相続財産調査を検討している方であれば、どれくらいの費用がかかるのかは、気になるところです。
できればあまりお金を使わずに、相続財産調査を済ませたいとも思うことでしょう。
相続財産調査をおこなってくれる専門家には、弁護士や司法書士などがいます。
しかし、弁護士とそのほかの専門家に依頼するのとでは何が違うのか、気になることかと思います。
本記事を読めば、弁護士などの専門家に相続財産調査を依頼した場合にかかる費用や、相続財産調査をおこなってくれる専門家それぞれの違いについて知ることができます。
あなたのケースに合った相続財産調査の専門家を選び、スムーズに相続手続きを進めましょう。
相続財産調査にかかる費用は、専門家ごとにそれぞれ相場が異なります。
相続財産調査にかかる費用の相場について、専門家ごとにご紹介します。
なお、次に示す額はあくまでも目安の額であり、実際にかかる金額とは大きく異なる場合もあります。
相続財産調査を弁護士に依頼した場合にかかる費用の相場は、10万円〜30万円程度です。
弁護士はほぼ全ての相続手続きを依頼者の代わりにおこなえる専門家です。
特に訴訟や交渉など紛争の解決は弁護士だけが対応できます。
このため、相続を巡って争いになることが予想される場合には、はじめから弁護士に依頼するとよいでしょう。
また、弁護士はほぼ全ての相続手続きを代行できるので、誰に頼めばよいのかわからないというときには、弁護士に依頼しましょう。
相続財産調査を司法書士に依頼した場合にかかる費用の相場は、10万円〜30万円程度です。
司法書士は、登記手続きの専門家です。
このため、相続人の間で争いがなく、相続不動産がある場合には、その不動産の相続登記を依頼することができます。
不動産の相続登記を予定しており、相続を巡る争いがない場合には、司法書士に依頼するとよいでしょう。
相続財産調査を行政書士に依頼した場合にかかる費用の相場は、数万円程度〜です。
行政書士は、費用が安く抑えられていることが多いものの、少しでも争いがある場合の手続きや、不動産登記手続きをすることは認められていません(弁護士法第72条)。
したがって、不動産登記手続きが必要など依頼内容によっては、はじめから弁護士や司法書士に依頼しておいたほうがよいということもあり得ます。
相続財産調査を税理士に依頼した場合にかかる費用の相場は、遺産総額の0.5%〜1.0%程度です。
税理士は税務の専門家です。
相続税を申告・納付する場合には、税理士が代行してくれます。
相続税を申告・納付しなければならないほど多くの遺産がある場合には、税理士に相談するのもよいでしょう。
なお、弁護士などに相談した場合でも相続税の手続きが必要な場合には、税理士と連携して手続きを進めてくれるのが一般的です。
相続財産調査を信託銀行に依頼した場合にかかる費用の相場は、およそ100万円程度からです。
信託銀行は、相続手続きの窓口としてほかの専門家と連携しながら手続きを進めてくれます。
相続が発生する以前から信託銀行と付き合いがある方であれば、安心感があり、また手続きの窓口を一本化できるというメリットもあります。
ただ、信託銀行の費用はほかの専門家に依頼する場合と比べると高額です。
遺産の額があまり大きくない方や、これまで信託銀行との付き合いがなかったという方は、信託銀行を選ぶメリットは少ないでしょう。
相続財産調査には実費がかかります。
実費とは専門家に支払う報酬とは別に実際にかかる費用のことです。
たとえば、各種の証明書を取り寄せるために公的機関などに支払うお金などがあります。
ここでは、相続財産調査にかかる実費の目安やその調査方法について説明します。
相続財産の種類に応じて相続財産調査にかかる実費の目安は次のとおりです。
財産の種類 |
調査内容 |
かかる費用 |
---|---|---|
預貯金 |
・残高証明書 ・取引履歴の取得 |
・残高証明書:数百円〜数千円程度(金融機関による) ・取引履歴:数千円〜数万円程度(金融機関、請求月数による) |
不動産 |
・登記簿謄本(登記事項証明書) ・固定資産評価証明書の取得 |
・登記簿謄本(登記事項証明書):600円(1通あたり。オンライン請求の場合は480円から) ・固定資産評価証明書:200円〜400円程度(不動産の数や市区町村による) |
有価証券 |
残高証明書の取得 |
1通あたり1,100円程度(各社による) |
ローン |
残高証明書の取得 |
数百円程度(金融機関による) |
預貯金を調査するためには、通帳を確認するなどして亡くなった方の口座を特定したうえで、口座の残高証明書を発行してもらいます。
不動産は、遺産である土地建物の地番や家屋番号を把握したうえで、それらの土地建物の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して調査します。
有価証券(株式など)は、口座開設の書類など関連する書類・メールがないかを確認して、口座のある証券会社を特定します。
そのうえで、残高証明書を発行してもらいます。
ほかにも、保有している財産があるかもしれません。
少しでも財産の手がかりになるような書類などを見つけたら、その書類の発行元に問い合わせるなどして財産があるのかどうかを確認しましょう。
相続財産はプラスの財産だけではありません。
なかには、債務やローンなどマイナスの財産がある可能性もあります。
これらのマイナスの財産も相続によって受け継ぐ対象となる財産なので、しっかりと調査しなければなりません。
債務などのマイナスの財産は、貸金業者からの督促状や返済に関する明細書、消費者金融のキャッシュカードなどがないかを確認するなどの方法で調査します。
マイナスの財産が見つかったら、相続人はプラスの財産もマイナスの財産も相続したうえで債務を返済していくのか、それとも相続放棄をしてプラスの財産もマイナスの財産も受け継がないことにするのか、どちらかを決めなければなりません。
プラスの財産とマイナスの財産を比較して明らかにマイナスの財産のほうが大きく、かつ積極的に手元に残したい財産がない場合には、相続放棄をするのがおすすめです。
相続放棄をすれば、亡くなった方の財産を一切受け継がないこととなるので、マイナスの財産を返済する必要がなくなります。
相続財産調査を専門家に依頼するとどうしても費用がかかってしまいます。
この費用を惜しんで専門家に依頼せずに自分でなんとかしようと考える方も多いでしょう。
しかし、相続財産調査は費用をかけてでも専門家に依頼して手続きを進めてもらうことをおすすめします。
ここでは、相続財産調査を専門家に依頼するべき理由についてご説明します。
相続財産調査は、簡単な手続きではありません。
どうしても、それなりに手間がかかってしまいます。
相続財産調査で手間がかかってしまう理由には、次のようなものがあります。
全財産を明記した遺言書でもない限り、亡くなった方がどのような財産を遺しているのかはっきりしません。
複数の預金口座に預金を貯めている方も多いですし、どの証券口座にどれだけの株式を保有しているのかも相続人に教えていないことも多くあります。
また、保有する不動産についても、知らないところに不動産を保有していたということもあります。
さらに、負債などのマイナスの財産は家族にも秘密にされていることも多く、ご自身では調査しきれずに見落としてしまうこともあります。
このように、相続財産はさまざまな場所に散らばっていることが多く、全てご自身で調査しようとするととても労力がかかります。
また、所定の期間内に調査を終えなければならないケースもあります。
たとえば、相続放棄ができる期間は自己のために相続があったことを知ったときから3ヵ月間です。
亡くなった方に負債などのマイナスの財産がそれなりにありそうだという場合には、相続開始を知った日から3ヵ月以内にマイナスの財産も含めて全ての相続財産を洗い出し、相続放棄をしたほうがよいのかどうかを判断する必要があります(熟慮期間)。
負債が少なく、むしろ相続する財産が多くある場合には、相続税の申告期限までに相続財産調査を終える必要があります。
相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日(一般的には被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内とされています。
このように、所定の期間内に調査を終えなければならないケースもありますが、被相続人の方が亡くなって慌ただしい中で3ヵ月以内や10ヵ月以内にご自身で全ての相続財産調査をおこなうのはとても大変です。
専門家に依頼すれば、相続財産調査を全てお任せできるので、締切がある中での慣れない書類手続きなどの負担が軽減されます。
相続財産調査を専門家に依頼することで、マイナスの財産もしっかり調査してもらえます。
相続財産といえば、つい預金や不動産などプラスの財産ばかりを思い浮かべてしまいがちです。
しかし、債務などのマイナスの財産もしっかり調べる必要があります。
相続をするときにはマイナスの財産も受け継ぐので、マイナスの財産が予想以上に多かった場合には、相続放棄をすればよかったということにもなりかねません。
専門家であれば、どのようにすればマイナスの財産も正確に調査できるかを知っているので安心です。
専門家は相続財産調査に慣れているので、迅速に調査してもらうことができます。
相続財産調査には、一定のタイムリミットがあります。
たとえば、相続放棄は相続開始を知った時から3ヵ月以内にしなければならないので、それまでに相続財産調査を終えなければなりません。
負債などマイナスの財産が多くありそうな場合には、この期間内に相続財産調査を終える必要があります。
また、相続税を申告・納付する場合には、納付期限である10ヵ月以内に相続財産調査を終える必要があります。
このように、一定のタイムリミットがある場合には、専門家に依頼して迅速に相続財産調査を進めてもらうことが大切です。
相続財産調査を頼むことのできる専門家には、弁護士や司法書士などさまざまなものがあります。
ですが、具体的にどの専門家に依頼すればよいのかわからないということもあるでしょう。
どのようなときにどの専門家に依頼するべきかについて、説明します。
なお、相続財産調査に関して、それぞれの専門家がおこなうことのできる範囲は下表のとおりです。
|
弁護士 |
司法書士 |
行政書士 |
税理士 |
---|---|---|---|---|
相続財産調査 |
⚪︎ |
⚪︎ |
⚪︎ |
⚪︎ |
戸籍収集 |
⚪︎ |
⚪︎ |
⚪︎ |
⚪︎ |
不動産の相続登記 |
⚪︎ |
⚪︎ |
× |
× |
相続放棄 |
⚪︎ |
△ |
△ |
△ |
遺産分割協議書の作成 |
⚪︎ |
△ |
△ |
△ |
相続トラブルの解決 |
⚪︎ |
× |
× |
× |
相続税の申告 |
△ |
× |
× |
⚪︎ |
弁護士は、ほかの専門家と違い、ほぼ全ての手続きを代行することができます。
特に、相続に関してもめている場合など紛争の解決が必要な場合には、当事者の代理人として交渉や訴訟などの手続きをおこなうことができます。
したがって、相続について少しでも争いが生じている場合、これから生じそうな場合などには、弁護士に依頼するとよいでしょう。
また、現時点では相続に関して争いが発生していない場合でも、さまざまな相続の手続きをひとつの窓口で済ませたいという場合にも、弁護士に依頼するとよいでしょう。
弁護士であれば、ほぼ全ての手続きができるので、ワンストップで相続手続きを進めてくれる窓口になってくれます。
遺産に不動産が含まれている場合には、司法書士に依頼するのもよいでしょう。
司法書士は、不動産の相続登記をおこなってくれる専門家です。
相続争いがない場合には、司法書士に依頼することで相続手続きが済むことも多くあります。
もっとも、司法書士は基本的には相続をめぐる争いやトラブルの解決をおこなうことはできません。
少しでも相続をめぐる争いがありそうなときには、初めから弁護士に依頼しておくのがおすすめです。
行政書士は、争いがない場合の遺産分割協議に必要な書類の作成であればおこなうことができます。
相続争いがなく簡単な遺産分割協議書の作成だけでいいという場合には、行政書士に依頼するのもひとつの方法です。
もっとも、行政書士は裁判所に提出する書類を作成したり、紛争がある場合に書類作成をすることは法律上許されていません。
実際に行政書士に依頼してそれだけで全て解決するというケースは多くありません。
特に行政書士に依頼する必要があるという事情がない限りは、はじめから弁護士や司法書士に依頼しておくのがおすすめです。
税理士は、相続税の申告手続きの専門家です。
相続税を申告・納付しなければならない可能性がある場合には、税理士に依頼するのもよいでしょう。
もっとも、相続税の手続きが必要な場合でも、弁護士に依頼すれば税理士と分担して全ての手続きを進めてくれるのが一般的です。
相続税の申告が必要そうという場合でも、弁護士に相談すれば税理士とともに手続きを進めてくれるので、相続税の申告手続きが必要であってもはじめから弁護士に相談・依頼してかまいません。
相続財産調査は、とても大切な手続きです。
相続財産調査を失敗してしまうと、相続放棄ができずに多くのマイナスの財産も受け継ぐことになってしまったり、あとから把握していなかった財産が出てきてまた遺産分割手続きをやり直す必要が出てきたりすることもあります。
相続財産調査は、費用をかけてでも弁護士に相談・依頼するようにしましょう。
弁護士であれば、あなたのために相続財産調査を的確かつ迅速におこなってくれます。
弁護士に相続財産調査を依頼して、相続手続きを安心して進めていくようにしましょう。
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