親族同士などで財産の贈与をおこなう場合、贈与税の申告・納税が必要なケースもあります。
しかし、「申告・納付期限はいつまでなのか」「そもそも贈与税がかかるのかどうかわからない」という方も多いでしょう。
贈与税を支払わないまま申告・納付期限を過ぎてしまうと、ペナルティが課されて本来よりも多くの金額を支払うことになります。
もし申告・納付期限を過ぎてしまっても、速やかに対応すれば負担を最小限に抑えることができます。
贈与税の不安を解消するためにも、本記事で正しい知識を身につけましょう。
本記事では、贈与税の申告・納付期限や期限を過ぎた場合の罰則、申告・納付期限に間に合わない場合の対処法や、申告・納付期限を過ぎた場合にやるべきことなどを解説します。
贈与税の申告・納付期限は「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで」です。
納付も同日までが期限となります。
なお、3月15日が土日や祝日の場合、申告・納付期限はその次の平日になります。
今年贈与を受けた場合、来年の2026年3月15日は日曜日ですので、その翌日の3月16日が申告・納付期限となります。
財産の贈与に関しては、以下のように「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」という2つの方法があります。
※税制改正により、2024年1月1日より年110万円の基礎控除が新設
暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらに関しても、贈与税の申告・納付期限は「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで」となります。
相続時精算課税制度は、暦年課税とは併用ができず、一度選択すると原則変更できません。
贈与税の申告・納付期限は「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで」ですが、なかには以下のように例外となるケースもあります。
ケース | 申告・納付期限 |
受贈者が申告・納付期限前に死亡した場合 | 受贈者が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月 |
受贈者が海外に行く場合 | 出国日まで ※納税管理人の届出をした場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで |
贈与を受けた人が贈与税の手続きを済ませる前に亡くなった場合、贈与税の申告・納付期限は「受贈者が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月」です。
このようなケースでは、亡くなった人の相続人が代わりに手続きをおこなうことになります。
海外勤務や海外移住などの理由で、贈与税の申告・納付期限を迎える前に出国する場合は、出国する前に贈与税の手続きをおこなう必要があります。
なお、このようなケースでは、納税に関する手続きを代行する「納税管理人」を定めて、親族や税理士などに代行してもらうことも可能です。
納税管理人を選任する場合、贈与税の申告・納付期限は通常どおり「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで」となります。
贈与税の申告・納付期限を過ぎた場合の罰則としては、加算税・延滞税・刑事罰などがあります。
ここでは、各罰則の対象になるケースや、罰則の内容などを解説します。
加算税は「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」の3種類に分類されます。
以下では、各加算税について解説します。
申告・納付期限内に手続きを済ませたものの、申告漏れがあって納めた金額が少なかった場合は手続きをやり直す必要があります。
その際に発生した新たに納付すべき税額については過少申告加算税が課せられ、税率は以下のとおりです。
新たに納付すべき贈与税額 | 税務調査の事前通知前に自主申告した場合 | 税務調査の事前通知後&税務調査前に申告した場合 | 税務調査の事前通知後&税務調査後に申告した場合 |
「申告済みの金額」と「50万円」のどちらか多い方より少ない場合 | なし | 5% | 10% |
「申告済みの金額」と「50万円」のどちらか多い方より多い場合 | なし | 10% | 15% |
申告・納付期限までに申告書を提出せず、期限後に申告した場合は無申告加算税が課せられます。
無申告加算税の税率は以下のとおりです。
贈与税額 | 税務調査の事前通知前に自主申告した場合 | 税務調査の事前通知後&税務調査前に申告した場合 | 税務調査の事前通知後&税務調査後に申告した場合 |
50万円以下の場合 | 5% | 10% | 15% |
50万円を超える場合 | 5% | 15% | 20% |
300万円を超える場合 | 5% | 25% | 30% |
申告漏れや無申告のケースにおいて、以下の条件を満たしてしまうと、重加算税としてより高額な税金が課せられます。
贈与税の非課税枠や特例が適用される場合でも、申告自体を怠ると税務署から指摘を受ける可能性があります。
そのような場合、複雑な計算が求められるケースが多いため、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
法定納期限である申告・納付期限までに贈与税を支払っていない場合、延滞税が課せられます。
延滞税については「申告・納付期限からどれほど支払いが遅れたか」によって、以下のように税率が異なります。
未納額が大きい場合や悪質と判断された場合などは、以下のような刑事罰が科せられることもあります。
虚偽または不正行為によって納税逃れをした場合、罰則として「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科」が科せられます(法人税法第159条1項、所得税法第238条1項など)。
なお、支払いが必要な贈与税が1,000万円を超えるようなケースでは、罰金が1,000万円を超える可能性もあります。
故意に申告書を提出せずに納税逃れをした場合、罰則として「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科」が科せられます(法人税法第159条3項、所得税法第238条3項など)。
正当な理由なく期限内に申告書を提出しなかった場合、罰則として「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます(法人税法第160条、所得税法第241条など)。
「すでに贈与税の申告・納付期限が迫っており、期限内の対応が難しい」という場合、以下のような対処法があります。
税金の知識や申告手続きの経験がなく、自力で手続きをおこなうのが難しい場合は税理士に依頼するのが有効です。
贈与税の申告・納付期限が迫っている状態でも、税理士なら依頼後スピーディに対応してくれて、ペナルティなどの負担軽減が望めます。
ただし、申告・納付期限が迫っている状態で税理士に依頼する場合、割増料金が発生して通常よりも高額になる可能性があります。
経済的事情によって期限内に贈与税を支払うのが難しい場合は、分割で支払いをおこなう「延納」が認められることもあります。
贈与税の延納を認めてもらうためには、以下のような条件を満たしている必要があります。
贈与税の延納手続きでは、延納申請書や担保提供に関する書類などを税務署に提出する必要があり、各書類の詳細については「延納・物納申請等|国税庁」をご確認ください。
延納手続きは贈与税の申告・納付期限までに済ませる必要があり、担保提供に関する書類については、申告・納付期限までに準備できない場合に「担保提供関係書類提出期限延長届出書」を提出することで3ヵ月間の期限延長ができます。
もしうっかりして贈与税の申告・納付期限を過ぎてしまった場合は、早急に申告・納付を済ませましょう。
このようなケースでは期限後申告として受理され、本来の納税額に加えて無申告加算税などが課せられることになります。
頑なに支払いを拒否したりすると刑事罰が科せられる可能性もあるため、素直に対応しましょう。
ここでは、贈与税の申告・納付期限に関するよくある質問について解説します。
贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までにおこないましょう。
もし3月15日が土日や祝日の場合には、申告・納付期限はその次の平日になります。
贈与税の申告・納付期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税が課せられて、本来よりも多くの金額を支払うことになります。
未納額が大きい場合や悪質と判断された場合などは、懲役刑や罰金刑などの刑事罰が科されることもあります。
贈与税の時効期間は、贈与を受けた翌年の3月16日から数えて6年(故意に申告していない場合は7年)です。
贈与税の申告先は「受贈者の住所地の所轄税務署長」で、各地域の税務署は「税務署の所在地などを知りたい方|国税庁」から確認できます。
必要書類については「贈与税の申告|国税庁」の各ページから確認・ダウンロードできます。
贈与税の納税方法は、税務署・銀行・郵便局などの窓口で納付書を作成して現金で納めるのが一般的ですが、ほかにも以下のような方法で納税することもできます。
贈与税の申告・納付期限は、「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで」です。
期限内に手続きを済ませなければ、本来の納付額に加えて延滞税や加算税なども支払うことになります。
贈与税の申告手続きの進め方がわからない場合は税理士に相談し、経済的な理由などで贈与税の支払いが難しい場合は延納を検討するなど、状況に応じて速やかに対応しましょう。
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