遺産の使い込みとは、被相続人(亡くなった人)の生前に財産を管理していた人が、他の相続人に無断で、相続財産を自分のために使用することをいいます。
預貯金の引き出しや生命保険の解約返戻金の着服など、さまざまな使い込みの例があり、なかなか気付きにくいこともあるでしょう。
相続には3ヵ月というタイムリミットがあります。
万が一、親族の誰かが使い込みをしている疑いがある場合、早急な対応が必要です。
使い込みは明確な犯罪行為であり、なおかつ時効があります。
本記事では、使い込まれた遺産の返還請求の方法や返還されないケース、弁護士に依頼するメリットなどを解説します。
遺産の使い込みを疑われた場合の対処法も紹介していますので、お困りの方はぜひ参考にしてください。
あなたが受け取るはずだった遺産を取り戻したい方へ
あなたの知らないうちに遺産が使いこまれていたことに気づいたけど、取り戻し方がわからずに悩んでいませんか。
結論からいうと、使い込まれてしまった遺産の返還請求に関する悩みは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 使い込まれた遺産を取り戻せるかわかる
- 弁護士に認められている照会制度を利用し、使い込み調査を依頼できる
- 依頼すれば、遺産を使い込んだ相続人との交渉や訴訟を代行してくれる
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電話での相談も可能なので、依頼するか決めていなくても、本当に弁護士に依頼すべきかも含めてまずは無料相談を利用してみましょう。
使い込まれた遺産を取り返す5つの方法
被相続人の遺産を勝手に使われていたことが発覚しても、どのように請求すればいいのかわからず、不安に感じる方もいることでしょう。
ここでは、使い込まれていた遺産を取り戻すための5つの方法について解説します。
1.使い込みの調査をおこなう
遺産の使い込みが疑われる場合は、本当に使い込みがおこなわれたのかまずはしっかり調査して、証拠を集めましょう。
使い込みの証拠をつかめれば、どのように対応する場合でも有利に進めることができます。
遺産の使い込みを調査する方法は、個人的に収集する方法と、弁護士や裁判所に依頼して調査をしてもらう方法があります。
それぞれ見ていきましょう。
自分で収集する方法
自分で収集が可能な使い込みの証拠は、ほとんどのケースが預貯金のみとなります。
預貯金の場合、被相続人名義の預貯金口座がある金融機関に、取引履歴の開示請求をすることで調べられます。
口座の過去の入出金履歴を確認し、一部の相続人の口座にお金が振り込まれていたり、不審な出金記録が残っていたりすれば、遺産の使い込みの証拠となるでしょう。
弁護士に依頼して調査する方法
弁護士は「弁護士会照会制度」を利用でき、職務を全うするために必要な証拠収集を認められています。
弁護士には、預貯金口座の取引履歴のほか、証券口座の取引履歴や保険金の支払い状況、被相続人が所有していた不動産や医療・介護の記録など、幅広い調査を依頼することが可能です。
遺産が預貯金だけでなく、証券や不動産などさまざまな形で遺されている場合、弁護士に依頼すれば効率よく証拠収集を進められるでしょう。
裁判所に依頼して調査する方法
自身や弁護士が証拠の収集をする場合、ほとんどのケースで調査できるのは、被相続人名義の口座に限られます。
金融機関は個人のプライバシー保護の観点から、使い込みの疑いがある人の口座の取引履歴の開示請求には応じないことが通常です。
そのような場合に裁判所を介して、使い込みの疑いがある人の取引履歴を金融機関に開示請求できることがあります。
裁判所に依頼する場合、まずは裁判を起こさなければなりません。
裁判が始まり、審理に必要だと判断されれば、「嘱託調査」という形で相手方の預貯金や取引履歴の調査をしてもらえる可能性があります。
また裁判の前に仮処分を申し立てることで、情報の開示が認められることもあります。
遺産の使い込み調査は弁護士がおすすめ
保険金の解約返戻金の着服や不動産・金融証券といった資産は、個人で調べるには限界があります。
弁護士に依頼をすることでこれらの情報取得ができる可能性が格段に高まります。
また、相手方に「弁護士がいる」と認知させることによって、さらなる使い込みの被害を抑止できるだけでなく、その後の交渉も有利に進められるでしょう。
2.使い込みをした人物と話し合う
証拠を集めたらそれをもって、返還について使い込みをした人物と話し合いましょう。
まずは相手に対し「裁判」や「仮差押え」という手段を取ることを伝え、「返還しないと法的手段を取る」と返還を迫る方法が有効だと考えられます。
このとき弁護士も一緒にいれば、裁判への本気度も伝えられます。仮に話し合いで解決できる場面であっても、交渉を有利に進めることが可能です。
3.不当利得返還請求で返還請求をする
「不当利益返還請求」とは、本来利益を得るはずの人が損失を被る形で別の人が利益を得る場合に、損失を被った人が本来得るはずだった利益を請求することです (民法第703条)。
相手方と返還の話し合いをしたものの交渉に応じてもらえなかった場合、不当利得返還請求で訴訟を起こします。
不当利得返還請求は、以下の4つの要件がすべて当てはまれば認められます。
- 使い込みをした人が他人の財産または労務によって利益を得ている
- ①が法律上の原因を満たしていない
- ほかの相続人に損失が発生している
- 利益と損失の間に因果関係がある
訴訟をする際には、遺産の使い込み案件に注力している弁護士に相談しましょう。
4.遺産使い込みの返還はどんな場合も可能?
遺産を使い込まれた側としては、「すぐにでも遺産を返還してもらいたい」と考えるのが当然でしょう。
しかし、まずはご自身のケースが返還請求できるケースかどうかを確認する必要があります。
残念ながら、場合によっては返還請求できないことがあるからです。
5.証拠があり返還請求が可能なケース
遺産使い込みの疑いがある人が使い込みを否定している場合、相手が遺産の使い込みをしたという証拠を提示できれば返還請求が可能です。
動かぬ証拠をもって返還請求に臨めば、相手も相応の準備が必要になります。
証拠の集め方については、前述した「遺産の使い込みを調査する方法」の項目を参考にしてみてください。
相手方との交渉は弁護士に依頼すると、あなたに有利になるよう、より効果的に交渉を進めてくれるでしょう。
返還請求が不可能な3つのケース
遺産の使い込みは不法行為です。
しかし、証拠があっても返還請求が認められないケースがあります。
そこで証拠があっても返還請求が認められないケースを3つ紹介します。
1.時効が成立している
遺産の使い込みを相手が否定している場合や、話し合いで折り合いがつかない場合、「不当利得返還請求」か「損害賠償請求」をおこなうことになります。
しかし、これらの手段にはそれぞれ時効があるので、注意が必要です。
不当利得返還請求の時効は損失の発生から10年、損害賠償請求の時効は損害および加害者を知ったときから3年です。
時効が成立すると返還請求ができなくなります。
遺産の使い込みに気付いたら、早めに対処するようにしてください。
なお、どちらの返還請求が自分に適しているかわからない場合は、弁護士に相談してアドバイスをもらいましょう。
2.使い込みではないと判断される場合
一部の相続人が被相続人の相続財産を出金していても、それが正当な理由によるものである場合、使い込みではないと判断され、返還請求ができなくなります。
以下のようなケースでは、使い込みが正当であるとみなされます。
- 被相続人に依頼されて出金した(生活費、介護費用など)
- 被相続人の必要経費のために使用した(葬式費用など)
- 被相続人から贈与された(贈与契約書など贈与の証拠がある場合)
- 実は出金に関与していなかった など
「介護費用のために使った」「葬式費用に充てた」と主張された場合には、支払い明細などの証拠を提示してもらい、事実を確認しましょう。
また、銀行での口座名義人本人以外による出金には、委任状や銀行との面談が必要です。
「同意のもとに出金した」と主張された場合は、それらがおこなわれたという証拠がないか確認しましょう。
3.相手にお金がない場合
遺産を使い込んだ相手にお金がない場合、泣き寝入りをするしかない場合もあります。
遺産の使い込みは親族間の問題であり、罰則などの規定がないため取り立てが難しいと判断されるからです。
しかし、使い込み自体を泣き寝入りしなければならなかったとしても、その分を取り返す方法はあります。
それが「特別受益の持戻し」という方法です。
特別受益の持ち戻しとは、生前贈与や遺贈の分をみなし相続遺産として、遺産分割が不公平にならないよう調整することです。
ただし特別受益と評価されるケースは限定されているので、注意が必要です。主なケースとしては、遺言により財産を譲られる遺贈や、不動産購入の際の贈与、結婚資金の贈与などが挙げられます。
使い込みを疑われている人がこれらの遺贈や贈与を受けていれば、遺産の一部として具体的相続分を計算できるので、確認してみてください。
そもそも、使い込みは違法行為であり、返還請求権が認められた場合、支払い義務が発生します。
これは自己破産といった特別な事情でもない限り、たとえ金銭がなくても支払義務の発生はあるということです。
親族間の問題なのでここまでおこなうケースは少ないようです。
しかし。真剣に返還請求を考えていることを相手に伝えたい場合、こうした手法も視野に入れていると示しておきましょう。
「不当利得返還請求」か「損害賠償請求」かの判断基準
遺産の使い込みは、「不当利得返還請求」か「損害賠償請求」によって返還を求めることが可能です。
ただし、それぞれ異なる時効があり、時効が長いほうを選択する必要があります。
一般的には時効が長い不当利得返還請求を選択されることが多いようです。
訴訟を起こす場合、相手は被相続人の配偶者や子どもなどであるため刑罰は科せられず、使い込んだ遺産を返還してもらうだけになります。
どちらを選んでも結果に違いは生じません。
時効の長さは次の表で紹介します。
「不当利得返還請求」と「損害賠償請求」の時効
「不当利得返還請求」と「損害賠償請求」の時効はそれぞれ下記のとおりです。
不当利得返還請求
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損失の発生から10年、または権利を行使できると知ったときから5年(どちらか早い方を適用)
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損害賠償請求
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損害及び加害者を知ったときから(使い込み発生時から)3年
|
※不当利得返還請求について、2020年3月31日以前に発生した債権には改正前の民法が適用されるため、時効は「遺産を使い込まれたときから10年」となります。
不当利得返還請求は「損失の発生から10年」、または「使い込みをされてから10年」、もしくは「被害者が遺産の使い込みがあったことを知ったときから5年」と定められています。
証拠集めの段階で「知った」とみなされることもあります。
遺産の使い込みが疑われるときには、可能な限り迅速に調査をおこないましょう。
よりスムーズに証拠を集めるために、弁護士への依頼も検討してみてください。
訴訟を起こしてメリットがあるか見極める
遺産の使い込みをした証拠があり、不当利得返還請求または損害賠償請求の訴訟が可能なケースであったとしても、「そもそも訴訟にメリットがあるか」を考えなければなりません。
返還請求の訴訟をした場合、訴訟費用や弁護士費用といった、裁判の費用がかかります。
一般的に遺産の使い込みは、相手が使い込んだことを認めない傾向にあるため、裁判は長引くことが多いようです。
そうなると裁判費用がかかるうえ、多大なストレスを感じるでしょう。
最終的に裁判費用の方が高くなってしまって意味がありません。
返還請求で帰ってくる金額と、裁判費用+ご自身の手間やストレスを天秤にかけ、訴訟にメリットがあるかどうか十分に検討しましょう。
証拠のそろい具合等によっては、裁判にかかる時間も変わってくるので、弁護士に相談するのもおすすめです。
どちらがいいかわからない場合は弁護士へ
遺産の使い込みの返還請求では、時効が長い不当利得返還請求を選択するのが通常です。
しかし、自分にはどちらでの訴訟が適しているか、素人では判断が難しいでしょう。
また訴訟の手続きは煩雑で、面倒な作業も多く発生します。
不当利得返還請求もしくは損害賠償請求を考えているならば、一度弁護士に相談してみましょう。
弁護士であれば専門的な知識をもとに、どちらでの訴訟が適しているか判断してくれます。
また煩雑な請求手続きも、弁護士に代行してもらえたほうが確実でスムーズに進むでしょう。
近年では多くの法律事務所で「無料相談」を実施しています。
必ず依頼しなければいけないわけではないので、まずは相談だけでも可能です。
ベンナビ相続でも遺産相続を得意とする弁護士が相談を受け付けています。
ぜひお気軽にご利用ください。
遺産の使い込み返還を弁護士に依頼する5つメリット
近年では相談料を無料としている法律事務所もありますが、いざ依頼するとなれば当然費用がかかります。
弁護士に依頼すると、返還請求でお金が返還される可能性が高まることに加え、解決後はある程度スッキリとした気持ちで親族間の関係を修復できます。
ここでは遺産の使い込みの返還請求を弁護士に依頼するメリットを解説します。
1.話し合いで解決しやすくなる
弁護士に依頼すれば、法的な知見から相手の不法行為の正当性を追究してくれます。
調査も一定の強制力をもって実行できますので、間に入ってもらうだけで、話し合いで解決できる可能性が高まります。
たとえば、保険金の解約が発覚した場合、相手方は「解約したことの正当性」を証明しなければなりません。
仮に証明できたとしても、それを親族一同に通知せず、解約返戻金を着服した事実の弁明が必要になります。
弁護士が介入していれば、本当に正当性のある主張なのか、根拠は法的に有効か、相手に徹底した説明を求められるため、訴訟になる前に解決の糸口を掴める可能性が高まります。
2.使い込み財産の調査や証拠収集を任せられる
遺産の使い込みには預貯金の引き出しや保険金解約のほか、不動産や証券等金融資産の売却など、さまざまなところで発生する可能性があります。
そもそも相続財産の調査自体が煩雑な手続きが必要なものです。
使い込みの調査となれば、さらに複数の窓口への問い合わせや各種書類の準備が必要になり、その煩雑さは通常の相続の比ではありません。
たとえば、被相続人が認知症などで正常な判断ができなかった場合、まず医療記録や介護記録、要介護認定記録の取得が必要になります。
そのうえで、預貯金口座の取引履歴と照らし合わせ、使い込みの正当性を検証します。
弁護士であれば、これらの書類を一括して取得してくれることに加え、書類が法的に有効なものかどうか確認してくれます。
3.裁判で圧倒的に有利
裁判においては弁護士に依頼するのが通常ですが、訴訟の前段階から弁護士のサポートを受けた方が圧倒的に有利です。
証拠集めや交渉を代行してくれることに加え、相手のいい分も話し合いの段階である程度聞いているので、裁判の対策がより綿密に立てられます。
いい争いが激化し、自分たちだけでは解決できそうにない場合は、依頼を検討しましょう。
4.調査の過程で起きたトラブルにも対応できる
相続は穏便に済むのがもちろんベストです。
しかし実際には、遺産の使い込みに限らず、相続財産の調査や遺産分割など、相続人間でさまざまなトラブルが起こることもあります。
もしそうしたトラブルが現実となった場合に、弁護士に依頼しておけば、包括的に対応してもらうことも可能です。
5.解決後の手続きまで依頼が可能
遺産の使い込みは、相手が被相続人の配偶者や直系血族、同居の親族ならば、返還請求が認められた場合でも特に罰則はありません。
このため、使い込まれた遺産が返ってきたらそれで完了です。
ただし、遺産が返還された後は、再び相続人一同で遺産分割の協議が必要になる場合があります。
すでに遺産分割をした後でも、返還された分を全員で分配する必要があるためです。
遺産分割には、相続人全員で話し合いをおこなったうえで、全員の合意のもと遺産分割協議書の作成が必要です。
トラブルなく作成できるならそれに越したことはありませんが、使い込みの返還請求で一度もめている以上、再び紛争が起きる可能性も考えられます。
紛争状態に突入させない・したとしても即対処できるようにするには、返還後の遺産分割の手続きまで弁護士に依頼するのが得策といえるでしょう。
弁護士費用の相場
弁護士の費用相場は、法律事務所によって異なるため、「相場は〇〇円」と一概には示せません。
以前の弁護士費用は旧報酬規程と呼ばれるルールで統一されており、現在もその基準を流用している法律事務所も多くあります。
以下に旧報酬規程をもとにした費用相場を示しますので、一例として参考にしてください。
【相談料】
5,000円~1万円/30分
最近では初回相談料を無料としている事務所も多い。
【着手金】
経済的利益の2%~8%(経済的利益の金額によって異なる)
弁護士に依頼した際に支払う費用。結果が成功しても失敗しても、原則返金されない。
請求する金額(=経済的利益)をもとに計算する。
【報酬金】
経済的利益の4%~16%(経済的利益の金額によって異なる)
事件終結時に支払う。弁護士の働きによって得られた金額(=経済的利益)をもとに計算する。
【実費】
交通費や郵便切手、収入印紙代など
【日当】
2万~5万円/半日、2万~10万/全日
弁護士が事務所を離れて業務を遂行する場合に発生する。
【手数料】
3万円程度~
文書や契約書の作成時に発生する。
たとえば、ある依頼者が弁護士に遺産使い込みの返還請求を依頼し、希望どおり200万円の経済的利益を得たとします。
この場合、着手金は200万円×8%=16万円、報酬金は200万円×16%=32万円となります。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
また、弁護士に相談したくても費用を用意できない方も、対処法を紹介しているのでぜひご覧ください。
遺留分侵害額請求とは?返還請求以外で請求できる方法を解説
相続財産の取り戻しを請求できるものとして、遺留分侵害額請求があります。
「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)(旧:遺留分減殺請求)」とは、相続人が最低限相続できる遺産(遺留分)が侵害された場合に、その取り分の確保を請求することです。
遺留分侵害額請求は、生前の贈与や遺言により、遺産の相続分が不当に減ってしまった際におこなうものです。
これは、使い込みとは異なり「受けるはずだった利益を損失した」とはみなされないので、「不当利得返還請求権」を行使することはできません。
遺留分侵害額請求の流れ
具体的な流れとしては、遺留分侵害額請求についても、まずは親族内で話し合いをおこない、解決を目指します。
合意に至らなかった場合、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。
調停でもまとまらなければ、訴訟を起こして裁判をおこなう形になります。
たとえば、被相続人に配偶者と二人の子ども(長男と長女)がいて、「長男だけにすべての遺産を相続させる」という遺言を残して亡くなったとします。
しかし、法的には配偶者と長女にも相続権があるので、配偶者と長女は長男に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
- 配偶者(妻)=(被相続人の財産)×1/2×1/2
- 長男 =(被相続人の財産)×1/2×1/2×1/2
- 長女 =(被相続人の財産)×1/2×1/2×1/2
なお、遺留分の請求について以前は「遺留分減殺請求」という呼び名でした。
法改正により「遺留分侵害額請求」として名前も制度内容も改められたので、ご注意ください(2019年7月1日施行)。
万が一、自分が使い込みを疑われたら?
たとえば認知症だった両親の介護などをしていた場合、その医療費の支払いや自宅の手入れなどで、預貯金を引き出すようなケースが考えられます。
そうした場合によくあるトラブルが、疎遠だった親族に使い込みを疑われてしまうパターンです。
辛いことですが、介護などの世話には一切関心を示さなかった親族が、相続になった途端に連絡をしてくるということは、よくあることなのです。
このような事態に備えて、事前に対策を確認しておきましょう。
遺産の使い込みを指摘されたときの対処法
使い込みをしていない、または必要な引き出しであったことを証明するには、相手が使い込みだと主張する出金(使途不明金といいます)について、客観的な資料を用意することが必要です。
具体的には、被相続人の医療費や介護記録、不動産の管理費等が考えられます。
これらの領収書や業者との契約書を準備しましょう。
また、生前贈与を受けた場合には、贈与契約書などの書面があれば証拠として有効です。
仮に被相続人のためではない出費でも、書面があれば正当性の証拠になります。
たとえば、被相続人の介護を目的として、相続人の住宅や車の購入のために大きな金額を引き出した場合でも、「被相続人の支援のための贈与である」と証明できれば、遺産の使い込みにはなりません。
遺産の使い込みと誤解されないための対策
前述のとおり、使い込みではないと証明するためには客観的な書類が必要です。
忘れずに、領収書や契約書、介護記録などはすべて保管しておきましょう。
また、親族等にあらかじめ相談をして同意を得ておくことも有効です。
また、生前贈与の際は「贈与契約書」を必ず取り交わしてもらいましょう。
なお、生前贈与の場合、相続人の住宅や車の購入のための贈与で書面を交わしていなくても、領収書などを保管しておけば、「なぜこのタイミングで、贈与を受ける必要があったのか」を合理的に説明できる可能性があります。
ただし、合理性を証明するのは難しいうえ、良かれと思って提出した証拠によって、かえって不利になってしまうことも考えられます。
遺産の使い込みを疑われたら、相続問題に注力している弁護士に早めに相談しましょう。
さいごに|遺産の使い込みの返還請求は弁護士にご相談を
遺産の使い込みは犯罪行為です。
しかし、前述のとおり、被相続人のためにやむを得ず出金がともなう場合もあります。
すべてが使い込みではないということも留意して、相手と話し合いをおこないましょう。
仮に不当な使い込みであることがわかった場合は、断固として権利を主張しなければなりません。
配偶者や直系血族、同居の親族は刑を免除されることが法により定められているため、罰則は特に科されることはありません。
心置きなく交渉をしましょう。
相手が返還に応じてくれないときは、弁護士に依頼して返還請求をしてもらうのが有効です。
依頼をするには費用が発生するので、経済的・心理的利益と費用をしっかり吟味しましょう。
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