自宅などで遺言書を発見した場合は、家庭裁判所で検認という手続きを受ける必要があります。
この検認を受けると遺言書の形状や状態などが記録さるため、その後の偽造・変造の防止に役立ちます。
しかし、あくまで偽造・変造の防止に限られ、遺言書の効力を争うものではないという点には注意が必要です。
本記事では、遺言書の検認による効力を知りたい方に向けて、以下の内容について説明します。
本記事を参考に、遺言書の検認の必要性や遺言書の効力を争うときのポイントを理解しましょう。
ここでは、遺言書の検認手続きの役割や目的について説明します。
遺言書の検認には、以下のような目的があります。
家庭裁判所に検認の申し立てをすると、裁判所から相続人全員に対して検認に関する通知がおこなわれます。
これにより、遺言書を発見した申立人以外の相続人も「被相続人が遺言書を残していた」ということを知れます。
また、検認期日には、家庭裁判所で遺言書の形状、加筆・修正の状態、署名などの確認・質問がされます。
そして確認・質問されたことは、遺言書の写しと一緒に、検認調書としてまとめられます。
申立人は、検認後は検認済証明書が添付された遺言書を受け取ることになるでしょう。
遺言書の検認が完了したからといって、その遺言書が法的に有効であると確定したわけではありません。
仮に遺言書の内容や形式が法的要件を満たしていない場合、遺言の効力が否定される可能性があります。
遺言書の検認は、その遺言書の効力を確定させる手続きではないと理解しておきましょう。
遺言書には、以下のように民法などで認められている効力があります。
効力の種類 | 効力の内容 |
---|---|
相続分の指定 | 民法上の法定相続分とは異なる相続分を定められる |
遺産分割方法の指定と分割の禁止 | 現物分割、代償分割、換価分割などの遺産分割方法を定められる 相続開始から5年を超えない範囲で遺産分割の禁止期間を設けられる |
遺贈 | 法定相続人ではない第三者を指定して相続財産を渡すことができる |
遺言執行者の指定 | 遺言内容を実現する役割を担う遺言執行者を選任することができる |
相続人の廃除 | 生前、被相続人に対して虐待や侮辱などをした相続人を廃除できる |
非嫡出子の認知 | 出生時に親子関係がなかった子どもを自分の子どもとして認知できる |
未成年後見人の指定 | 親権者がいなくなる場合に未成年の子どもを保護する人を指定できる |
相続人相互の担保責任の指定 | 相続財産に欠陥があった場合の相続人の担保責任の割合を変更できる |
遺言書には、自分の思いや家族への感謝など、何を書いても問題ありません。
しかし、上記のような効力を期待する場合は、遺言書にその項目を記載しておく必要があります。
なお、このような項目があったとしても、遺言書の全部または一部が無効になった場合には効力は生じません。
遺言書の効力について争う場合は、まず以下のポイントについて理解しておきましょう。
ここでは、遺言書の効力について争う場合に知っておくほうがよいポイントを説明します。
遺言書を作成する場合は、民法に定められている要件を守る必要があります。
そのため、以下のような事由がある場合は、遺言書の無効を主張したり、取り消したりすることが可能です。
まずは手元にある遺言書の内容や形式を確認し、効力について争えないかどうかを判断するとよいでしょう。
遺言書を無効にする場合の手続きには、以下のような方法があります。
相続人・受遺者全員の意思を確認し、合意が得られれば、遺言書に従わずに遺産分割協議をすることができます。
しかし、誰かひとりでも反対する人がいれば、調停や訴訟などの裁判手続きが必要になるでしょう。
遺言書を無効にする手続きを知りたい場合は、以下の記事を確認することをおすすめします。
最後に、遺言書の検認と効力に関するよくある質問に回答します。
遺言書の検認を受けなかったとしても、ただちに遺言書の効力が失われるわけではありません。
遺言書の効力を失わせるためには、遺言無効確認訴訟などを提起して勝訴する必要があります。
なお、遺言書を隠匿した場合、相続人としての資格を失う可能性があるので注意しましょう(民法第891条5号)。
遺言書の形式や内容に不備があると思われる場合でも、検認を受ける必要はあります。
検認の必要がない遺言書は、自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言と公正証書遺言です。
これ以外の一般的な自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、必ず家庭裁判所で検認を受けるようにしましょう。
遺言書は、原則として遺言者(被相続人)が亡くなったときから効力が生じます(民法第985条1項)。
ただし、検認を受けていない遺言書では、預金の引出しや相続登記などの相続手続きができません。
遺言書の検認には、相続人に遺言書の存在を知らせたり、遺言書の偽造や変造を防止したりする役割があります。
しかし、こうした役割はありますが、検認は遺言書の効力を確定させるための手続きではないので注意しましょう。
もし遺言書の効力について争いたい場合は、無効事由の有無を確認し、協議・調停・訴訟などをおこないましょう。
検認手続きは、遺言書を発見した人が自力でおこなうことができます。
また、忙しくて時間が取れない場合や、手続きに不安がある場合には、弁護士に依頼することも可能です。
その際、相続問題や遺言書が得意な弁護士を効率よく探せる「ベンナビ相続」を利用することをおすすめします。
法定相続人の順位が高いほど、受け取れる遺産割合は多いです。ただ順位の高い人がいない場合は、順位の低いでも遺産を受け取れます。あなたの順位・相続できる遺産の割合を...
遺言書の効力について知りたい人必見!遺言書を作成すれば内縁の妻・隠し子に遺産を渡す・指定した相続人に財産を渡さないことも可能です。ただ書き方に謝りがあるなら無効...
自筆証書遺言書を残す場合、書き方を誤ると無効になる可能性もあるため正しい知識が必要です。また2020年には民法が改正されたことにより、いくつか変更箇所などもあり...
これから遺言書を作成しようと考えている方に向けて、遺言書の種類や作り方、サンプル、ポイントなどを解説します。遺言書で多いトラブルとその回避方法についても紹介しま...
自分が成年後見人になる費用は何十万円もする訳ではありません。しかし、鑑定費用が必要であれば10万円を超える場合もあります。また弁護士・司法書士に依頼した場合は自...
遺言書は、公正証書遺言を含めて3種類あります。そのなかでも公正証書遺言は信頼性が高く、無効になるリスクが低い遺言書です。この記事では、公正証書遺言の書き方や特徴...
遺言書を作成する際には、遺言執行者の指定が必要かどうかも検討しなければなりません。しかし、遺言執行者とは何をする人なのか、正しく理解できていない人も多いはずです...
エンディングノートの書き方で悩んでいませんか?この記事では、エンディングノートに書いておきたい内容を書き方の例と一緒にご紹介しています。オリジナルのエンディング...
遺言書を見つけたらすぐに内容を確認したいですよね。しかし、遺言書を勝手に開封してしまうと法律違反となります。本記事では、遺言書の正しい開封方法や、勝手に開封した...
相続人の全員が承諾していても遺言書を勝手に開封してはいけないのをご存知でしょうか?遺言書を開封する時は家庭裁判所で検認の手続きをしてからにしてください。万が一、...
遺言書の内容が無効であると法的に確定すれば、当該遺言に基づく遺産分割や相続、贈与などを防止できます。遺言書の無効確認が難しいとされる理由、遺言無効確認が実際に認...
府中市には、無料の相続相談ができる窓口が多く設置されています。 遺産相続について悩んでいる方は、まずは無料の相続相談を利用することで、問題解決につながる有効な...
遺言とは、被相続人の相続財産に関する最終的な意思表示のことで、遺言は民法で定められた方式によっておこなう必要があります。本記事では、公正証書遺言で要求される証人...
遺言書が偽造された時の対処法や、遺言書の偽造者に対して課されるペナルティなどについて分かりやすく解説します。各種相続手続きには期間制限がある以上、遺言書が偽造さ...
遺言公正証書の必要書類は、戸籍謄本・登記簿謄本など多岐にわたります。自分のケースでどの書類が必要なのか、作成前に把握しておくと安心です。この記事では、遺言公正証...
「自分が亡くなったあとスムーズに遺産相続をさせたい」「夫が亡くなったのに遺言書がなくて困っている」など、配偶者に先立たれたときや自分が亡くなった後のことを考える...
本記事では口頭でのみの遺言について効力の有無やどのように扱われるかについて解説します。 法的に効力をもつ遺言の残し方や、口頭でしか遺言が残っていない場合の対処...
自宅などで遺言書を発見した場合は、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。本記事では、遺言書の検認手続きの役割・目的、遺言書そのものに認められている効力、遺言書...
遺言の作成にあたり、遺言執行者を指定しようと考えているものの、どの程度の報酬が必要になるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、遺言執行者の...
公正証書遺言を無効にしたい方に向けて、遺言書を無効にしたいときの最初の対応、公正証書遺言を無効にできるケース、遺言者の遺言能力を争う場合に役立つ証拠、公正証書遺...