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遺産分割協議書に押印後、騙されたことが発覚!取消し可否と対処法・注意点を解説

みとみらい法律事務所
後藤 直樹
監修記事
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遺産分割協議で騙されたのではないかと不安に感じていませんか?

一度合意した遺産分割の内容を取り消すことはできるのか、どのように対処すればよいのか悩んでいる方もいるでしょう。

本記事では、遺産分割協議書を取り消せる要件、騙されたことが発覚した場合の対処法などについて解説します。

遺産分割での嘘や詐欺の具体例も紹介しているので、気になる方はぜひチェックしてください。

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騙されたことが発覚したら、遺産分割協議書を取り消せる可能性がある

遺産分割協議に一度合意してしまっても、錯誤・詐欺などの理由で取り消せる可能性があります。

錯誤とは、遺産分割の内容について相続人が重大な誤解をしたまま合意してしまうことです。

また詐欺とは、ほかの相続人がついた嘘を信じたまま合意をおこなうことを指します。

そのほか、相続人からの強迫により無理やり遺産分割協議書に押印させられた場合も、その意思表示を取り消すことが可能です。

(錯誤)

第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

(略)

(詐欺又は強迫)

第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

引用元:民法|e-Gov法令検索

遺産相続で騙される可能性がある主な嘘や詐欺の例

遺産分割協議の際によくある嘘や詐欺の例を5つ紹介します。

高額な遺産が隠されていた

相続人が故意に遺産を隠すケースがあります。

被相続人の財産管理をおこなっている相続人が、タンス預金・預金口座・金庫などの存在をわざと隠し、自分のものにしようと企む可能性があるでしょう。

この場合、遺産総額が実際と大きく変わることもあり、適切に遺産分割をおこなうことができません。

遺産分割協議に大きな影響のある生前贈与を報告しなかった

被相続人から遺産分割協議に大きな影響がある生前贈与を受けていたにも関わらず、報告されないケースがあります。

この場合、遺産分割を正しくおこなえない可能性があるのです。

一部の相続人が被相続人の遺贈や生前贈与などで得た利益を「特別受益」といいます。

遺産分割を公平におこなうためには、相続財産と特別受益を合算して相続分を決めなくてはなりません。

反対に特別受益を隠されてしまうと、ほかの相続人にとっては不公平な遺産分割がおこなわれることになるのです。

ただし被相続人から受けた生前贈与が、全て特別受益とされるわけではありません。

特別受益とみなすか否かは、被相続人の収入や資産、社会的地位、ほかの相続人とのバランスなど、いろいろな事情が考慮されるのです。

たとえば100万円の生前贈与があっても、富裕層なら「子どもの扶養の範囲」として特別受益とみなされない可能性があります。

一方、低所得世帯であれば、特別受益とされる可能性が高くなるわけです。

特別受益にあたるか否かは、相続問題に注力する弁護士に相談して判断してもらうことが推奨されます。

自分のために多額の遺産を使い込んだことを黙っていた

被相続人の財産を私用で使い込んだことを黙っているケースもあります。

遺産分割する前の財産は相続人全員の共有財産なので、個人的な目的で勝手に使ってはいけません。

分割前にもかかわらず私用で使ってしまった相続人は、「被相続人の葬儀費用に充てた」など都合のよい嘘をつくことも多く注意しなくてはなりません。

相続財産の売却額を、実際よりずっと低く伝えていた

相続遺産に含まれている不動産の売却を任されていた相続人が、実際の売却価格よりずっと低くほかの相続人に伝えるケースもあります。

この場合、本来であれば不動産を売却して得たお金も含めて遺産分割をしなくてはなりません

しかしほかの相続人に低く伝えて、その差額を自分のものにしてしまうわけです。

ほかの相続人からみれば「騙された」ことになります。

自分に都合の悪い遺言書を破棄・偽造していた

自分にとって不利な遺言書を破棄したり偽造したりするケースもあります。

遺言書の存在を知っている相続人が一人だけである場合、「ほかの相続人にはバレないだろう」と考え破棄・偽造をしてしまうケースがあるのです。

遺言書が破棄・偽造された場合、被相続人の意思を適切に実現できず、遺産分割も正しくおこなうことができません。

騙されて作成された遺産分割協議書を取り消すための要件

ほかの相続人に騙されたまま遺産分割協議に合意してしまった場合「詐欺取消し」が認められます。

詐欺取消しが認められる要件は、以下のとおりです。

  1. ほかの相続人による騙す行為が存在したこと
  2.  ①の行為によって錯誤(重大な誤解)に陥ったこと
  3.  ②の錯誤に基づいて意思表示をおこなったこと

具体的には、以下のようなケースで取り消しが可能です。

  • ほかの相続人が財産を故意に隠したために、相続財産の一部が判明していない状態で遺産分割をおこなってしまった場合
  • 不動産の売却額を実際よりも低くほかの相続人に伝えることで、自分にとって有利な遺産分割に同意するよう誘導し、結果的にその内容で遺産分割の合意がなされた場合

相続人の嘘や隠ぺいによりほかの相続人が誤解をし、そのまま遺産分割に合意してしまった場合は、詐欺取消しをおこなえると考えられます。

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遺産分割協議で騙されていたことが発覚した場合の対処法

遺産分割協議で騙されていたことに気づいた場合の対処法を4つ紹介します。

ほかの相続人に内容証明郵便で取り消しの意思表示をする

取消しをおこなう場合、ほかの相続人全員に対して意思表示をしなければなりません。

取消しの意思を正式なものとして伝えるために、内容証明郵便を利用するのが確実です。

内容証明郵便とは、送付した郵便物の内容を記録として残すことができるサービスです。

騙した相続人が「取消しの意思表示など受けていない」と嘘をついても、取消権を行使したことをきちんと証明できます。

内容証明郵便を送付するには、取消しの意思を示す文書の謄本を作成する必要があるほか、480円の加算料金がかかります。

詳しい作成方法・送付方法は郵便局のホームページで確認できるので、チェックしてみるとよいでしょう。

詐欺行為をしていた相続人を相続手続きから除外する

詐欺行為をおこなった相続人は、相続欠格となります。

相続欠格とは、被相続人の遺言を破棄・偽造したことなどにより相続権を失うことです。

相続欠格者は相続人としての資格を喪失するので、遺産分割協議に参加することは当然できません。

詐欺行為をおこなった相続人を除いて遺産分割協議をおこなえるため、適切な遺産分割を実現できます。

相続人全員の合意を得て遺産分割協議をやり直す

相続人に騙された状態でおこなった遺産分割は適切とはいえないので、最初からやり直しましょう。

詐欺行為をした相続人が自分の非を認め、ほかの相続人全員が遺産分割協議のやり直しに同意している場合は、遺産分割を再度おこなうことができます。

遺産分割協議無効確認の調停を申し立てる

相続人同士の話し合いで合意を得られなかった場合は、遺産分割協議無効確認の調停を申し立てることを検討します。

遺産分割協議無効確認の調停は、調停委員が各相続人から個別に主張を聞き合意形成を図る手続きです。

調停委員に事情を伝え、遺産分割やり直しの合意がはかれるよう調整してもらいましょう。調停でも相続人の合意が得られない場合は、訴訟の提起を検討することになります。

なお、調停で合意をはかるのか難しそうな場合は、調停をとばし訴訟を申し立てることも可能です。

遺産分割無効確認訴訟を提起する

詐欺行為をした相続人が「そんな嘘はついていない」「言いがかりだ」などと言って非を認めない場合は、遺産分割無効確認訴訟を提起します。

遺産分割無効確認訴訟では、相続人が詐欺行為をしたことを裁判で立証する必要があります。

詐欺取消しが成立する要件を踏まえて、論理的に主張をしましょう。

訴訟を自力で有利に進めるのは決して簡単ではないので、遺産分割無効確認訴訟をおこなう場合は弁護士に依頼してサポートを受けるのがおすすめです。

遺産分割協議書を取り消したい場合の注意点

遺産分割協議書を取り消す場合に注意すべきポイントを3つ紹介します。

「善意無過失の第三者」には対抗できない

相続人が詐欺行為をおこなっていることを知らずに利害関係に入った「善意無過失」の第三者がいる場合、詐欺取消しができません。

たとえば、遺産分割によって相続人Aが不動産を取得し、Cに譲渡したとしましょう。

その後、相続人Bが相続人Aの詐欺行為を理由に遺産分割取消しの意思表示をおこなっても、取消しは認められません。

なぜなら、Cは相続人Aが詐欺行為を働いたこと、譲渡された不動産が詐欺行為によって得たものであることを知らないためです。

Cが相続人Aの詐欺行為を知らなかったことに過失があるとはいえないので、その不動産を取り戻すことはできません

「追認」してしまった場合は取消権を行使できなくなる

追認とは、取消しの意思表示ができるにもかかわらず、取り消さずに有効と認めることです。

明示的に意思表示をしなかったとしても、ほかの相続人による詐欺行為を知ったうえで、自分が相続した財産を第三者に譲渡した場合なども追認に該当します。

この場合、取消権を行使することはできません。

詐欺を知ってから5年で取消権が時効消滅してしまう

取消権を行使できるのは、騙されたと知ってから5年以内、もしくは遺産分割がおこなわれてから20年以内です。

時効が成立したあとは取消しができなくなるので注意しましょう。

(取消権の期間の制限)

第百二十六条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

引用元:民法|e-Gov法令検索

最後に | 遺産分割協議で騙されたと感じたら弁護士へ相談を

「財産が隠されていることに気づいた」「不動産の売却額が実際はもっと高かった」など、遺産分割協議後に騙されたことに気づいたら、弁護士に早めに相談しましょう。

遺産分割を取り消すには、さまざまな法律の知識が求められます。

訴訟に発展した場合は法的根拠をもって取消しの適切性を訴えなければならず、一人で立ち向かうのは決して簡単ではありません。

弁護士に相談・依頼することで、取消権が認められるかどうかの見通しについて教えてもらえるほか、訴訟の際のサポートも受けられます。

自分が望む形で問題を解決できる可能性が高くなるので、少しでも悩んでいるならぜひ相談してください。

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この記事の監修者
みとみらい法律事務所
後藤 直樹 (茨城県弁護士会)
弁護士歴30年以上。遺産分割や中小企業の跡継ぎトラブルまで、幅広い相続問題に対応。また、分割が複雑な不動産も長年の弁護士経験から他士業との連携を活かし、トータルサポートで問題の解決へと導く。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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