遺言内容を実現させるために、あらかじめ遺言書で遺言執行者を指定しておくことができます。
遺言執行者には、主に家族・弁護士や司法書士などの専門家・信託銀行などの金融機関が選ばれます。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、一般的に以下のような方は金融機関の遺言信託を利用するのがおすすめとされています。
金融機関の遺言信託サービスが向いている方
- まとまった資産を持っている方
- 相続人同士で争いになる可能性が低い方
- 普段から信託銀行との付き合いがある方
- 資産運用や資産活用について相談したい方 など
この記事では、金融機関の遺言信託サービスを検討している方に向けて、遺言信託の基礎知識・サービスを利用するメリットとデメリット・サービスを利用する際の流れなどを解説します。
また、遺言信託サービスの利用が難しい方に向けて、弁護士に遺言書作成や遺言執行などを依頼するメリットも紹介します。
遺言信託をお考えなら弁護士に依頼することをオススメします
- 信託銀行よりも費用が安い
- 法的トラブルに対応してもらえる
信託銀行の場合
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弁護士の場合
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- 遺言保管:年間5,400円〜6,500円
- 遺言作成:32万円前後
- 遺言手数料:108万円〜160万円前後
- 合計:140万〜200万円前後
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- 着手金:20万円~30万円前後
- 遺言書作成:10~20万円前後
- 遺言執行:手数料30万円以上前後
- 合計:60万〜80万円前後
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信託銀行は財産相続のみの関与しかしません。
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この記事に記載の情報は2024年08月06日時点のものです
遺言信託とは「遺言作成から遺言執行までをサポートするサービス」
遺言信託とは、主に信託銀行が提供している、遺言書の作成・遺言書の保管・相続財産の調査・遺言の執行までを一括でサポートしてくれるサービスのことです。
一般社団法人信託協会が公表している「信託統計便覧」によると、2022年9月時点の金融機関における遺言信託(執行付き)の保管件数は16万7,201件です。
金融機関が提供していて安心感もあることから、遺言信託サービスを利用する人が増えているようです。
法律上の「遺言信託」との違い
一般的に遺言信託というと、金融機関の遺言信託サービスを指しますが、「信託法上の遺言による信託」を指すこともあります。
遺言による信託とは、委託者が受託者に対して「受益者に一定の行為をするように」と遺言書で依頼することを意味します。
文字だけではわかりづらいため、以下の図でイメージを確認しましょう。
家族信託と遺言による信託の違い
まず、信託は「家族信託(民事信託)」と「商事信託」に大きく分けられ、家族信託は信頼できる自分の家族間でおこなわれる信託を指します。
遺言による信託も家族信託のひとつで、そのほかの家族信託には契約信託や自己信託などがあります。
そのため、家族信託の一種として、遺言による信託があるという関係になっています。
遺言信託サービスのメリット
信託銀行などが提供している遺言信託サービスのメリットには、遺言書作成に関するアドバイスがもらえることや遺言執行まで任せられることなどがあります。
また、信託銀行に相談できるため、資産運用や資産活用に関するアドバイスももらえます。
ここでは、遺言信託サービスのメリットを確認しましょう。
遺言書作成のアドバイスをもらえる
信託銀行の遺言信託サービスを利用すると、遺言書作成に関するアドバイスがもらえます。
金融機関の担当スタッフは、遺言に関する相談を数多く受けており、経験を活かして相談者にとって最適な遺言書を作れるようサポートしてくれます。
これにより、納得のいく遺言書を作れる可能性が高まります。
信託銀行を遺言執行に指定できる
遺言執行者とは、遺言者が亡くなったあとに遺言内容を実現する人のことをいいます。
遺言執行者には法人もなれるため、遺言信託サービスを提供している信託銀行を指定することもできます。
信託銀行を遺言執行者にすれば、相続人の相続手続きの負担を減らしたり、相続人同士の利害関係などを気にせず円滑に手続きを進められたりします。
資産運用のアドバイスも受けられる
信託銀行の遺言信託サービスを利用した場合、一般的な資産運用・資産活用に関するアドバイスも受けられます。
遺言者の資産や希望などを十分確認してからアドバイスをしてくれるため、よりよい資産継承を実現できる可能性が高まります。
資産運用・資産活用のアドバイスが受けられることは、金融機関ならではのメリットといえるでしょう。
遺言信託サービスのデメリット
信託銀行などが提供している遺言信託サービスのデメリットには、費用・手数料が高額であることや、財産以外の相続は依頼できないことなどがあります。
ここでは、遺言信託サービスのデメリットを確認しましょう。
費用・手数料が高額になることが多い
信託銀行の遺言信託サービスは、利用料や手数料が高額になる傾向があります。
遺言信託サービスを利用する場合、通常は遺言書の作成手数料・保管手数料・遺言執行報酬などが必要になります。
詳しい費用は金融機関やプランなどによって異なりますが、おおよその目安としては以下のとおりです。
【遺言信託を利用した場合の費用の目安】
費用の項目
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費用の目安
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遺言書の作成手数料
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22万円~55万円程度
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遺言書の保管手数料
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毎年6,600円程度
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遺言書の変更手数料
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5万5,000円程度
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遺言執行報酬
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相続財産評価額×利用料率(0.33%~2.20%程度)
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財産以外の相続については任せられない
遺言信託サービスでは、財産以外の相続は依頼できません。
これは、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律により、取り扱いできる信託が決まっているからです。
子どもの認知や相続人の廃除などに関する身分についての遺言を希望する場合や、相続税に関する内容を盛り込みたい場合には、遺言信託の利用を断られるでしょう。
(兼営の認可) 第一条
銀行その他の金融機関(政令で定めるものに限る。以下「金融機関」という。)は、他の法律の規定にかかわらず、内閣総理大臣の認可を受けて、信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第一項に規定する信託業及び次に掲げる業務(政令で定めるものを除く。以下「信託業務」という。)を営むことができる。
一 信託業法第二条第八項に規定する信託契約代理業
二 信託受益権売買等業務(信託受益権の売買等(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第六十五条の五第一項に規定する信託受益権の売買等をいう。)を行う業務をいう。次条第三項及び第四項において同じ。)
三 財産の管理(受託する信託財産と同じ種類の財産について、次項の信託業務の種類及び方法に規定する信託財産の管理の方法と同じ方法により管理を行うものに限る。)
四 財産に関する遺言の執行
五 会計の検査
六 財産の取得、処分又は貸借に関する代理又は媒介
七 次に掲げる事項に関する代理事務 イ 第三号に掲げる財産の管理 ロ 財産の整理又は清算 ハ 債権の取立て ニ 債務の履行
引用元:金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第1条
相続人同士で揉めている場合は引き受けてもらえない
信託銀行などの金融機関は相続トラブルに対応できないため、すでに相続人同士で揉めている場合や紛争に発展する可能性が高い場合なども利用を断られます。
たとえば、ほかの相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言を作成する場合などは、相続トラブルに発展するリスクが高いため、遺言信託の利用を断られる可能性が高いでしょう。
遺言の種類によっては断られるケースがある
一般的な遺言書(普通方式)には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。
このうち遺言信託サービスに対応している遺言は、公証役場の公証人に作成してもらう「公正証書遺言」だけです。
遺言者が自分で作成する自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、遺言信託の利用を断られるでしょう。
遺言信託サービスを利用する流れ
信託銀行などの遺言信託サービスは、金融機関への相談から始まり、金融機関による遺言執行が完了した時点で手続き終了となります。
ここでは、遺言信託サービスを利用する際の流れについて確認しましょう。
①遺言信託を取り扱っている金融機関へ相談する
まずは遺言信託サービスを取り扱っている金融機関で、遺言信託や遺言書などに関する相談をします。
多くの金融機関では事前予約を受け付けており、担当スタッフと時間をかけて相談できます。
金融機関によっては、弁護士や税理士などの専門家と提携しており、依頼者にとって最適なアドバイスができる環境を整えているところもあります。
②遺言の内容を決める
担当スタッフと相談して相続の方針などが決まったら、遺言書の具体的な内容を決めていきます。
遺言書の内容は、相続に関すること・財産処分に関すること・相続人の身分に関すること・遺言執行者に関することなどがあります。
遺言者によって相続人や財産の状況などは大きく異なりますが、希望どおりの遺言書を作成できるようサポートしてくれます。
③公正証書遺言を作成する
遺言信託サービスを利用する場合、公正証書遺言を作成するのが一般的です。
金融機関のスタッフなどの証人2名と一緒に公証役場に行き、公証人に口頭で遺言内容を伝えて遺言書を作成してもらいます。
また、公証役場で作成した公正証書遺言の正本は、遺言者が亡くなり相続が開始するまで依頼先の金融機関が保管してくれます。
④遺言信託契約を締結する
遺言執行まで依頼する場合は、遺言書を作成したあとに金融機関と遺言信託契約を締結します。
契約時に必要なものは、遺言書の正本・戸籍謄本・不動産登記事項証明書・相続財産明細書・印鑑証明書などです。
また、契約をする際は、遺言者が亡くなったことを金融機関に連絡する「死亡通知人」を指定することもできます。
⑤被相続人の死亡後、相続開始を通知する
被相続人が亡くなり相続が開始すると、死亡通知人が金融機関に被相続人が亡くなったことを連絡します。
これにより、遺言執行を引き受けていた金融機関が、遺言内容を実現するために業務を開始します。
なお、遺言書の保管のみを金融機関に依頼している場合は、相続人に遺言書の正本を渡して終了となります。
⑥財産調査をおこない、財産目録を作成する
被相続人の死亡連絡を受けた金融機関は、まず相続人や受遺者に対して遺言内容を開示します。
さらに、遺言執行者として被相続人の財産や債務を調査し、これらを一覧にまとめた財産目録を作成します。
このとき、相続人が管理している登記済証・通帳・株券などは、金融機関が一度回収して適切に保管されます。
⑦金融機関による遺言の執行がおこなわれる
財産目録を作成した金融機関は、遺言書のとおりに預貯金・有価証券の換金や、不動産の名義変更手続きなどをおこないます。
また、相続人が相続税や所得税などの手続きをする際のサポートもしてくれます。
全ての手続きが完了したら、遺言執行顛末報告書を作成し、相続人に報告して手続き完了となります。
遺言信託サービスよりも弁護士のほうがおすすめの理由
金融機関の遺言信託サービスの場合、依頼できる内容に制約があるのが大きなデメリットです。
その点、弁護士であれば、相続トラブルを防止するためのアドバイスがもらえたり、仮に相続トラブルに発展しても対応してくれたりします。
ここでは、遺言信託サービスよりも弁護士に依頼するほうがよい理由について紹介します。
遺言に関する幅広いアドバイスがもらえる
遺言書で、子どもの認知や相続人の廃除などをしたいと考えている方もいるでしょう。
弁護士に遺言書や遺言執行に関する相談・依頼をした場合、このような相続人の身分についてのアドバイスももらえます。
また、相続人同士が不仲・疎遠な場合や、「特定の相続人に介護の負担が偏っている」などの事情がある場合でも相談できます。
相続トラブルの際にサポートしてくれる
相続開始後に相続トラブルへ発展した場合でも、弁護士が遺言執行者であればトラブルを解決するために対応してくれます。
問題が小さければそれぞれの不満を聞いて説明してくれますし、「特定の相続人に不動産の名義変更をされた」などの遺言執行を妨害されている場合は、法的手続きを用いて解決するよう努めてくれます。
依頼内容を選択できる
弁護士に依頼する場合は、遺言書の種類や執行する内容なども選択できます。
そのため、自筆証書遺言や秘密証書遺言を作りたい方や、特定の遺言の執行だけを依頼したい方にもおすすめです。
自分の相続にとって必要なものだけを依頼すればよいため、遺言書作成や遺言執行などにかかる費用を抑えることもできます。
コーディネート費用がかからない
コーディネート費用とは、金融機関を通じて司法書士や税理士などの専門家に相談・依頼する際に支払う紹介手数料のことです。
コーディネート費用は100万円以上かかることもあり、遺言信託サービスを利用する場合は大きな負担となります。
その点、弁護士に直接相談・依頼すれば、コーディネート費用を負担せずに済みます。
最後に|遺言書作成や遺言執行の相談は弁護士に!
金融機関が提供している遺言信託サービスを利用すれば、遺言書作成から遺言執行までを安心して任せることができます。
しかし、料金・手数料が高額で依頼できない内容も多くあるなど、負担や制約が大きいというデメリットもあります。
その点、弁護士であれば依頼内容を選択できたり、相続トラブルにも対処してくれたりするのがメリットといえるでしょう。
遺言について弁護士に相談したいなら、「ベンナビ相続」で弁護士を探すことをおすすめします。
相続トラブルを解決し遺産を多く受け取る方法とは?
相続トラブルで一番多い金額は5,500万円以下です。
これは相続トラブル全体の約75%にあたり、さらに1,000万円以下だけに絞って見ても、全体の32%を占めています。
相続トラブルはお金持ちや、ましてテレビの出来事では決してないのです。
<参考資料:平成25年度司法統計>
さらに、下の表を見ると遺産分割調停、すなわち遺産分割トラブルが右肩上がりで増えてきていることがわかります。
<参考資料:平成25年度司法統計>
相続における自己解決と弁護士介入の違いとは?
相続するのはあなただけではありません。相続人の平均人数は3名程度です。
<参考資料:国税庁 統計年報>
相続人が多いほど、相続トラブルが発生しやすく複雑になるのは避けようのない事実です。
トラブル回避のために重要なのは、早めに専門知識のある第三者を介入させることです。一般的に専門知識を持つ代表格といえば相続問題を得意とする弁護士です。
弁護士を介入させると費用が高くつくイメージがありますが、結果的にはトラブルを解消できるだけではなく、相続面でも優位に働き、金銭的にもメリットを得られることが多くなります。
相続に強い弁護士の選び方と相続相談の具体例
相続に際し、雇うのは弁護士なら誰でもいいというわけではありません。
最大のメリットが得られる弁護士の選び方は、以下を参考にしてください。
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1、相続が得意な弁護士を選ぶ
相続トラブルの解決実績が豊富だったり、相続問題に注力していたりする弁護士を選びましょう。
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例えば、医者に「内科」「外科」「皮膚科」「耳鼻科」…と専門分野があるように、弁護士にも「相続」「離婚」「借金」「企業法務」…といった得意分野があります。
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相続があまり得意でない弁護士に依頼しても十分なメリットを受けられない可能性があるため、相続を得意とする弁護士に依頼することが大切です。
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2、初回相談料の安い弁護士を選ぶ
初回相談は自分と相性の良い弁護士を選ぶチャンスですので、1件だけではなく複数と話をしてみましょう。
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件数を重ねるために初回の相談料を必ず確認しましょう。(相談無料〜3000円程度をオススメします)
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3、近隣の弁護士を選ぶ
相続の弁護士は全国対応していることも多いのですが、やはり対面での関係性構築や急な事態に対応できる近隣の弁護士事務所が最善策といえるでしょう。
相続で弁護士が介入するデメリットは、あまりありません。
あえて挙げるなら、依頼に費用がかかる点でしょうか。
しかし、以下の費用対効果の例をご覧いただけば、実際には費用がデメリットとはならないことが、おわかりいただけると思います。
不公平な遺言書に対し弁護士を通じて遺留分を主張した例
3,000万円の遺産を遺して親が世を去った。全財産をほかの相続人に相続させる旨の遺言書があり、このままでは自分は一切遺産を受け取ることができない。
弁護士に依頼した結果
遺留分侵害額請求により、自分の遺留分割合である8分の1の遺産を受け取ることができた。
費用対効果
自分が受け取ることができた遺産は375万円。弁護士費用は84万円。そのまま泣き寝入りしていれば1円も受け取ることができなかったが、結果的に弁護士費用を差し引いても291万円を手にすることができた。
また、相続トラブルに関しては、初期費用(着手金)はかかるものの、費用の大部分は成果報酬方式です。
つまり依頼料はデメリットにならないのです。
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使い方も簡単なので、近隣の事務所を確認だけでもしてみることをおすすめします。
相続内容から弁護士を探す
どれを選んでいいかわからない場合は、相続トラブルを選んでくされば対応できます。