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家族信託とは何かわかりやすく解説|メリット・デメリット・手続き費用まで

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家族信託(かぞくしんたく)とは、「自分の老後に介護が必要になったとき」や、「認知症になったとき」などに備えて、保有する不動産や預貯金などの管理・処分を信頼できる家族に託すことができる「財産管理の方法」のひとつです。

正式名称は「民事信託(みんじしんたく)」と言い、認知症などのリスクに備えて、早いうちから家族信託の利用を検討している方も増えています。

家族信託は比較的新しい制度であるため、利用にあたって以下のような悩みや疑問もあるでしょう。

  • 家族信託の仕組みは?
  • 家族信託を利用すべき?
  • 家族信託のメリット・デメリットが知りたい
  • 家族信託の手続き方法やかかる費用は?

本記事では、家族信託の仕組みやメリット・デメリット、手順や費用をわかりやすく解説します。

本記事を参考に家族信託への理解を深め、家族信託をするかどうか判断しましょう。

家族信託の利用をご検討中の方へ

家族信託が気になるけど、やり方や本当に家族信託でよいのかわからず悩んでいませんか。

結論からいうと、家族信託でお悩みなら弁護士への相談・依頼をおすすめします。

家族信託には、メリットがある一方、デメリットがあるうえ、手続きにも手間がかかるため、専門家のアドバイスを受けておくと心強いでしょう。

弁護士に相談することで以下のようなメリットを得られます。

  • 家族信託手続きのやり方がわかる
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  • 家族信託以外の相続問題についてもアドバイスをもらえる
  • 依頼すれば、手続きを一任できる

ベンナビ相続では、家族信託について無料相談できる弁護士を多数掲載しています。

電話での相談も可能なので、依頼するか決めていなくても、本当に弁護士に依頼すべきかも含めてまずは無料相談を利用してみましょう。

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目次

家族信託とは?

家族信託とは、財産管理の方法のひとつです。

自分で財産を管理できなくなったときのために、自分の財産の管理をする権限を家族に与えておくことをいいます。

たとえば、不動産の所有者には所有権がありますが、不動産所有者が家族信託を利用すると、<所有物の管理を家族に委託することができます。

家族信託では、遺言書や後見制度の代わりとして利用したり、遺言書や後見制度と合わせて利用したりすることで、より自由度の高い財産管理をおこなうことが期待できます。

また、資産の管理・処分を家族に託すことになるため、高額な報酬が発生することはなく、誰でも利用しやすい制度といえるでしょう。

家族信託は委託者・受託者・受益者でおこなう手続き

家族信託は、委託者・受託者・受益者の3者間でおこなわれます。

委託者は、自身が保有する財産の管理を受託者に任せます。

受託者は財産の管理をおこないます。

財産の管理で利益が発生した場合は、受益者がその利益を得ます。

なお、実際には財産管理を委託する委託者と利益を得る受益者が同じ人になるケースが多い傾向にあります。

それぞれの役割について、以下でわかりやすく解説します。

委託者|財産を託す人

委託者とは、財産管理をお願いする人のことです。

財産の管理方法や処分方法などをあらかじめ決定する権限のほか、受託者の選任・解任の権利も有しています。

受託者|財産の管理を任される人

受託者とは、委託者から任されて財産の管理をする人のことです。

財産管理について多くの権利を有している一方、善管注意義務・忠実義務・分別管理義務などを負います。

受益者|財産管理によって発生する利益を得る人

受益者とは、財産管理によって発生する利益を得る人のことです。

委託者と同じ人が受益者になることが通常ですが、受益者を家族の複数人に設定することも可能です。

家族信託が利用される理由

家族信託が利用され始めた理由としては、主に以下の3つが挙げられます。

1.認知症などの病気リスクに備える必要が出てきたため

日本では長寿化が進む一方で、認知症などの病気リスクに備える必要性が高まっています。

2019年に厚生労働省が発表した「認知症施策の総合的な推進について」によると、2025年には認知症患者が約700万人にのぼり、65歳以上の約5人に1人が認知症という世の中になるとされています。

いかに近しい家族であっても、本人の委任なく預金を引き出したり、資産を管理・売却したりすることはできません。

認知症や脳梗塞などで本人の判断能力が低下してしまうと、有効に資産を管理・処分できる人がいなくなってしまいます。

相続対策にも着手しづらくなるリスクもあるため、家族信託などによって対策する必要があるといえるでしょう。

2.任意後見制度よりも財産管理の自由度が高いため

認知症対策の一つとして、家族信託のほかに任意後見制度の利用なども考えられます。

任意後見制度は、成年後見制度の一種で、資産を持つ人が元気なうちに、自己が判断能力を失ったときに財産を管理する「後見人」を予め選定しておく制度です。

しかし、任意後見制度が機能し始めるのは、被後見人本人の判断能力が低下したあとになります。

また、任意後見人による財産管理は、裁判所の監督下での財産保全が求められるため、現実的には本人の理想どおりに活用されづらいという面もあります。

そのため、家族信託に比べるとやや自由度は低く、より自由度の高い財産管理を望む場合は、家族信託の利用を検討すべきといえるでしょう。

3.元気なうちに財産の承継ができるため

家族信託の場合、信託契約の時点で、受託者が定められた目的に従って資産の管理・運用を開始します。

そのため、資産の管理や運用状況を委託者本人が見届けられるというメリットがあります。

判断能力の低下後に効力が発生する任意後見制度とは異なり、身体が元気なうちに資産を承継できる点もポイントです。

なお、任意後見契約をすべきか、家族信託を利用するべきかの判断に迷った場合は、相続問題に注力する弁護士との無料相談を活用することをおすすめします。

家族信託の8つのメリット

家族信託をおこなった場合、以下のようなメリットがあります。

  1. 自由度の高い財産管理が可能になる
  2. 親の財産管理が容易におこなえる
  3. 遺言書の代わりとして使える効力がある
  4. 財産承継の順位づけができる
  5. 倒産隔離機能がある
  6. 配偶者の認知症対策ができる
  7. 共有不動産の相続問題を予防できる
  8. 二次相続についても指定できる

1.自由度の高い財産管理が可能になる

家族信託の大きなメリットとして、自分が元気なうちに、自分の意向に沿った財産管理を家族に任せられる点が挙げられます。

認知症対策としてよくあげられる任意後見制度では、後見人の負担と制約が多い点がデメリットとして挙げられるうえ、後見人は本人の判断能力が衰えるまでは財産の管理はできません。

家族信託であれば、判断能力があるうちから財産管理を任せられることに加え、もし本人が判断能力を失った場合でも、本人の意向に沿った財産管理をスムーズに実行できます。

2.親の財産管理が容易におこなえる

2つ目のメリットとしては、高齢な親の財産管理が容易におこなえるという点です。

たとえば、父親が元気なうちに財産の名義を長男に移しておき、その財産を自分のために使って欲しい場合、父親を委託者兼受益者、長男を受託者とする家族信託をしておくことで老後の資産管理を安心して長男に任せられます。

3.遺言書の代わりとして使える効力がある

3つ目は、遺言書の代わりとして使える効力を持っているという点です。

遺言書を遺そうと思った場合には、民法で定める遺言書の方式・作成方法に従わなければならず、手続きは厳格です。

家族信託であれば、委託者と受託者との契約でおこなうので、遺言書作成のような厳格な方式によらず、自分の死後に発生した相続について財産を承継する者を指定することができます。

ただし、家族信託を組む場合でも、公証役場で作成する公正証書の方式を利用するのが一般的です。

4.財産承継の順位づけができる

家族信託には、遺産相続における相続順位を指定できるという点もメリットとして挙げられます。

一般的な相続対策としては「生前贈与」や「遺言書の作成」などがありますが、生前贈与や遺贈をした財産に対しては、その次に相続が開始した場合の相続人を指定できません。

一方、家族信託を利用すれば、最初に指定した受益者が万が一亡くなってしまった場合でも、その次の受益者を誰にするか指定できます。

また、事業承継の際にも、株式の評価がゼロに近い時期に委託者と受託者を本人(現経営者)、受益者を相続人という「自己信託(家族信託の一類型)」をおこなうことで、贈与税をかけずに株式(受益権)を子どもなどに承継させ、かつ自身も変わらず議決権を行使して経営に参加することが可能になります。

事業承継を検討している方は、自己信託なども検討するとよいでしょう。

5.倒産隔離機能がある

家族信託には、倒産隔離機能がある点もメリットといえるでしょう。

倒産隔離機能とは、家族信託の財産と委託者・受託者の個人財産を分ける機能のことです。

「将来自分(委託者)や受託者が信託財産に関係のない多額の債務を負ってしまった場合でも、信託財産は差押えられない」というもので、将来何かがあった場合に対する備えになります。

ただし、注意点として、信託財産は受益者の「信託受益権」に形を変えているため、受益者が強制執行などを受けるケースでは、財産を差し押さえられる可能性があります。

また、委託者がこの倒産隔離機能を活かそうとして、自らの債務の弁済を免れることを意図して家族信託を組んだ場合には、詐害信託といって、債権者から信託の取り消しをすることができます。

6.配偶者の認知症対策ができる

自身の相続の際、「配偶者に遺産を残す」といった内容の遺言書を作成しても、配偶者の判断能力が低下している場合、相続後の財産管理ができないリスクが発生してしまいます。

たとえば、配偶者が老人ホームなどに入っていれば月々の費用がかかり、配偶者に判断能力がないと賃貸借契約や更新などの手続きができない可能性もあるでしょう。

そこで、家族信託で「自分が亡くなったら受益者は妻に変更する」などと定めておくことで、受益者の変更にあたって遺言書や遺産分割協議書も必要とせず、配偶者の生活のために財産を利用することが可能になります。

7.共有不動産の相続問題を予防できる

共有不動産は、共同相続人全員が協力しないと処分できません。

そのため、将来的に複数の相続人が不動産を共同相続してしまうと、管理処分権の問題が生じる可能性があります。

共有者としての権利や財産的価値は平等にしたまま、家族信託によって管理処分権限を共有者の一人に集約しておくことで、いわゆる「不動産の塩漬け」を防止することができます。

8.二次相続についても指定できる

家族信託は、二次相続を想定した相続対策としても非常に有効な選択肢です。

相続割合の指定などは遺言書でもできますが、遺言書で指定できるのは「遺言者である被相続人が亡くなったときの一次相続の方法についてのみ」です。

たとえば「一次相続の被相続人Aは『Bに財産を相続させたい』と考えているが、『Bの相続人であるCには相続させたくない』とも考えている」という場合、遺言書ではAの希望を実現することは困難です。

Bが亡くなった場合の相続については、Bが遺言書を残す必要があるからです。

一方で、家族信託を利用すれば、AはBを財産の受益者とし、Bが死亡したあとはCではなくDを受益者とする仕組みを作ることが可能です。

これを「受益者連続信託」と呼びます。

このように、遺言書よりも自由度が高く、個々の被相続人や相続人の意向に応じた相続の仕組みを作れるのも家族信託のメリットといえます。

家族信託の5つのデメリット

家族信託のデメリットには、以下のようなものがあります。

  1. 身上監護においては不十分な可能性がある
  2. 受託者を誰にするかで揉める可能性がある
  3. 節税効果は期待できない
  4. 遺留分侵害額請求の対象となる可能性がある
  5. 家族信託を途中で辞める場合は理由が必要

1.身上監護においては不十分な可能性がある

家族信託は、信託の目的となっている個別財産の管理や処分に必要な行為を家族に委ねる仕組みです。

家族信託の際に、身上監護に関する内容を含めることも可能です。

ただし、本人の法定代理人として活動する成年後見人でなければ、身上監護に必要な契約などが十分にできない場合があります。

一方で、成年後見制度では民法にて身上配慮義務(第858条)が規定されており、本人の財産管理のほか身上監護も念頭においています。

身上監護についても十分な対策が必要な場合には、成年後見制度の利用も検討するとよいでしょう。

2.受託者を誰にするかで揉める可能性がある

家族信託では、財産を適切に管理・処分できて、かつ信頼できる家族がいるかどうかが大きなポイントとなります。また、受託者となるべき家族・親族がいない場合には利用することができません。

「委託者に判断能力があるうちから利用できる」というメリットはあるものの、自分の財産が自分名義でなくなることに抵抗感を持つ方もいるでしょう。

また、信頼されて任されたにもかかわらず、財産管理がずさんな場合には、相続人の中から不満の声があがってトラブルになる可能性もあります。

3.節税効果は期待できない

家族信託をおこなったとしても、節税効果があるわけではありません。

受益者となった方が財産を取得するわけではないのに「財産を取得した」とみなされるため、むしろ税金的には受益者の負担が大きいといってよいかもしれません。

4.遺留分侵害額請求の対象となる可能性がある

家族信託は、内容によって遺留分侵害額請求の対象となることがあります。

遺留分とは「法定相続人に最低限保障された相続財産の取り分」のことです。

遺留分を侵害するような不平等な遺産分割がされた場合には、遺留分侵害額請求という請求手続きが可能です。

ただし、信託の性質上、遺留分侵害額請求の対象とならないという見解もあり、意見が分かれる部分でもあります。

家族信託による遺留分侵害が起こりうるケースについて、以下で詳しく解説します。

家族信託によって遺留分侵害が発生するケース

たとえば、以下のようなケースで家族信託を設定したとします。

  • 受益者:夫
  • 2受益者:妻
  • 3受益者:長男

この場合、夫の死亡時に妻が取得する受益権と、将来的に長男が取得する受益権がほかの相続人の遺留分侵害の対象になる可能性があります。

しかし、夫の死亡がきっかけとはいっても、夫の遺言に基づいて受益権を承継したわけではないため、判断が難しいところではあります。

詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

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5.家族信託を途中で辞める場合は理由が必要

家族信託を途中で辞めることは可能です。

しかし、家族信託の契約書(信託契約)を交わしてスタートしたからには、途中で辞めるだけの正当な理由(信託終了事由)が必要になります。

主な事由としては、以下の3つがあります。

  • 当事者間の合意で辞める:「委託者および受益者の合意」があれば、信託法では家族信託の終了が可能
  • 信託法で定められている事由に則って終了する:「信託の目的が達成された場合」や「受託者が1年以上不在の場合」などが該当
  • 当事者間の信託契約で定めた事由により終了する:「受託者または受益者が死亡した場合」などが該当

一方の意思だけで家族信託を途中終了させることは難しいため、実態としては当事者間の合意がほぼ必須となり、①による終了になるかと思われます。

また、家族信託を途中で終了したとしても、信託財産は委託者本人に戻るわけではなく、信託契約にて定められた帰属権利者が取得します。

(信託の終了事由)
第百六十三条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。
一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。
二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。
三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。
四 受託者が第五十二条(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。
五 信託の併合がされたとき。
六 第百六十五条又は第百六十六条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。
七 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。
八 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第五十三条第一項、民事再生法第四十九条第一項又は会社更生法第六十一条第一項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第四十一条第一項及び第二百六条第一項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。
九 信託行為において定めた事由が生じたとき。
引用元:信託法第163条

家族信託の利用が向いているケース4つ

家族信託を利用すべきケースを4つ紹介します。

1.親の認知症に備えたい場合

親が認知症により判断能力を失えば、不動産などを売ることができなくなり預金を下ろすことも困難になります。

まだ元気なうちに子どもなどを受託者として家族信託契約を結んでおくことで、もし親の判断力の低下がみられた場合でも、子どもが親の生活費などを信託財産から支出できます。

契約内容によっては、納税資金のために信託財産である不動産を処分することなども可能になります。

認知症対策として任意後見制度を利用することもできますが、任意後見制度はあくまでも本人の財産管理のための制度です。

リスクのある資産運用や不動産の処分などはできないという点に注意しましょう。

この点、家族信託であれば、信託目的に従ってより幅広いニーズに応えられます。

2.成年後見制度での費用が心配な場合

親族以外の人が担当すると報酬が発生する成年後見制度とは異なり、家族信託では原則として家族を受託者にできるため、報酬が発生することも防げます。

成年後見制度のマイナス面をカバーしながら信託をしたい、というケースにも適しています。

3.親の居住用不動産を将来売却したい場合

親が将来的に認知症になり施設に入居することになった際に、居住用の今住んでいる不動産を売却したいといったケースでも家族信託は有効です。

家族信託では、親が認知症になったときでも自由なタイミングで不動産を売却できます。

4.障がいのある子どもに財産を残したい場合

障がいがあって自分で財産管理できない子どもがいる場合、「自分達が死んだあとにひとりで生活していけるのだろうか」という不安があるでしょう。

そこで、夫婦が委託者となって信頼できる親戚を受託者にしておくことで、将来的に子どもが受益者となるような信託を組むことも可能です。

家族信託の手続きの流れ

家族信託の手続きの流れとしては以下のとおりです。

  1. 家族信託契約を締結する
  2. 信託用口座を開設する
  3. 信託登記をおこなう
  4. 家族信託の運用を開始する

家族信託の手続きは、自分でおこなうことも不可能ではありません。

しかし、のちのちのトラブルを防ぐためにも弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

1.家族信託契約を締結する

まずは委託者と受託者が契約書を交わし、家族信託の内容について取り決めをおこないます。

契約では、信託の対象とする財産の範囲・財産の管理方法のほか、信託の目的・受益者が誰かなどを取り決めてください。

このとき、公証役場で作成する公正証書の方式によるのが一般的です。

2.信託用口座を開設する

次に、信託管理をおこなうための「信託専用の銀行口座」を開設しましょう。

信託用口座は、預金の運用や不動産の賃貸収入などで利益を得る際に利用します。

必ず作る必要はありませんが、受託者には分別管理義務があるため、「家族信託用の口座」と「受託者本人の口座」は分けておいたほうがよいでしょう。

なお、信託銀行などでは「民事信託口座」という家族信託専用の口座を開設することが可能です。

3.信託登記をおこなう

信託財産の中に不動産がある場合には、名義人を委託者から受託者に変更しなければなりません。/

信託登記は法務局でおこないますが、個人でおこなうのは難しいので、必要に応じて司法書士に依頼するようにしてください。

4.家族信託の運用を開始する

口座の開設や登記が終わったら、受託者による財産管理が開始します。

家族信託にかかる費用

家族信託は信頼できる家族間での契約であるため、基本的に高額な費用がかかるものではありません。

もっとも「公正証書を作成する場合」や「不動産登記が必要な場合」などには、別途そのための費用が発生します。

信託契約書を公正証書にする場合

信託の目的となる財産の価額に応じて、公証役場での実費として1万円~5万円程度の手数料がかかります。

信託財産の中に不動産がある場合

信託財産の中に不動産が含まれる場合は、登録免許税として固定資産税評価額の1,000分の4にあたる額を支払う必要があります。

ただし、土地信託の場合は、固定資産税評価額の1,000分の3にあたる額になります。

コンサルティングを依頼する場合

信託契約を締結するにあたって外部にコンサルティングを依頼した場合には、その分の手数料がかかります。

コンサルティング費用は各依頼先で決められるため一律ではありませんが、信託財産が1億円以下の部分は1%、それを超える部分は0.5%あたりが相場になります。

信託監督人や受益者代理人を設定する場合

信託監督人や受益者代理人などを置く場合には、別途報酬などが発生します。

相場としては月額1万円程度です。

家族信託の利用前に確認すべき4つのポイント

家族信託制度の利用にあたっては、あらかじめ以下の4つのポイントを確認しておきましょう。

  • .家族信託の財産はどれにするのか
  • 家族信託の財産はどれにするのか
  • 家族信託をおこなう目的は何か
  • 家族信託をおこなう目的は何か

1.家族信託の財産はどれにするのか

家族信託の対象となる財産としては、現金・株式などの有価証券・不動産など、さまざまなものがあります。

信託の目的に沿って、最適な財産を選ぶようにしましょう。

なお、信託できる財産は、財産上価値のある物です。

借金や保証債務、生活保護受給権や年金受給権などの一身専属権は信託できないので注意してください。

2.家族信託で誰に財産を信託するのか

受託者を決める際は、「専門的な知識を持っているかどうか」だけではなく、「信頼できるかどうか」「委託者の意図を理解してくれるかどうか」なども考慮して決めるのが望ましいでしょう。

なぜなら、受託者は財産管理権という大きな権利を持つことになり、財産の使い込みなどのトラブルが発生する可能性があるからです。

信託する財産が大きい場合には、受託者を監視する「信託監督人」や、受益者の補助をする「受益者代理人」を選任するなどして、受託者の権利濫用を防ぐようにすることも検討しましょう。

3.家族信託をおこなう目的は何か

家族信託の利用前に、目的も明確にしておきましょう。

  • になったり老後に介護が必要になったりしたときに適切に財産管理するため
  • に障害を負って日常生活さえ困難になった場合の対策のため

このように、信託契約を結ぶ目的は家族の事情によって異なります。

どのような目的で家族信託をするのかについては、関係者同士でしっかりと考え、合意を得ておく必要があります。

4.家族信託での信託監督人は誰にするのか

家族信託はいわば身内同士の契約であるため、受託者による資産の管理・運用の実態が第三者から見えにくい、という問題点もあります。

そこで、受益者のために信託事務が適切に遂行されているかを受益者に代わって監督する「信託監督人」を設定しておくことも大切です。

また、受託者を2人設定しておけば、お互いが相談しながら財産を管理・運用していくことができ、相互のチェック機能なども生まれます。

家族信託を弁護士に依頼する4つのメリット

家族信託を検討している方は、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。

弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットが望めます。

  • 家族信託での契約内容をアドバイスしてくれる
  • 契約書のチェックや作成のサポートをしてくれる
  • 遺留分の侵害についてアドバイスがもらえる
  • 家族信託後のトラブルにも対応してもらえる

1.家族信託での契約内容をアドバイスしてくれる

一口に家族信託といっても、信託の目的によってどのような契約内容にするべきかは異なります。

契約内容について自身で全て決めるのは難しいケースもあるでしょう。

特に、どのように財産を管理するかは重要なポイントです。

契約締結後にすぐ財産の管理を任せることもできますし、認知症などで判断力が低下したときに委託するといったことも可能です。

さらに、「誰が受託者になるか」「信託財産はどれか」などについても慎重に選ばなければなりません。

弁護士に依頼することで、将来発生するであろうトラブルなども考慮しながら、目的に沿って最適な信託契約を結べるようになります。

2.契約書のチェックや作成のサポートをしてくれる

家族信託は「信託契約」の一部で、口頭でも合意が得られれば契約は成立します。

ただし、信託契約では委託者・受託者・受益者の3者が存在するうえ、契約外の家族の利益にも影響します。

信託内容を明らかにするためにも契約書は必要でしょう。

しかし、契約書を作成する際は、以下のように法的観点から注意すべきポイントがあります。

  • 契約内容の適法性・正当性・整合性を判断しなければいけない
  • のちのち起こる可能性のあるトラブルに備えた条項を明記しておく必要がある
  • どのような事前の対策を必要としているのか(信託の目的)を念頭に置いた規定にしなければならない など

弁護士であれば、ポイントを踏まえて法的視点からのチェックや作成サポートを依頼でき、不備なく適正な契約書作成が望めます。

3.遺留分の侵害についてアドバイスがもらえる

民法上、遺留分は相続人に与えられた権利であり、侵害された分について遺留分侵害額請求をすることができます(第1042条)。

しかし、家族信託について信託法で考えた場合、「遺留分は無視してもよい」という旨の説明がされる可能性もあります。

一方で、家族信託で遺留分を侵害された際は、下記のように考えるのが通説とされています。

  • 遺言代用信託の場合も遺留分の問題は生じる
  • 後継ぎ遺贈型受益者連続信託の、委託者の死亡時点で受益権を持つ人に対しては遺留分の問題は生じる
  • 後継ぎ遺贈型受益者連続信託の、委託者ではない受益者Aの死亡によって受益権が消滅してほかのBが新たに受益権を取得したとき、死亡したAの相続についてBによるAに関する法定相続人の遺留分侵害の問題は生じ得ない

この点は判断が難しいので、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

4.家族信託後のトラブルにも対応してもらえる

家族信託後に、受託者による財産の使い込みなどのトラブルが発生することもあり得ます。

さらに、受託者が亡くなると相続が開始されますが、このときも相続人間間でトラブルに発展することもあり得るでしょう。

弁護士であれば、家族信託後に発生したトラブルや相続時のトラブルにも対応してもらえます。

家族信託を締結するときだけでなく、長期的なサポートが弁護士は可能です。

まとめ

家族信託は、保有する財産を信頼できる家族に託し、管理処分を任せる財産管理の方法です。

任意後見制度に比べて自由度が高く注目されている制度ですが、利用が開始されてからまだあまり時間が経っていません。

裁判例なども少なく、まだあまり整備されていないため、利用には十分な注意が必要でしょう。

家族信託を利用する際は、契約内容について家族の意思や状況に応じて柔軟に設計する必要があります。

場合によっては遺言書や成年後見制度との組み合わせなども考慮しつつ、弁護士のアドバイスやサポートを得ながらおこなうことをおすすめします。

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この記事の監修者
横浜平和法律事務所
大石 誠 (神奈川県弁護士会)
相続問題の解決実績多数。相続診断士や終活カウンセラーの資格を有し、ご相談者様のお悩み解決に向けて親身にサポートしています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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