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相続財産清算人の予納金はいくら?相場や支払えない場合の対処法を解説

代表弁護士 野条 健人
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被相続人の財産を引き継ぐ人がいないケースなどでは相続財産清算人が選任され、相続財産清算人が被相続人の財産の管理や清算をおこないます。

相続財産清算人を選任する場合、業務をおこなう際の経費や報酬として「予納金」を支払う必要があります。

予納金の金額は財産状況などによって変わり、場合によっては返還されることもあるほか、経済的な事情で支払えない方については救済制度などもあります。

本記事では、相続財産清算人の予納金や費用相場、相続財産清算人が選任されるケースや選任の流れなどを解説します。

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相続財産清算人とは?

まず、相続財産清算人は被相続人の財産を管理・清算するのが主な役割で、債務がある場合は債権者に返済したり、残った財産があれば国庫に帰属させたりします。

基本的な選任の流れとしては、被相続人の利害関係人や検察官が家庭裁判所に申立てをしたのち、裁判所によって相続財産清算人が選ばれます(民法952条)。

候補者がいない場合や、裁判所が「候補者は適任ではない」と判断した場合などは、被相続人と利害関係のない弁護士や司法書士などの士業が選ばれるのが一般的です。

相続財産清算人が選任されるケース

ここでは、どのような場合に相続財産清算人の選任が必要になるのか解説します。

相続人がいない場合

被相続人の財産を引き継ぐ人がいなければ、相続財産清算人の選任を申し立てるのが一般的です。

ただし、必ずしも相続財産清算人の選任が必要なわけではありません。

たとえば「被相続人が財産をほとんど残していない」というような場合は、財産の処分・清算をする必要がなく、申立てをせずに済ませることもあります。

なお、「行方不明の状態で生存しているかどうかわからない相続人がいる」というような場合は、行方不明者の代わりに財産管理をおこなう「不在者財産管理人」を選任してもらう必要があります。

相続人全員が相続放棄をした場合

相続人全員が相続放棄をした場合も、「相続人がいない場合」と同様に相続財産清算人を選任することになります。

なお、「被相続人名義の家に住んでいる相続人がいる」というようなケースでは、相続放棄後も相続財産清算人に財産を引き渡すまで保存義務が残ります。

相続財産の保存義務から免れるためにも、相続財産清算人の選任を申し立てて対応を引き継いでもらう必要があります。

特別縁故者が財産分与を受けたい場合

特別縁故者とは、以下のように被相続人と特別な関係があった人のことです。

  • 内縁の妻や夫など、被相続人と生計を同じくしていた人
  • 師弟関係などの親子同然の関係にあった人、献身的に看護や介護をしていた人
  • 地方公共団体・宗教法人・学校法人 など

被相続人に相続人がいる場合、基本的に特別縁故者は財産を受け取ることができません。

被相続人に相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合などに相続財産清算人が選任されれば、申立てをおこなうことで相続財産の全部もしくは一部を受け取ることができます。

債権者が返済を希望する場合

相続人が誰もいなかったり相続人全員が相続放棄をしたりしても、被相続人が抱えている債務自体はなくなりません。

だからといって債権者が勝手に被相続人の財産を処分することはできませんが、相続財産清算人が選任されれば、相続財産清算人を介して支払いを受けることができます。

相続財産清算人の選任にかかる費用(予納金)

相続財産清算人を選任する場合、申立費用や予納金などがかかります。

予納金とは、相続財産清算人が業務をおこなう際の経費や報酬として支払うお金のことです。

ここでは、具体的にいくらかかるのか解説します。

申立費用:数千円程度

相続財産清算人の選任を申し立てる際の費用は以下のとおりです。

項目

金額

収入印紙代

800円

切手代

1,000円~2,000円程度(申立て先によって異なる)

官報公告料

5,075円

切手代については裁判所によって異なり、詳しくは「裁判所の管轄区域|裁判所」から確認してください。

専門家報酬:月1万円~5万円程度

弁護士や司法書士などが相続財産清算人として選任された場合、月1万円~5万円程度の費用がかかります。

予納金:20万円~100万円程度

予納金については20万円~100万円程度かかるのが一般的です。

あくまでも予納金は「被相続人の遺産では経費などを賄えないときに備えて支払うもの」であるため、被相続人の財産状況によって金額は異なります。

たとえば「被相続人が多額の財産を遺していた」というようなケースでは、相続財産清算人の業務が終了しても予納金が余ることもあり、その場合は余剰分が返還されます。

相続財産清算人の費用を抑える方法はある?

基本的に、予納金は申立て後1ヵ月以内に支払わなければいけません。

予納金を支払うだけの余裕がない場合は、法テラスの「民事法律扶助制度」が利用できないか確認しましょう。

法テラスは、法律トラブルの解決をサポートしてくれる公的機関で、経済的に余裕がない方を対象に費用の一時立て替えなどをおこなっています。

法テラスの民事法律扶助制度では最大50万円まで立て替えてくれて、立て替え後は毎月5,000円~1万円返済していくことになります。

ただし、民事法律扶助制度を利用するには、法テラスが定める資力基準などを満たしている必要があり、詳しくは「民事法律扶助業務|法テラス」を確認してください。

相続財産清算人が選任されるまでの流れ

ここでは、相続財産清算人の選任を申し立てる際の流れを解説します。

申立てができるのは「利害関係人」か「検察官」だけ

相続財産清算人の選任の申立ては「被相続人の利害関係人」と「検察官」しかできません。

(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。

引用元:民法第952条

以下では、利害関係人と検察官について解説します。

利害関係人とは

利害関係人とは「直接の当事者ではないものの、法律上の利害関係を有する人」のことです。

たとえば、以下のような人が該当します。

  • 特別縁故者
  • 相続債権者
  • 受遺者(遺言で財産をもらう人)
  • 遺言執行者
  • 成年後見人
  • 被相続人の財産を管理している人
  • 被相続人の財産に含まれる不動産の抵当権の担保権者
  • 地方公共団体 など

検察官とは

検察官とは「犯罪の捜査や公訴などを担当する国家公務員」のことです。

被相続人に相続人がいない場合、債権者への弁済などをしたのち、財産が余っていれば国庫へ帰属します。

しかし、そのためには相続財産清算人が必要になるため、検察官による相続財産清算人の選任の申立てが認められています。

1.必要書類や費用を準備する

相続財産清算人の選任の申立てをおこなうためには、以下で解説する書類や費用などが必要です。

必要書類

申し立てる際に必要な書類は以下のとおりです。

  • 相続財産清算人の選任の申立書
  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 被相続人の子ども(およびその代襲者)が亡くなっている場合、その子ども(およびその代襲者)の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の兄弟姉妹が亡くなっている場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 甥または姪が代襲者でありながら亡くなっている場合、その甥または姪の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 財産目録
  • 相続財産を証明する資料(不動産登記事項証明書・通帳の写し・残高証明書など)
  • 利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証明する資料(金銭消費貸借契約書の写しなど)
  • 相続財産清算人の候補者がいる場合、その住民票または戸籍附票

上記のうち、申立書や財産目録などは「相続財産清算人の選任の申立書|裁判所」でダウンロードできます。

ただし、戸籍関係の書類は本籍地の市区町村役場で取得しなければいけません。

弁護士であればこれらの必要書類を代わりに集めてくれるため、手間なくスムーズに済ませたい場合は依頼することをおすすめします。

申立書や財産目録の作成例・サンプル

申立書や財産目録は、以下のような書式になっています。

引用元:相続財産清算人の選任の申立書|裁判所

引用元:相続財産清算人の選任の申立書|裁判所

【以下の各リンクからダウンロードできます】

2.家庭裁判所に提出する

必要書類や費用を準備できたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

管轄先は「裁判所の管轄区域|裁判所」で確認できます。

3.家庭裁判所にて審理・選任がおこなわれる

申立てが完了すると家庭裁判所にて審理がおこなわれ、提出内容に問題がなければ相続財産清算人が選任されます。

複雑な相続手続きには「ベンナビ相続」で弁護士に相談を

相続財産清算人の選任手続きではさまざまな書類が必要で、場合によってはいくつもの役所を回って集めなければならないこともあります。

「自分で手続きできるか不安」「なるべく手間なく済ませたい」という場合は、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

弁護士なら、依頼者の代理人として書類収集などの面倒な対応を代わってくれて、ミスなくスムーズに済ませてくれます。

当サイト「ベンナビ相続」では、相続に強い全国の法律事務所を掲載しており、相談内容や地域ごとに対応可能な法律事務所を一括検索できます。

初回相談無料の法律事務所も多くあり、相談だけの利用も可能ですので、まずは一度利用してみましょう。

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相続財産清算人が選任されたあとの流れ

相続財産清算人の選任後は、以下のような流れで手続きが進行します。

  • 相続財産清算人の選任・相続権主張の催告
  • 相続債権者・受遺者に対する請求申出の催告
  • 相続債権者・受遺者への弁済
  • 特別縁故者による財産分与の申立て
  • 共有者への共有持分の帰属
  • 国庫への帰属

ここでは、各手続きについて解説します。

1.相続財産清算人の選任・相続権主張の催告

まずは、相続財産清算人が選任されたことや、相続人に対して相続権を主張すべき旨などについて官報に掲載されます(民法第952条)。

官報とは「政府が発行する機関紙」のことで、6ヵ月以上公告がおこなわれます。

この期間内に相続人が名乗り出てきた場合、相続人へ財産が渡されて手続き終了となります。

なお、民法改正前は②のあとに相続権主張の催告をおこなっていましたが、民法改正によって「相続財産清算人の選任」と同時におこなうように変更されました。

2.相続債権者・受遺者に対する請求申出の催告

次に、相続債権者や受遺者に対して、請求の申し出をするように公告をおこなう必要があります(民法第957条第1項)。

なお、すでに相続債権者や受遺者が判明している場合は、上記の公告だけでなく個別での催告も必要です(民法第957条第2項第927条第3項)。

公告などは2ヵ月以上おこなわれ、①の公告期間内には終了するように調整しなければいけません。

3.相続債権者・受遺者への弁済

②が終了したあとは、相続財産清算人が被相続人の財産から相続債権者に弁済をおこなったのち、受遺者に弁済します。

弁済によって被相続人の財産が全てなくなった場合は、そこで手続き終了となります。

4.特別縁故者による財産分与の申立て

①の公告期間が終了しても相続人が名乗り出てこなかった場合、被相続人の特別縁故者は、残っている相続財産の全部または一部を受け取ることができます(民法第958条の2)。

ただし、そのためには「①の公告期間終了後の3ヵ月以内」に、家庭裁判所にて財産分与の申立てをおこなう必要があります。

5.共有者への共有持分の帰属

残っている相続財産の中に不動産などの共有持分になっているものがあれば、その部分はほかの共有者のものとなります(民法第255条)。

6.国庫への帰属

これまでの手続きを経ても相続財産が残っている場合は、国庫へ帰属されます(民法959条)。

国庫への帰属が済んだあとは、相続財産清算人が家庭裁判所に管理終了報告書を提出して終了となります。

相続人がいない場合の生前対策は遺言書作成がおすすめ

なかには「現在は独り身で、将来亡くなった際に相続人がいない」という方もいるでしょう。

そのような場合は、生前対策として遺言書を作成しておきましょう。

遺言書にて、遺言内容を実行する「遺言執行者」を指定しておけば、相続財産清算人を選任しなくてもスムーズな財産処分が望めます。

ただし、遺言書作成の知識がない素人では、適切な形式で作成できずに効力が無効になるおそれがあるため、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

弁護士であれば、亡くなったあとに相続トラブルが発生しないように考慮しながら、被相続人の希望を遺言書に反映させつつ、適切な形式で遺言書を作成してくれます。

さいごに

相続財産清算人を選任する場合は予納金として20万円~100万円程度かかるほか、申立費用として数千円程度、専門家報酬として月1万円~5万円程度かかります。

法テラスの民事法律扶助制度では最大50万円まで一時的に立て替えてくれるため、金銭的に困窮していて利用条件を満たしている方は利用するのがおすすめです。

裁判所に申し立てる際はさまざまな書類なども準備する必要がありますが、弁護士なら代理人として対応してくれるほか、生前対策として遺言書作成などを依頼することもできます。

ベンナビ相続なら希望条件に合った弁護士を効率的に探せますので、自力での相続手続きが不安な場合は一度利用してみましょう。

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この記事の監修者
かがりび綜合法律事務所
代表弁護士 野条 健人 (大阪弁護士会)
地元に根差した法律事務所で、地域とのつながりをベースにした親身な対応に定評あり。遺産分割などの相続トラブルのほか、生前対策にも力を入れ、財産管理や「終活」に関する豊富な知見を有する。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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