相続財産管理人(そうぞくざいさんかんりにん)とは、相続人がいるかどうかわからない・相続人全員が相続放棄をした場合において、相続財産の調査・管理を行う人のこと。
(相続財産法人の成立)
第951条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
引用:民法第951条
(相続財産の管理人の選任)
第952条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
引用:民法第952条
もし自分たちは遺産を放棄したから関係ないと財産の管理を放棄すれば法律違反になるからです。
(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
引用:民法第940条
ここでは、相続財産管理人の概要・選任方法と流れ・報酬相場などをお伝えしていきます。
相続財産管理人の選任は弁護士に依頼するのがいいかもしれません
相続財産を管理する人がいない状態だと、被相続人の債権者である相続債権者や、遺言によって贈与を受けた受遺者は、相続財産からの支払いを受けることができずに、相続財産が不当に失われることや、隠されてしまう危険があります。
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目次
まずは、相続財産管理人がどのような時に必要となり、どのような役割を担ってくれるのかを理解していきましょう。
亡くなった人が相続財産を残していた場合、それを管理する人がいなくてはなりません。しかし、亡くなった人に身寄りがないケースや、相続人となる権利を持つ人はいるものの全員が相続を破棄してしまったケースでは、相続財産を管理する人がいなくなってしまいます。
このような状態はよくありません。なぜなら、被相続人の債権者である相続債権者や、遺言によって贈与を受けた受遺者は、相続財産からの支払いを受けることができずに、相続財産が不当に失われることや、隠されてしまう危険があるからです。
このようなケースにあれば、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらいましょう。一般的には居住地域の近くで活動している弁護士が選任される傾向があります。
家庭裁判所に相続財産管理人の選任を請求するには、以下のような条件を満たしておかなければなりません。
以上を満たすと、利害関係者や検察から、相続財産管理人選任の申立てが行われます。
相続財産はあるものの、相続する人間がいない場合に家庭裁判所から選任される相続財産管理人の役割は以下のような事柄です。
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相続財産の調査
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相続財産の管理や換価
- 相続財産から必要な支払いを行う

①必要書類を揃える
相続財産管理人選任を申し立てるには、まず必要となる書類を揃える必要があります。必要となる書類は後ほどご紹介いたします。
②申立てを行う
相続財産管理人選任に関する必要書類を揃えて、家庭裁判所に提出することで申立てを行うことができます。
③審理を受ける
書類が提出されると、家庭裁判所によって申立人に対して相続財産管理人が必要であるかが確認されます。そこで必要に応じて、追加書類の提出などが求められることや、記載内容が正しいかどうかを関係機関へ問い合わせて調査されます。
④審判が下される
審理の結果によって、申立人が相続財産管理人の選任を受ける必要があると認められれば、家庭裁判所は相続財産管理人を選任するという審判を下します。もし、審判を経て相続財産管理人を選任する必要がないと判断されれば、不必要であるという審判が下されます。
相続財産管理人の選任申し立てができるのは以下のような人たちです。
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被相続人の債権者である相続債権者
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遺言によって贈与を受けた受遺者
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特別縁故者
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検察官
相続財産管理人の選任を申し立てるために必要な書類は以下の通りです。
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相続財産管理人選任の申立書(申立書)(記入例)
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被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
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被相続人の両親の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
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被相続人の子供で死亡者がいれば、その者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
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被相続人の兄弟姉妹で死亡者がいれば、その者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
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被相続人の直系尊属内の死亡者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
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代襲者となる甥や姪で死亡者がいれば、その者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
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被相続人の住民票除票又は戸籍附票
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不動産登記事項証明書(不動産登記をしている場合のみ)
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固定資産評価証明書(固定資産を所持している場合のみ)
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預貯金や有価証券の残高がわかる書類
相続財産管理人を選任するためにかかる費用は、主に以下の通りです。
これらの費用の他に、「予納金」を裁判所に納めなければならない可能性があります。予納金は相続財産管理人が行う管理業務の経費や報酬を支払うための資金となります。
残された相続財産からそれらを支払えることが確実であれば予納金は必要ありませんが、支払えるかどうかはっきりしないケースでは予納金が必要となるのです。予納金の金額は約20万円〜100万円ほどとされています。
明確な金額は家庭裁判所が、相続財産管理人の担当する事案の難易度によって決定します。予納金はまとまった金額となり、もし余った場合は返還されますが必ず返ってくるお金ではないことを注意しましょう。
①相続財産管理人の選任が公告される
家庭裁判所が相続財産管理人を選任すると、その後相続財産管理人を選任したことを知らせる公告を官報への掲載などによって行います。
②相続財産管理人による相続財産の調査と管理
相続財産管理人の最初の仕事は、残された相続財産を調査し財産目録を作成することで明らかにします。さらに、不動産登記を相続財産として名義変更することや、債権の回収、複数の口座に分かれている預貯金を解約しわかりやすく相続財産管理人名義の口座に集めることなど、相続財産の管理を行います。
③相続債権者と受遺者への請求申出の公告
①の公告から2ヶ月が経過する間に相続人が現れなかった場合は、次の仕事が行われます。全ての被相続人の債権者である相続債権者と、遺言によって贈与を受けた受遺者に向けて、一定期間内に請求の申し出や債権の届出の催促として、官報に公告を掲載します。
この段階で、存在が確認できている相続債権者と受遺者がいれば、公告に掲載した催促をその者に対して個別に行います。
④相続債権者と受遺者への支払い
「③相続債権者と受遺者への請求申出の公告」によって、届出を行った債権者と受遺者に対して、それぞれの割合に応じて相続財産管理人が支払いを行います。もし定められた期間内に届出がなかった場合、期間内の支払いを行った上で残った財産によって支払いを受けられます。しかし、財産が残っていなければ、支払いを受けられません。
⑤家庭裁判所へ相続人捜索の公告を請求
「③相続債権者と受遺者への請求申出の公告」を行ったものの、期間内に該当者からの届出がなく、相続人の存在が明らかでない場合は、家庭裁判所へ相続人捜索の公告を請求します。この際、縁故者や国庫帰属に費やす相続財産が残っていなければ、公告請求は行いません。
家庭裁判所は相続財産管理人からの請求を受けて、官報へと公告を掲載します。この掲載期間中に相続人からの届出がなければ、相続人がいないことが確定します。
⑥縁故者への相続財産分与手続き
「⑤家庭裁判所へ相続人捜索の公告」によって、相続人がいないと確定してから3ヶ月以内になくなった人と特別の縁故があった縁故者から、相続財産の分与を求める申立てがなされたなら、相続財産管理人は相続財産分与の手続きを行います。
⑦相続財産管理人に報酬の支払い
相続財産管理人の役割が終了すると、自ら家庭裁判所へ報酬付与の申立てを行います。家庭裁判所は相続財産管理人の行った業務の難易度に応じて報酬額を決定します。報酬に明確な基準はありませんが、委任する事務の複雑さや本人の収入などの状況などによっても違ってきて、大まかな相場は次の通りです。
【無報酬】
受任者が親族の場合
【有報酬】
受任者が専門職(弁護士、司法書士、行政書士など)の場合
※月額報酬は1~5万円が実態のようです。
⑧残余財産の国庫帰属手続き
相続財産管理人が報酬を受け取っても相続財産が残っていれば、その相続財産は国の所有となります。このケースでは、相続財産管理人がその手続きを行います。
⑨管理終了の報告を行う
相続財産管理人の業務が終了すれば、家庭裁判所へ管理終了報告書を提出します。
最後まで看取った人が相続財産を残しているにもかかわらず、相続人がいないとどうすればいいのか困ってしまいます。
しかし、家庭裁判所へ申し立てることによって相続財産管理人を選任してもらえれば、その不安も解消できます。相続財産管理人の利用が必要なケースでは迷わず利用しましょう。
相続財産管理人の利用を
検討されている方へ
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相続財産管理人制度の利用を考えている方は、まずお気軽に弁護士へご相談ください。
管理人の選任方法や、その後の複雑な手続きなど様々な点で疑問を解消できたりアドバイスをもらうことが可能なので、相続に関するあなたの悩み解消につながります。
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