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遺産分割協議のやり直しは可能?できる条件や注意点などをくわしく解説

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一度は合意して終えたはずの遺産分割協議。

しかし、協議後に新たな遺産が見つかったり、あとから「本当にこれでよかったのか」と疑問がわいたりして、やり直しを検討している人もいるでしょう。

本記事では、遺産分割協議のやり直しが可能かどうか、やり直しが認められる条件を解説します。

遺産分割協議のやり直しにおける手順や注意点も解説するので、ぜひ最後までお読みください。

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目次

遺産分割協議はやり直しが可能

一度成立した遺産分割協議でも、やり直すことは可能です。

しかし「なんとなくやり直したい」「気が変わったから異なる内容に変更したい」などの単純な理由だけでは、遺産分割協議をやり直すことはできません

相続人全員がやり直しについて合意している、新しい財産がみつかったなどの条件に該当した場合に可能となります。

遺産分割協議のやり直しができる条件については、次章で解説します。

遺産分割協議のやり直しができる5つのケース

遺産分割協議のやり直しが認められるケースは、5つです。

自身の状況がどれかに当てはまるか、確認しながら読み進めてみてください。

相続人全員の合意がある場合

相続人の全員が、すでに成立している遺産分割協議の一部を合意により解除し、改めて遺産分割協議をすることは可能と解されています(最高裁昭和53年2月17日判決)。

したがって、相続人全員の合意がある場合には、遺産分割をやり直すことが可能です。

前回の遺産分割協議に参加した結果、財産を取得しなかった相続人がいたとしても、その相続人の同意も必要になります。

しかし一人でもやり直しに反対すれば、遺産分割協議のやり直しはできません。

相続人全員が参加していない場合

遺産分割は、必ず相続人全員が参加しておこなわなければなりません。

相続財産は相続人全員の共有であり、その処分には共有者である相続人全員の同意を要するためです(民法898条、民法251条)。

したがって、一部の相続人が参加せずにおこなわれた遺産分割は無効であり、遺産分割のやり直しが必要となります。

なお、遺言書で包括受遺者が指定されている場合において、包括受遺者が参加せずにおこなわれた遺産分割も無効です。

用語解説
包括受遺者
遺産を具体的に指定せず、割合のみを指定されて遺贈を受けた者。

無効により、遺産分割協議をやり直す場合は、地方裁判所に訴訟を提起し、判決が確定してから遺産分割調停をおこなうことになります。

また相続人が遺産分割について同意を与えるためには、意思能力(法律行為の結果を認識・判断できる精神能力)をもっている必要があります(民法3条の2)。

遺産分割協議書の締結当時、意思能力を有しない相続人については、成年後見人を選任して遺産分割に参加させなければなりません。

意思能力を有しない相続人が参加しておこなわれた遺産分割は、不参加の相続人がいた場合と同様に無効となります。

未成年者の相続人について、特別代理人の選任を怠った場合

相続人が未成年者の場合、原則として法定代理人が代わりに遺産分割に参加します。

しかし、未成年者が相続人となる場合は、その法定代理人(親)も同じく相続人であるケースが多いです。

この場合は利益相反関係が生じるため、未成年者のために特別代理人を選任しなければなりません(民法826条1項)。

特別代理人を選任せず、法定代理人が未成年者に代わって同意を与えた遺産分割は無効です。

新たな財産が見つかった場合

遺産分割協議の成立後、協議書に記載されていなかった新たな遺産が見つかることがあります。

当初の協議の対象になっていなかった財産が発見された場合、その財産についてはまだ分割方法が決まっていない状態です。

そのため、新たに見つかった財産について、相続人全員が遺産分割協議をやり直すと同意があれば、やり直しをおこなえます。

なお、新たな財産が見つかった場合は、その財産の分配だけ決めることも可能です。

新たな遺産分割方法の合意が得られなければ、調停委員を介して話し合う「遺産分割調停」を申し立てられます。

どちらの方法をとるかは、相続人間の話し合いで決めることになります。

重要な錯誤・詐欺・強迫があった場合

ほかの相続人の詐欺・強迫や錯誤によって遺産分割に同意した場合、詐欺や強迫に基づいて同意の意思表示を取り消すことができます(民法96条1項)。

また、詐欺をおこなったのが相続人以外の第三者である場合にも、遺産分割の詐欺取り消しが認められるケースがあります。

遺産分割協議の取り消しや無効を求める場合は、相続人全員が参加していなかった場合と同様に、地方裁判所に「遺産分割協議無効確認訴訟」を提起しましょう。

ただし相続人が詐欺の事実を知り、または知ることができたときに限るため、第三者が善意無過失だった場合は、詐欺取り消しはできません(民法96条2項、3項)。

なお、強迫をおこなったのが相続人以外の第三者だった場合は、取り消しは特に要件の限定なく認められるため、第三者が善意無過失でも取り消しを主張できます

遺産分割協議のやり直しは基本的には時効がない

遺産分割協議には時効がありません

したがって、相続が開始してから数年が経過していても、相続人全員の合意があれば、いつでも協議をやり直せます。

ただし、やり直しの「理由」によっては時効が関係してくるケースもあるため、その点は注意が必要です。

錯誤・詐欺・強迫が理由のやり直し(取消権)には時効がある

遺産分割協議のやり直したい(取消権)理由が、錯誤・詐欺・強迫だった場合は、時効が適用されてしまいます。

取消権の時効は、追認をすることができるときから5年、行為のときから20年です(民法126条)。

「追認をすることができる時」とは、「騙されていたことに気づいた時」や「脅迫状態から脱した時」などを指します。

たとえ騙されたことに気づかないままであっても、遺産分割協議の時から20年が経過すると、取消権は行使できなくなります。

相続開始から10年経過後は特別受益・寄与分が主張できなくなる

遺産分割をやり直せるとしても、2023年4月1日から施行された改正民法の影響に注意が必要です。

改正民法904条の3に基づき、相続開始から10年が経過すると、遺産分割の際に原則として特別受益・寄与分を主張できなくなります。

用語解説
特別受益
相続人が被相続人から特別に受けた遺贈・贈与。原則として、特別受益のある相続人の相続分は減り、それ以外の相続人の相続分は増える。
寄与分
事業への協力や介護などにより、相続財産の維持・増加に貢献した相続人に認められる。寄与分のある相続人の相続分は増え、それ以外の相続人の相続分は減る。

(期間経過後の遺産の分割における相続分)

第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。

ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

引用元:民法|e-GOV法令検索

上記のルールは、施行日の2023年4月1日以前に開始した相続にも適用されます

ただし、施行日の段階で相続開始から5年が経過している場合には、施行日から5年経過以降に上記のルールが適用されます。

(例)
2017年4月1日に被相続人が死亡(相続開始)
→特別受益・寄与分を主張できなくなるのは、2028年4月1日以降

時間が経ってから遺産分割をやり直す際は、上記のルールが適用され、特別受益・寄与分を主張できなくなる可能性がある点に注意してください。

遺産分割協議をやり直す方法

遺産分割協議のやり直しは、状況によって方法が異なります。

ここでは、遺産分割協議をやり直す方法を解説します。

1.新たな遺産が見つかった場合

新たに見つかった財産が、まだ分割方法が決まっていない状態にあるため、その財産についてのみ追加で遺産分割協議をおこなうのが一般的です。

相続人全員で話し合いの場を設け、新たに見つかった遺産の分け方を協議し、合意できれば追加の遺産分割協議書を作成しましょう。

しかし新たに見つかった財産が遺産分割に影響する場合や、話し合いで合意に至らなかった場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要があります。

遺産分割調停は、新たに見つかった財産を対象に、調停委員を介して分割方法の合意を目指す手続きです。

各相続人の主張を聞き、解決に向けたアドバイスを提案してくれます。

2.相続人全員が参加していなかった、錯誤・詐欺・脅迫があった場合

遺産分割協議で、一人でも相続人が欠けていた場合や、重大な錯誤・詐欺・脅迫があった場合は、遺産分割協議の無効を求めましょう。

無効を求める際は、地方裁判所に「遺産分割協議無効確認訴訟」という訴訟を提起します。

訴訟により判決が下されたら、家庭裁判所に改めて遺産分割調停を申し立て、分割方法を決めていくという流れになります。

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遺産分割をやり直す際の4つの注意点

遺産分割のやり直しは可能ですが、安易に進めると予期せぬ不利益を被る可能性があります。

ここでは、やり直しを検討する際に必ず押さえておきたい4つの注意点を解説します。

遺産分割協議をやり直すリスクも理解したうえで、慎重に判断しましょう。

贈与税・譲渡所得税が二重課税になる可能性がある

遺産分割協議をやり直す際に、注意すべきなのが税金の問題です。

遺産分割協議をやり直す場合、税務上は「一度目の協議で確定した相続財産を、相続人間で贈与・譲渡したもの」とみなされるリスクがあります。

また新たな財産が見つかっている場合は、前回よりも税金の納付額が増える可能性もあります。

前回の遺産分割協議であった相続税とは別に、贈与税や譲渡所得税が発生するリスクを十分に理解しておきましょう。

無効・取り消しの場合は相続税額の修正が発生することがある

遺産分割協議が無効であったり、詐欺や強迫などを理由に取り消した場合は、最初の協議自体がなかったことになるため、やり直したあとの内容が本来の相続として扱われます。

ただし、すでに相続税の申告と納税を済ませている場合は、税額を修正するための手続きが必要です。

手続きを無視していると、あとからペナルティが発生するため、必ず修正申告をおこないましょう。

登録免許税と不動産取得税が発生する場合がある

遺産分割協議のやり直しに伴って不動産を再移転する場合、法務局に登記申請をおこなうときに、登録免許税を改めて納付する必要があります。

合意による再分割の場合も、無効・取り消しによる再分割の場合も、登録免許税の納付が必要となる点に注意してください。

また遺産分割協議をやり直したことで、不動産が売買や贈与の扱いとなるため、不動産取得税も課税される場合があります。

ただし、相続による不動産の取得に対しては、不動産取得税が非課税となります。

税金面で不安な人は、税理士や弁護士に相談しましょう。

第三者は保護されるため完全なやり直しができない

前回の遺産分割協議後、財産が売却などで第三者の手にわたっている場合があります。

この場合、第三者は保護されているため、財産の返還を求めることができません

ただし、財産の売却益を相続財産に組み込み、遺産分割協議をおこなうことは可能です。

このように、元々存在していた財産が、遺産分割協議のやり直しの時点で消滅している場合は、完全なやり直しができない点を押さえておきましょう。

遺産分割のやり直しについて弁護士に相談する3つのメリット

遺産分割協議のやり直しは、税務や法律に関する専門的な知識が不可欠です。

安易に遺産分割協議を進めて後悔しないためにも、まずは相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

ここでは、弁護士に相談すると得られるメリットを3つ解説します。

遺産分割協議の具体的なアドバイスを受けられる

遺産分割協議をやり直す際には、各相続人の希望や家庭の事情などを踏まえて、総合的に望ましい分割方法を検討しなければなりません。

無効・取消事由の該当性や税法上の取り扱いなど、通常の遺産分割にはない特有の注意点も存在します。

そこで弁護士に相談すると、個々の事情を十分に汲み取った上で、適切な分割方法について具体的なアドバイスをもらえるので安心です。

手続きを一任できるためトラブルの再発防止ができる

遺産分割協議のやり直しでは、協議書を再作成する必要があります。

協議書に不備があると、あとにおこなう手続きが進められなかったり、新たなトラブルの原因になったりする可能性があります。

しかし、弁護士に依頼すると、将来のトラブルを防ぐために抜けのない協議書を作成してもらうことが可能です。

また、相続人間の話し合いで合意に至らなかった場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。

弁護士に依頼していれば、法的な手続きも全て代理人として進めてもらえるため、精神的な負担を大幅に軽減できるでしょう。

税理士と連携している事務所なら税務上のアドバイスも受けられる

遺産分割のやり直しは、法律問題と税金問題が密接に絡み合っているため、弁護士だけでなく、税金に詳しい税理士との連携が重要です。

相続問題に力を入れている法律事務所の多くは、税理士と連携しています。

そのような事務所に相談すれば、法的な解決策と税務上のリスクを同時に検討し、依頼者にとって最も有利な方法を提案してもらうことが可能です。

遺産分割のやり直しを依頼する弁護士を選ぶ際には、税理士との連携状況にも注目するとよいでしょう。

まとめ|遺産分割のやり直しを弁護士に相談するなら「ベンナビ相続」

遺産分割協議のやり直しは、相続人全員の合意がある、新たな財産が見つかったなどのケースでおこなえます。

しかし、安易におこなうと高額な贈与税が課されるなどのリスクもあります。

遺産分割協議のやり直しを検討しているなら、相続問題に強い弁護士に相談しましょう。

ベンナビ相続」では、お住まいの地域や相談したい内容に応じて、自身の状況に合った弁護士を簡単に検索できます

無料相談に対応している事務所も多数掲載されていますので、まずは気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者
金森総合法律事務所
金森 将也 (愛知県弁護士会)
23年以上のキャリアを持ち、高度な専門知識で安心のアドバイスを提供。「話しやすさ」と「的確な見通しの提示」を大切にしています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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