相続放棄に関する弁護士相談をご検討中の方へ
相続放棄は、亡くなった人(被相続人)の財産や負債を一切相続しない手続きです。
しかし、「親の借金まで受け継ぐのは避けたい」「他の兄弟と相続トラブルを起こしたくない」「相続放棄したらどうなる?」と考え、相続放棄をするか悩んでいる人は少なくありません。
しかし相続放棄には負債を背負わなくて済む安心感がある一方で、デメリットも多く存在します。
知らないまま手続きを進めると、財産を失ったり、親族との関係に影響が出たりすることもあります。
当記事では、相続放棄で生じるデメリットや、放棄前に知っておきたい注意点を解説。後悔しないための判断基準もわかりやすく解説するので、参考にしてください。

相続放棄にはいくつかのデメリットがあるため、「借金を引き継がなくて済む」という安心感だけで決断すると後悔する可能性があります。
十分に理解したうえで、本当に相続放棄すべきかを慎重に判断することが重要です。
相続放棄すると、借金だけでなく預貯金や不動産、株式、自動車など価値のある財産全てを相続する権利を失います。
「借金は放棄して、実家は相続したい」といったマイナスの財産だけを選んで放棄することは法律上認められていません。
例えば故人に500万円の借金があったものの、実は1,000万円相当の不動産と300万円の預貯金があったケースでは、相続放棄により差し引き800万円の利益を失います。
相続財産のなかに価値あるものが含まれていないか、よく精査することが重要です。
一度家庭裁判所に相続放棄の申述が受理されると、あとから「やはり相続したい」と思っても、原則としてその決定を覆せません。
相続放棄を撤回できるのは、詐欺や脅迫によって意思表示をした場合など、ごく限定的なケースのみ。「価値のある財産が見つかった」「借金が思ったより少なかった」といった理由での撤回は不可能です。
相続放棄後に価値ある財産の存在が判明しないよう、財産調査を充分にしたうえで、よく考えて相続放棄しましょう。
相続放棄をすると「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、ほかの相続人は放棄した人が相続するべきだった借金まで相続しなければなりません。
例えば「故人の借金が600万・法定相続人が子三人」のケースでは、子のうち一人が放棄すると残り二人で600万円を背負うことになり、一人あたりの負担は300万円に増えます。
相談なく相続放棄を進めると「借金を押し付けられた」と感じ、親族間の関係悪化を招きかねません。
相続放棄をする場合は、事前にほかの親族と話し合い、影響がでることを伝えておくべきでしょう。
相続権が同順位の人全員が放棄した場合、権利は次順位の法定相続人へ移ります。
例えば法定相続人である「子」全員が相続放棄した場合、相続権が次順位に移り、借金を背負うのは「故人の親(もしくは祖父母)」です。
ただし、権利が移ったことは次順位の相続人に通知されません。
「知らない間に借金を相続していた」という事態が起こりやすく、親族間のトラブルにつながる可能性があります。
なお、相続順位は次のとおりです。
配偶者は順位と関係なく、常に相続人となります。
相続放棄をしても生命保険金や死亡退職金を受け取れます。
しかし法的には相続人ではなくなるため、受け取る際に利用できる「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を適用できません。
本来なら非課税だった金額に対しても相続税(または所得税)が課せられるため、手取り額が大幅に減ってしまいます。
場合によっては相続放棄しないほうが、手元に残る金額が多い可能性もあるでしょう。
相続人全員が相続放棄をし、ほかに相続人がいない場合、故人の財産(特に家や土地)は最終的に国のものとなり失われる可能性があります。
代々受け継がれてきた実家や、思い出の詰まった土地が家族の元から失われる点に注意してください。
ただし、家系図(系譜)や仏壇・位牌(祭具)、お墓・墓地(墳墓)といった祭祀財産は相続財産に含まれないため、相続人全員が相続放棄をしても失われません。

相続放棄は、一度決断すると取り返しがつかない重要な法的手続。
後悔しないためにも、注意点を必ず理解してから判断してください。
知らずに手続きを進めると、思わぬトラブルに巻き込まれたり、相続放棄そのものができなくなったりする可能性があります。
相続放棄できるのは、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヵ月以内です。
期間を過ぎると、単純承認(全ての財産を相続する)したものとみなされます。
「知った時」とは、被相続人の死亡の事実と、自分が相続人になったことを知った時点。
例えば疎遠だった親戚の死亡を半年後に知った場合、その知った日から3ヵ月以内であれば相続放棄が可能です。
ただし期間内に財産調査が完了しない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、「相当な理由」があるとして期間を延長できる可能性があります。
遺産を少しでも使ったり処分したりすると、相続を単純承認したとみなされ、相続放棄はできなくなります。
例えば以下の行為をすると、相続放棄はできません。
なお、葬儀費用として故人の口座からお金を引き出して使う場合、社会的にみて不相当に高額でない限り、単純承認には該当せずに相続放棄はできると考えられています。
相続放棄をしても、ほかに相続財産を管理する人が現れるまで、その財産を管理者として保存する義務が残ります。
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元:民法第940条
例えば空き家が倒壊して隣人の家に損害を与えた場合、管理責任を問われて損害賠償を請求されることもあるため注意してください。
管理義務から完全に解放されるには、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続放棄は、家庭裁判所で正当な手続きを踏む必要があります。
親族間で「相続を放棄します」という念書を交わしたり、債権者に口頭で伝えたりしても、法的な相続放棄の効力は一切ありません。
たとえ遺産分割協議書に「相続分を放棄する」と記載しても、ほかの相続人に対する意思表示に過ぎず、債権者に対抗できないのです。
正式な手続きを経ずに「相続放棄した」と思い込んでいると、あとで債権者から請求を受ける可能性があるので注意しましょう。
相続放棄の手続きは、被相続人の死亡後におこなえます。
生前中に法的に相続放棄することはできません。
例えば親が生きているうちに「将来、親の財産は一切相続しない」と約束したり、相続放棄の念書を作成していたりしても、その意思表示に法的な拘束力は生まれません。
死後に「やっぱり相続する」と意見を覆すのは問題なく、反対に「生前に放棄する約束だったから」と放置していると、債権者からの取り立てを受ける可能性があります。
相続人が相続放棄をした場合、子が代わりに相続人になる「代襲相続」は発生しません。
代襲相続は、相続人が被相続人より先に死亡している場合などに発生する制度。
相続放棄した相続人は「初めから相続人ではなかった」と扱われるため、子に相続権が継がれることはありません。
例えば配偶者と子が相続人のケースにおいて、子が相続放棄をすれば、故人の父母に相続権が移るため、配偶者と父母が相続人です。
子の子(故人の孫)が代わりに相続人になることはありません。

相続放棄にはデメリットも多いですが、特に借金が多額な場合や、相続トラブルに巻き込まれたくない場合には、相続放棄が最善の解決策となることがあります。
相続放棄の最大のメリットは、被相続人が遺した借金や連帯保証債務など、マイナスの財産に対する返済義務から法的に解放されること。
例えば、故人に1,000万円の借金があり、資産が200万円しかない場合、相続放棄により800万円の債務超過から完全に解放されます。
債権者からの取り立てに怯える必要もなく、自身の財産を守れるのは大きなメリットでしょう。
相続人としての地位を失うため、時間的・精神的負担の大きい遺産分割協議に参加しなくてもよい点もメリットです。
ほかの相続人との意見対立や不毛な争いに巻き込まれるリスクを回避できます。
特に親族関係が複雑な場合や、すでに対立が生じている場合には、相続放棄によって精神的な平穏を保つことができるでしょう。
遺産分割調停や審判といった長期化しやすい手続きからも解放されるため、時間的な負担も大幅に軽減されます。
相続放棄は一度きりの重大な決断。
迷ったときには、本当に相続放棄が最善の選択なのか、ほかに取るべき方法はないのかを慎重に検討してください。
預貯金や不動産といったプラス財産で、借金などのマイナス財産を十分に返済できる場合は、相続放棄しないほうがメリットが大きいでしょう。
債務超過が明らかでない限り、安易に放棄すべきではありません。
焦って相続放棄を選択する前に、故人の全財産を正確に調査してください。
財産調査には、預貯金の残高証明書、不動産の評価証明書、借用書、信用情報機関への照会などが必要です。
特に隠れた資産(生命保険、投資信託、貸付金など)の存在を見落とさないよう、徹底的に調査しましょう。
財産の全体像が不明な場合や、実家など特定の財産を残したい場合には、「限定承認」を検討しましょう。
限定承認は、相続で得たプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を弁済すればよいという制度。
例えば、実家(評価額1,000万円)を残したいが借金が1,500万円ある場合、限定承認により実家を売却せずに、その価値の範囲内(1,000万円)だけ借金を返済することで、残りの500万円の債務から解放されます。
ただし、限定承認は相続人全員で申し立てる必要があり、手続きも複雑なため専門家の助けが不可欠です。
相続放棄は次の5つのステップで進めます。
手続きは、被相続人(故人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所でおこないます。
一般的に必要な書類は、相続放棄の申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人(放棄する人)の戸籍謄本などです。
申立て後、約1週間~2週間で裁判所から意思確認のための照会書が送付されるので、それに回答・返送し、問題なければ相続放棄申述受理通知書が交付されて手続きが完了します。
なお、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が費用としてかかります。
相続放棄の手続きは自分でもできます。
必ずしも弁護士に依頼する必要はなく、申述書の書き方もさほど困難ではありません。
しかし被相続人の財産状況を正確に把握しないまま放棄すると、不利益を被る可能性があります。
「借金があると思って放棄したら、実際にはプラスの財産で十分まかなえた」というケースも少なくありません。
特に3ヵ月の期限が迫っている、財産状況が複雑、ほかの相続人との関係が悪いといった場合は、弁護士に依頼するのが最も確実な方法です。
弁護士は戸籍謄本などの書類収集から正確な財産調査の実施、ほかの相続人や債権者との交渉まで、相続放棄に関する全ての法的手続きを代行できます。
一任すれば、不慣れな手続きからも解放されるためおすすめです。
ポータルサイト「ベンナビ相続」では、相続放棄を含む遺産分割や相続トラブルに対応できる弁護士を効率よく探せます。
初回相談無料や土日相談可能な法律事務所も多く掲載されているので、気軽に探してみてください。
相続放棄を検討している方から寄せられる代表的な質問にお答えします。
疑問を解消すると、より適切な判断ができるようになります。
主に以下のケースでは、相続放棄が認められません。
特に、財産に手をつけてしまう事例は多く存在するため注意しましょう。
1円でも使うと単純承認とみなされ、相続の意思があると判断されます。
ただし葬儀費用として財産を使う場合、金額が社会通念上相当な範囲を超えていれば問題ありません。
判断に迷う場合は、必ず弁護士に相談してから行動することが重要です。
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自分でおこなう場合 |
3,000円程度 《内訳》 相続放棄申述書に添付する印紙代:800円 被相続人の戸籍謄本:450円 被相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本:750円 被相続人の住民票:300円程度 申述人の戸籍謄本:450円 郵便切手代:500円程度 そのほか(交通費など) |
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弁護士に依頼する場合 |
10万円前後 《内訳》 相談料:1時間あたり5,000円~1万円程度(初回相談無料の事務所もある) 申述書作成代行費用:5,000円〜1万円程度 代行手数料:5万円~10万円程度 成功報酬:なし |
自分で手続きをおこなう場合は、実費として3,000円程度です。
コストを抑えたい方は自分で全ておこなうのも選択肢のひとつでしょう。
弁護士に依頼する場合は、相談料・申述書作成代行費用・手数料あわせて10万円前後が相場。
自分でおこなうよりも費用はかかりますが、正確な手続き完了が約束されており、精神的・時間的負担を減らせるメリットがあります。
相続放棄が受理されたあとであっても、相続財産を隠したり、消費・処分したりする行為は絶対にしてはいけません。
これらの行為は、債権者の権利を害する「詐害行為」とみなされる可能性があります。
最悪の場合、相続放棄の効力が債権者から否認されたり、損害賠償を請求されたりするリスクがあるため気を付けてください。
最大のデメリットは、ほかの兄弟姉妹の借金返済の負担が増えたり、次順位の親族に相続権が移ったりすることにより、親族関係のトラブルに発展しやすい点。
相続放棄したことが家庭裁判所からほかの相続人に通知されることはないため、事前に相談したり、次の相続人に連絡入れたりすることが重要です。
また、自身の子(故人からみて甥・姪)への代襲相続はできません。
「子に相続させたい」と思っても不可能な点は理解しておきましょう。
相続放棄は借金の返済義務を免れる有効な方法ですが、次のようなデメリット・リスクが潜んでいます。
さらに、相続放棄は撤回できないことや、放棄後も管理義務を負う場合がある点なども理解しておきましょう。
相続放棄して後悔しないためには、財産調査をしっかりとおこなうのが重要。
必要に応じて弁護士に相談するのがおすすめです。
「ベンナビ相続」では相続・遺産問題に強い弁護士を探せるので、ぜひ利用してみてください。
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