親が亡くなって相続が発生する際、法律が定める相続人で遺産を分け合う「遺産分割」をおこないます。
遺言によって遺産の分割方法に指定がある場合は、遺言に従って分割するのが原則ですが、遺言などによる指定がない場合は、誰が・どの財産を・どれくらいの割合で相続するかについて話し合う「遺産分割協議」をおこなう必要があります。
遺産分割協議は、相続トラブルの原因になりやすく、「話し合いに応じない相続人がいる」「自分の主張を曲げない相続人がいて、話し合いが進まない」などのケースも珍しくありません。
そこでこの記事では、遺産分割協議の進め方や期限、話し合いがまとまらないときの対処法などを解説します。
遺産分割協議をこれからおこなう方へ
遺産分割協議をするためには、相続人の確定や相続財産の調査、相続人全員の同意を得て遺産分割協議書の作成などやることがたくさんあります。
上記の対応は後々のトラブルを回避したいのなら、怠るわけにはいきません。
また相続財産に不動産が含まれていた場合は、分割方法が複雑になります。
遺産分割に関してお悩みの方は、弁護士に相談・依頼する事がおすすめです。
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まずはじめに、遺産分割協議とはどんなものか、期限やおこなわない場合のデメリットを解説します。
遺産分割協議とは、相続人全員で誰が・どの財産を・どのくらいの割合で相続するのかを話し合う手続きです。
亡くなった方の遺産は、遺産分割協議をおこなうまでは相続人の共有の財産となるため、遺産分割協議によって、遺産の分け方を話し合う必要があります。
なお、遺産分割協議は必ず相続人全員でおこなう必要があり相続人が1人でも欠けた状態でおこなった遺産分割協議による取り決めは無効です。
また、相続人のなかに未成年者がいる場合は、その法定代理人の参加も求められます。
ただし、必ずしも相続人の全員が一堂に会して協議を進行する必要はありません。
遠方に住んでいる、仕事の都合で参加できないといった事情があれば、電話・メールなどを使って話し合うことも可能です。
数人の協議によって決まった案を、相続人の誰かが持ち回って協議に参加できなかった相続人から承諾を得る方法でも「協議があった」とみなされます。
つまり、重要なのは「相続人の全員が合意している」という事実です。
ほかの全員が賛成していても、誰か1人が反対していれば遺産分割協議は成立しません。
遺産分割には、法律上の期限は定められていません。
そのため、被相続人が亡くなってからずっと遺産を放置していても、遺産分割をおこなっていないこと自体が問題になることはありません。
しかし、相続が発生した場合、相続があったことを知った日から10ヵ月以内に相続税申告をおこなわなければならず、相続税申告をするためには自分の遺産の取り分がどれくらいかを把握しておく必要があります。
相続税の申告期限までに遺産分割が間に合わない場合は、暫定的に法定相続分で相続した場合の相続税申告をおこない、正式な遺産分割後に相続税の修正申告などによって精算する必要があることを覚えておきましょう。
遺産分割に期限はありませんが、遺産分割をおこなわずに放置することには以下のようなリスクがあります。
遺産分割協議がおこなわれていない場合、被相続人の遺産は相続人同士の共有財産として扱われます。
共有財産の場合、遺産を活用するときに揉め事が生じたり、管理している相続人に遺産を使い込まれたりするリスクがあります。
遺産分割協議に期限はありませんが、早めにおこなうことが後々の手間やトラブルを防ぐことにつながります。
ここからは、遺産分割協議の流れと手順を解説します。
遺産分割協議は大きく分けて、以下4つの手順で進みます。
各手順について詳しくみていきましょう。
遺産分割協議を進めるためには、まず「誰が相続人なのか」を確定させる必要があります。
相続人が誰なのか、調査をおろそかにしてしまうと、あとになって「実は、ほかにも相続人が存在していた」といった事態になり、遺産分割協議のやり直しが発生してしまう可能性があります。
特に、被相続人が離婚・再婚・養子縁組をしている場合は、思いもよらない相続人が存在するケースが多いので注意が必要です。
被相続人と第三者との間に隠し子がいて、親族が知らない間に認知をしていたという事例も少なからず存在します。
相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍情報を辿っていくのが確実ですが、自分で全ての戸籍を集めるのは手間がかかります。
場合によっては、弁護士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
相続人を確定させる作業と並行して、「どのような財産が、どのくらいあるのか」も確定させる必要があります。
ここで注意しておきたいのが、相続財産は「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産」も含まれるということです。
預貯金や不動産ばかりを探すのではなく、隠れた借金や負債も探し出さなくてはなりません。
あとになって「実は隠し財産があることがわかった」などの場合は、遺産分割協議をやり直す必要がでてくるので、注意しましょう。
遺産分割の対象となる財産(プラス分) |
|
不動産 |
宅地、農地、建物(マンション、アパートなど)、店舗、居宅、借地権、借家権など |
現金・有価証券 |
現金、預貯金、株券、貸付金、売掛金、小切手など |
動産 |
自動車、家財、船舶、骨董品、宝石、貴金属、美術品など |
その他 |
ゴルフ会員権、慰謝料請求権、損害賠償請求権など |
遺産分割の対象となる財産(マイナス分) |
|
負債 |
借金、買掛金、住宅ローン、小切手など |
税金関係 |
未払いの所得税と住民税、その他未払いの税金 |
その他 |
未払い分の家賃と地代、未払い分の医療費など |
相続財産調査は、銀行や不動産業者などに問い合わせるのが一般的ですが、相続人であることの証明や必要書類が多く、手続きには手間がかかります。
相続財産が多岐にわたる可能性がある場合は、財産調査を専門家に依頼することも検討しましょう。
相続財産が確定したら「財産目録」を作成します。
財産目録とは、相続財産のすべてを一覧表にしたものです。
プラス・マイナスの各財産をすべて挙げて作成するので、どのような財産があり、総計するとプラス・マイナスのどちらが上回るのかが一目瞭然になります。
財産目録の作成は、法律による定めがありません。
必ず作成しなければならないというものではありませんが、相続手続きがスムーズに進むので作成しておいたほうがよいでしょう。
財産目録を作成する手順は、以下の記事でも詳しく解説しています。
【簡単3ステップ】財産目録を作成したい方必見! |
⇒ 財産目録で全ての財産内容を管理すると、共同相続人による財産隠しの予防ができるかもしれません。 |
相続人と相続財産が明らかになれば、遺産分割協議の前準備は完了です。
ここからは、相続人全員による協議が始まります。
遺産分割協議は、相続人が一箇所に集まっておこなうのが理想ですが、必ずしも一堂に会して協議する必要はありません。
実際には、法要などの機会にある程度の話し合いを進めておき、各相続人に了承を得たうえで代表者が「遺産分割協議書」を作成して、署名・押印を求める流れになるでしょう。
遺産分割協議書の概要や書き方については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
遺産分割協議の話し合いがまとまり、遺産分割協議の作成まで完了したら、相続財産の名義変更をおこないましょう。
各相続財産の名義変更手続きの際には、遺産分割協議が必要になるので、遺産分割協議書は相続人全員分を用意しておくと安心です。
最後に、名義変更をおこなった相続財産ごとに指定された提出先に、遺産分割協議書を提出すれば、遺産分割協議は完了です。
相続人全員による遺産分割協議では話がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停または、遺産分割審判を申し立てることになります。
どちらの申し立ても可能ですが、実務的にはまずは調停をおこない、それでも話がまとまらなければ審判をおこなうのが通常です。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを進める手続きです。
第三者である調停委員が遺産分割の解決策を提示してくれるため、相続人同士が直接協議するよりも、冷静な話し合いが期待できます。
調停で決定した事項は、裁判所が作成する「調停調書」にまとめられて判決と同じ効力(強制執行が可能)を持ちます。
そして、この調停調書に従った遺産分割がおこなわれます。
調停でも話し合いがまとまらない場合は、調停不成立として「不調」となり、遺産分割審判の手続きが始まります。
遺産分割調停が不成立になった場合には、裁判官が判断する「審判」へと移行します。
家庭裁判所の裁判官は、法定相続分を基準として、妥当な遺産分割の方法を決定します。
遺産分割の割合が決定したら、各相続人に対して審判書が送達されます。
審判書の内容について、不服申し立てをおこなわなければ、審判の内容が確定し、強制的に遺産分割内容が決まります。
遺産分割協議を進めるにあたって注意すべき点を解説します。
一度成立した遺産分割協議は、基本的にやり直しをするべきではありません。
遺産分割協議のやり直し自体は、相続人の全員が合意すれば可能ですが、一度有効になった遺産分割協議をやり直すと、贈与税や譲渡所得税が発生します。
税金を支払うことになるリスクを考えると、遺産分割協議のやり直しはできるだけ避けるべきでしょう。
ただし、相続人全員の合意が得られていないなど、遺産分割協議の前提を揺るがすようなケースでは、遺産分割協議の無効を主張できる可能性があります。
遺産分割協議が無効となった場合は、遺産分割協議をやり直しても贈与税や譲渡所得税は発生しません。
遺産分割協議では、遺産の分け方について相続人全員で話し合いますが、被相続人が遺言書によって遺産の分割方法を指定している場合は、遺産分割協議は不要になります。
遺言は、被相続人の最期の遺志として尊重されるため、原則として遺言の指定のとおりに遺産分割がおこなわれるからです。
そのため、遺産分割協議をおこなうまえに、まずは遺言書の有無を確認し、遺産分割協議が必要かどうかを判断しましょう。
遺言書は、自宅で保管されている場合もありますが、公正証書遺言の場合は公証役場で保管されているので、公証役場の検索システムを利用して遺言が残っていないか確認しましょう。
遺産相続では、預貯金などのプラスの財産と同時に、借金などマイナスの財産も継承されます。
すると、遺産分割協議のなかで借金の負担についても話し合うことになりますが、原則として借金は遺産分割協議の対象外です。
被相続人の借金は、法定相続分に従って相続人全員が負担します。
たとえ遺産分割協議において一部の相続人のみが負担することを決定しても、債権者に主張できません。
一部の相続人のみが借金返済の義務を負担するのであれば、債権者の承諾が必要になります。
遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要です。
たとえ行方不明になっているとしても、それを理由に協議から除外することは認められません。
相続人が行方不明になって7年以上が経過している場合は、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることで解決可能です。
また、行方不明から7年が経過していない場合でも、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てて協議を進める方法もあります。
相続人が未成年の場合には、親権者である親が代理人となって、遺産分割協議をおこないます。
しかし、その親自身も相続人として遺産分割協議に参加している場合や、すでに他界している場合には、代理人となることはできません。
このような場合には、家庭裁判所に申し立てをおこない、親権者に代わって未成年を代理する特別代理人を選任する必要があります。
ここでは、遺産分割協議に関するよくある質問について紹介します。
遺産分割のやり直しは可能です。
遺産分割によって相続された財産は、各相続人が自由に処分することができます。
そのため、相続人全員が合意すれば、分割した財産を再び持ち寄って、遺産分割をやり直せるのです。
ただし、反対する相続人が一人でもいるときには、遺産分割が無効である場合を除いて、やり直しは認められないことに注意しましょう。
遺産分割協議が成立したあとで遺言書が見つかった場合、遺言書で指定された内容とは異なる遺産分割協議は無効になります。
ただし、遺言発見後、再度相続人の全員の合意により、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を成立させれば、その遺産分割協議は有効となり得ます。
なお、相続人のなかにひとりでも「遺言書の内容に従うべきだ」と主張する人がいる場合は、遺言の指定に従うことになります。
遺言書がもつ効力については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
遺産分割の協議が成立したあとで新たに財産が見つかったときには、その財産に対する新たな遺産分割協議をおこなうことで足ります。
新たに財産が発見される可能性があれば、軽微な財産については特定の相続人に帰属する旨の規定を遺産分割協議書に盛り込んでおくことで、協議のやり直しを回避できるでしょう。
遺産分割協議は、被相続人がのこしてくれた財産の分配方法を決める大切な話し合いです。
だからこそ、遺産分割協議は相続人の間でトラブルに発展しやすく、親族間の関係に亀裂が生じてしまう原因にもなります。
各相続人がそれぞれの自己都合だけを主張していては、円満な解決は期待できません。
法律の定めに従い、各相続人の事情を公平に取りまとめて調整できる役割が必要です。
遺産分割協議を円満に進めたいなら、遺産相続トラブルの解決が得意な弁護士にサポートを求めましょう。
協議を進めるにあたって必要な相続人の調査や財産調査など手間がかかる作業を一任できるだけでなく、各相続人との間で話し合いの窓口としても対応してくれるので、スムーズな遺産分割協議が期待できるでしょう。
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遺産分割協議をするためには、相続人の確定や相続財産の調査、相続人全員の同意を得て遺産分割協議書の作成などやることがたくさんあります。
上記の対応は後々のトラブルを回避したいのなら、怠るわけにはいきません。
また相続財産に不動産が含まれていた場合は、分割方法が複雑になります。
遺産分割に関してお悩みの方は、弁護士に相談・依頼する事がおすすめです。
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