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遺言書が無効になるケースを紹介|無効にしたくない/したい場合の対策・注意点を解説

ゆら総合法律事務所
阿部 由羅
監修記事
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遺言書を作成することは、生前の相続対策として代表的な方法です。

ただし形式または内容に不備があると、遺言書が無効となってしまうことがあります。

遺言無効が問題になると、相続人間で深刻なトラブルに発展し、遺言書を作成したことが逆効果になってしまいかねません

遺言無効を避けるためには、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度を活用することが考えられます。

弁護士に案文作成を依頼することも効果的です。

遺言書の作成を検討している方は、弁護士の無料相談などをご利用ください。

今回は遺言書の無効について、トラブル例・対策・注意点などを解説します。

効力のある遺言書を作成したいあなたへ

せっかく遺言書を書いても、無効になったらどうしよう...と悩んでいませんか?

結論からいうと、遺言無効を避けるためには、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度を活用するとよいでしょう。

 

より確実かつスムーズに遺言書の作成をしたい方は、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします

弁護士に相談・依頼すると、以下のようなメリットを得ることができます。

  • あなたのケースでの遺言書の書き方についてアドバイスを得られる
  • 依頼すると、最大限に無効のリスクが生じない遺言書が作成できる
  • 依頼すると、遺言書の案文を作成してもらえる
  • 依頼すると、遺留分侵害や相続税などの対策を遺言書に盛り込める

ベンナビ相続では、遺言書問題を得意とする弁護士を多数掲載しています。
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目次

1. 遺言書が無効になるケースの例

遺言無効を巡るトラブルは、相続についてよく見られる紛争類型の一つです。

たとえば以下のような場合には、遺言書が無効となってしまいます。

  1. 遺言書が民法上の方式に従っていない
  2. 遺言書の内容が不明確である
  3. 遺言書の内容・目的が公序良俗に反している
  4. 本人以外の者が遺言書を偽造した
  5. 遺言者が詐欺または強迫を受けていた
  6. 遺言当時、本人に遺言能力がなかった

1-1.遺言書が民法上の方式に従っていない

遺言書は、民法所定の方式に従って作成しなければなりません。

特殊な方式を除いて、一般的に認められている遺言書の方式は以下の3つです。

①自筆証書遺言(民法第968条

遺言者が全文・日付・氏名を自書して作成します(相続財産目録は自書不要)。

②公正証書遺言(民法第969条

公証人が2名以上の証人立会いの下で作成します。

③秘密証書遺言(民法第970条

遺言者が署名・押印した証書を封印した上で、封書に公証人・証人・遺言者が署名・押印して作成します。

各方式については民法で厳密にルールが定められており、不備があると遺言書が無効になってしまうのでご注意ください。

1-2. 遺言書の内容が不明確である

遺言内容に不明確な条項が含まれている場合、その条項は無効となる可能性があります。

また、遺言内容全体の解釈に重大な影響を及ぼす条項が不明確である場合には、遺言書自体が無効となる可能性もあるので注意が必要です。

1-3. 遺言書の内容・目的が公序良俗に反している

遺言書の条項が公の秩序または善良の風俗に反している場合、その条項は無効です(民法第90条)。

(例)愛人に全財産を遺贈した結果、配偶者や子どもの生活基盤が脅かされる場合

また、遺言書を作成した目的自体が公序良俗に反している場合は、遺言書全体が無効となります。

(例)愛人関係を維持する目的で遺言書を作成した場合

1-4. 本人以外の者が遺言書を偽造した

遺言書を作成できるのは、遺言者本人のみです。

本人以外の者が遺言書を作成した場合(=偽造)、その遺言書は無効となります。

1-5. 遺言者が詐欺または強迫を受けていた

遺言者が詐欺(=だますこと)または強迫(=暴力や脅迫で怖がらせること)を受けたなどの事情で作成された遺言書は、取り消すことができます民法第96条1項)。

遺言者が亡くなった後は、取消権を相続人が承継します。

ただし、詐欺による遺言書の取消しについては、詐欺の事実について善意かつ過失がない第三者に対抗できません(民法第96条3項

たとえば遺贈によって取得した不動産を、受遺者が第三者に譲渡したとします。

この場合、詐欺について善意無過失であれば当該第三者が不動産の所有権を取得するので、その不動産を相続財産に戻させることはできません。

1-6. 遺言当時、本人に遺言能力がなかった

遺言書を作成するには、「遺言能力」が必要となり、以下2つが要件になります。

  1. 年齢が15歳以上であること
  2. 意思能力があること

遺言ができるのは、15歳以上の者のみです(民法第961条)。

遺言当時に遺言者が14歳以下だった場合には、遺言書が無効となります。

また、遺言者が認知症などにより、意思能力(=自己の法律行為の結果を判断できる能力)がない状態で作成された遺言書も無効です(民法第3条の2)。

ただし、認知症の進行状況によっては、医師立会いのもと有効な遺言書を作成できる可能性もあります。

1-7. 年・日付の記載がない、または日付の特定ができない

遺言書作成日の記載は必須事項です。年・日付がない、または具体的な日付が特定できない遺言書は無効となります。

日付が特定できず無効になる表記の具体例としては、「〇年〇月吉日」などがあげられます。

ただし、「〇年〇月末日」などの記載方法は作成日を特定できるので有効となります。

1-8. 遺言書の訂正方法を間違えている

遺言書の訂正方法は決まっており、下記の要素が必要です。

  1. 変更箇所を二重線で消し、訂正する
  2. 訂正箇所に押印する(遺言書で使用している印鑑を使用)
  3. 訂正箇所の欄外や遺言書の末尾に付記する(〇字削除、〇字加入)
  4. 付記箇所へ遺言者が署名する

遺言書の訂正方法を間違えると、訂正部分が無効となったり、遺言書自体が無効になる可能性があるので注意しましょう。

1-9. 証人に適さない人が立ち会っていた

公正証書遺言、または秘密証書遺言を作成する際は、証人2名以上の立会いが義務づけられています。

ただし、下記に該当する人は証人になれません。該当者が立会人となり作成された遺言書は無効となるので注意しましょう。

  1. 未成年者(18歳未満)
  2. 推定相続人・受遺者
  3. 推定相続人・受遺者の配偶者および直系血族
  4. 公証人の関係者

1-10. 遺言者の署名・押印がなかった

遺言者本人の署名・押印がない遺言書については基本的に無効となります。

署名については、必ずしも本名フルネームである必要はありません。通常は戸籍上の氏名を記載しますが、遺言者との同一性を示せる場合は、ペンネームや芸名での署名も有効です。

また、押印についても実印でなく、認印や拇印でも可能です。

ただし、認印、拇印の場合は「被相続人が押印したものではなく偽造したものではないか」などといったトラブルが起こることも考えられるので注意しましょう。

2. 遺言書が無効になった場合の取り扱い

遺言書が無効になるケースは、一部のみが無効となる場合と、全体が無効となる場合の2通りに大別されます。

2-1. 遺言書の一部が無効になった場合

遺言書の一部の条項のみが無効となった場合、有効に存続する残りの条項に従って相続手続きをおこないます。

その後相続する人が決まっていない遺産があれば、相続人(および包括受遺者)全員の間で遺産分割協議をおこない、遺産分割の方法を決定します。

2-2. 遺言書全体が無効になった場合

遺言書全体が無効となった場合、すべての遺産が全相続人の共有となります(民法第898条)。

この場合、相続人全員の間で遺産分割協議をおこない、遺産分割の方法を決定します。

3. 遺言無効を避けるための対策

遺言無効は深刻な相続トラブルに発展する可能性が高いため、遺言書を作成する段階で、無効を避けるための対策を講じておくべきです。

具体的には、以下の対策が考えられます。

  1. 公正証書遺言を作成する
  2. 弁護士に案文を作成してもらう
  3. 自筆証書遺言書保管制度を利用する

3-1. 公正証書遺言を作成する

公証人に依頼して公正証書遺言を作成することは、遺言無効を回避するためのもっとも有力な対策です。

公証人は、内容・形式の両面から遺言無効の問題が生じないかどうかチェックし、問題があれば指摘して修正を求めます。

実際の作成手続きも公証人主導でおこなわれるため、形式不備による無効のリスクはほとんどありません

公証人手数料などの費用はかかりますが、遺言無効のリスクを最小化したい場合には、公正証書遺言の作成をおすすめします。

3-2. 弁護士に案文を作成してもらう

法律の専門家である弁護士に案文を作成してもらうことも、遺言無効を避けるための有力な対策です。

民法その他の法律の規定を踏まえて、遺言無効のリスクが生じないような案文を提案してもらえるでしょう。

また弁護士に相談すれば、遺留分侵害や相続税などの対策を遺言書に盛り込むこともできます。

相続トラブルの予防に役立つ遺言書を作成したい場合には、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士に遺言書の案文を作成してもらい、それを公正証書化すると、遺言無効を含む相続トラブルのリスクを最小限に抑えられます。

3-3. 自筆証書遺言書保管制度を利用する

公正証書遺言の作成や弁護士への依頼には、数万円から数十万円の費用がかかります。

これらの費用を節約しながら、遺言無効のリスクも軽減したい場合には、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することが考えられます。

自筆証書遺言保管制度を利用すると、自筆証書遺言の原本を預ける際に、形式面についてチェックがおこなわれます。

そのため、形式不備を理由とする遺言無効のリスクを軽減可能です。

ただし内容面についてのチェックはおこなわれないため、不明確であることや公序良俗違反などによる遺言無効のリスクは残ります。

内容面からも遺言無効のリスクを回避したい場合には、公正証書遺言の作成や弁護士への相談をご検討ください。

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4. 遺言書を無効にしたい場合に取れる対応策

遺言書の無効は、以下のいずれかの手続きによって主張します。

①遺産分割協議

相続人全員に対して遺言書が無効であることを伝え、納得を得た上で、改めて遺産分割の方法を話し合います。

②家事調停

家庭裁判所に調停申立てをおこない、調停委員の仲介によって遺言無効に関する紛争の解決方法を話し合います。

調停前置主義により、遺言無効確認訴訟を提起する前に、家事調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法第257条1項

③遺言無効確認訴訟

遺言書の無効を確認する判決を求めて、裁判所に訴訟を提起します。

遺言書の無効原因の立証に成功すれば、遺言無効確認の判決が言い渡されます。

いずれの手続きによる場合でも、遺言無効の根拠となる主張を適切に組み立て、有力な証拠とともに提示することが大切です。

弁護士に依頼すれば、遺言無効の主張に必要な手続き全般を代行してもらえます。

5. 遺言書の無効に関するQ&A

  • Q1 遺言書を勝手に開封したら無効になる?
  • Q2 遺言無効の主張に期限(時効)はあるのか?
  • Q3 遺言無効以外に想定される遺言書関連のトラブルは?

5-1. 遺言書を勝手に開封したら無効になる?

遺言書が封印されている場合、家庭裁判所において相続人または代理人の立会いの下で開封する必要があります(民法第1004条3項)。

封印された遺言書を家庭裁判所外で開封した場合は、「5万円以下の過料」に処されます(民法第1005条)。

ただし、封印された遺言書を勝手に開封しても、直ちに無効になるわけではありません。

作成方式などの要件を満たしていれば、遺言書としての効力は存続します。

5-2. 遺言無効の主張に期限(時効)はあるのか?

遺言無効の主張には、特に期限(時効)は設けられていません。

ただし相続開始から時間が経過すると、遺言無効に関する証拠が散逸したり、遺産が費消されたりするリスクが高まります。

そのため、遺言無効を主張する場合には、弁護士のサポートを受けながら早めに準備を整えましょう。

5-3. 遺言無効以外に想定される遺言書関連のトラブルは?

遺言書で偏った相続分を指定すると(例:長男にすべての遺産を相続させるなど)、兄弟姉妹以外の相続人に認められた遺留分が侵害され、相続人間で遺留分侵害額請求民法第1046条1項)に関するトラブルが発生するおそれがあります。

遺留分侵害のトラブルを避けるため、遺言書ではバランスよく相続分を指定することが望ましいです。

もし偏った相続分を指定せざるを得ない場合は、付言事項でその理由を説明して理解を求めるなど、何らかの配慮をすべきでしょう。

相続トラブルを防ぐためにどのような対策を講ずべきかについては、弁護士にご相談ください。

6. 遺言書の作成・遺言執行・遺言無効の主張に関する弁護士費用

遺言書に関する以下の事務を弁護士に依頼する際の費用について、「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」(現在は廃止)を参考にした目安額(税込)を紹介します。

  • 遺言書の作成
  • 遺言執行
  • 遺言無効の主張

実際の弁護士費用は依頼先によって異なるので、無料相談などの際に弁護士へご確認ください。

6-1. 遺言書の作成を依頼する場合の弁護士費用

遺言書の作成を弁護士に依頼する際の費用は、着手金の一括払いとされるケースが多いです。

<遺言書作成の弁護士費用の目安>

①定型の場合

11万円~22万円

②非定型の場合

対象財産額に応じて以下の金額

対象財産額が300万円以下:22万円

対象財産額が300万円を超え3,000万円以下:対象財産額の1.1%+18万7,000円

対象財産額が3,000万円を超え3億円以下:対象財産額の0.33%+41万8,000円

対象財産額が3億円超:対象財産額の0.11%+107万8,000円

※公正証書遺言の場合、上記の手数料に3万3,000円を加算

6-2. 遺言執行を依頼する場合の弁護士費用

弁護士に依頼して遺言執行者に就任してもらう場合、遺言執行に関する弁護士費用がかかります。

遺言執行の弁護士費用は、相続発生後に相続財産から支払います

<遺言執行の弁護士費用の目安>

対象財産額が300万円以下の場合

33万円

対象財産額が300万円を超え3,000万円以下の場合

対象財産額の2.2%+26万4,000円

対象財産額が3,000万円を超え3億円以下の場合

対象財産額の1.1%+59万4,000円

対象財産額が3億円超の場合

対象財産額の0.55%+224万4,000円

6-3. 遺言無効の主張を依頼する場合の弁護士費用

遺言書の無効を主張する場合の弁護士費用は、着手金・報酬金の2段階制が一般的です。

着手金は弁護士との委任契約締結時に、報酬金は事件終了時に支払います。

着手金については、弁護士に相談すれば分割払いが認められることもあります。

<遺言無効の着手金額の目安>

経済的利益の額が300万円以下の場合

経済的利益の額の8.8%

300万円を超え3000万円以下の場合

経済的利益の額の5.5%+9万9,000円

3000万円を超え3億円以下の場合

経済的利益の額の3.3%+75万円9,000円

3億円を超える場合

経済的利益の額の2.2%+405万9,000円

※着手金の最低額は11万円

<遺言無効の報酬金額の目安>

経済的利益の額が300万円以下の場合

経済的利益の額の17.6%

300万円を超え3000万円以下の場合

経済的利益の額の11%+19万8000円

3000万円を超え3億円以下の場合

経済的利益の額の6.6%+151万8000円

3億円を超える場合

経済的利益の額の4.4%+811万8000円

7. 遺言書について弁護士に相談するなら「ベンナビ相続」

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この記事の監修者
ゆら総合法律事務所
阿部 由羅 (埼玉弁護士会)
不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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