遺留分侵害額請求をしたいけれど、不動産の生前贈与・遺贈の場合どうやって請求するのかと悩んでいる方にとって、この記事の解説がお役に立てるでしょう。
法定相続人に一定割合の相続財産の承継を保障する「遺留分」制度が令和元年より改正されました。
今回の改正による主な変更点は以下の2つです。
不平等な生前贈与、遺言で遺留分を侵害されたときに損をしないために、今回の法改正についてわかりやすく解説します。
弁護士に相談するときにも知っておくと役立つ知識ですので、ぜひ参考にしてください。
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他の相続人が不動産を贈与・遺贈で取得した場合、自分の遺留分はどのように請求すべきでしょうか。
令和元年7月1日以降に発生した相続では、遺留分侵害額請求は、金銭債権となりました。
具体的な請求方法や覚えておくべき「時効」について解説していきます。
遺留分侵害額請求をするためには、まず自分が遺留分侵害額請求権を行使する意思を持っていることを相手方に伝える必要があります。
自らの意思が伝われば形式は問いませんが、今後争いが発生した際の証拠になるよう、文書で主張しておきましょう。
ここでは相手方に遺留分請求した事実が、客観的に明らかになる方法を説明していきます。
まずは内容証明郵便にて遺留分を請求する相手方に遺留分侵害額請求をする意思があることを伝えます。
内容証明郵便は、自分が相手方に送った文章の内容を郵便局が証明してくれるサービスです。
【参考】 内容証明 | 日本郵便株式会社
一緒に配達証明を付けておくことで、自分と相手方以外に、第三者である郵便局が、どのような内容を何月何日に相手方に伝えたかを証明してくれます。
ただし、遺留分侵害額請求を受ける相手方が、請求権の発生を防ぐために内容証明郵便をわざと受け取らないことも考えられます。
念のため内容証明郵便の送付と同時に、同じ内容を特定記録付き郵便で相手方に送りましょう。
特定記録付き郵便は、郵便局員が相手方のポストに投函した日時を証明してくれる郵便サービスです。
遺留分を請求する意思表示は、「相手方の了知可能な状態に置かれることをもって足りる」とされているため、相手の郵便受けに届いた時点で行使したと認められます。
遺留分侵害額請求は相手に意思表示をすることにより発生する権利です。
普通郵便は避け、証拠が残る形で意思表示をしましょう。
相続関係に基づく権利の変動は早期に決着をつけるべきという法律の趣旨により、時効が1年と非常に短く設定されています。
遺留分が侵害されたことを知ってから1年以内に相手方に意思表示をすると、遺留分侵害額請求権が発生します。
発生した権利は「金銭債権」です。
金銭債権は発生してから5年間行使しなければ時効により消滅してしまいます。
行使とは、具体的に相手方に請求して弁済を受領する、調停を申し立てる、または訴訟を提起することなどです。
さらに、遺留分の侵害を知らなくても、相続開始から10年経てば権利は消滅します。
旧法の遺留分減殺請求との主な違いは、以下の点です。
遺留分の金銭債権化により、不動産や不可分債権を共有状態にする必要がなくなりました。
たとえば事業承継のため、長男に会社の株式全てを贈与したとします。
他に財産がなければ、旧法では他の相続人から遺留分減殺請求をされると、会社の株式は相続人の共有状態となっていました。
しかし、今回の法改正により株式を共有状態とする必要がなくなり、長男は遺留分として対価を金銭で支払えばよくなったのです。
また、相続財産の権利を早期に確定するため、今後は遺留分を侵害する生前贈与は、10年以上遡ることができなくなりました。
事業承継の円滑化と相続手続きの迅速化、そして相続人同士の不平等の是正を重視して、今回の法改正はおこなわれました。
【参考】 法制審議会 民法(相続関係)部会 第10回会議 議事録
新法 |
旧法 |
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発生する権利 |
金銭債権 |
現物返還請求権 |
不動産や不可分債権が対象財産の場合 |
対価として金銭請求ができる |
対象物が共有・準共有状態になる |
裁判管轄(訴訟事件のみ) |
被相続人の住所地 被告の住所地 + 原告の住所地(義務履行地) |
被相続人の住所地 被告の住所地 |
遺留分が侵害されている額を確定するために、不動産の財産評価方法は非常に重要です。
不動産の評価方法がそのまま相手から得られる遺留分の額に影響があるからです。
評価額は一般的に以下のように表すことができます。
固定資産税、都市計画税、不動産取得税、訴額などの基礎となる固定資産税評価額を不動産の評価方法とする場合、一般的に他の評価方法と比べて低い査定金額となります。
固定資産税評価額は3年に1度評価替えがおこなわれるため、年に1度見直される他の評価方法との間に価格差が生じやすくなります。
実際、固定資産税評価額は公示価格のおよそ7割を目途に設定されているのです。
「路線価」とは、相続税や贈与税を賦課するための算出基準となる価格です。
道路に面している間口と奥行き距離の1㎡あたりの評価額を基準として算定します。
たとえば「路線価600」とは、その道路に面した土地は60万円/㎡という意味になります。
全国共通・画一的な基準で課税の公平性を保っているため、この価格で評価することは、当事者の理解を得やすいかもしれません。
全国の路線価は、国税庁により年に1度7月に公表されます。( 【参考】財産評価基準書|国税庁)
公示価格とは、いわゆるその地域の正常な価格です。
双方に早く売りたい、早く買いたいなどの特殊な事情がない場合に取引される価格を基準に決まります。
毎年1月1日時点の価格を国土交通省・土地鑑定委員会が査定し、同年3月に官報に掲載します。
市場の取引価格と近いため、実際の不動産売買でも参考にされる査定価格です。
また、地価調査標準価格とは、都道府県知事が7月1日を基準日として公表する価格です。
どちらも以下のサイトで確認することができます。
市場で土地を売買するときに取引が成立した価格を実勢価格といいます。
地価公示価格と違い、売り手側、買い手側の事情も加味された価格になっているため、自由競争のマーケット価格といえるでしょう。
実勢価格の目安は、一般に公示価格の1.1〜1.2倍程度といわれており、下記のサイトで詳細を確認することができます。
以下のような事情により、不動産価格の査定は常に相続人同士で問題を長引かせる原因となってしまいます。
そのため、お互いに納得ができるように、不動産の査定は自力で計算するのではなく、専門家に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、査定の問題だけでなく遺留分侵害額請求を含めた相続問題全般のアドバイスを受けられます。
任意の話し合いで解決できずに調停や訴訟に移行する場合には、引き続きサポートしてもらうこともできます。
不動産の査定方法について当事者間で合意できなければ、不動産鑑定士に鑑定を依頼することがおすすめです。
不動産鑑定士は国家資格であるため、不公平な鑑定をした場合には 虚偽鑑定罪 の制裁を受けます。
そのため、不動産鑑定士が査定した不動産の価格には公平性があるとみなされ、当事者間でも納得しやすくなるでしょう。
遺留分侵害額請求権の行使から解決するまでには、以下の方法があります。
それぞれの方法について詳しく説明します。
遺留分侵害額請求権の行使は、任意の話し合いで解決することが可能です。
弁護士をたてて話し合いを進めていくことで、感情の衝突を減らし、妥当な金額で落としどころを探ることができるでしょう。
話し合いでまとまった内容を漏れなく合意書に記載することもできます。
この合意書を使って実際に不動産の所有権移転登記やその他財産の分配がおこなわれるため、相続人全員が記名・押印し、漏れのない内容にする必要があります。
任意の話し合いでまとまらなければ遺留分侵害額請求調停を申し立てることになります。
相手方 |
遺留分を侵害している人のみ |
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管轄裁判所 |
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所 |
提出書類 |
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調停は裁判官や中立の立場にある調停委員を交えた当事者同士の話し合いです。
調停委員は裁判所により選任され、多くが弁護士や医師、大学教授などの専門家で構成されています。
申し立てに必要な書類を漏れなくそろえたり、専門家を交えての話し合いで自分の意見を上手に主張したりするためにも、調停申し立ては弁護士に依頼するのがおすすめです。
調停は、裁判所より第1回調停期日が相手方相続人に通知されることにより始まります。
申立人と相手方は双方指定された調停期日に出廷し、話し合いがおこなわれます。
以下、東京家庭裁判所における調停期日の進行モデルケースです。
東京家裁における「遺留分侵害額請求進行モデル」
(東京家庭裁判所類型別審理モデル検討委員会)
調停はおおむね7回(1年)で終結させることが前提とされています。
遺産分割調停では、調停が不調になることで自動的に審判に移行します。
調停で両者の話し合いがまとまらなければ裁判所が決定を下すのです。
これに対し遺留分侵害額調停は、話し合いがまとまらなかった場合は調停不成立となり、改めて地方裁判所に訴訟提起をしなければなりません。
そのため、遺留分侵害額調停は、早期の調停打ち切りの見極めが重要です。
調停で話し合いがまとまったら、決まった内容を裁判所が調停調書にまとめます。
調書に記載される主な内容は下記の通りです。
【調停調書の内容】
この調停調書の実行力は強く、万が一履行されなかったら、この調書をもって相手方の財産に対して強制執行をすることができます。
調停で話し合いがまとまらなければ、地方裁判所に訴訟提起をします。
これは、遺留分権利者を原告、遺留分侵害者を被告とした金銭請求訴訟です。
訴訟は調停と違い、対立当事者の争いですので、裁判所は最終的にどちらの言い分が正しかったのかを判断します。
民事訴訟は、被告の住所地、被相続人の住所地以外に、原告の住所地(義務履行地)を管轄する裁判所にも提起できます。
訴訟では、事実を証明するために主張書面を作成し、証拠類をそろえなければなりません。
また、訴訟になると被告側も弁護士をつける可能性が高くなります。
専門家である弁護士なしに訴訟手続きを有利に進めることは難しいでしょう。
証拠調べや尋問期日など当事者全ての主張がそろうと、裁判所は審理を終えて判決を下します。
裁判所の判決内容に不服がある場合は、14日以内に控訴を提起することも可能です。
2週間どちらからも控訴がでなければ、判決は確定します。
訴訟による判決に不満があれば上級裁判所に控訴、上告できるため、遺留分権利者は調停を含めると合計4回裁判所で争うことができます。
遺留分侵害額請求をしようと悩んでいるのなら、弁護士への依頼がおすすめです。
以下では、実際に弁護士に依頼するメリットについて解説していきます。
遺留分侵害額請求はとても複雑な法的問題です。
法律に知見のない方がひとりで手続きをすることは難しいでしょう。
遺留分侵害額請求の多くが不動産の価値評価で争われ、相続人の間でも感情的な対立が生まれます。
弁護士という代理人に対応を任せることで直接の対立を避けることができ、ストレスが大きく軽減できるでしょう。
また、難しい法律問題にも的確なアドバイスをもらうこともできるでしょう。
ただ、遺留分侵害額請求は相続の中でも特に難しい手続きですので、弁護士の中でも、相続問題を得意とする弁護士に依頼する必要があります。
調停や訴訟手続きだけでなく、相続に関する全ての手続きを弁護士が代行して進めてくれます。
さらに、意思表示のための内容証明の発送、相続財産の調査なども弁護士に任せきりで大丈夫です。
相手の住所や相続財産の全容が不明でも、弁護士なら弁護士会23条照会や職務上請求などで金融機関や行政機関などに情報開示を請求することも可能です。
弁護士に依頼すれば、話し合いでまとまらなかったとき、そのまま調停や訴訟を依頼できます。
複雑な問題の論点整理や正しい落としどころなどを見極めて対応してくれますし、不要な対立にストレスを感じることも少なくなるでしょう。
これから遺留分侵害額請求をしようとする方のなかには、故人の意思に反するようで抵抗を感じる方もいるかもしれません。
遺留分は特定の相続人に遺産が集中することにより、他の相続人の生活が不当に侵害されないように設定された、最低限の権利であり、故人の意思の尊重と他の相続人の生活保障のバランスをとる制度です。
したがって遺留分侵害額請求をすることは自分自身の法律上認められた権利であるため、行使に抵抗を感じる必要はありません。
しかし、遺留分侵害額請求は複雑な手続きであるうえ、相続財産というお金に関係するものなので、親族間の感情的な対立を招きやすくなります。
相手との直接衝突を避けつつ、自分に認められた正当な権利を行使するために、弁護士に依頼することがおすすめです。
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