財産を死後に相続するよりも、生前に譲り渡す生前贈与のほうが、税金の負担を抑えられる可能性があります。
しかし、生前贈与の仕方を間違えると贈与税が課せられて、相続税よりも高い税率がかかることもあります。
この記事では、生前贈与で税金の負担を抑える方法や、贈与税の税率や計算方法などを解説します。
*本記事の専門家による監修日は2023年6月28日です。
生前贈与について 弁護士に相談するメリットとは? |
生前贈与は、相続前に財産を減らすことで、節税効果が期待できるという大きなメリットがある一方、相続人の間におけるトラブル原因にもなりやすいです。
その点、弁護士は、相続トラブルを解決する立場にあるため、生前贈与絡みの案件も扱うことが多く、豊富な経験を元に「どのような策をとれば良いか」アドバイスをすることが可能です。
・生前贈与に関する相続トラブルを未然に防ぎたい ・生前贈与が絡んだ相続トラブルに悩んでいる
このような方は、まず無料相談などを気軽に活用してみましょう。 |
生きている間に自身の財産をほかの人に譲ることを「生前贈与」といいます。
場合によっては財産を生前贈与することで税金がかかることもあり、その際の税金を「贈与税」といいます。
2015年1月1日から税制が改正されたことで、生前の財産の譲り渡しがよりスムーズにできるようになりました。
これまでは、相続時精算課税制度を利用して生前に財産を受け取れるのは親子間だけでしたが、税制改正によって祖父母から孫へも適用されるようになりました。
ここでは、贈与税の特例制度について解説します。
贈与税には、毎年1月1日から12月31日までの間に1人あたり110万円までの贈与であれば非課税となる「基礎控除枠」が設けられています。
贈与税の基礎控除枠は、子どもや孫だけでなく誰に対しても適用されます。
なお、基礎控除枠を活用して、毎年110万円の範囲内で財産を贈与することを「暦年贈与」と呼びます。
相続時精算課税制度は、まとまった現金や土地・不動産を贈与する際に活用されることが多い制度です。
贈与する側は60歳以上、贈与を受ける側は贈与者の子どもか孫で18歳以上でなければいけません。
もし2,500万円を超える額を贈与する場合は、超えた部分に一律20%の贈与税が課せられます。
なお、相続時精算課税制度を利用する場合は、税務署に贈与税の申告書や相続時精算課税制度選択届出書を提出する必要があります。
現行の制度では2,500万円の非課税枠のみですが、2023年の税制改正によって、2024年1月1日以降の贈与では年110万円の控除が新設されることが決定しました。
詳しい内容については「相続時精算課税制度のメリットと贈与税対策のポイント」で解説しています。
住宅取得等資金贈与の特例は、居住用の不動産を購入するための資金援助などをおこなう際に活用できる制度です。
基礎控除枠と同時に利用でき、贈与税について最大1,000万円の控除が受けられます。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産や取得資金の贈与をおこなう際に活用できる制度で、最大2,000万円まで非課税となります。
なお、同じ相手に再度利用することはできず、贈与がおこなわれた住居・土地には住み続ける必要があるため、利用時期などについては慎重に検討する必要があります。
父母や祖父母などが教育費として資金贈与をおこなう際に活用できる制度で、1,500万円まで非課税となります。
なお、この制度が適用されるのは「贈与を受ける人が30歳未満である場合」にかぎります。
利用にあたっては、贈与する人が信託会社と教育資金管理契約を結ぶ必要があり、贈与を受ける側はその契約の受益者となります。
父母や祖父母が18歳以上50歳未満の子どもや孫に結婚や子育てに関する資金贈与をおこなう際に活用できる制度で、子育て資金の場合は1,000万円、結婚資金については300万円まで非課税となります。
詳しくは「生前贈与を非課税で行う為の6つの方法」で解説しています。
贈与については、1年間の贈与額が110万円を超えた部分に贈与税がかかります。
贈与税の税率や控除額などは法律で定められており、2015年1月1日の法改正によって税率や控除額は変更になったほか、贈与財産については「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の2つに区分されました。
ここでは、改正前の贈与税の税率・控除額と、現在の「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の税率・控除額を解説します。
改正前の表:2014年12月31日までの贈与税
贈与額から110万円を引いた額 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
なし |
200万円を超えて300万円以下 |
15% |
10万円 |
300万円を超えて400万円以下 |
20% |
25万円 |
400万円を超えて600万円以下 |
30% |
65万円 |
600万円を超えて1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,000万円を超える |
50% |
225万円 |
改正後の表:一般贈与財産の贈与税(兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親子間の贈与で子どもが未成年の場合など)
贈与額から110万円を引いた額 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
なし |
200万円を超えて300万円以下 |
15% |
10万円 |
300万円を超えて400万円以下 |
20% |
25万円 |
400万円を超えて600万円以下 |
30% |
65万円 |
600万円を超えて1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,000万円を超えて1,500万円以下 |
45% |
175万円 |
1,500万円を超えて3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
3,000万円を超える |
55% |
400万円 |
改正後の表:特例贈与財産の贈与税(父母や祖父母から18歳以上の子どもや孫へ贈与する場合)
贈与額から110万円を引いた額 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
なし |
200万円を超えて400万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円を超えて600万円以下 |
20% |
30万円 |
600万円を超えて1,000万円以下 |
30% |
90万円 |
1,000万円を超えて1,500万円以下 |
40% |
190万円 |
1,500万円を超えて3,000万円以下 |
45% |
265万円 |
3,000万円を超えて4,500万円以下 |
50% |
415万円 |
4,500万円を超える |
55% |
640万円 |
ここでは、上記の表をもとに贈与税の計算方法について解説します。
「子どもが18歳以上」と仮定すると、特例贈与財産の税率・控除額が適用され、贈与税額は以下のとおりです。
この場合、一般贈与財産の税率・控除額が適用され、贈与税額は以下のとおりです。
贈与税の申告は、原則として、財産を受け取った人が「受け取った年の翌年2月1日から3月15日まで」におこなう必要があります。
申告書などを提出する場所は、贈与を受けた人の住所地を管轄している税務署です。
贈与税の納税方法は以下の4種類あります。
ここでは、生前贈与をおこなう際に注意すべきポイントを解説します。
贈与税の基礎控除枠である110万円は、何人から贈与されても変わりません。
たとえば、祖父と祖母からそれぞれ110万円を贈与された場合、「1年間に220万円まで非課税になる」というのは誤りです。
このようなケースでも基礎控除額は110万円であり、超えた部分については贈与税の対象になります。
贈与税は、贈与を受けた人が支払う必要があります。
もし贈与した人が贈与税を支払うと、その支払い分も贈与だとみなされる恐れがあります。
たとえば「時価7,000万円の土地を5,000万円で売る」というのは、親子間などで起こりうる話ではあります。
しかし、このような場合は「時価と売値の差額2,000万円が贈与された」とみなされてしまいます。
現金や不動産の贈与を認めてもらうためには、贈与財産を受け取った人が自由に使える状況でなければなりません。
たとえば、親が子どもに現金を贈与した場合に「現金を預けている口座の通帳や印鑑を親が管理している」など、子どもが財産を自由に使えない状況では贈与として認められない恐れがあります。
たとえば、結婚子育て資金贈与の特例で贈与を受けたにもかかわらず、結婚資金ではなく娯楽費や新車購入などに使ってしまった場合や、贈与してもらった財産を使わずに貯蓄している場合などは贈与として認められない恐れがあります。
自分の財産を贈与する際は、贈与税の基礎控除枠だけでなく、状況によってはほかの特例制度が活用できる場合もあります。
自分の状況に合った方法を選択して、税金の負担を抑えましょう。
生前贈与について 弁護士に相談するメリットとは? |
生前贈与は、相続前に財産を減らすことで、節税効果が期待できるという大きなメリットがある一方、相続人の間におけるトラブル原因にもなりやすいです。
その点、弁護士は、相続トラブルを解決する立場にあるため、生前贈与絡みの案件も扱うことが多く、豊富な経験を元に「どのような策をとれば良いか」アドバイスをすることが可能です。
・生前贈与に関する相続トラブルを未然に防ぎたい ・生前贈与が絡んだ相続トラブルに悩んでいる
このような方は、まず無料相談などを気軽に活用してみましょう。 |
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