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自筆証書遺言の要件とは?無効にならないための書き方と注意点

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  • 「自筆証書遺言を作成したいが、要件を満たさないと無効になると聞いた」
  • 「希望するとおりに相続を実現したいので、自筆証書遺言の要件を知りたい」

自筆証書遺言は法律で決められている要件が複数あり、それをひとつでも満たさなければ無効とされてしまいます。

自筆証書遺言を作成する際は、これら要件をあらかじめ把握しておかなくてはなりません。

そのほか、遺言書の内容が適切でなく、結果的に遺産相続争いにつながってしまうことも多いです。

そこで本記事では自筆証書遺言が無効とされないための要件と、トラブルを避けるために覚えておくべき自筆証書遺言の書き方、自筆証書遺言の作成例などを紹介します。

本記事を読めば、法律的な問題がなく遺産相続のトラブルを回避できる有効な遺言書を作成できるようになるでしょう。

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目次

自筆証書遺言の5つの要件

民法では、自筆証書遺言について以下のように規定しています。

(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。

この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

引用元:民法 | e-Gov 法令検索 

ここから導かれる自筆証書遺言の5つの要件について解説します。

1.遺言者本人が財産目録以外の全文を自筆で書く

自筆証書遺言は、遺言者本人が、遺言書の全文、日付、氏名を手書き(自書)で作成しなければいけません。

偽造を防ぐため、家族などが代筆したりパソコンで書いたりしたものは無効とされているのです。

なお、平成31年(2019年)1月13日の民法改正により、遺言書とあわせて作成する財産目録については、自筆が不要とされるに至っています。

2.作成日は正確に記載する

筆証書遺言には、遺言書の作成日を正確に記載する必要があります。

「令和〇年〇月〇日」「西暦〇年〇月〇日」など、作成日を特定できるように書きましょう。

また、遺言書が複数存在する場合には、新しい日付の遺言書が法的に有効なものと扱われるのがルールです。

古い遺言書と新しい遺言書との間に内容面で矛盾がある場合には、内容が抵触する範囲について、新しい遺言書によって古い遺言書が撤回されたとみなされます(民法第1023条第1項)。

3.署名・押印する

自筆証書遺言が有効なものと扱われるには、自分の氏名を自筆で記入したうえで、押印が必要です。

まず、氏名は「戸籍上の氏名」を記載します。

通称・通名・あだ名による記載では、自筆証書遺言が遺言者本人によって作成されたことを証明できないからです。

また、本人による記載であることをより明確に示すために、実務上は、氏名の前に住所を記載することが推奨されています。

次に、自筆証書遺言を作成する際には、氏名の横・後ろに印鑑を押さなければいけません。

必ずしも実印である必要はなく、認印でも有効な自筆証書遺言と認められますが、自筆証書遺言を長期間保存しなければいけないケースを想定するなら、インク式のものではなく朱肉式の印鑑を使用するのがおすすめです。

氏名を乱雑に記載して読めなかったり、印鑑が消えていたり不明瞭な押印方法だったりすると、自筆証書遺言が無効と扱われる可能性があります。

4.財産目録を手書きしない場合は全ページに署名・押印が必要

平成31年(2019年)1月13日の民法改正により、財産目録については自筆が不要とされ、パソコンで作成したものや、通帳の写し、登記事項証明書などを添付することで足りるとされています。

ただし、財産目録を手書きせずに添付する方法を選択する場合には、全てのページに署名・押印をしなければいけません。

また、財産目録を手書きしなくて良いのは「財産目録を添付する場合」に限られます。

つまり、「遺言書本体に財産目録部分を組み込む場合」には、財産目録も自筆でなければいけないということです。

5.訂正がある場合は訂正印と訂正箇所の記載が必要

自筆証書遺言の内容に訂正がある場合には、以下の方法を遵守する必要があります。

  • 訂正する箇所に取り消し線を引く
  • その近くに正しい内容を記載し、印鑑を押す
  • 欄外の余白に、どの部分をどう訂正したかをまとめ氏名を書く

このように手順が多いことから、訂正箇所が多くなるようなら新しく遺言書を作成し直した方がよいでしょう。

トラブルを避けるための自筆証書遺言の書き方

不明確な内容や方式を遵守していない自筆証書遺言は、相続トラブルの原因になりかねません。

ここでは、遺産相続発生後のトラブルを避けるための自筆証書遺言の書き方や注意事項について解説します。

誰に、どの財産を相続させるのか明記する

相続人などの間で紛争が生じないようにするために、誰にどの財産を相続させるのかを明確に記載しましょう。

曖昧な書き方であると、誰がどの財産を相続すればよいかが不明瞭となり、相続人同士の争いにつながってしまう可能性があります。

たとえば「金融資産1億円をAとBへ半分ずつ相続させる」と書いたとしましょう。

そのうえでその金融資産に株式が含まれていると、1億円の分割方法が複数考えられ争いの原因となりかねないのです。

そのため以下のように、誰がみても明確にわかるよう遺産の分け方を記載する必要があります。

  • Aには「●株式会社の株式 数量〇株」を相続させる
  • Bには「●銀行●支店の遺言者名義の普通預金(口座番号〇〇〇)」の全てを相続させる

あいまいな書き方をしない

自筆証書遺言の文面では、曖昧な表現は避けるようにしてください。

たとえば、自筆証書遺言内で「被相続人が経営している会社は長男〇〇に任せる」という表現をしてしまうと、会社に関する財産や経営権を長男に相続させるのか、会社をめぐる遺産相続関係の手続きの管理を長男に委ねる趣旨なのかなどを判断することができません。

解釈の余地がある文言を使用すると、各相続人が自分にとって有利な内容に解釈してしまい、遺産相続トラブルが生じかねないでしょう。

ですから、自筆証書遺言内では「取得させる」「相続させる」「遺贈する」という明確な表現を選択します。

「任せる」「託す」「渡す」「譲る」などの表現は正確さを欠くので避けましょう。

複数人で1通の遺言書を作成したら無効になる

遺言書は、複数人が共同で執筆すると無効になります。

遺言書は各自がひとりで、自分の分を執筆しなくてはなりません。

共同で執筆をすると、そのうちのいずれかひとりの自由な意思で撤回などができなくなってしまうためです。

遺言は誰の影響や制約を受けることなく、自由に執筆されるべきものとされます。

遺留分を侵害しないように注意する

遺留分とは民法で定められた法定相続人のうち、兄弟姉妹以外に最低限保証されている遺産の取得分です。

遺留分は、被相続人に近しい配偶者や子どもといった法定相続人の生活が経済的に困らないようにすることを目的としています。

たとえば被相続人(父親)が遺言書で「遺産は全て愛人へ譲る」と指示した場合、遺された妻や子どもが経済的に困窮するかもしれません。

そこで遺留分によって、一定の法定相続人には最低限度の遺産を相続できることが保証されているのです。

遺留分は遺言によっても侵害することができません。

遺留分を侵害する内容の遺言書が作成された場合、遺産分割協議が難航したり、遺留分侵害額請求権(民法第1045条)が行使されたりするなどの、遺産相続トラブルが生じる可能性が高いです。

ですから、自筆証書遺言を作成するときには、各法定相続人の遺留分に配慮しなくてはなりません。

自分だけでは遺留分を踏まえた自筆証書遺言を作成するのが難しいのなら、遺産相続問題を得意とする弁護士に相談するのがおすすめです。

遺留分についての詳細は、以下記事で解説しているので興味があればあわせて参照ください。

遺言書で指定できる内容

遺言書は被相続人の財産処分などに関する最終的な意思表示を尊重する目的で定められた制度なので、遺言方式だけではなく、遺言内容についてもルールが設定されています。

遺言書に記載することで法的な効力を有する事項は「法定遺言事項」と呼ばれます。

ここでは、法定遺言事項として遺言書で指定できる内容について具体的に解説します。

なお、遺言書には被相続人の意思・考え・気持ちを「付言事項」として記載することもできます。

付言事項は法的な効力を有するものではありませんが、遺言をする動機や相続人に対する気持ちを記載しておけば、遺言書の内容について相続人からの納得を得やすくなるでしょう。

1.相続について

相続について、以下を指定できます。

  • 誰にどの遺産をどのくらい相続させるか
  • 遺産分割の禁止(相続開始から5年が限度)
  • 相続人の廃除(生前に虐待を受けていたなど、遺産を分けたくない人がいる場合に廃除できる)
  • 遺留分減殺方法の指定(遺留分が請求された場合に、どの遺産から遺留分を払って欲しいかなどを指定できる)
  • 特別受益持ち戻しの免除(生前贈与などで財産を分け与えた場合、本来はその分を考慮して遺産分割がおこなわれる。
  • これを「特別受益持ち戻し」と呼び、それを免除するよう指示できる)
  • 保険金受取人の指定・変更

2.財産の処分について

財産の処分について、以下を指定できます。

  • 遺贈(法定相続人以外に遺産を渡すよう指示できる)
  • 寄付(財産を寄付するよう指示ができる)
  • 一般財団法人の設立
  • 信託の指定(財産を信頼できる個人や信託銀行に預けるなどして、処分・管理・運用してもらうよう指示できる)

3.身分に関することについて

身分に関わる以下事項について、遺言書で指定できます。

  • 認知(婚姻関係のない相手との子どもを認知できる)
  • 未成年後見人・後見監督人の指定(未成年の子どもがいる場合に、面倒をみる後見人やその後見人を監督する後見監督人を指定できる)

4.遺言の執行に関することについて

遺言の内容を実現する「遺言執行者」を指定できます。

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自筆証書遺言の作成例

自筆証書遺言を作成するときに役立つ雛型・記載例を紹介します。

自筆証書遺言書の書き方の例

自筆証書遺言書の雛型は以下のとおりです。

遺言書

 

遺言者〇〇は、本遺言書により以下のとおり遺言する。

1.私は、妻△△(昭和△△年△△月△△日生)に、私が所有する別紙目録第一記載の不動産を相続させる。

2.私は、長男◇◇(昭和◇◇年◇◇月◇◇日生)に、私が所有する別紙目録第二記載の預貯金のうち1,000万円を相続させる。

3.私は、次男▽▽(昭和▽▽年▽▽月▽▽日生)に、私が所有する別紙目録第二記載の預貯金のうち500万円を相続させる。

4.私は、上記123以外の財産を、妻△△(昭和△△年△△月△△日生)に相続させる。

5.私は、本遺言書の遺言執行者として次の者を指定する。

 

        住所    ________

        職業    ________

        氏名    ________

        生年月日  ________

日付  ________

住所  ________

遺言者 ________ (押印)

財産目録の作成方法の例

財産目録は自筆で作成しても良いですが、近年の民法改正でパソコンで作成したり、通帳の写しなどを添付したりすることも可能になりました。

記入ミスが原因で自筆証書遺言が無効になるリスクを軽減したいのなら、必要書類(通帳の写し、登記事項証明書など)を添付する方法がおすすめです。

これらの書類を添付する場合には、必ず全てのページに署名・押印を忘れないようにしてください。

なお、財産目録を手書きで作成する場合には、財産の種類ごとに以下の項目を記載します。

財産の種類

記載するべき項目

不動産

・区分(土地、建物、借地権など)

・所在地

・数量、面積、持ち分

・相続開始時の評価額

・利用状況(自宅、賃貸、共同所有など)

預貯金・現金

・区分(預金、現金など)

・預入先金融機関名

・支店名

・種別(普通、定期、定額、積立など)

・口座番号

・相続開始時の評価額

・備考(利息条件など)

株式

・発行会社名

・証券会社名

・種別(上場株式、非上場株式、私募株式投資信託、新株予約権など)

・数量

・相続開始時の評価額

・備考(評価額の算定方法、評価した日付、決算日など)

負債

・区分(住宅ローン、カーローン、個人間の借金など)

・債権者情報

・借入総額

・相続開始時の債務残高

・備考(返済条件、返済方法、利息条件など)

遺言者のなかには、自分がどれだけの財産を保有しているのかについて記憶が定かではない人が少なくありません。

登記簿情報を確認したり、金融機関・発行会社・信用情報機関などに開示請求をしたりすることで相続財産を調査することは可能ですが、個人の調査能力には限界があるでしょう。

また、どれだけ丁寧な自筆証書遺言を作成したとしても、相続財産に漏れがあると相続人の持ち分や遺留分などにも影響が生じるため、被相続人の意思を反映した遺産相続を実現できないリスクも生じかねません。

ですから、自筆証書遺言作成時の財産目録の内容に不安があるときには、念のために遺産相続問題を得意とする弁護士へ相談をして、事前に財産調査をしてもらうのがおすすめです。

自筆証書遺言用の封筒の書き方

自筆証書遺言自体は、その遺言方式や内容に関しても法律上のルールが設定されています。

これに対して、自筆証書遺言を収める封筒については、法律上のルールはありません。

もっとも、ルールが存在しないからといって、どのような方法で記載しても良いというわけでもないので注意が必要です。

ここでは、自筆証書遺言用の封筒の書き方、記載例を紹介します。

自筆証書遺言用の封筒を書く際のポイント

自筆証書遺言用の封筒を用意するときのポイントは以下のとおりです。

  • 自筆証書遺言がそのまま入る大きさか、二つ折り程度で入る大きさの封筒を用意する
  • 封筒の表面にわかりやすく「遺言書」と自筆で記載する
  • 封筒は必ずのり付けをして、中央に割り印を押印する
  • 封筒の裏面に、遺言書の作成日・遺言者の氏名を記載したうえで、押印する
  • 「遺言者の死後、勝手に開封することなく家庭裁判所に提出をしたうえで、検認手続きをおこなうこと」といった旨をわかりやすい箇所に記載する

封筒のサイズがあまりにも小さかったり、表面に遺言書である旨が明示されていなかったりすると、ほかの書類に紛れて自筆証書遺言が発見されないおそれがあります。

また、封筒をのり付けしておかなければ、利害関係者が勝手に開封をして改竄するリスクがあるので注意が必要です。

さらに、自筆証書遺言は必ず家庭裁判所の検認手続きが必要なので、遺言書を発見した人物が勝手に開封しないような警告文を付しておくことが強く推奨されます。

自筆証書遺言による遺言方式を選択する場合には、遺言書作成段階だけではなく被相続人死亡後の手続きにも配慮する必要があるので、少しでも不安がある場合には、弁護士に遺言書の内容について相談するタイミングで封印までおこなってもらうとよいでしょう。

自筆証書遺言用の封筒の書き方の例

自筆証書遺言の封筒の記載例は以下のとおりです。

【表面】

大きく「遺言書」と記載する

【裏面】

・「遺言者の死後、開封せずに家庭裁判所に提出をして、検認を受けてください」と明記する

・遺言書作成日を記載する

・「遺言者〇〇」という書き方で氏名を記載する

・割り印をする

自筆証書遺言を保管する方法

自筆証書遺言を作成した後は、相続開始まで、あるいは、遺言書が発見されるまで、慎重に保管する必要があります。

ここでは、自筆証書遺言の安全な保管方法を2つ紹介します。

1.自宅の安全な場所に保管したり、専門家に預けたりする

自筆証書遺言の保管方法について法律上の定めは存在しません。

紛失などの恐れがないよう、以下のような方法で保管する方法があります。

■自宅の安全な場所に保管する

金庫や引き出しなどで保管します。

見つかりにくい場所に保管してしまうと、死後に発見されず放置されてしまう可能性もあるので注意しましょう。

■信頼できる専門家などへ預ける

信頼できる弁護士などの専門家や親戚へ預ける方法もあります。

■銀行の貸金庫

安全に保管できますが、遺言者の死後に開ける際は相続人全員の同意が必要になるなど手続きが複雑になる点は注意が必要です。

2.自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に預ける

自筆証書遺言を安全に保管したい場合には、自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もおすすめできます。

自筆証書遺言書保管制度は、2020年(令和2年)7月10日から開始されました。

自筆証書遺言書保管制度で保管申請をすれば、法務局(遺言書保管所)が自筆証書遺言の原本を預かったうえで、災害などが原因で原本が滅失した場合に備えて、自筆証書遺言を電子データ化して保管してくれます。

自筆証書遺言書保管制度を利用して自筆証書遺言を預けたとしても、保管した遺言書は閲覧できますし、保管申請の撤回をすることも可能です。

自筆証書遺言書保管制度を利用するメリット、デメリットは以下のとおりです。

メリット

・自筆証書遺言書保管制度の利用申請時に、法務局窓口で自筆証書遺言に形式面での不備がないかを確認してもらえる

・自筆証書遺言の原本が法務局で保管されるので紛失・盗難・改竄・破棄・隠匿の心配がない(遺言者死亡後、原本は50年間、画像データは150年間保管される)

・遺言者の死亡を法務局が確認した段階で事前に指定した相続人などに「死亡時の通知」がおこなわれるので、自筆証書遺言が発見されないリスクがなくなる

・家庭裁判所の検認手続きを省略して自筆証書遺言を執行できる

デメリット

・自筆証書遺言の形式面はチェックしてもらえるが、内容面の不備について確認してもらうことはできない

・自筆証書遺言書保管制度の利用申請をするために、必ず本人が法務局へ訪問しなければいけない(代理申請は不可)

・自筆証書遺言書保管制度を利用できる自筆証書遺言は、形式的要件を満たしたものに限られる(用紙はA4サイズ、余白の量など)

自筆証書遺言書保管制度の利用方法などの詳細は、以下公式サイトのURLにて確認ください。

自筆証書遺言書保管制度 | 法務省

自筆証書遺言書保管制度を利用する際の注意点

ここでは、自筆証書遺言書保管制度を利用するときの注意点を6つ紹介します。

1.用紙はA4サイズで余白があるものを使用

自筆証書遺言書保管制度を利用できる自筆証書遺言は、A4サイズの用紙に記載されたものに限られます。

一般的な罫線が記載されている程度であれば問題ありませんが、記載した文字が読みにくくなるような模様・彩色が印字されている用紙は受け付けてもらえません。

また、自筆証書遺言書の余白幅にも以下の要件が課されています。

  • 上部5ミリメートル以上
  • 下部10ミリメートル以上
  • 左20ミリメートル以上
  • 右5ミリメートル以上

2.両面に記載しないこと

自筆証書遺言書保管制度を利用できるのは、用紙の片面のみに遺言が記載されたものだけです。

用紙の両面に記載して作成された自筆証書遺言書は、受け付けてもらえません。

また、財産目録も片面だけに記載されている必要があります。

3.ページ番号を記載しておくこと

自筆証書遺言書保管制度を利用できる自筆証書遺言書は、各ページにページ番号を記載したものに限られます。

【1/3、2/3、3/3】というように、余白内に総ページ数がわかるように記載してください。

4.ホッチキス留めはしないこと

自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、自筆証書遺言の原本を預かってもらえるだけではなく、電子データ化された遺言書を保存してもらえます。

法務局ではスキャナで遺言書を読み取る作業がおこなわれるため、自筆証書遺言書が複数ページにわたる場合でもホッチキスなどで綴じるのは厳禁で、バラバラの状態で提出します。

また、封筒に入れる必要もありません。

5.消えにくい筆記具で記載する

自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、自筆証書遺言の原本は、被相続人が死亡してから50年間法務局に保管されます。

ですから、消えるインクなどで自筆証書遺言書を記載してはいけません。

ボールペンや万年筆などの消えにくい筆記具を使用します。

6.氏名は戸籍どおりに記載する

民法上は、自筆証書遺言に記載する氏名として「本人を特定できるペンネーム」を使用しても問題ないとされています。

ただし、自筆証書遺言書保管制度の利用申請をするときには、公的資料と照合して申請者が遺言者本人であるかが確認されます。

ですから、自筆証書遺言書保管制度で保存してもらえる自筆証書遺言書に記載する遺言者の氏名は、ペンネームなどではなく、戸籍どおりの氏名を記載しなければいけません。

自筆証書遺言についてよくある質問

さいごに、自筆証書遺言の要件についてよく寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。

自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にしたほうがよいケースは?

代表的な遺言方式として、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類が挙げられます。

公正証書遺言とは、遺言書の作成手続きに公証人や証人が関与する厳格な遺言方式のことです(民法第969条)。

費用は発生しますが、公証役場で作成・保存されるので安全性・確実性が高く、検認も不要とされるので相続人の手続き負担が軽減されます。

たとえば、以下のケースでは、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言の遺言方式を選択した方がよいでしょう。

  • 自分だけで遺言書を作成・保管するのが不安な場合
  • 一定の費用が発生したとしても高度な法的知識・ノウハウを有する公証人のサポートを受けたい場合
  • けがや病気が原因で自筆で遺言書を作成するのが難しい場合
  • 相続財産の構成が複雑だったり、資産総額が高額だったりする場合
  • 相続人同士の関係性が悪く、遺産分割協議が難航することが予測される場合
  • 相続人の人数が多い場合
  • 離婚、再婚を繰り返して相続関係が複雑になっている場合
  • 相続人廃除によって遺産相続が複雑になる場合
  • 第三者やNPOなどの団体へ遺贈・寄付を検討している場合 など

自筆証書遺言が要件を満たしているかどうかは誰に判断してもらうの?

自筆証書遺言は遺言者の死後、遅滞なく家庭裁判所へ提出し「検認」を受けることが必要です。

この検認において家庭裁判所は、遺言書の偽造や変造を防止する目的で、形状や日付、署名など遺言書の内容を明確にします。

そのため検認手続きについて、自筆証書遺言が形式的な要件を満たしているかの確認はされるといえるでしょう。

しかし検認では、遺言内容が有効か否かまでの判断をしてもらえるわけではありません。

遺言内容の精査までしてもらいたい場合は、相続問題を得意とする弁護士に依頼するとよいでしょう。

さいごに|自筆証書遺言の作成方法でわからないことは専門家へ

自筆証書遺言は手軽な遺言方式である一方、民法などで規定されている要件を満たさなければ無効とされてしまいます。

遺言の内容が遺留分を侵害していたら、あとから相続人に遺留分を請求される可能性もあり注意しなくてはなりません。

その場合、思うとおりに相続を実現できなくなるリスクがあるのです。

遺産相続では複雑な事情があり、どんな遺言を遺せばよいか迷うことも多いでしょう。

自筆証書遺言の作成方法で分からないことがあれば、遺産相続に注力する弁護士へ相談ください。

弁護士は、どのような遺言を残せば希望に近いかたちで相続を実現できるかアドバイスしてくれます。

弁護士に依頼して、法的に問題のない自筆証書遺言を作成してもらうことも可能です。

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この記事の監修者
磯野・熊本法律事務所
熊本 健人 (大阪弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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