相続財産管理人(そうぞくざいさんかんりにん)とは、相続人がいるかどうかわからない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合などに相続財産の調査・管理をする人のことです。
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
引用元:民法第951条
(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
引用元:民法第952条
相続財産管理人については「具体的になにをするのか」「どのような選任手続きが必要なのか」など、わからない人も多いでしょう。
本記事では、相続財産管理人が必要になるケースや選任までの流れ、選任後の流れや選任にかかる費用などを解説します。
なお、2023年4月1日の民法改正によって「相続財産管理人」は「相続財産清算人」へ名称変更されましたが、本記事では「相続財産管理人」の名称を用いて解説します。
相続財産管理人の選任は
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相続財産を管理する人がいない状態だと、被相続人の債権者である相続債権者や、遺言によって贈与を受けた受遺者は、相続財産からの支払いを受けることができずに、相続財産が不当に失われることや、隠されてしまう危険があります。
しかし、相続財産管理人の選任手続きは複雑で書類も多いため、時間と労力がかかります。
そこで、弁護士・司法書士に依頼すれば余計な手間が省けます。
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相続財産管理人とは、相続人がいるかどうかわからない場合や相続人全員が相続放棄をした場合などに、家庭裁判所からの選任を受けて財産整理をおこなう役割を担う人のことです。
亡くなってしまった被相続人が財産を残していた場合は、配偶者や子どもなどが財産を継承するのが通常の流れです。
これが遺産相続と呼ばれる手続きですが、さまざまな事情によって通常どおりに遺産相続がおこなわれないケースもあります。
遺産を継承して管理する人がいないという状態は、好ましい状態ではありません。
たとえば、被相続人が「生前にお世話になっていた人に遺産を譲りたい」という遺言を残していても、相続人が存在しなければ遺言どおりに遺産を譲ることができません。
被相続人にお金を貸していた債権者がいる場合も、遺産の整理によって債権回収する機会を失うでしょう。
そのような事態を避けるためにも、次の条件を満たす場合は相続財産管理人を選任することで遺産の継承や整理を図ることが認められています。
相続財産管理人は、利害関係人または検察官の請求によって家庭裁判所が選任します。
利害関係人にあたるのは、被相続人の債権者・特定遺贈の受遺者・特別縁故者などです。
たとえば、「被相続人にお金を貸していた」「被相続人の遺言によって遺産を譲ると指定されていた」「被相続人の生前に療養看護に尽力していた」などの人は利害関係人にあたります。
検察官というと「刑事事件を担当する立場の人」というイメージが強く、なぜ相続に関与するのか疑問を感じる人も多いでしょう。
相続財産を継承する人が存在しない場合、遺産は国庫に帰属します。
そのような場合には「国の財産にするための手続き」が必要なので、利害関係人が存在しないケースでは検察官が請求するという仕組みです。
相続財産管理人には、相続財産の管理について最も適任とされる人が選任されます。
候補者がいる場合はそのまま選任されることもありますが、一般的には相続財産を適切に管理して公平に清算できる立場として、被相続人の最終居住地に近い地域で活動している弁護士が選任されるケースが多いようです。
選任された相続財産管理人は、主に次のような役割を担います。
相続財産管理人が必要となるケースとしては、以下の二つがあります。
被相続人に、配偶者・子ども・親・兄弟姉妹や代襲者などがいない場合は、遺産を相続する人が存在しません。
このようなケースでは、被相続人が遺言を残していても遺言どおりに財産が移らず、被相続人に対して債権がある人も、被相続人の死亡の事実すら把握できずに支払いを受けることができなくなるため、相続財産管理人の選任が必要です。
また、相続人がいる場合でも、全員が相続放棄をすれば相続財産管理人が必要です。
相続放棄をすると「最初から相続人ではなかった」という扱いになり、相続人全員が相続放棄すると遺産を管理する人がいなくなるため、相続財産管理人による遺産の管理・整理が必要になります。
なお、被相続人に配偶者や子どもなどがいるものの全員が相続放棄をした場合でも、民法では相続財産管理人が選任されるまでは相続放棄した相続人が遺産を管理するように定められています。
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元:民法第940条1項
たとえば、遺産が空き家や売れない山林などのように財産価値のない不動産だけであり、相続人が「不動産の管理から逃れたい」と考えて相続放棄した場合でも、相続財産管理人が選任されるまでは管理しなければいけません。
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相続財産管理人の申し立てから選任までの流れは次のとおりです。
相続財産管理人の選任を申し立てることができるのは、次のいずれかに該当する人だけです。
申し立てに必要な書類は次のとおりです。
申立書の書式や記載例は、以下の裁判所ホームページからダウンロードできます。
必要書類が揃ったら、家庭裁判所に提出することで申し立てが完了します。
申し立て先は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」で、各裁判所の管轄先については以下の裁判所ホームページから確認できます。
申し立てを受けた家庭裁判所は、相続財産管理人の選任が必要なのかどうかを審理します。
審理のために必要な場合は、申立人に追加書類の提出を求めたり、関係機関への問い合わせが実施されたりすることもあり、裁判所の指示に従って対応しましょう。
その後、相続財産管理人の選任について審判が下されます。
審判とは、裁判所による決定のことで判決と同等の効力があるため、家庭裁判所が「相続財産管理人の選任が必要だ」と審判を下した場合は、強制的に選任がおこなわれるものと考えなければなりません。
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家庭裁判所によって相続財産管理人が選任されたあとの流れは次のとおりです。
相続財産管理人が選任されると、国の機関紙である「官報」にて「相続財産管理人が選任されたこと」や「相続人は相続権を主張すること」などの公告が6ヵ月以上されます。
選任された相続財産管理人の仕事は、相続財産の調査や財産目録の作成などから始まります。
不動産があれば相続登記によって名義を変更するほか、貸付などの債権があれば回収し、複数の口座にわかれている預貯金は解約して相続財産管理人名義の口座に集めるなど、相続財産を整理しやすい形にまとめて管理します。
そして、相続財産管理人の選任や相続権主張などの公告と並行して、官報にて債権者や受遺者に向けた請求申出の公告を2ヵ月以上おこないます。
一定期間内に債権者や受遺者からの請求申出があった場合は、優先権のある債権者以外には、それぞれがもつ割合に応じて相続財産管理人から個別に支払われます。
ここまでの流れを経ても相続人が判明しない場合は、相続人がいないことが確定します。
相続人がいないことが確定すると、特別縁故者への財産分与へと移行します。
特別縁故者の例としては「被相続人の生前に療養看護を尽くした人」などがあり、家庭裁判所が財産分与の請求を認めた場合には相続財産管理人によって財産が分与されます。
なお、相続人捜索の公告期間が満了してから3ヵ月を経過すると、財産分与の請求はできなくなります。
ここまでの管理・整理が終了したあとは、相続財産管理人に対して報酬を支払います。
報酬額は、業務の難易度や受任者の収入状況などに応じて家庭裁判所が決定します。
相続財産管理人の報酬について一律の基準などはありませんが、一般的な相場は次のとおりです。
受任者の立場 |
報酬額の相場 |
被相続人の親族 |
無報酬 |
弁護士・司法書士・行政書士などの専門職 |
月額1万円~5万円程度 |
相続財産が整理されて相続財産管理人への報酬が支払われても余りがある場合には、国庫に帰属します。
「国庫に帰属する」とは、国の持ち物になるという意味です。
国庫に帰属する手続きが終了し、家庭裁判所に管理終了報告書を提出することで職務は終了します。
相続財産管理人の選任では、手続きのために必要な費用のほかに「予納金」が必要になる場合もあります。
基本的な手続き費用は次のとおりです。
連絡用の郵便切手代は家庭裁判所によって異なりますが、1,000円程度だと考えておけばよいでしょう。
なお、額面と枚数を揃えて提出する必要があるので、必ず申し立て先の家庭裁判所に問い合わせてください。
予納金が必要になるのは、十分な相続財産がなく、相続財産管理人による財産管理にかかる費用を賄えない場合です。
一般的には20万円~100万円程度が相場とされていますが、財産状況などによっては異なる場合もあります。
被相続人に配偶者や子どもなどの相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄した場合などは相続財産管理人の選任が必要です。
相続財産管理人を選任するためには利害関係人や検察官による申し立てが必要で、受任者は相続財産を適切に管理・整理しなくてはなりません。
また、相続放棄をした相続人については、相続財産管理人が選任されるまでの間は相続財産を適切に管理する義務があります。
相続財産管理人の選任申し立てでは、さまざまな書類などを準備しなければならず、手間なく確実に手続きを進めたい場合は相続問題に力を入れている弁護士に依頼することをおすすめします。
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