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家族信託は危険な制度?後悔する5つのケース|トラブルを回避する方法を紹介

井澤・黒井・阿部法律事務所 東京オフィス
黒井 新
監修記事
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家族の高齢化にともない、認知症などの対策として家族信託の利用を検討している方も多いでしょう。

家族信託は成年後見制度よりも自由度が高く、使い勝手のよい制度ではあるものの、比較的新しい制度だからこそ以下のような不安もあるでしょう。

  • 家族信託って危険なの?
  • 「家族信託で後悔した人もいる」って聞いたけど大丈夫?
  • 家族信託でトラブルになることはある?

この記事では、家族信託は本当に危険なのかを解説するとともに、家族信託を利用して後悔してしまうケースや、トラブルの回避方法なども紹介します。

家族信託で発生しやすいトラブルの原因を知り、失敗を避けて上手に活用しましょう。

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家族信託は危険?後悔する5つのケース

家族信託は比較的新しい制度であり、危険ではないかと不安になる方もいるでしょう。

しかし、家族信託の制度自体に危険性はなく、「危険だ」「後悔した」などと言われるのは、受託者とのトラブルや親族間でのトラブルなどが原因といえます。

ここでは、家族信託がきっかけでトラブルになってしまうケースや、家族信託の利用を後悔してしまうケースについて紹介します。

家族で意見がまとまらないまま進め親族争いに発展した

「財産の管理や処分を任せる受託者を誰にするのか」を親族間で相談せずに決めると、受託者以外の親族が不満をもつことがあります。

その理由として、家族信託には将来の遺産相続を見据えた手続きという面もあり、ほかの親族からすれば相続できるはずの財産が減ってしまうように思えるからです。

特定の一人を受託者にした場合にも、同様の問題が生じることがあります。

このように、親族間で不公平感や不満が生じると、将来の相続などについて争いになる恐れがあります。

選ばれた受託者は親族争いに巻き込まれ、受益者のための円滑な財産管理・処分が難しくなるでしょう。

家族信託を利用する際は、親族間で十分話し合って受託者を決めることが大切です。

信託監督人や受益者代理人を設定せず受益者が損をした

受託者次第で家族信託がうまくいくかどうかが決まるため、もし不安な場合は「信託監督人」や「受益者代理人」を付けることも検討しましょう。

信託監督人や受益者代理人を設定しないと、適正な財産管理・処分がされない恐れがあります。

「信託監督人」とは、受益者に代わり、受託者が信託目的に従って適正に業務を遂行しているかを監視・監督する人です。

「受益者代理人」とは、受益者に代わり、権利を行使する立場の人です。

委託者が高齢であれば、やがて判断能力の低下・喪失が予想されます。

その場合、財産の管理処分が適正におこなわれているかを委託者自身が定期的に確認するのが難しくなるでしょう。

また、必ずしも受託者が適正な財産管理・処分ができるとはかぎりません。

契約内容の変更に関する取り決めがなく無駄が発生した

家族信託は、委託者が元気なうちに契約するため、財産の管理・処分が長期にわたることが予想されます。

そのため、信託契約の内容が時間を経過するにつれて状況に合わなくなることもあれば、資産の内容によっては管理や処分が困難になることもあります。

たとえば、新たな不動産を購入した場合などが該当します。

長期の契約になることを見越して、契約内容を変更する際の方法を定めておきましょう。

専門家選びに失敗して手間と費用がかかった

家族信託は長期にわたり継続する制度です。

契約内容は変更できますが、慎重に取り決めたうえで実行しましょう。

家族信託を検討しているなら、その分野が得意な専門家に相談することをおすすめします。

行政書士でも家族信託契約書の作成代理はできますが、契約内容の相談はできません。

また、司法書士や弁護士でも家族信託を取り扱った経験がない事務所が多く、十分に対応できる専門家はまだ少ないのが現状です。

専門家選びを誤った場合、自分に合った相談先にたどりつくまでに契約内容の大きな変更を余儀なくされるなど、無駄に費用と時間を費やすリスクがあります。

30年ルールのせいで希望する相続が完了できなかった

家族信託では、受益者を子どもや孫に順番に承継させることもできます。

そのような信託契約を「受益者連続型信託」といいます。

受益者連続型信託は、信託法第91条によって以下のように定められています。

第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

引用元:信託法第91条

受益者連続型信託では「最初の信託から30年を経過すると、新たな受益権の承継は1度しか認められない」というルールがあり、これを30年ルールといいます。

したがって、二次や三次の受益者を設定しても、必ずしも最後まで連続するわけではないということに注意が必要です。

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自分で家族信託契約の内容を作成するリスク

家族信託契約は、自分で考えて作成することもできます。

しかし、複雑な内容の契約なので、専門家に相談せずに作成すると次のようなリスクがあります。

遺留分への配慮がなく侵害してしまう

遺留分とは、一定の相続人に認められている「遺言でも奪えない遺産の取り分」のことをいいます。

基本的には、遺産の半分が遺留分となり、民法で定められた法定相続分の割合に基づいて留保分を考えます。

たとえば、被相続人に配偶者がおらず、相続人が子ども2人だけの場合は、それぞれ4分の1ずつ遺留分があります。

信託財産は、形式的には委託者の財産ですが、実体上は受益者の財産とみなされます。

そのため、受益者が死亡すると、信託財産はほかの相続財産と同様に扱われ、遺留分の対象になるとされています(平成30年9月12日東京地裁判決 Westlaw Japan 文献番号 2018WLJPCA09128002)。

信託契約を作成する場合には、遺留分にも配慮するなど、将来起こりうる紛争を防ぐための工夫が必要です。

それらの配慮を怠ると、遺留分侵害額請求の火種を作ってしまいます。

記載すべき項目に漏れがあり受託者の財産管理に支障が出る

家族信託契約では、記載すべき項目が多数あります。

知識がないまま自分で作成すると、抜け漏れが生じて受託者の財産管理・処分に支障をきたす可能性があります。

インターネット上や書籍では家族信託契約のひな型が掲載されており、「ひな形どおりに作成すれば、自分で簡単に契約書作成できる」と思うかもしれません。

しかし、実際の家族信託では家族ごとに財産や受託者の状況などが異なるため、一般的なひな型をそのまま利用するだけでは足らない恐れがあります。

信託不動産の管理・運用・処分方法や、費用の支出の取り決めなど、ひな型に載っていなくても記載すべき項目は多数あります。

記載内容の漏れや誤りで受託者の財産管理・処分に支障をきたさないよう、契約書作成の際は専門家に相談することをおすすめします。

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受託者の利益相反行為により契約が無効になる

家族信託では、本来信託財産を管理すべき受託者が自己の利益を図るために契約すると、「利益相反行為」として無効になる可能性があります。

たとえば、受託者が信託財産を不当に安い金額で購入して受託者名義にすることや、受託者個人の債務を担保するため信託財産に抵当権を設定することなどは、利益相反行為です。

利益相反行為とみなされると、その行為が無効となったり、取り消されたりする可能性があります。

信託財産に抵当権のある不動産を含めた場合はローンの一括請求をされる

金銭的価値のある財産であれば、基本的には信託財産の対象となります。

しかし、農地・預金債権・年金受給権など、原則として勝手に譲渡できない財産権は信託財産の対象外です。

また、債務も信託財産にはできません。

抵当権がついている不動産については、金融機関との協議によって信託財産とすることは可能です。

ただし、ローンの支払いが滞ってしまった場合などには、抵当権が実行されて信託財産が失われるというリスクがあります。

家族信託の危険やトラブルを回避する方法

家族信託では、契約によってさまざまな内容の取り決めができる一方で配慮すべき事柄も多く、親族間のトラブルを生んだり、契約そのものが無効になってしまったりするリスクもあります。

ここでは、家族信託のトラブルを回避する方法を紹介します。

家族信託に経験のある弁護士・司法書士に依頼する

家族関係が複雑な場合や資産が多い場合などは、専門家の助言が必要不可欠です。

家族信託は、自力でも手続きはできます。

しかし、できるだけトラブルを防ぐためにも、法的視点から判断できる専門家に相談することをおすすめします。

特に、家族信託が得意な弁護士や司法書士に依頼すれば、リスクを最小限に抑えることができます。

弁護士や司法書士に依頼した際の費用

実際に家族信託を弁護士や司法書士に依頼した場合、費用はいくらかかるでしょうか。

下記は一般的な費用の目安です。

  • コンサルティング、信託契約書作成費用:30万円~50万円程度
  • 公正証書作成費用:10万円~15万円程度

費用は信託財産の内容によっても異なります。

具体的な金額については、依頼を検討している弁護士や司法書士に直接確認しましょう。

家族信託について家族でしっかり話し合う

家族信託を検討している方にとって、家族は最も身近で頼りになる存在でしょう。

「自分の財産は大事な家族に一任したい」と思うのは自然なことです。

しかし、長期にわたって財産を管理し、場合によっては処分することは、思っている以上に大変です。

また、家族関係や資産内容が複雑なほど、利害関係が対立しやすくなります。

委託者や受託者それぞれの状況だけでなく、資産の価値も時間の経過とともに変化します。

家族信託のデメリットやリスクを含めて、家族間でしっかりと話し合うことが大切です。

必要に応じて信託監督人や受益者代理人を設定する

家族信託契約の資産内容によっては、管理・処分が複雑で受託者の負担が重すぎる場合もあります。

また、利害関係者としては「信託財産が受託者によって適切に管理されているか」を定期的に確認しておきたいところです。

たとえば、賃貸不動産の管理などのように、資産価値が大きく管理が複雑な場合などは、信託監督人や受益者代理人を設定するのがよいでしょう。

身上監護権のある成年後見制度の利用もあわせて検討する

家族信託とあわせて検討される制度として、「成年後見制度」があります。

成年後見制度も、本人の財産を管理する制度です。

家族信託と大きく異なる点は、「成年後見人以外は、たとえ家族でも財産の管理処分ができなくなる」ということです。

また、成年後見人は、本人に代わって法律行為をおこないます。

受託者には身上監護権がなく、受託者という立場で入院や施設入所の契約は結べません。

受益者が高齢の場合や障がいがある場合には、身上監護権のある成年後見制度の利用を検討しましょう。

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家族信託はメリットが多い!利用でできる主な4つのこと

家族信託では、委託者と受託者の間で契約によって財産の管理・処分に関する取り決めができるため、成年後見制度とは異なり、委託者の意思を反映させた財産管理ができます。

1.家族やペットの将来を金銭的に保障できる

「自分が亡くなったあとに残された、障がいのある子どもの生活が心配」という場合もあるでしょう。

そのような場合、遺言によって自分の財産を信頼できる親族などに信託し、受益者を子どもに設定することで、将来の生活を守ることができます。

また、「残されたペットが心配」という方は、信託財産にペットを加えて、信頼できる親族などに飼育費用に相当する財産を信託することもできます。

2.子どものいない夫婦が老後に自分の生活を保障できる

子どもがいない場合、自分達の老後の生活を誰に支えてもらうのかは悩ましい問題です。

その場合、親しい甥や姪を受託者として家族信託契約をし、老後の生活を支えてもらうことが考えられます。

自分達が亡くなったあとの受益者を甥や姪にしておけば、気持ちよく引き受けてくれるかもしれません。

3.孫や相続権のない相手に財産を遺贈することができる

相続人ではない孫や親族などに財産を渡したい場合、遺言によって財産を渡す「遺贈」という方法があります。

しかし、遺贈の場合、二次相続の相手を指定することができません。

たとえば、「一度妻に相続させて、妻が死亡した場合には長男に財産を承継させる」というような、いわゆる後継ぎ遺贈の遺言は民法上無効です。

このような場合、家族信託の受益者連続信託で受益者を承継させることができます

4.認知症になったあとでも不動産を希望どおりに処分できる

自分が認知症になると自由に自己の財産処分ができなくなり、成年後見人が選任されて、後見人の判断によって財産が管理されます。

自分が元気なうちに信託契約を締結して受託者を指定しておけば、自らの希望どおりの財産管理・処分が可能になります。

最後に

家族信託では、委託者と受託者の間で財産に関する取り決めができ、成年後見制度などと比べても自由度の高い制度といえます。

一方、家族信託では長期の財産管理が想定され、その間に受託者や管理財産の状況が変化する恐れがあることも留意しておくべきでしょう。

家族信託の公平性や透明性を保ち、委託者の希望に沿った財産管理を実現するためにも、まずは家族信託が得意な弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者
井澤・黒井・阿部法律事務所 東京オフィス
黒井 新 (第二東京弁護士会)
2002年弁護士登録。15年以上の実績のなかで多くの相続問題に取り組み、その実績を活かし、相続分野における著書執筆や不動産の講演・セミナーへ登壇するなど、活動の幅は多岐に渡る。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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