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相続開始前後の遺産の使い込みは取り戻せるのか?使途不明金4つのパターンと解決方法

関口 英紀 弁護士
監修記事
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親が死亡して相続が発生したとき、預貯金の内容を調べてみると、相続開始の前後に多額の出金がおこなわれているケースがあります。

そのような場合、同居していた長男などが勝手に親の預貯金を使い込んでいる可能性があります。

長男の使い込みが明らかになったとき、ほかの相続人はこれを取り戻すことができるのでしょうか。

今回は、遺産相続の際、預貯金に使途不明金が発生する4つのパターンと、使い込まれた遺産を取り戻せる場合の方法について解説します。

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結論からいうと、遺産を勝手に使い込んだ相続人から財産を取り戻すには、弁護士に相談・依頼することが最も実効性が高い手段です。

 

弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遺産の使い込みの対処法についてアドバイスがもらえる
  • 依頼すれば、使い込みの証拠集めや返還請求などを任せることができる
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使途不明金は取り戻せるのか?

はじめに、使途不明金は取り戻すことが可能なのかどうかについて、使途不明金の基礎情報とあわせて解説します。

使途不明金とは使い道が不明な被相続人の預貯金のこと

使途不明金とは、相続開始前後に引き出された、その使途が不明な被相続人名義の預貯金のことをいいます。

被相続人が入院して自分では使うことができなかったのに預金口座からの引出し履歴があるケースや、被相続人の死亡後に出金されているケースなどでは、明らかに本人が使用したものではないので「使途不明金」となります。

実際には、被相続人と同居していた相続人が無断で預金を引き出し、自分のために使い込んでいる事例などは多く見られます。

使途不明金は取り戻せるケースと取り戻せないケースがある

使途不明金が発生している場合、取り戻せるケースと取り戻せないケースがあります。

そもそも預貯金は相続財産に含まれるので、基本的には相続人同士の話し合いでそれぞれの取り分を決めていくべきです。

そのため、使途不明金が発生し、不正な使い込みが判明した場合には、公平に遺産分割ができるように返還や相続分の調整を求めることができます。

しかし、出金していたことに正当な理由がある場合や、不正な使い込みがあったことを証明できなかった場合などには、取り戻せない可能性もあるので注意してください。

遺産相続の使途不明金4つのパターンとそれぞれの解決方法

使途不明金とひと言でいっても、どのような形で使途不明金となったのかによって解決方法が異なります。

ここでは、それぞれのケースにおける解決方法を解説します。

1.相続開始後に出金されていたケース

1つ目のパターンは、親が死亡したあと、相続人の1人が預貯金をまとめて出金していたケースです。

通常、名義人が死亡し、金融機関に通知すると金融機関によって預金口座が凍結され、正式な手続きを済ませるまでお金を引き出せなくなります。

そのため、金融機関に口座凍結される前に、預貯金を引き出そうと考える人も少なくありません。

この場合、出金したお金の用途が明らかであれば、大きな問題になりませんが、預貯金が勝手に引き出され、使い込まれていた場合は、ほかの相続人は返還を求めることになります。

使途不明金を取り戻す場合は、まず相続人同士の話し合いでの解決を目指しましょう

話し合いがまとまらないようであれば、遺産分割調停を申し立てたり、訴訟を起こして不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求をおこなったりする必要があります。

2.被相続人の承諾を得て自分のために引き出していたケース

相続人が被相続人の承諾を得て、自分のためにお金を引き出しているパターンもあるでしょう。

この場合、金額にもよりますが、被相続人から相続人に対する生前贈与があったとみなされることもあります。

実際同居している長男などに対して、親がまとまった金額を贈与する例は珍しくありません。

生前贈与や遺贈などは特別受益にあたる場合があり、その場合はほかの相続人から返還請求することはできません。

ただし、遺産分割をする際に「特別受益の持ち戻し計算」をおこなえば、公平な相続を実現させることができます。

たとえば、相続人が長男と長女の2人で、遺産総額5,000万円のうち1,000万円が長男に生前贈与されていた場合、それぞれの相続分は以下のとおり計算します。

  • 長女の相続分:(5,000万円+1,000万円)×1/2=3,000万円
  • 長男の相続分:(5,000万円+1,000万円)×1/2-1,000万円=2,000万円

ただし、生前贈与が特別受益として持ち戻しの対象になるのかどうかは、個々のケースごとに判断されるべきものです。

疑わしい点がある場合は、余計なトラブルを防ぐためにも、まずは弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。

3.相続開始前の出金に正当な理由があるケース

相続開始前に、相続人の1人が被相続人の預金口座から無断で出金し、使途不明金が生じるケースもあります。

このケースで問題となるのは、出金に正当な理由があるかどうかです。

正当な理由とは、たとえば以下のようなものです。

  • 被相続人に貸していたお金を回収するために出金した場合
  • 被相続人に生活費や遊興費を渡すために出金した場合
  • 被相続人の入院費用を支払うために出金した場合

このようなケースでは、使い込みがあったとはいえず、出金した相続人自身が得をしているわけでもないので、ほかの相続人から返還を求めることはできません

4.相続開始前の出金に正当な理由がないケース

相続開始前の出金によって使途不明金が生じていて、出金する正当な理由がなかった場合は、当然返還を求めることになります。

たとえば、同居していた相続人が勝手に預貯金を出金して、自分のために使っていたケースなどが挙げられるでしょう。

このように、出金に正当な理由が認められないケースでは、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求ができます

不当利得とは、法律上の理由なく利益を受けることです。

不当利得によって損失を被った人は、利得を受けた者に対して不当利得分を返還請求することができます。

不法行為とは、故意や過失によって、法律上守られるべき権利や利益を侵害する行為のことです。

預貯金の不正な出金によって、遺産相続の取り分が減るという損害が発生している場合には、勝手に出金した相続人に対し、不法行為にもとづく損害賠償請求ができます。

遺産を使い込んだ相続人に使途不明金の返還請求をするときには、不当利得と不法行為のどちらを理由としてもかまいません

ただし、時効期間に違いがあり、不法行為に基づく損害賠償請求権は「損害及び加害者を知ったときから3年」、不当利得返還請求権は「行為のときから10年」で消滅してしまいます。

そのため、預金の使い込みから長期間経過している場合は、時効の点で有利な不当利得返還請求を検討することになるでしょう。

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使途不明金を追及するために必要な証拠と入手方法

特定の相続人が勝手に被相続人の預貯金を出金して使途不明金となった場合、返還請求をするには「証拠」が必要です。

以下でどのようなものが有効な証拠となるのか、説明します。

必要な証拠

使途不明金を取り戻すには、以下のような証拠が必要です。

被相続人名義の預貯金の取引履歴や残高証明書

まずは、被相続人の預金口座から不正な出金がおこなわれていることを証明するものが必要です。

具体的には、被相続人名義の預貯金口座の取引履歴や残高証明書などが証拠として利用できます。

取引履歴や残高証明書を見て、多額の引き出し・引き落とし、送金など不審な記録がないか、確認してみてください。

可能であれば、使い込みが疑われる相続人の預金口座の取引履歴と照合し、入出金の一致がないかも調べておくとよいでしょう。

また、誰が出金したのかわからない場合は、払戻請求書の控えが役に立ちます。

払戻請求書には手続きをした人の筆跡が残っていることがあり、誰が出金したのかを明らかにできる可能性があります。

被相続人が当時自分で出金できなかったことを示すカルテや介護記録

次に、被相続人が当時自分で出金できなかったことを示す証拠を集めましょう。

預金口座から出金があった場合、名義人がおこなったものだと考えるのが一般的です。

相手から「父が自分で引き出したのではないか」などと反論されてしまうとそれ以上追及できなくなります。

そのため、外出ができる状態ではなかったことや、意思能力が不十分だったことなどを示し、被相続人本人の意思による出金ではないと証明しなければなりません。

具体的には、被相続人が入通院していた病院のカルテや医師の診断書、介護記録などが証拠になります。

そのほか、要介護認定に関する記録なども証拠のひとつとして役立てられるでしょう。

相続人による使い込みを示すもの

使途不明金を追及する際には、相続人による使い込みの事実を示す証拠も必要です。

出金したこと自体は認めていても、正当な理由があったと主張してくる可能性があるためです。

たとえば、怪しい出金がおこなわれた直後に、相続人が大きなお金を使った様子があれば、証拠として残せるものがないか探してみてください。

車を買ったり家族で海外旅行にいったりしている場合は、その様子を収めた写真やお土産などを証拠として利用できる可能性があります。

証拠の入手方法

ここからは、上述した証拠の種類ごとに入手方法を解説します。

銀行の取引履歴や残高証明について

預金口座の取引履歴や残高証明については、銀行に直接問合せをすれば発行してもらえます。

ただし、相続人であることを証明しなければならないため、戸籍謄本などの準備が必要です。

銀行によって申請方法や遡れる年数などが異なるので、気になる方は個別に確認してみてください。

なお、弁護士に依頼すれば「弁護士会照会制度」によって、預金口座の取引履歴や残高証明などを収集することができます。

弁護士会の名前を使って銀行に情報提供を依頼することになるため、素早く確実に証拠を集めることが可能です。

カルテや介護記録について

医療カルテや介護記録については、病院や介護事業所へ照会をします。

要介護認定記録を入手するには、市区町村に対する情報開示手続きが必要です。

開示手続きは市区町村ごとに異なるため、まずは担当窓口に連絡してみるのがよいでしょう。

相続人の立場でも要介護認定記録を取得できない場合は、弁護士会照会などの利用を検討することになります。

相続人による使い込みを示すものについて

相続人による使い込みを示すものについては、相続人自身にクレジットカードの利用記録や預金口座の取引履歴を提示させることで収集できることがあります。

また、派手にお金を使っていることがわかるSNSへの投稿なども、証拠として役立てられるかもしれません。

かたちとして残っているものがなければ、周囲の人に陳述書を書いてもらうのもひとつの方法です。

まとめ

被相続人の預金口座から不正な出金がおこなわれ、使途不明金が発生している場合は、相続人間で大きなトラブルになるケースが多々あります。

自分達だけで解決しようとすると困難な事態になりやすいので、お困りの際には相続問題が得意な弁護士に相談してみてください

使い込まれた遺産を取り戻したいあなたへ

遺産を勝手に使い込まれてしまい、どう対処すればよいかわからずに困っていませんか?

結論からいうと、遺産を勝手に使い込んだ相続人から財産を取り戻すには、弁護士に相談・依頼することが最も実効性が高い手段です。

 

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川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士 (神奈川県弁護士会)
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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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