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遺産分割調停が審判移行する場合とは?移行の流れや注意点を解説

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遺産分割調停での解決できなさそうな状況であれば、遺産分割審判に移行します。

審判は、調停が不成立となった場合に自動的に移行しますが、どのような点に気をつけなければならないのでしょうか。

本記事では、遺産分割調停と遺産分割審判の違い、審判に向けて準備しなければならないこと、審判で有利になるにはどうすればよいのかなどを紹介します。

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遺産分割調停から審判移行しやすい2つのケース

相続の際、遺産分割の内容に納得ができない人がいたり、そもそも遺産分割協議に参加しない相続人がいたりするなど、遺産分割が進まないときは、遺産分割調停をおこなわなければなりません。

さらに、遺産分割調停でも解決しなければ、遺産分割審判へ移行することになります。

ここでは、遺産分割協定から審判移行しやすい主な2つのケースを紹介します。

1.遺産分割調停で落としどころが見つからない

まず、遺産分割審判へ移行する理由として、調停で落としどころが見つからなかったというケースがあります。

遺産分割調停は話し合いを中心におこなわれますが、これ以上話し合っても合意の見込みがないと判断されると、調停は不成立となり、審判へと移行します。

とくに調停での決着がつきづらいものに、不動産の分割方法があります。

不動産は現金や預金と違って、容易に分けられるものではありません。

生まれ育った生家を兄弟のどちらが引き継ぐのかについて揉めることもあれば、複数の相続人が収益性の高い投資物件を取り合うこともあります。

相続財産のほとんどが不動産である場合は、なおさらです。

その結果、遺産分割調停が不成立となるケースが多々あります。

また、不動産に限らず、一部の相続人が強く主張している場合にも調停が成立しないことが少なくありません。

遺産分割調停を成立させるためには、相続人全員が同意しなければならないため、たった1人でも相続人がほかの相続人の権利を無視して主張を続ければ、調停は不成立となってしまいます。

2.遺産分割調停に参加しない相続人がいる

遺産分割調停にまったく参加しない相続人がいるというケースもまた、調停不成立となり審判へ移行することがよくあります。

1人でも参加しない相続人がいれば、調停を成立させることはできません

遺産を相続するには、相続人全員の合意が必要です。

遺産分割調停は、相続人に出席を強制させることができません

調停は、あくまでも話し合いの場なので、参加するかどうかは各相続人の意思に委ねられます。

一部の相続人の欠席が複数回にわたって続いていると、裁判所が話し合いで解決する見込みがないと判断します。

その後、調停は不成立として打ち切られ、遺産分割審判へと移行すると考えてよいでしょう。

遺産分割調停と遺産分割審判の主な違い

ここからは、遺産分割調停と遺産分割審判の主な違いについて整理します。

 

遺産分割調停

遺産分割審判

解決方法

話し合い

裁判官による判決

参加者

全ての相続、調停委員二名、裁判官

相続人、裁判官

難易度

自分で応じることも可能

弁護士に依頼しなければ難しい

1.解決方法|調停は話し合い、審判は裁判所の判断

遺産分割調停と遺産分割審判の根本的な違いとして、その解決方法が挙げられます。

調停は、相続人同士を中心とした話し合いの手続きです。

調停委員会が中立公平な立場から、まずは相続人本人たちの言い分を聞きます。

それぞれの意見を調停委員会が調整し、全員が賛同できるであろう解決案を導き出してくれます。

遺産分割調停は、相続人全員の同意が成立要件となっているため、調停不成立となった場合には、審判手続へと自動的に移行します。

一方、遺産分割審判は、遺産分割調停が不成立となったあと、結論が見出せていない遺産分割問題について裁判所が判断を下す手続きです。

たとえ相続人本人たちが納得しなくても、家庭裁判所の裁判官が結論を出します

遺産分割調停とは異なり、遺産分割審判の場合、相続人の同意は不要です。

もちろん、客観的な立場から法的に正当な審判が下されますが、これには強制力があります。

2.参加者|調停は裁判官と調停委員、審判は裁判官のみ

遺産分割調停に参加するのは、当事者である相続人に加え、2名の調停委員が間に入って話を進めます。

この場合、裁判官は調停成立もしくは不成立のときに限り来るのが通常です。

遺産分割調停には、全ての相続人が参加しなければ成立することはありません。

遺産分割審判に参加するのは相続人と裁判官のみで、調停委員は関与しません。

当事者である相続人が欠席したとしても、裁判官が遺産分割方法を判断するため、一部の相続人が審判を無視して家庭裁判所に出頭しなくても、相続問題を解決することができます。

3.難易度|調停は自分でもできる、審判は自分ひとりでは難しい

難易度は、調停よりも審判のほうが難しいと考えてよいでしょう。

調停は、あくまでも話し合いです。

調停委員が間に入って話を進めてくれますし、必ずしも法律的に正しい主張内容でなくても話を聞いてもらうことができ、立証資料も必須ではありません。

審判は、自分で納得のいく解決を目指すのは非常に難しいものであると心得ましょう。

裁判官が法律的な観点から判断をおこなうため、希望どおりの審判を出してもらうためには、法律的な主張および立証資料の提出も必須です。

審判の結果には強制力があるため、審判官が判断を下せば、望まない結果であっても受け入れ、対応しなければなりません。

ただし、調停に関しても個人で対応することも不可能ではないものの、法的な知識や技術が求められる場面も多くあります。

特に、審判に移行する可能性があるようなケースでは、調停の段階から法的な根拠や論理を明確にすることが重要です。

したがって、なるべく早い段階から弁護士に相談・依頼したほうが、遺産分割の円滑な解決に向かいやすくなるといえるでしょう。

遺産分割調停が審判移行した場合の手続きと流れ|3ステップ

遺産分割調停が審判に移行するには、どのような流れをとるのでしょうか。

また、審判ではどのようなステップで判断が下されていくのでしょうか。

審判に不服が残る場合の対応策なども含め、ここでは手続きと大まかな流れについて紹介します。

1.調停が不成立となれば自動的に審判へ移行する

調停が不成立となれば、手続きは遺産分割審判へ移行します。

自動的に移行するため、遺産分割審判を別途申し立てる必要はありません。

審判の日は改めて指定されるため、調停が不成立になった日はそのまま帰宅し、その後裁判所からの連絡を待ちます。

ただし、案件によっては、調停当日に第一回の審判期日が調整されることもあります。

審判の期日までに、審判に必要な主張や書類をまとめたり、証拠を準備したりします。

2.数回の審判期日を経て裁判官から審判が下される

裁判所から審判期日を指定されたら、相続人は裁判所に出廷します。

ご自身の主張を提出することはできますが、基本的に提出した書面や証拠資料などを、裁判官が確認しながら審理を進めます(書面審理)。

審判においては、裁判官から相続人に対して質問することはありますが、話し合いがなされるわけではありません。

そのため、家庭裁判所が審判内容を決定する際には、各相続人の主張について客観的な証拠資料が存在するかどうかが審判の重要なポイントとなります。

中でも、特別受益や寄与分、不動産の評価方法などに関する主張をするのであれば、その主張を裏付けるだけの証拠資料を十分に揃えたうえで、家庭裁判所に提出しましょう。

通常、争点を1回で整理することはできないため、審判を数回繰り返すなかで主張や書類を精査しながら、裁判所は事実を調査します。

なお、もしも話し合いによる解決ができそうだと判断されれば、裁判官が和解案を提示することもあります。

また、裁判官仲介による調停の場が改めて設けられることもあります。

3.審判が確定したらその内容に従い遺産分割をおこなう

裁判官から相続人への審問などが終わり、裁判官による判断が下されれば、審判は終結となります。

ただし、審判は裁判とは異なり、判決言い渡しの期日が設定されることはありません。

通常は審理が終わってから1~2ヵ月後が審判日として指定され、その数日後に裁判所から「審判書」が郵送されます。

審判書には、裁判官が指定する遺産分割方法や、どうしてその分割方法が決定されたのかについいての理由が記載されています。

不服がある場合は即時抗告を申し立てることもできる

審判の内容に不服がある場合、告知を受けたあと2週間以内なら即時抗告を申し立てることができます

即時抗告は、民事裁判における控訴のようなものですが、より簡易な手続きです。

即時抗告は、審判をおこなった家庭裁判所ではなく、高等裁判所が管轄します。

また、判断をするのも審判のときとは別の裁判官です。

そのため、審判で認められなかった主張が即時抗告で認められることもあります。

ただし、法律的な主張や立証ができなければ、判断する裁判官が違ったとしても認められることはありません。

即時抗告をするのであれば、弁護士などの専門家に相談し、即時抗告をすべき見込みがあるようなら依頼をすることをおすすめします。

なお、即時抗告に関しては以下の記事も参考にしてください。

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遺産分割審判を有利に進めるための2つのポイント

ここでは、遺産分割審判を有利に進めるためのポイントを2つ紹介します。

1.書面審理に備えて主張と証拠の準備をする

審判となると、話し合いの場がもたれるわけではなく、相続人たちが提出した書類を中心に裁判官が結論を出す書面審理がおこなわれます。

書面審理では、法的根拠に基づく主張や証拠を書面として準備する必要があります。

審判では基本的に法定相続分が優先されるため、とくに法定相続分とは異なる主張がある場合は、法的な根拠をもとにきちんと整理し、相応の主張をしなければ裁判官を説得することは難しいでしょう。

特別受益や寄与分を考慮してもらいたいときや、不動産の評価方法などについて異論があるときなどは、その主張を十分に裏付けるだけの資料を揃える必要があります。

2.速やかに相続問題が得意な弁護士に相談する

審判は、法的に正しい内容の主張をし、法的根拠を証明する資料を提出し、裁判官に希望を聞いてもらうことが重要です。

法的な知識や経験のない方が進めるのは非常に難しいことであることから、弁護士に依頼をするのが賢明です。

弁護士は、依頼者の状況に合わせて、どうすれば有利な主張ができるかという構成の検討や、収集すべき証拠についてアドバイスをしてくれます。

また、審判当日の対応を全面的に代行することも可能です。

基本的に、遺産分割審判には当事者が出頭しなければいけません。

しかし、弁護士であれば、代理人として出頭することができるのです。

とくに、相手方(ほかの相続人)に弁護士がついている場合、いくらご自身が正当な主張をしていたとしても、法的な知識や経験に大きな差があれば、相手側の主張がとおってしまうということも起こり得ます。

思いもよらない不利な状況となる危険性を考えると、なるべく早く弁護士に相談するのがよいでしょう。

審判では、調停における相続人同士の主張が審理の対象となります。

そのため、可能であれば調停段階から弁護士をつけることをおすすめします。

相続問題が得意な弁護士は「ベンナビ相続」で探せる!

遺産分割審判で不利な相続をするのは避けたい、あるいは有利に進めたいという場合は、相続トラブルに詳しい弁護士に依頼することを強くおすすめします。

法律事務所にはそれぞれの取り扱い分野があり、弁護士の得意分野があります。

相続を得意とする弁護士を探すなら、ベンナビ相続」の利用がおすすめです。

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遺産分割調停が審判移行した場合の4つの注意点

ここからは、遺産分割調停から遺産分割審判へと移行した場合に注意しなければならないことについて解説します。

1.法定相続分どおりの遺産分割になる可能性が高い

遺産分割審判においては、法定相続人における相続割合は、基本的に法定相続分どおりになると心得ましょう。

遺産分割協議や調停では、相続人全員の合意さえあれば、自由に分割割合を決められます

しかし、審判となると法定相続分から変更することは原則できません。

そのため、寄与分などを考慮して有利な相続を進めたい場合であれば、協議や調停の段階で解決するのが望ましいといえます。

いかに早い段階で弁護士などの専門家に相談・依頼をするかがポイントとなるでしょう。

2.原則として不動産が共有分割とされることはない

相続における財産の分割方法には、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割があります。

現物分割は、共有物を物理的に分ける方法をいいます。

たとえば、不動産は妻が相続し、現金は長男が相続するなどのような分割が該当します。

代償分割は、特定の相続人が分割することが難しい遺産を相続し、ほかの相続人に対して一定の代償財産を交付する方法です。

財産が土地だけという場合に多く用いられ、たとえば、長男が土地を相続し、次男と三男には相続分に見合った金銭を支払うなどのケースが該当します。

換価分割は、不動産などの財産を売却し、換金して相続人間で分割する方法をいいます。

たとえば、相続人がそれぞれ遠方に住んでいて被相続人の自宅を引き継げないなどの理由から、換価分割が選択されることがあります。

共有分割は、不動産などの分割できない財産を相続人が共同で所有する方法です。

相続人が住んだままであっても平等に分けることができるため、必要に応じて選択されます。

原則、審判では現物分割・代償分割・換価分割の3種類から決定されることがほとんどですが、遺産分割の結果として、最終的に共有分割の判断が下されることもあります。

ただし、複数の相続人での共有状態はトラブル発生の原因にもなり得るため、解消することが望まれます。

そのため、裁判所が共有分割の判断するのは、審判終結後に相続人間での問題が生じないようなケースに限られます。

3.審判が出るまでに多くの時間がかかることがある

遺産分割審判がおこなわれる回数には制限がありません。

どれくらいの期間で終わらせなければならないという決まりもありません。

そのため、争点が整理できるまで何度もくり返され、相続人同士の対立が激しいケースや争点が多いケースであれば、審判が下されるまでに2年〜3年を要することもあります。

司法統計年報によると、2023年に終結した遺産分割事件は、1万3,872件で、そのうち調停成立となったのは6,125件です。

期間として最も多いのが1年以内で2,092件、次いで2年以内の調停成立が1,596件でした。

また、回数としては6〜10回が最も多く1,7421件となっています。

中には21回以上も審理がくり返されるケースもあり、2023年では141件にものぼっています。

審判がおこなわれる頻度は、一般的には1ヵ月~1ヵ月半に一度のペースだと考えてよいでしょう。

4.審判の内容に従わないと強制執行をされてしまう

審判の内容には強制力があります。

即時抗告期間が過ぎ、遺産分割審判が確定すれば、相続人全員がそれに従わなければなりません。

一部の相続人だけが審判に従わず、財産の引渡しや名義変更に応じない場合であれば、審判の内容に従おうとする相続人たちから裁判所へ強制執行を申し立てることができます。

強制執行を申し立てるには、申立書・審判書の正本または謄本・送達証明書などが必要です。

詳しくは、弁護士などの専門家を頼るのがよいでしょう。

さいごに|遺産分割協議の段階から弁護士に相談するのがおすすめ!

ここまでに紹介したとおり、遺産分割審判に進んでしまうと裁判官が下した判決に従って遺産を分割しなければなりません。

相続人たちにとって融通のきく分割をおこないたいのであれば、調停までに解決することが大切です。

また、調停にかかる時間や負荷を考えると、やはり遺産分割協議の段階で、スムーズに相続できるのが一番です。

そのため、なるべく早くから弁護士に相談をすることを、強くおすすめします。

最も有効なのは、遺産分割協議の段階で弁護士を頼ることです。

もしも、すでに調停になっている場合でも、不成立として審判に移行してしまう前に依頼をしましょう。

審判への移行が決まった場合であれば、迷わずすぐに問い合わせてください。

遺産分割について弁護士に相談したいときは、本記事内で紹介したベンナビ相続」などを活用しましょう。

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この記事の監修者
グリーンクローバー法律会計事務所
日下 貴弘 (東京弁護士会)
税理士資格を持っており、「相続に強い弁護士」として、遺産分割の問題/遺留分侵害額請求の問題/遺言の有効性の問題/相続の生前対策など、相続に関する問題を数多く扱っています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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