知を受ける前に自主的に修正申告したりすれば不適用となったりします。

追加納付税額に対して

10%

追加納付税額50万円または期限内に申告した税額のいずれか多い部分を超えた額に対して

15%

無申告加算税

期限後申告をしたり、税務署から税額などの決定を受けたときなどに科される加算税です。

こちらも状況によって課税額が変わります。

税務調査で期限後申請や決定となった場合

納税額50万円までに対し

15%

納税額50万円超に対し

20%

こちらも、正当な理由があったり、法定申告期限から1ヵ月以内に申告したりすれば科されません。

また、税務調査の通知を受けても、更正や決定を予知する前に期限後申告をした場合は5%の割合となります。

なお、令和5年度税制改正により、納税額が300万円を超える部分については、30%の割合で無申告加算税が科されることとなりました。

令和6年1月1日以降に法定申告期限が到来する分に適用されます。

重加算税

相続税の対象となる財産を意図的に隠したり、事実を仮装したりするなどの悪質な場合、重加算税が科せられます。

悪質な行為に対するペナルティなので、割合も非常に高くなります。

申告書を提出していた場合

35%

申告書を提出していない場合

40%

相続税の申告漏れを事前に防ぐコツ

チェックリスト

このように、相続税の申告漏れがあると通常の相続税に加えてペナルティを受けることになってしまいます。

国税庁によると、税務調査1件あたり2,517万円の課税価格が発覚しており、それに対する追徴課税は489万円となっています。

まだ申告までに期限がある場合や税務調査がされていない場合は、早い段階で申告漏れを防いでいきましょう。

相続税の申告漏れによってペナルティを受けないための方法をこちらで解説していきます。

早め早めに動く

相続税の申告漏れを防ぐには、まず第一に少しでも早くから準備をしておくことです。

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と決まっていますが、被相続人の葬儀などが落ち着いたのであれば、さっそく相続の話し合いを始めていくようにしましょう。

また、将来被相続人になるであろう方がまだご存命であっても、準備をしておいて早すぎるということはありません。

このことを生前整理といいます。

贈与や相続のやり取りは形に残す

生前贈与や相続などで財産を動かした場合、逐一証明できるように書面に残しておきましょう

特に生前贈与は、自分たちでは贈与したつもりでも贈与となっておらず、のちに相続財産として課税対象になっていたというケースが多いということを「相続税の申告漏れでよくあるケース」でお伝えしましたね。

財産を別の人に移した場合は、きちんと証明できるように書面に残しておきましょう。

専門家に頼る

相続に関わるようなことは人生の中でも1度か2度くらいで、さらにそこから相続税が関わってくる人も限られてきます。

ですので、いってしまえばほとんどの方が相続や相続税に関して素人なわけです。

初めてですから、ミスをしてしまうこともあり得るでしょう。

ですので、あらかじめ専門家に任せてしまう方がミスも少なくなりますし、慣れないことに時間を奪われることもありません。

相続財産が多いようでしたら、あらかじめ専門家に相談しておきましょう

また、専門家は当然手続きも慣れていますので「書類が集まらなくて申告期限に間に合わなかった…」といった、自分だけで申告しているとありがちなミスも回避できるでしょう。

相続税の申告漏れがわかったときの対処法

この記事をご覧になっているということは、ここ最近相続税の申告漏れに気付いたという方も多いでしょう。

最後に、相続税の申告漏れがわかったときの対処法を紹介していきます。

気付いた時点で早めに申告をする

相続税の申告漏れがあったとしても、早めに申告をすれば、ペナルティが軽くて済みます

なので、早い段階で申告をすることを検討しましょう。

なお、修正申告では、申告時とは別の「修正申告書」を記入します。

申告書は違いますが、記入したあとは相続税の申告時と同じく被相続人の最後の住所地所轄の税務署に提出します。

修正申告書のフォーマットはコチラ

税務調査が入った場合の対処法

冒頭でもお伝えしましたが、相続税では約22%という高い確率で税務調査が入っています。

申告漏れによって税務調査がされる可能性もあります。

しかし、税務調査が入ったとしてもそこまで構える必要はありません。

別に調査官に怒られるわけでもなく、逮捕されるようなこともなく(脱税目的の悪質な場合は刑事事件に発展する可能性もあります)、調査官の質問に対して受け答えをしていく形となるため、あらかじめ答えられるように準備しておきましょう

詳しくは以下をご覧ください。

まとめ

相続税の申告はほとんどの方が初体験なので、うっかり申告漏れをしてしまう事も多いです。

対策としては、

  • 早めの準備
  • やり取りは記録する
  • 専門家に頼る

の3つがあります。

気付いた段階で早めに申告をすれば、ペナルティが軽くて済みます

こちらも気付いた時点で早めの対応をしましょう。

もし自分だけではわからないことがある場合は、税理士に相談してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
税理士鈴木まゆ子事務所
鈴木まゆ子(税理士)
税理士・税務ライター。 ZUU Online、KaikeiZine、納税通信、朝日新聞「相続会議」「マネーの達人」などで執筆・税務監修。 共著「海外資産の税金のキホン」。 中央大学法学部法律学科卒。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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