相続の際、親の遺産に借金があることがわかって、相続放棄を検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、相続放棄ではプラス・マイナスに関わらず、全ての遺産を放棄することになるため、本当に相続放棄をしてもよいのかな…と迷ってしまいますよね。
この記事では、相続放棄を迷っている方に向けて、相続放棄のメリット・デメリットを解説します。
合わせて、相続放棄をすべきかどうかの判断基準や、そのほかの選択肢も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
相続放棄をすべきかどうかで悩んでいるあなたへ
相続放棄を検討しているけど、本当にしてもいいのかな…と悩んでいませんか。
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この記事に記載の情報は2024年02月21日時点のものです
相続放棄のメリット2つ
相続放棄のメリットには以下のようなものがあります。
- 被相続人の借金を相続せずに済む
- 相続の揉め事に関わらずに済む
被相続人の借金を相続せずに済む
相続放棄の最も大きいメリットは、被相続人の借金を相続せずに済むことです。
通常の相続では、被相続人に借金があった場合、相続人間で法定相続分に従って、均等に引き継ぐことになります。
ここでいう「引き継ぐ」とは、被相続人の状態をそのまま受け入れるということを指し、借金の返済が滞っていたような場合は、遅延損害金も一緒に引き継ぐ必要があります。
引き継いだあとは、債権者から返済を迫られることになりますが、相続放棄をすれば、こうした煩わしさから抜け出すことができます。
相続の揉め事に関わらずに済む
相続放棄をすると、そもそも相続人ではなかった扱いとなるため、相続に関わる揉め事や権利関係から離れられるのもメリットといえます。
相続に関連して、親族間でもめごとが生じた場合、相続人でなくなれば一切関係なくなりますし、連絡自体も受けなくて済むようになります。
相続放棄のデメリット4つ
相続放棄のデメリットには以下のようなものがあります。
- 全ての遺産を放棄することになる
- 撤回や取り消しができない
- ほかの相続人間でトラブルになる可能性もある
- 相続放棄後の遺産の扱いに注意が必要
全ての相続財産を手放すことになる
相続放棄のデメリットとしては、プラスの財産も含む全ての遺産を手放さなくてはならなくなることです。
たとえば、被相続人が親である場合、相続放棄をしたら、同居していた家から退去しなくてはならなくなるでしょうし、テレビや電化製品なども被相続人の所有物であれば勝手に持ち出すことはできません。
やり直しがきかない
また、一度相続放棄をすると原則として撤回や取り消しはできません。
ほかの相続人から財産はないといわれていたのに実はあった、勘違いして相続放棄してしまったなどという場合でも撤回・取消はできない場合があります。
そのため、相続放棄をおこなうかどうかは、財産調査をおこない、遺産を全て把握してから判断することが大切です。
>相続放棄の取り消しについて詳しく知る
ほかの相続人間でトラブルになる可能性もある
相続放棄をすると、相続放棄した人ははじめから相続人ではなかったとされ、次順位の相続人に相続の権利が移ります。
たとえば、父親の相続財産に借金が含まれていて、相続人である自分が相続放棄をすると祖父母が生きていればその祖父母が相続人になります。
しかし、祖父母は借金の存在を知らずに相続してしまったり、遺品を処分することで単純承認してしまったりといったことからトラブルに発展する可能性もあります。
相続放棄をする際は、可能な限りほかの相続人への配慮も必要になるでしょう。
>法定相続人の範囲について詳しく知る
相続放棄後の遺産の扱いに注意が必要
相続放棄をした場合でも、その後の行動によっては相続放棄をしたことが認められなくなる場合があります。
たとえば、被相続人の財産を使用したり、処分したりすると「単純承認」として、相続を承認したものとみなされることがあります。
同居していたような場合には細心の注意が必要となるでしょう。
>相続放棄の際にやってはいけないことについて知る
相続放棄をするかどうかで悩んだときのポイント2つ
相続放棄をすると、相続人ではなくなるので、借金も背負わなくて済みます。
ただし、プラスの財産も一切引き継ぐことができなくなります。
そのため、借金があるからといって安易に相続放棄を選択すると後悔することがあります。
相続放棄を選択する前に少し以下のことを考えてみましょう。
相続するか放棄するかの判断基準
相続放棄をするかどうかの判断基準は、借金の額、資産の額、相続財産の中に思い入れのあるもがあるかどうか、という3点で検討してみるとよいでしょう。
借金の額が多過ぎると、プラスの財産を相続しても、自分の資産を補ってもどうにもならないという状態に陥ってしまいます。
そうなると自分の経済的状況が悪化し、日々の生活が苦しくなってしまいます。
借金の額が多くても、資産もまた多ければ、資産から借金を返済することが可能になります。
相続したプラスの財産の中から、不動産を売却するなどし、その売却代金で借金を返済することもできます。
借金の額だけでなく、資産の額とのバランスをみることが大切です。
相続放棄をすると、相続財産に対して一切の権利がなくなってしまいます。
しかし、被相続人の資産の中に、思い入れのある美術品や家宝と呼ばれるものがある場合、心残りに感じてしまうこともあるかもしれません。
このような場合は、相続放棄以外の方法を検討しましょう。
限定承認ができないか確認する
借金を継がなくてもよい方法として、相続放棄の他に限定承認という選択肢があります。
相続放棄はマイナスの財産もプラスの財産も等しく相続を受け入れないというのに対して、限定承認はプラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を引き継ぐという相続方法です。
しかし、相続放棄は家庭裁判所での手続きをおこなえるのに対して、限定承認は相続人全員の同意が必要になります。
そのため、相続人の中で1人でも限定承認したくないという人がいたり、連絡がつかないような人がいたりする場合には選択することが困難な手段でもあります。
このようなことから、相続財産についてマイナスが多いのが明らかで、とても返済できる金額ではない場合や、手放したくない財産が特にないような場合、相続放棄を選択することが推奨されるのです。
相続放棄手続きの流れ
ここからは、相続放棄を選択した場合の実際の手続きの流れを解説します。
相続放棄の全体スケジュール
相続放棄は、以下のようなスケジュールで進めるのがよいでしょう。
相続放棄のスケジュール
- 財産調査:~1ヵ月
- 必要書類の準備:~2ヵ月
- 相続放棄の申し立て:~2ヵ月半
相続放棄の手続きは、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。
期限を過ぎてしまうと単純承認とみなされてしまうので、余裕を持ったスケジュールで進めるとよいでしょう。
①財産調査をおこなう:~1ヵ月
相続財産全体について財産調査をおこないます。ここで、相続放棄するかどうかを決めます。
相続放棄の申述書には、財産の状況について記載する項目があるうえ、仮に相続する場合には遺産分割協議書の作成などで財産の一覧は必要になります。
相続放棄をするしないに関わらず、まずは財産に関する調査をおこないましょう。
財産に関する調査は、相続人名義の預貯金がわかる通帳や、定期預金などをしている場合は証書、不動産を所有しているかどうかは登記簿謄本などから判断可能です。
固定資産税の支払い状況なども参考になるでしょう。また、特別受益があるかどうか、通帳の履歴などを確認するとよいでしょう。
親族の相続の場合など直接財産状況を知ることができない場合は、被相続人に関係の深い相続人に聞いてみる、銀行の取引履歴を請求するなどの方法があります。
②相続放棄の必要書類の準備:~2ヵ月
財産調査の結果、相続放棄をすると決めた場合は、相続放棄に必要な書類を準備します。
家庭裁判所のホームページに詳細な記載がありますが、相続放棄には以下の書類が必要です。
誰が相続放棄をするかによって、追加の書類が必要になるのでよく確認しておきましょう。
相続放棄の必要書類
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(放棄する人)の戸籍謄本
被相続人の戸籍は、生まれてから死ぬまですべてのものが必要となります。
遠方の場合郵送で請求するなどで手に入れるまで時間を要しますので、早めに請求しておくとよいでしょう。
相続放棄への申し立て:~2ヵ月半
必要書類が準備できたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄の申し立てをおこないます。
書類に不備があると期限に間に合わないことがあるため、なるべく早めに提出しましょう。
必要に応じて、家庭裁判所から連絡が来ることもあるので、指示に従ってください。
相続放棄の期限を過ぎてしまいそうな場合は、伸長手続きを
特別な事情があって相続放棄の期限を過ぎてしまいそうな場合は、「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」を家庭裁判所に提出しましょう。
裁判所に認められれば、相続放棄の熟慮期間を延長することができます。
しかし、必ず期間の延長が認められるわけではないので、いずれにせよ余裕を持って手続きを進めておくことが大切です。
許可されれば相続放棄申述受理通知書が届く
家庭裁判所の審査を経て、相続放棄が認められると「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
ただし、相続放棄の申述をしているにもかかわらず、単純承認をしたと認められる行為をしていた場合には相続放棄が認められません。
なお、相続放棄申述受理通知書とにた書類として、相続放棄申述受理証明書も存在します。
相続放棄申述受理証明書は、ほかの相続人が相続登記をおこなう際などに必要になる書類なので、必要に応じて発行しておきましょう、
相続放棄にかかる費用
相続放棄の申述をおこなうには、費用も必要です。必要書類を集めるためにかかった費用だけでなく、手続きの費用として収入印紙800円分を納めます。
以下では、相続放棄にかかる費用について手続きを自分でおこなう場合と専門家に依頼する場合に分けて解説します。
相続放棄を自分でおこなう場合の費用
相続放棄手続きを自分でおこなう場合の費用は、相続人1人につき約3,000円が目安となります。
手続き費用の内訳
相続放棄手続きの費用
- 相続放棄の申述書に添付する印紙代:800円
- 被相続人の戸籍謄本:450円(被相続人の配偶者が申請する場合は不要)
- 被相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本:750円
- 被相続人の住民票:300円程度(市区町村によって異なる)
- 申述人の戸籍謄本:450円
- 郵便切手:500円程度(家庭裁判所によって異なる)
- その他(交通費など)
相続放棄を司法書士に依頼した場合の費用
相続放棄の手続きを司法書士に依頼した場合にかかる費用は以下のとおりです。
相続放棄期限の3ヵ月前の場合
【期限内】相続放棄手続きにかかる司法書士費用
- 相談料:0円〜5,000円/時
- 申述書作成代行費用:3,000円〜6,000円程度(戸籍謄本取得・実費含む)
- 代行手数料が2~3万円程度
※金額はあくまで目安です
相続放棄期限の3ヵ月後の場合
【期限後】相続放棄手続きにかかる司法書士費用
- 相談料:0円〜5,000円/時
- 申述書作成代行費用:3,000円〜6,000円程度(戸籍謄本取得・実費含む)
- 代行手数料:3~5万円程度
相続放棄を弁護士に依頼する場合の費用
相続放棄を弁護士に依頼したときにかかる費用は5万円以上です。
弁護士費用の内訳は以下のとおりです。
相続放棄手続きにかかる弁護士費用
- 相談料:0円〜1万円/時
- 申述書作成代行費用:5,000円〜1万円程度(戸籍謄本取得・実費含む)
- 代行手数料:5~10万円程度
- 成功報酬:なし
まとめ|相続放棄で迷ったら弁護士に相談を
被相続人に借金があった場合、相続放棄を検討することになりますが、相続放棄にはメリットだけでなくデメリットもあります。
また、相続放棄をしてしまうと、取り消すことはできません。
相続放棄をすべきかどうかで迷っている方は、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。