贈与税の課税対象となる財産は大きく「特例贈与財産」と「一般贈与財産」に分けられます。
このうち特例贈与財産とは、直系尊属から18歳以上の人に贈与された財産のことを指します。
一般贈与財産とは贈与税の税率が異なり、特例贈与財産のほうが税金面で有利になることが特徴です。
本記事では、「特例贈与財産とは何か」について知りたい方に向けて、以下の内容について説明します。
本記事を参考に、どのような場合に特例贈与財産になるのか、贈与税額をどう計算するのかなどを理解しましょう。
特例贈与財産とは、18歳以上の人が直系尊属から受け取った財産のことです。
全ての贈与が特例贈与財産になるわけではなく、以下の要件を全て満たす必要があります。
特例贈与財産に該当した場合、それ以外の贈与(一般贈与財産)に比べて税金面で有利になります。
そのため、子ども世代への財産の移転を進める際には、この特例贈与財産制度を活用するのもおすすめです。
特例贈与財産と一般贈与財産では、以下のように贈与税を計算するときの税率が異なります。
贈与税の課税価格 |
特例贈与財産 |
一般贈与財産 |
200万円以下 |
10% |
10% |
200万円超300万円以下 |
15% |
15% |
300万円超400万円以下 |
20% |
|
400万円超600万円以下 |
20% |
30% |
600万円超1,000万円以下 |
30% |
40% |
1,000万円超1,500万円以下 |
40% |
45% |
1,500万円超3,000万円以下 |
45% |
50% |
3,000万円超4,500万円以下 |
50% |
55% |
4,500万円超 |
55% |
税率が異なるのは300万円超~4,500万円以下の金額帯であり、一般贈与財産よりも税率は5%低くなります。
この金額帯の贈与の場合は、一般贈与財産よりも特例贈与財産のほうが贈与税は有利になるといえるでしょう。
特例贈与財産であっても、基本的な贈与税額の計算方法は通常のものと同じです。
ここでは、特例贈与財産を受贈した場合の贈与税の計算方法(暦年課税)について説明します。
なお、実際に特例贈与財産の税額を計算する際は「贈与税の税額の計算明細」を利用するのがおすすめです。
まず、1年間に受贈した全ての財産の価額を合計します。
この1年間の受贈額を算出するときのポイントは、以下のとおりです。
通帳や贈与契約書などを確認し、その年に受け取った財産がどれくらいあるかを確認しましょう。
次に、贈与財産の合計額から基礎控除額を差し引きます。
贈与税の基礎控除額は、受贈者一人あたり年間110万円と決まっています。
贈与財産の合計額が110万円以下の場合は、原則として贈与税の申告手続きは必要ありません。
次に、課税価格に特例贈与財産用の税率を掛けます。
税率は贈与税の課税価格によって異なり、10%~55%の税率を掛けることになります。
なお、特例贈与財産と一般贈与財産の両方がある場合は、それぞれについて計算する必要があります。
最後に、控除額を差し引くことで、その年の贈与税額が求められます。
控除額も贈与税の課税価格ごとに設けられており、10万円~640万円を差し引くことになります。
要するに、贈与税額は「(贈与財産の合計額-110万円)×税率-控除額」で算出することができるのです。
ここでは、実際に特例贈与財産を受け取った場合の贈与税額を計算しましょう。
1年間に父から500万円、祖父から500万円を受け取った場合の贈与税額の計算方法は、以下のとおりです。
父と祖父から財産を受け取った場合のように、特例贈与財産だけの場合は上記の手順で贈与税額を計算できます。
なお、特例贈与財産用の贈与税の速算表については、以下を確認してください。
贈与税の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
なし |
200万円超400万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円超600万円以下 |
20% |
30万円 |
600万円超1,000万円以下 |
30% |
90万円 |
1,000万円超1,500万円以下 |
40% |
190万円 |
1,500万円超3,000万円以下 |
45% |
265万円 |
3,000万円超4,500万円以下 |
50% |
415万円 |
4,500万円超 |
55% |
640万円 |
1年間に母から500万円、おばから500万円を受け取った場合の贈与税額の計算方法は、以下のとおりです。
特例贈与財産と一般贈与財産の両方がある場合は、上記のようにそれぞれの税額を求めて合算して計算をします。
なお、一般贈与財産用の贈与税の速算表については、以下のとおりとなっています。
贈与税の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
なし |
200万円超300万円以下 |
15% |
10万円 |
300万円超400万円以下 |
20% |
25万円 |
400万円超600万円以下 |
30% |
65万円 |
600万円超1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,000万円超1,500万円以下 |
45% |
175万円 |
1,500万円超3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
3,000万円超 |
55% |
400万円 |
特例贈与財産に関する注意点には、以下のようなものがあります。
ここでは、特例贈与財産に関して知っておくべき注意点について説明します。
特例贈与財産の対象となるのは、18歳以上の人への贈与となっています。
また、その年の1月1日時点で18歳を迎えている必要があるため、言い換えると19歳になる年から利用できます。
なお、以前は20歳以上でしたが、2022年に成年年齢が18歳になったため同制度の対象年齢も18歳になりました。
特例贈与財産の対象となる受贈者(直系卑属)には、養子や養子の子どもなども含まれます。
しかし、あくまでも養子縁組をおこない、親子関係ができたあとの贈与に限られるので注意しましょう。
また、養子の子どもへの贈与では、養子縁組をしたあとに生まれた子どもに限られる点にも注意が必要です。
特例贈与財産を受け取り、特例税率で贈与税申告をする場合は以下のような書類が必要になります。
特例税率で申告する場合は親子関係を証明する必要があるため、戸籍謄本等を添付することになります。
なお、贈与財産の合計額が410万円以下なら税率は変わらないため、通常の添付書類で問題ありません。
特例贈与財産とは、直系尊属から18歳以上の直系卑属に対して贈与された財産のことを指します。
そのほかの一般贈与財産に比べて税率が低くなっており、贈与税で有利に扱われることが特徴です。
贈与税の申告書に「特例贈与財産分」の欄があるので、そこに必要事項を記入して申告しましょう。
なお、贈与税の計算・申告について不明点がある場合は、早めに税理士や税務署に相談することをおすすめします。
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