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定期贈与とみなされないようにするには?回避する方法やポイントを解説

新井 智美(FP)
監修記事
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定期贈与の指摘を回避できなければ、長年の積み重ねが無駄になる可能性があります。

たとえば、「毎年110万円以内なら贈与税がかからないから」と節税対策を意識しながら孫や子どものためにお金を渡していたとしても、税務署から「暦年贈与ではなく定期贈与だ」と指摘されてしまうと、贈与税の申告漏れを指摘され、さらに延滞税等も加算されかねません。

そこで、今回は、定期贈与の指摘を回避する予防策や、定期贈与と指摘されたときのデメリット、令和5年の税制改革などについて分かりやすく解説します。

適切な贈与行為の運用によって不当な徴税権行使の回避を目指しましょう。

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定期贈与とは

想像以上の贈与税が課されるリスクがある「定期贈与」について解説します。

定期贈与は定期給付契約に基づく贈与のこと

定期贈与とは、贈与契約のうち「定期の給付」を目的・契約内容とする諾成契約のことです(民法第552条)。

たとえば、AとBとの間で「AがBに対して、毎年6月10日に100万円を受け渡す方法によって、10年間で合計1,000万円を贈与する」という贈与契約を締結したとしましょう。

この場合、「1回100万円の贈与契約が10件」ではなく、「1回1,000万円の贈与契約が1件」と評価される場合があります。

というのも、契約当事者・1回あたりの贈与額・贈与をする日などの諸般の事情を総合的に考慮すると、AとBが契約した時点において、Bが「10年間をかけて1回100万円ずつ合計1,000万円の贈与を受ける権利」を取得したと考えられるからです。

ここで注意を要するのが、贈与税の基礎控除額110万円との関係です。

というのも、贈与税は毎年1月1日から12月31日までの贈与額が110万円を超える部分に対して課税されるところ、「定期贈与でなければ課税対象から外れるのに、定期贈与であるがために贈与税が発生してしまう」というケースがあり得るからです。

先ほどの例に沿って説明すると、「毎年100万円ずつ受け渡す贈与契約が10件」の場合、1年あたりの贈与額が100万円で基礎控除額の範囲内に収まっているので、10年をかけて合計1,000万円を贈与したとしても一切贈与税は発生しません(後述の「暦年贈与」)。

これに対して、「1回1,000万円の定期贈与契約が1件」と評価された場合、1年あたりの基礎控除上限額110万円を超過した890万円部分に対して贈与税が発生します。

以上を踏まえると、同じ金額を贈与するとしても、定期贈与と評価されると贈与税の負担が重くなる可能性があるので、「いかに定期贈与と評価されずにお金を受け渡すか」が節税対策のポイントになるといえるでしょう。

定期贈与と暦年贈与の違い

定期贈与と関係の深い贈与契約として「暦年贈与」という契約類型が存在します。

暦年贈与とは

暦年贈与とは、単純贈与を毎年行う契約形式のことです。

先ほどの例に挙げた「1回100万円の贈与契約が10件」は、単純贈与契約を10回繰り返しているので、暦年贈与に該当します。

定期贈与と異なり、暦年贈与は「贈与税の基礎控除110万円を利用した節税対策を講じやすい」点をメリットとして挙げられます。

以上を踏まえると、暦年贈与の枠組みは贈与税の重要な節税対策として機能するといえるでしょう。

令和5年の税制改正で持ち戻し期間が変更に

暦年贈与については、令和5年の税制改革(令和6年1月1日から適用分)における変更点を押さえる必要があります。

そもそも、改正前の税制では、暦年贈与制度を利用して相続税の節税対策をおこなっていたとしても、被相続人の死亡によって相続が発生すると、死亡前の3年間の暦年贈与分については持ち戻し(生前贈与加算)が発生し、3年分の贈与額が相続財産に組み込まれて相続税の課税対象になっていました。

そして、令和5年の税制改革では、暦年贈与の持ち戻し期間が3年から7年に延長されます(死亡前3年分の暦年贈与は全額持ち戻し、死亡前4年~7年の暦年贈与は100万円の控除あり)。

したがって、改正前以上に「かけこみ生前贈与」による贈与税・相続税対策が難しくなり中長期的な資産管理の視点が必要になるので、暦年贈与だけに頼りきりになるのではなく、相続時精算課税制度などの別制度も視野に入れながら節税対策を講じるべきでしょう。

定期贈与と連年贈与の違い

定期贈与と似て非なる贈与手法として「連年贈与」が挙げられます。

連年贈与とは、「複数年をかけて財産を贈与する」という点で定期贈与と共通しますが、定期贈与が暦年贈与制度の対象外になるのに対して、暦年贈与制度の恩恵(毎年110万円の基礎控除を利用できる)を受けるために、毎年贈与額や贈与のタイミングに工夫を凝らす贈与手法のことです。

たとえば、合計1,000万円を複数年にかけて贈与する場合でも、「10年をかけて毎年6月31日に100万円ずつ贈与する」という方法では定期贈与と評価される可能性が高まります。

なぜなら、毎年あまりに同じ条件で贈与がおこなわれているため、最初から1,000万円を贈与するつもりであった(1回1,000万円の贈与契約があった)と捉えられても仕方がないからです。定期贈与として評価されると、890万円部分に対して贈与税が発生します。

これに対して、「1年目は1月1日に50万円、2年目は4月1日に100万円、3年目は贈与しない、4年目は2月1日に90万円…合計で10数年をかけて1,000万円贈与する」などという連年贈与方式を利用した場合、各年の金銭授受の関係性が低いと評価される可能性が高いので、毎年110万円の非課税枠を利用しやすくなります。

結果として、贈与税をゼロにした状態で1,000万円の譲り渡しを達成することも可能です。

贈与当事者の意図とは別に、客観的な状況を総合的に考慮して、税務署や裁判所は一連の金銭の流れが定期贈与なのか連年贈与なのかを判断します。

贈与税の節税効果を享受するなら、適切な方法で贈与を実施して連年贈与の枠組みを利用するべきでしょう。

連年贈与と定期贈与を税務署はどう判断するか

贈与税について税務署からチェックが入った場合、税務署は「暦年贈与と定期贈与、どちらの枠組みで評価した方がより高額の贈与税を徴収できるのか」という観点で判断します。

たとえば、「毎年200万円ずつ5回をかけて合計1,000万円を贈与した」というケースについて考えてみましょう。

まず、一連のお金の流れを暦年贈与として評価できれば、毎年110万円の非課税枠を利用できるので、贈与税の課税対象額は「90万円×5年分」です。これに対して、一連のお金の流れが定期贈与として評価された場合には、非課税枠を利用できるのは1年限りなので、贈与税の課税対象額は「890万円」になります。

この状況なら、税務署は定期贈与としてできるだけ高額の贈与税を徴収しようとするでしょう。

これに対して、一連のお金の流れを税務署が把握したタイミングが初回の金銭の受け渡しから7年経過後の場合、話は変わってきます。

というのも、贈与税の納税義務は最長7年で消滅時効(除斥期間)にかかるので、定期贈与として評価すると贈与税が0円になるからです。

その一方で、本件を連年贈与と評価すれば、7年前の初年度の贈与分については時効(除斥期間)にかかっているものの、残りの4年分については贈与税の納税義務が残っているので、「90万円×4年分」に対して課税することが可能です。

税務署による自分勝手な徴税権行使を回避するには、贈与当事者側の意向通りに贈与税が算定されるような客観的状況を作り出すのがポイントです。

シチュエーションによって連年贈与・定期贈与のどちらが有利かは異なりますが、基本的には「連年贈与」を主張できる証拠を揃えたうえで、適正な納税処理をするべきでしょう。

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定期贈与とみなされることを回避する方法

「定期贈与」と評価されると贈与税の節税効果が薄れることが多いので、「連年贈与であること」を証明できる状況を用意するのがポイントです。

ここからは、定期贈与とみなされて過大な贈与税の納付義務を課されることを回避する方法について解説します。

贈与契約書を作成する

定期贈与という評価を回避するには、お金の受け渡しをするたびに毎回贈与契約書を締結するのがポイントです。

確かに、諾成契約である贈与契約は当事者の合意のみによって有効に成立しますが、当事者がどれだけ「毎年贈与契約の口約束をしていた」と主張したとしても、口約束を客観的に証明できる証拠がなければ税務署の指摘を覆せません。

したがって、定期贈与ではなく連年贈与・暦年贈与を主張したいなら、お金の受け渡しがあるごとに当事者間で贈与契約書を作成するべきです。

税務署からバックデートの指摘を受けるのを回避したいなら、公証役場にて贈与契約書に確定日付を付してもらうのもおすすめです。

銀行振込で贈与する

税務署からの生前贈与に関する余計な指摘を回避したいなら、お金のやり取りは銀行振込の方法でおこなうべきでしょう。

なぜなら、現金手渡しによる授受では生前贈与の証拠が残らないからです。

贈与当事者としては生前贈与のつもりでも、証拠がない以上、相続税の課税対象になりかねません。

毎年違う時期に贈与する

複数年にまたがる一連の金銭の流れに対する定期贈与の評価を回避したいなら、贈与する時期を毎年異なるタイミングに設定するのがおすすめです。

なぜなら、毎年同じ月日にお金のやり取りがあると、すべて一貫した意思のもとにおこなわれた金銭授受であると評価されかねないからです。

たとえば、ある年の4月1日に贈与をしたのなら、次の年は4月以外にお金を振込むなどの工夫をすれば、定期贈与を裏付ける証拠を減らすことができるでしょう。

毎年違う額を贈与する

定期贈与の評価を回避するには、時期だけではなく金額にも注意するのがポイントです。

たとえば、毎年同額ずつ贈与しているケースと、毎年違う金額のケースとでは、後者の方が定期贈与性を否定しやすいのは明らかでしょう。

また、税務署からのチェックを回避するなら、基礎控除額ギリギリを狙ったラインで金額を細々と調整するのではなく、”節税対策感”が出ないような金額設定にするのもポイントです。

たとえば、「ある年は108万円、翌年は109万円」という方法ではなく、「ある年は80万円、翌年は0円、その次は105万円」というように、ある程度の幅を使って贈与額を流動的に変化させた方が、暦年贈与による恩恵を受けやすくなるでしょう。

贈与税の申告をおこなう

定期贈与の評価を回避するなら、あえて贈与税の申告をおこなう時期を作るのも選択肢のひとつです。

たとえば、「1年目は80万円、2年目は100万円、3年目は120万円、4年目は80万円」という金額で贈与をおこなった場合、3年目だけは基礎控除の枠を超えるので贈与税の申告と納付が必要になります。

ただ、この1年を挟むことによって、毎年の贈与行為の連続性が若干は遮断されるので、税務署による定期贈与の指摘を回避しやすいでしょう。

「名義預金」をしない

定期贈与に関して注意を要するのが「名義預金」です。

父母・祖父母が子ども・孫専用の口座にお金を貯めるケースは多く見られますが、適切な方法でおこなわなければ、定期贈与とみなされたり、贈与自体が否定されたりする危険性が高まります

たとえば、父母・祖父母が自分名義の銀行口座を作成して子ども・孫用のお金を貯めていた場合や、子ども・孫名義の口座を作成したものの通帳・印鑑・カードは子どもに渡さずに実質的に父母・祖父母がこれを管理していた場合には、税務署から指摘が入るおそれが生じます。

有効な贈与であることを主張しつつ定期贈与性の指摘を回避するなら、子どもや孫が実質的に管理している銀行口座等に毎年さまざまな金額を振込むのがベストの方法です。

まとめ|定期贈与をみなされないように注意して贈与しよう

定期贈与とみなされると過少申告や無申告を理由に重いペナルティが課されかねません。

したがって、節税対策を兼ねて長期間に及ぶ生前贈与をおこなうには、暦年贈与・連年贈与であることを証明できる証拠を固めながらお金のやり取りをする必要があります。

弁護士や税理士などの専門家に相談すれば、資産状況を総合的に考慮して適切な贈与方針や特例制度の利用を提案してくれるので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者
新井 智美(FP)
主に個人を相手にお金に関する相談及び提案設計業務を行う。2006年11月 世界共通水準のFP資格であるCFP認定を受けると同時に、ファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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