住宅取得等資金の贈与については非課税枠があり、「自分が住む家を新築で建てる場合」や「増改築で必要な資金を贈与した場合」など、一定の条件を満たせば非課税限度額までは贈与税がかかりません。
この特例制度は2021年末で廃止される予定でしたが、2021年12月10日に税制改正大綱が発表され、2023年12月31日まで延長されることになりました。
また、住宅取得等資金の非課税制度とあわせて、贈与税の基礎控除や相続時精算課税制度なども活用できるため、これらの制度内容についても押さえておきましょう。
この記事では、親などから住宅資金などの贈与があった際の贈与税の節税方法について、特例制度の要件や手続きの方法などを解説します。
住宅取得等資金の贈与における非課税制度の概要は以下のとおりです。
父母や祖父母などから贈与された住宅資金などについて、非課税制度の適用とあわせて、定額(110万円)の基礎控除か、相続時精算課税制度における特別控除(最大2,500万円)が受けられます。
したがって、住宅取得等資金の贈与で利用できる特例制度としては、以下の2パターンがあります。
それぞれの限度額や適用条件などについては、次の項目から解説していきます。
住宅取得等資金の非課税枠については、以下のとおり住宅の種類によって非課税限度額が異なります。
※いずれも2022年1月1日~2023年12月31日までの贈与が対象
省エネ等住宅とは、以下のいずれかに該当していることが証明されている家屋のことを指します。
以下では、各要件について解説します。
断熱等性能等級とは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で定められた基準のことで、各等級の内容は以下のとおりです。
等級7 |
熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている |
等級6 |
熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている |
等級5 |
熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられている |
等級4 |
熱損失等の大きな削減のための対策が講じられている (建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令に定める建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度) |
等級3 |
熱損失等の一定程度の削減のための対策が講じられている |
等級2 |
熱損失の小さな削減のための対策が講じられている |
等級1 |
その他 |
一次エネルギー消費量等級とは、住宅が1年間で消費する一次エネルギーに関する基準のことです。
一次エネルギーとは、石油・石炭・太陽光・水力・天然ガスなどの自然から得られるエネルギーのことで、各等級の内容は以下のとおりです。
等級 |
BEI(※) |
等級6 |
0.8以下 |
等級5 |
0.9以下 |
等級4 |
1.0以下 |
等級3 |
1.1以下 |
※BEI=「設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量」
耐震等級とは地震に対する強さを表すものであり、各等級の内容は以下のとおりです。
耐震等級1 |
建築基準法(法律)と同程度の建物 |
耐震等級2 |
等級1で想定する1.25倍の地震に耐えられる |
耐震等級3 |
等級1で想定する1.5倍の地震に耐えられる |
免震建造物とは、地震の揺れを抑える部材や技術などを用いて作られた建物のことを指します。
高齢者等配慮対策等級とは、高齢者や障害者などの生活にどれだけ配慮しているかを表すもので、各等級の内容は以下のとおりです。
等級 |
対策の内容 |
5 |
a:移動等に伴う転倒、転落等の防止に特に配慮した措置が講じられている |
4 |
a:移動等に伴う転倒、転落等の防止に配慮した措置が講じられている |
3 |
a:移動等に伴う転倒、転落等の防止のための基本的な措置が講じられている |
2 |
移動等に伴う転倒、転落等の防止のための基本的な措置が講じられている |
1 |
移動等に伴う転倒、転落等の防止のための建築基準法に定める措置が講じられている |
住宅取得等資金の贈与についての非課税制度を利用するためには、受贈者・家屋・工事内容などについての要件を満たす必要があります。
ここでは、それぞれの要件について解説します。
住宅取得等資金贈与の非課税制度を申請する受贈者は、次の要件を満たしている必要があります。
家屋の新築や取得を目的とした贈与については、以下のような条件が定められています。
家屋の増改築などを目的とした贈与については、以下のような条件が定められています。
住宅取得等資金贈与の非課税制度を利用するには、以下のような書類が必要です。
ただし「住宅取得等資金として認められる範囲」にあるように、状況によっては上記以外の書類が必要な場合もあります。
たとえば、省エネ等住宅の場合、以下のいずれかの書類を贈与税の申告書に添付する必要があります。
なお、非課税制度を利用する際は、結果的に贈与税が0円の場合でも確定申告が必要です。
贈与税の申告手順については「【自分でできる】贈与税申告の方法と申告書の書き方まとめ」で詳しく解説しています。
ここでは、各種証明書について、どこが発行しているのかを解説します。
建築士事務所登録している事務所に属する一級建築士・二級建築士・木造建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人などが発行しています。
指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人などが発行しています。
登録住宅性能評価機関が交付しています。
建築士事務所登録している事務所に属する一級建築士・二級建築士・木造建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人などが発行しています。
住宅瑕疵担保責任保険法人が発行しています。
所管行政庁(都道府県や市町村など)が交付しています。
建築士事務所登録している事務所に属する一級建築士・二級建築士・木造建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関などが発行しています。
住宅取得等資金贈与の非課税制度を利用する場合、110万円の基礎控除と併用するパターンのほか、相続時精算課税制度と併用するパターンもあります。
ここでは、相続時精算課税制度を併用する場合の非課税枠や、相続時精算課税制度の利用条件などを解説します。
相続時精算課税制度の必要書類や計算例などの詳細については「相続時精算課税制度のメリットと贈与税対策のポイント」で解説しています。
相続時精算課税制度を利用すると2,500万円まで贈与税が課せられず、2,500万円を超える部分については一律20%の贈与税が課せられます。
たとえば、省エネ等住宅について住宅取得等資金贈与の非課税制度と相続時精算課税制度を併用した場合、3,500万円までは贈与税が課せられません。
相続時精算課税制度には、原則として以下のような利用条件があります。
ただし、住宅取得等資金贈与の場合は「相続時精算課税選択の特例|国税庁」にある要件を満たしていれば贈与者の年齢制限がなくなり、贈与者が60歳未満でも利用することができます。
相続時精算課税制度には以下のような注意点やデメリットもあるため、利用を検討している方は確認しておきましょう。
相続時精算課税制度を利用した場合、もうひとつの選択肢である110万円の基礎控除には変更できなくなるため、将来的な節税効果などもよく検討したうえで判断しましょう。
相続時精算課税制度によって贈与税が控除された分は、相続が発生した際に相続税の課税対象となるため、基本的に相続税の節税対策にはなりません。
ただし、賃貸アパートのような収益物件や将来的に値上がりが期待できる不動産などの場合、利益分や値上がり分は課税対象にならないため、状況次第では相続税を一部節税できる可能性があります。
ここでは、住宅取得等資金贈与の特例について押さえておくべきポイントを解説します。
贈与を受けた資金については、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の取得や一定のリフォームなどに全額を充てたうえで、その住宅に居住することが必要です。
たとえば、贈与を受けた資金を建売住宅や分譲マンションの取得に充て、贈与を受けた年の翌年3月15日までに引き渡しがおこなわれなかった場合は非課税制度の対象外となります。
住宅取得等資金贈与の特例は「住宅取得等のための資金贈与」が対象であり、贈与を受けた資金は住宅取得などのために使わないといけません。
たとえば、「先に貯金で住宅を購入し、あとから贈与を受けた」という場合は対象外となります。
住宅取得等資金の贈与については、暦年課税における110万円の基礎控除か2,500万円の相続時精算課税制度のいずれかを選択できます。
相続時精算課税制度を利用すると暦年課税の基礎控除への変更はできなくなるため、どちらを選択するのがよいか十分に考えましょう。
将来的に親の自宅を引き継ぐ予定がある場合は、相続発生時に土地の相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」という制度が有効です。
ただし、この制度を利用するには「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁」にある要件を満たしている必要があるほか、相続時精算課税制度を選択した場合は適用対象外となります。
小規模宅地等の特例の適用対象や計算方法など、詳しくは「小規模宅地の特例で土地の評価額が80%下がる|条件と計算方法」で解説しています。
一方、生前贈与の場合、相続時精算課税制度で2,500万円の非課税枠を使うか、基礎控除を利用して毎年110万円ずつ贈与をして贈与税を抑える方法もあります。
ただし、すでに居住用の家屋を建てることが決定している場合は大して意味のない行為になってしまう可能性もあるため、将来的に土地を相続する可能性がある人は十分に話し合って決定しましょう。
住宅取得等資金贈与の非課税制度を利用する際は、要件を細かく確認して書類準備などの対応もしなければいけません。
節税対策としては有効な手段のひとつであり、もし不明点や疑問点がある場合は税務署や税理士に相談しましょう。
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