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暦年贈与の概要と贈与税の算出方法や贈与のときの注意点まとめ

弁護士法人本江法律事務所
本江 嘉将
監修記事
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暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、贈与税の課税方式のひとつで、暦年課税ともいいます。

税額は1年間で贈与された財産の合計から110万円を控除し、税率を掛けることで求められます。

課税方式にはもうひとつ、相続時精算課税の制度があり、任意で相続時精算課税を選択した贈与者と受贈者(貰った人)間の財産贈与は翌年以降も全て相続時精算課税で処理します。

控除額の限度は2,500万円で、単年のものではなく複数年に渡るものです。

この記事では暦年贈与の計算方法と信託銀行のサービスである暦年贈与信託、その他暦年贈与と併用できる特例についてご紹介させていただきます。

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この記事に記載の情報は2023年10月02日時点のものです

暦年贈与とは|定期贈与との違い

暦年贈与とは、暦年、すなわち、1月1日から12月31日までにおこなう贈与(贈与契約)のことです。

暦年贈与の場合、受贈者(贈与を受ける人)1人につき110万円の基礎控除が認められています。

つまり、110万円の贈与までは贈与税がかからないということです。

これに対して、定期贈与とは、毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与(定期金給付契約)のことです。

たとえば、ある年に、贈与者Aさんと受贈者Bさんとが「これから毎年100万円を10年かけて贈与する(合計1,000万円を贈与する)」という取り決めをおこなうことが定期贈与です。

暦年贈与は贈与する時期や贈与の額が決められているわけではありませんが、定期贈与はあらかじめ贈与する時期や贈与の額が決められています。

また、暦年贈与では毎年の贈与額を110万円以下に抑えれば贈与税がかかりませんが、定期贈与は毎年の贈与額ではなく贈与することとした合計額(上記の例でいえば1,000万円)に贈与税がかかります。

したがって、税務署に定期贈与とみなされないための対策を取っておくことも必要となります。

暦年贈与の計算方法

暦年贈与で贈与税を算出するときは下記のとおりです。

STEP1
1月1日から12月31日の1年間で贈与財産の合計額を求める
なお、ここにいう贈与財産とは「本来の贈与財産」と「みなし贈与財産」があります。
本来の贈与財産とは、預貯金、株式、土地、建物など、贈与によって取得した財産で、金銭に換算できる経済的価値のある財産をいいます。
みなし贈与財産とは、本来の贈与財産ではないものの、贈与を受けたのと同じ効果のある財産のことをいいます。
たとえば、保険料の負担者ではない人が受け取った生命保険の満期保険金、時価に比べて著しく低い価額で財産を譲り受けた場合の時価と実際に支払った金額との差額、借金を肩代わりしてもらった場合のその額などがみなし贈与財産の例です。
STEP2
贈与財産から非課税財産を差し引き、課税価格(贈与税の課税対象となる財産の価格)を算出する
非課税財産とは、扶養義務者(子供から見た父親など)から受け取った生活費や教育費のうち、通常必要と認められる金額、社会通念上必要と認められるお祝い金、香典、見舞い金、法人から贈与された財産(所得税の対象となる)、相続開始年に被相続人から受け取った贈与財産(生前贈与加算の対象となった財産)などです。
STEP3
課税価格から基礎控除額110万円を引き算する
控除後の金額については、千円未満を切り捨てます。
STEP4
STEP3で残った額に、額ごとに対応する税率を掛け算する
STEP5
STEP4で算出した額からSTEP4の額ごとに定められた控除額を引き算する
STEP4の税率、STEP5の控除額は以下の速算表を用います。
速算表は一般贈与財産用(一般税率)と特例贈与財産用(特例税率)に分けられます。
特例税率は次の場合に適用できます。
・暦年贈与(暦年課税)であること
・贈与者が直系尊属(父母、祖父母など)であること
・受遺者が贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること
STEP6
贈与税が算出できる

誰に贈与するかによって税率が異なる | 一般贈与財産と特例贈与財産について

暦年贈与では、誰に贈与するかによって一般贈与財産特例贈与財産という2つのカテゴリーに分けることができます。

用語解説
一般贈与財産
特例贈与財産に当てはまるもの以外
用語解説
特例贈与財産
贈与者が父母や祖父母などのいわゆる直系尊属の人で、受贈者が18歳以上の子や孫のとき

どちらに該当するかによって税率や控除額が異なります(基礎控除110万円のことではありません)。

一般贈与財産と特例贈与財産それぞれの税率と控除額を表にしてまとめました。

一般贈与財産

贈与財産の合計額-110万円の額

税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20%

25万円

600万円以下 30%

65万円

1,000万円以下 40%

125万円

1,500万円以下 45%

175万円

3,000万円以下 50%

250万円

3,000万円超 55% 400万円

特例贈与財産

贈与財産の合計額-110万円の額

税率 控除額
200万円以下 10% -
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20%

30万円

600万円以下 30%

90万円

1,000万円以下 40%

190万円

1,500万円以下 45%

265万円

3,000万円以下 50%

415万円

3,000万円超 55% 640万円

基礎控除として110万円までが毎年非課税であることを考えると、一度に多額の財産を贈与されるよりも毎年少しずつ贈与されたほうが、税負担が少ない分、受贈者はお得です。

贈与税は累進課税制度が採用されています。

仮に贈与税が発生する状況であっても基礎控除を引いた額が低額であれば支払うべき税金は少なく済むので、多額の財産を保有している人であれば、長いスパンで贈与した方が親族の税負担を軽くすることができます。

暦年贈与の計算例

40歳のAさんが父から贈与を受けました。

贈与によって得た財産が990万円のとき、暦年贈与を選択した場合の贈与税額はいくらでしょうか。

贈与財産990万円から基礎控除110万円を引き算すると880万円。

贈与者はAさんの父で、Aさんは18歳以上なので特例贈与財産に当てはまります。

前述の特例贈与財産の表を見ると880万円は1,000万円以下に該当し、税率が30%、控除額が90万円だということがわかります。

贈与財産の合計額に税率を掛け算するので880万円×30%なので264万円です。

264万円から90万円を引き算すると174万円。

贈与税は174万円です。

ちなみに条件を【受贈者が未成年】などにして一般贈与財産に変更した場合、税率は40%、控除額は125万円です。

880万円×40%で352万円。

352万円から125万円を引き算して227万円なので贈与税は227万円です。

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暦年贈与をおこなう際の注意点

暦年贈与の注意点を解説します。

贈与契約書を作成する

贈与契約書を作成しておけば、税務署に定期贈与ではないかと疑いをかけられた際も、暦年贈与であることを証明するための証拠として役立てることができます。

贈与契約書は公証役場で(公証人に)作成してもらうと、費用はかかりますがより信用力があるものに仕上がります。

毎年贈与する金額・時期を変える

毎年一定の時期に一定の金額を贈与すると、税務署に定期贈与ではないかと疑われてしまいますので、毎年、贈与する時期、金額を変えることも暦年贈与であることを証明するための対策の一つといえます。

贈与から3年以内に贈与者が死亡すると相続税の対象になる

財産を贈与してから3年以内に贈与者が亡くなってしまうとその額は相続税の計算に加算されます。

贈与税が課された部分に関しては相続税の計算では控除されますが、基礎控除110万円によって控除された部分は相続税の計算に加算されます。

あえて110万円以上の贈与をして贈与税の申告をする

あえて贈与税を納税すれば、税務署側にあなたが贈与したことの証明を残すことになりますので、贈与したことを証明するための対策になります。

受贈者が口座を管理する

そもそも贈与とは贈与者の財産を受贈者が自由に使えるよう、受遺者に対して無償で財産を提供することですので、金銭を贈与する場合は受遺者名義の口座に贈与した金銭をきちんと振り込んでおく(振り込んだ証拠を残しておく)ことが大切です。

贈与契約書を作成して形の上では贈与したものの、贈与した金銭は贈与者名義の口座で管理している状態(いわゆる名義預金)の場合は贈与とみなされない可能性もありますので注意が必要です。

基礎控除で贈与税が非課税になるなら申告は不要

基礎控除110万円で贈与財産合計額を控除し切ることができるのであれば申告する必要はありません。

ただし、他の特例を併用して贈与税が非課税になった場合は申告する必要があるので注意しましょう。

基礎控除は「受贈者」1人につき110万円

1人に対して贈与者(あげる側)が何人いようと基礎控除は110万円です。

5人の贈与者が特定の1人に贈与するからといって基礎控除が550万円になるわけではありません。

特例と併用することができる

もうひとつの課税方法で相続時精算課税の制度とは併用できないのですが、暦年贈与の基礎控除110万円は下記の特例と併用することができ、非課税になる金額の範囲を広げることができます。

  • 結婚・子育て資金の一括贈与
  • 教育資金の一括贈与
  • 住宅資金贈与

結婚・子育て資金の一括贈与

挙式の費用や子育て・出産に関係する費用として贈与された金銭に関しては限度額1,000万円までならば非課税になるという特例です。

結婚に関する費用に関しては300万円が限度額です。

特例を利用できる要件は、期限が令和5年3月31日までで受贈者が18歳以上50歳未満であることです。

教育資金の一括贈与

子や孫に対し、教育のための資金として贈与した金銭に関しては限度額1,500万円までならば非課税になるという特例です。

ここでいう教育のための資金とは学校の入学金や授業料、PTA会費や給食費などが当てはまります。

他にも学校以外へ支払うモノとして、塾の月謝代や通学のための定期代などが特例の対象です。

学校等に支払うか業者などへ払うかによって限度額の枠組みが異なり、学校以外へ支払う場合は500万円が限度額となります。

学校等以外への支払が500万円あったのであれば全体の限度額1,500万円から500万円引き残り1,000万円が学校等への支払に使える控除額です。

特例を利用できる要件は、期限が令和5年3月31日までで、受贈者が30歳未満であることです。

注意点としては、受贈者が30歳になったときに資金を使い切れない部分は贈与税が課されること、領収書を管理し、金融機関に提出しなければいけないということです。

住宅取得等資金の贈与税の非課税

父母や祖父母などの直系尊属から住宅の取得や新築・増改築のための資金を贈与によって受けたときに利用できる特例です。

令和4年1月1日から令和5年12月31日までに贈与されている必要があり、また一定の条件を満たした上で非課税の特例を受けることができます。

非課税の限度額は、住宅に関する契約がいつ締結されたのか、省エネ等住宅であるかどうかによって変化します。

「省エネ等住宅」とは、省エネ等基準(①断熱等性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上であること、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上もしくは免震建築物であることまたは③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること)に適合する住宅用の家屋であることにつき、住宅性能証明書など一定の書類を贈与税の申告書に添付することにより証明されたものをいいます。

【引用】直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

非課税の限度額の詳細や特例を受けるための条件に関しては下記の記事もご覧ください。

贈与税を申告する方法

贈与税が課される場合、受贈者の住所地を管轄する税務署に申告書を提出しなければなりません。

贈与税の申告に関しては下記の記事にて解説しておりますのでご覧ください。

暦年贈与信託とは

暦年贈与信託は信託銀行の商品を利用して暦年贈与をおこなう方法です。

信託銀行と贈与者のあいだで契約を結び、誰に贈与するか・どれだけ贈与するかを決めます。

信託銀行は贈与者に代わって受贈者に口座にあらかじめ決めておいた金額を振込むことで暦年贈与を完了します。

暦年贈与は贈与額が基礎控除以下であれば申告義務もないですし、贈与税が課されるようなら受贈者が申告すればいいだけなのですが、暦年贈与の欠点を補える要素を持っています。

個人で暦年贈与をおこなった場合、贈与税が発生しなければ贈与をしたという証拠が残りません。

後年贈与の事実を証明するのには、契約書などを作っておく必要があります。

ですが暦年贈与信託を受けることで実行された贈与のデータが残るので、わざわざ書類を作る必要がありません。

また連年贈与といって、毎年基礎控除額の110万円以下の額を贈与することで税務署からはじめから多額の資産を贈与する意図があったと見なされ、これまで受贈した総額に贈与税が課されるリスクがあります。

連年贈与の対策として、贈与のたびに贈与契約書を作ったり、異なる金額を贈与したりといった方法がありますが、暦年贈与信託サービスを使うことで連年贈与と看做されるリスクが減るとされています。

まとめ

単純に110万円までなら非課税だからと毎年のように贈与してしまうと多額の贈与税を背負いかねません。

リスクをなるべく下げるためには暦年贈与信託を受けるのもいいでしょうし、多額の資産を生前贈与する予定があるのであれば相続時精算課税制度も検討した方がいいかもしれません。

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この記事の監修者
弁護士法人本江法律事務所
本江 嘉将 (福岡県弁護士会)
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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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