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遺言信託のメリット・デメリットとは?弁護士への依頼がおすすめな理由も解説

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遺言内容を実現させるために、あらかじめ遺言書で遺言執行者を指定しておくことができます。

遺言執行者には、主に家族・弁護士や司法書士などの専門家・信託銀行などの金融機関が選ばれます。

それぞれにメリット・デメリットがありますが、一般的に以下のような方は金融機関の「遺言信託」を利用するのがおすすめとされています。

  • 金融機関の遺言信託サービスが向いている方
  • まとまった資産を持っている方
  • 相続人同士で争いになる可能性が低い方
  • 普段から信託銀行との付き合いがある方
  • 資産運用や資産活用について相談したい方 など

本記事では、金融機関の遺言信託サービスを検討している方に向けて、遺言信託の基礎知識やメリット・デメリット、サービスを利用する際の流れなどを解説します。

また、遺言信託サービスの利用が難しい方に向けて、弁護士に遺言書作成や遺言執行などを依頼するメリットも紹介します。

遺言信託をお考えなら弁護士に依頼することをオススメします
  • 信託銀行よりも費用が安い
  • 法的トラブルに対応してもらえる

信託銀行の場合

弁護士の場合

  • 遺言保管:年間5,400円〜6,500円
  • 遺言作成:32万円前後
  • 遺言手数料:108万円〜160万円前後
  • 合計:140万円〜200万円前後
  • 着手金:20万円~30万円前後
  • 遺言書作成:10~20万円前後
  • 遺言執行:手数料30万円以上前後
  • 合計:60万円〜80万円前後

信託銀行は、財産相続のみの関与しかしません。

しかし、弁護士なら遺産相続でトラブルが起きた際にも解決してもらうことが可能です。

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この記事に記載の情報は2024年11月05日時点のものです

遺言信託とは「遺言作成から遺言執行までをサポートするサービス」

遺言信託とは、主に信託銀行が提供しているサービスです。

遺言書の作成・遺言書の保管・相続財産の調査・遺言の執行までを一括でサポートしてもらうことができます。

一般社団法人信託協会が公表している「信託統計便覧」によると、2023年末時点の金融機関における執行付き遺言信託の保管件数は18万7,805件です。

金融機関が提供していて安心感もあることから、遺言信託サービスを利用する人は増加傾向にあります。

法律上の「遺言信託」との違い

一般的に遺言信託というと、金融機関の遺言信託サービスを指しますが、「信託法上の遺言による信託」を指すこともあります。

遺言による信託とは、委託者が受託者に対して「受益者に一定の行為をするように」と遺言書で依頼することを意味します。

文字だけではわかりづらいため、以下の図でイメージを確認しましょう。

たとえば、Aが息子のBに不動産の管理を信託した場合、Aが「委託者」、Bが「受託者」となります。

そして、不動産の利益を配偶者のCにわたるようにした場合に、Cが「受益者」となるわけです。

なお、委託者自身や受託者が受益者となることもできます。

家族信託と遺言による信託の違い

まず、信託は「家族信託」と「商事信託」に大きく分けられます。

家族信託は信頼できる自分の家族間でおこなわれる信託のことです。

遺言による信託も家族信託のひとつで、そのほかの家族信託には契約信託や自己信託などがあります。

そのため、家族信託の一種として、遺言による信託があるという関係になっています。

一方、商事信託は、財産の管理・運用のために信託銀行や信託会社が営利目的でおこなう信託のことを指します。

遺言信託サービスのメリット

信託銀行などが提供している遺言信託サービスのメリットには、遺言書作成に関するアドバイスがもらえることや遺言執行まで任せられることなどがあります。

また、知識・経験が豊富なスタッフに相談できるため、資産運用や資産活用に関するアドバイスももらえます。

ここでは、遺言信託サービスのメリットを3つ紹介します。

1.遺言書作成のアドバイスをもらえる

信託銀行の遺言信託サービスを利用すると、遺言書作成に関するアドバイスがもらえます。

金融機関の担当スタッフは、遺言に関する相談を数多く受けているプロです。

豊富な知識と経験を活かして、相談者にとって最適な遺言書を作れるようサポートしてくれます。

これにより、法的に有効で納得のいく遺言書を作成できるようになります。

2.信託銀行を遺言執行者に指定できる

遺言執行者とは、遺言者が亡くなったあとに遺言内容を実現する人のことです。

遺言執行者には法人もなれるため、遺言信託サービスを提供している信託銀行を指定することもできます。

信託銀行を遺言執行者にすれば、相続人の負担を減らしたり、相続人同士の利害関係などを気にせず円滑に手続きを進められたりします。

3.資産運用のアドバイスも受けられる

信託銀行の遺言信託サービスを利用した場合、一般的な資産運用・資産活用に関するアドバイスも受けられます

遺言者の資産や希望などを十分確認してからアドバイスをしてくれるため、よりよい資産継承を実現できる可能性が高まります。

資産運用・資産活用のアドバイスが受けられることは、金融機関ならではのメリットといえるでしょう。

遺言信託サービスのデメリット

信託銀行などが提供している遺言信託サービスのデメリットには、費用・手数料が高額であることや、財産以外の相続は依頼できないことなどがあります。

ここでは、遺言信託サービスの3つのデメリットを確認しましょう。

1.費用が高額になることが多い

信託銀行の遺言信託サービスは、利用料や手数料が高額になる傾向があります。

遺言信託サービスを利用する場合、通常は遺言書の作成手数料・保管手数料・遺言執行報酬などが必要になります。

詳しい費用は金融機関やプランなどによって異なりますが、おおよその目安は以下のとおりです。

費用の項目

費用の目安

遺言書の作成手数料

22万円~55万円程度

遺言書の保管手数料

毎年6,600円程度

遺言書の変更手数料

5万5,000円程度

遺言執行報酬

相続財産評価額×利用料率(0.33%~2.20%程度)

財産の相続以外については任せられない

遺言信託サービスでは、財産以外の相続は依頼できません。

これは、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」により、取り扱いできる信託が決まっているからです。

子どもの認知や相続人の廃除などに関する身分についての遺言を希望する場合や、相続税に関する内容を盛り込みたい場合には、遺言信託の利用を断られるでしょう。

(兼営の認可) 第一条 

銀行その他の金融機関(政令で定めるものに限る。以下「金融機関」という。)は、他の法律の規定にかかわらず、内閣総理大臣の認可を受けて、信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第一項に規定する信託業及び次に掲げる業務(政令で定めるものを除く。以下「信託業務」という。)を営むことができる。

一 信託業法第二条第八項に規定する信託契約代理業

二 信託受益権売買等業務(信託受益権の売買等(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第六十五条の五第一項に規定する信託受益権の売買等をいう。)を行う業務をいう。次条第三項及び第四項において同じ。)

三 財産の管理(受託する信託財産と同じ種類の財産について、次項の信託業務の種類及び方法に規定する信託財産の管理の方法と同じ方法により管理を行うものに限る。)

四 財産に関する遺言の執行

五 会計の検査

六 財産の取得、処分又は貸借に関する代理又は媒介

七 次に掲げる事項に関する代理事務 イ 第三号に掲げる財産の管理 ロ 財産の整理又は清算 ハ 債権の取立て ニ 債務の履行

 

引用元:金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第1条

2.相続人同士で揉めている場合は引き受けてもらえない

すでに相続人同士で揉めている場合や紛争に発展する可能性が高い場合などは、遺言信託の利用を断られてしまいます。

信託銀行などの金融機関でも、相続トラブルには対応できないためです。

たとえば、ほかの相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言を作成する場合などは、相続トラブルに発展するリスクが高いため、遺言信託の利用を断られる可能性が高いでしょう。

3.遺言の種類によっては断られるケースがある

一般的な遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。

  • 自筆証書遺言:遺言者本人が自筆で全文を書いて作成する遺言方式
  • 公正証書遺言:公証役場の公証人に遺言書を作成してもらう遺言方式
  • 秘密証書遺言:遺言の内容は秘密にしたまま、存在だけを公証役場に証明してもらう遺言方式

上記のうち遺言信託サービスに対応している遺言は、公証役場の公証人に作成してもらう「公正証書遺言」だけです。

遺言者が自分で作成する自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、基本的に遺言信託の利用を断られてしまいます。

自筆証書遺言の作成を検討している場合には、法務局の保管制度を活用しましょう。

保管申請時に3,900円を支払えば、遺言書を法務局で預かってもらうことができます。

遺言の執行まで依頼することはできませんが、紛失や偽造のリスクを防げるのは大きなメリットになるはずです。

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遺言信託サービスを利用する流れ

信託銀行などの遺言信託サービスは、金融機関への相談から始まり、金融機関による遺言執行が完了した時点で手続き終了となります。

ここでは、遺言信託サービスを利用する際の流れについて確認しましょう。

  1. 遺言信託を取り扱っている金融機関へ相談する
  2. 遺言の内容を決める
  3. 公正証書遺言を作成する
  4. 遺言信託契約を締結する
  5. 被相続人の死亡後、相続開始を通知する
  6. 財産調査をおこない、財産目録を作成する
  7. 金融機関による遺言の執行がおこなわれる

1.遺言信託を取り扱っている金融機関へ相談する

まずは遺言信託サービスを取り扱っている金融機関で、遺言信託や遺言書などに関する相談をします。

多くの金融機関では事前予約を受け付けており、担当スタッフと時間をかけて相談できます。

金融機関によっては、弁護士や税理士などの専門家と提携しており、依頼者にとって最適なアドバイスができる環境を整えているところもあります。

2.遺言の内容を決める

担当スタッフと相談して相続の方針などが決まったら、遺言書の具体的な内容を決めていきます。

遺言書の内容は、相続に関すること・財産処分に関すること・相続人の身分に関すること・遺言執行者に関することなどがあります。

相続人や財産の状況などを踏まえつつ、希望どおりの遺言書を作成できるようサポートしてくれます。

3.公正証書遺言を作成する

遺言信託サービスを利用する場合、公正証書遺言を作成するのが一般的です。

金融機関のスタッフなどの証人2名と一緒に公証役場に行き、公証人に口頭で遺言内容を伝えて遺言書を作成してもらいます。

また、公証役場で作成した公正証書遺言の正本は、遺言者が亡くなり相続が開始するまで、依頼先の金融機関が保管してくれます。

4.遺言信託契約を締結する

遺言執行まで依頼する場合は、遺言書を作成したあとに金融機関と遺言信託契約を締結します。

契約時に必要なものは、遺言書の正本・戸籍謄本・不動産登記事項証明書・相続財産明細書・印鑑証明書などです。

また、契約をする際は、遺言者が亡くなったことを金融機関に連絡する「死亡通知人」を指定することもできます。

5.被相続人の死亡後、相続開始を通知する

被相続人が亡くなり相続が開始すると、死亡通知人が金融機関に対し、被相続人が亡くなったことを連絡します。

これにより、遺言執行を引き受けていた金融機関が、遺言内容を実現するために業務を開始します。

なお、遺言書の保管のみを金融機関に依頼している場合は、相続人に遺言書の正本を渡して終了となります。

6.財産調査をおこない、財産目録を作成する

被相続人の死亡連絡を受けた金融機関は、まず相続人や受遺者に対して遺言内容を開示します。

さらに、遺言執行者として被相続人の財産や債務を調査し、これらを一覧にまとめた財産目録を作成します。

このとき、相続人が管理している登記済証・通帳・株券などは、金融機関が一度回収して適切に保管します。

7.金融機関による遺言の執行がおこなわれる

財産目録を作成した金融機関は、遺言書の記載にしたがって預貯金・有価証券の換金や、不動産の名義変更手続きなどをおこないます。

また、相続人が相続税や所得税などの手続きをする際のサポートもしてくれます。

全ての手続きが完了したら、遺言執行顛末報告書を作成し、相続人に報告して手続き完了となります。

遺言信託サービスよりも弁護士のほうがおすすめの理由

金融機関の遺言信託サービスの場合、依頼できる内容に制約があるのが大きなデメリットです。

その点、弁護士であれば、相続トラブルを防止するためのアドバイスがもらえたり、仮に相続トラブルに発展しても対応してくれたりします。

ここでは、遺言信託サービスよりも弁護士に依頼するほうがよい理由を4つ紹介します。

1.遺言に関する幅広いアドバイスがもらえる

遺言書で、子どもの認知や相続人の廃除などをしたいと考えている方もいるでしょう。

しかし、相続人の身分に関することは遺言信託サービスの対象外です。

一方で、弁護士に遺言書や遺言執行に関する相談・依頼をした場合、相続人の身分についてのアドバイスももらえます

また、相続人同士が不仲・疎遠な場合や、「特定の相続人に介護の負担が偏っている」などの事情がある場合でも、柔軟に今後の対応方針を提案してくれるはずです。

2.相続トラブルの際にサポートしてくれる

相続開始後に相続トラブルへ発展した場合でも、弁護士が遺言執行者であればトラブルを解決するために対応してくれます。

被相続人の死後に相続トラブルが生じても、遺言信託サービスの契約内では対処してもらうことができません。

しかし、弁護士であれば各相続人の不満を聞いて説明してくれます

また、「特定の相続人に不動産の名義変更をされた」などの遺言執行を妨害されている場合は、法的手続を用いて解決するよう努めてくれます。

3.依頼内容を選択できる

弁護士に依頼する場合は、遺言書の種類や執行する内容なども選択できます。

そのため、自筆証書遺言や秘密証書遺言を作りたい方や、特定の遺言の執行だけを依頼したい方にもおすすめです。

自分の相続にとって必要なものだけを依頼すればよいため、遺言書作成や遺言執行などにかかる費用を抑えることもできます。

4.コーディネート費用がかからない

コーディネート費用とは、金融機関を通じて司法書士や税理士などの専門家に相談・依頼する際に支払う紹介手数料のことです。

コーディネート費用は100万円以上かかることもあり、遺言信託サービスを利用する場合は大きな負担となります。

その点、弁護士に直接相談・依頼すれば、コーディネート費用を負担せずに済みます。

最後に|遺言書作成や遺言執行の相談は弁護士に!

金融機関が提供している遺言信託サービスを利用すれば、遺言書作成から遺言執行までを安心して任せることができます。

しかし、料金・手数料が高額で依頼できない内容も多くあるなど、負担や制約が大きい点はデメリットといえるでしょう。

その点、弁護士であれば依頼内容を選択できたり、相続トラブルにも対処してくれたりするので、自身の希望を実現しやすくなるはずです。

遺言について弁護士に相談したいなら、「ベンナビ相続」で弁護士を探すことをおすすめします。

ベンナビ相続には、相続問題が得意な弁護士が多数登録されています。

地域や相談内容を細かく絞って検索できるので、自身にあった弁護士を効率よく探し出すことができるでしょう。

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この記事の監修者
インテンス法律事務所
原内 直哉 (第二東京弁護士会)
相続に関する問題は、人生で経験することが少ない問題であるからこそ、納得のいく選択を重ねていただくことによって、ご相談者様の将来にとってよりよい結果となるようサポートしたいと考えております。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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