ベンナビ相続 > 相続コラム > 生前贈与 > 生前贈与の非課税枠は2,500万円になる?相続時精算課税制度のポイントと他の制度
更新日:

生前贈与の非課税枠は2,500万円になる?相続時精算課税制度のポイントと他の制度

山本 一貴・山越 勇輝
監修記事
生前贈与の非課税枠は2,500万円になる?相続時精算課税制度のポイントと他の制度
注目 相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
電話・メールOK
夜間・休日も対応
累計相談数
21万件超
相続が得意な
弁護士から探せる
相続問題が得意な
弁護士を探す

「生前贈与をする際に2,500万円まで非課税になる」ということを耳にした経験がある人もいるでしょう。

この生前贈与が2,500万円まで非課税になる制度というのは「相続時精算課税制度」と呼ばれる制度です。

しかし、贈与税の課税対象から外れるだけで、相続税の課税対象にはなるため、税金の計算が複雑になります。

本記事では、生前贈与の非課税制度を探している方に向けて、以下の内容について説明します。

  • 生前贈与の非課税枠が2,500万円になる相続時精算課税制度の概要
  • 相続時精算課税制度で2,500万円分控除したときの税金のポイント
  • 相続時精算課税制度で2,500万円分控除するときの相続税の具体例
  • 相続時精算課税制度以外に生前贈与で活用できる非課税制度4選 など

本記事を参考に、生前贈与を受けたときにどのような非課税制度を利用できるのかしっかりと理解しましょう。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
遺産相続が得意な弁護士を探す

生前贈与の非課税枠が2,500万円になる相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度とは、贈与税の課税価格を累計2,500万円まで非課税にできる制度のことです。

また、2024年1月から110万円の基礎控除額も利用できるようになったため、最大2,610万円を控除できます。

相続時精算課税制度を選択した場合の贈与税額の計算式
  • 贈与税の額={(1年間の贈与の合計額-基礎控除額110万円)-特別控除累計2,500万円}×20%

なお、2,500万円の部分については贈与税の対象外になるだけで、相続税を計算する際は持ち戻しをおこないます。

つまり、相続時精算課税制度を選択する際は、贈与税と相続税それぞれの計算ポイントを理解することが重要です。

相続時精算課税制度の仕組み・メリット・デメリットなどについては、以下のページでも詳しく解説をしています。

相続時精算課税制度で2,500万円分控除したときの贈与税・相続税のポイント

相続時精算課税制度を選択したときの贈与税の計算ポイントは、以下のとおりです。

  • 非課税枠2,500万円を超えた部分に一律20%の贈与税が課される
  • 非課税になった部分については相続時に相続税の課税対象になる
  • 贈与税が発生していた場合は相続税から税額控除がおこなわれる

ここでは、相続時精算課税制度で2,500万円控除したときの贈与税・相続税の計算ポイントを説明します。

一般的な贈与税の課税方式である「暦年課税」との違いを確認しながら理解を深めるようにしましょう。

1.非課税枠2,500万円を超えた部分に一律20%の贈与税が課される

相続時精算課税では、非課税枠と基礎控除額を超えた部分に対して一律20%の贈与税が課されます。

一方、暦年課税では、贈与税の課税価格に応じて税率が高くなる超過累進課税が採用されています。

このように相続時精算課税制度と暦年課税では、計算式や税率などがそれぞれ異なっています。

【相続時精算課税と暦年課税の計算式・税率の違い】
  相続時精算課税 暦年課税
計算式 {(1年間の贈与の合計額-基礎控除額110万円)-特別控除2,500万円}×税率 (1年間の贈与の合計額-基礎控除額110万円)×税率
税率 一律20% 10%~最大55%

2.非課税になった部分については相続時に相続税の課税対象になる

相続時精算課税制度を使って非課税となった部分は、相続時の相続税の課税対象になります。

あくまでも贈与税の課税対象から外れるだけであり、相続税の課税対象になる点には注意が必要です。

なお、相続時精算課税と暦年課税の両方に共通しますが、相続開始前7年間(ただし、令和6年以降3年間から段階的に延長されます)の贈与は持ち戻しの対象になります。

【相続時精算課税と暦年課税の持ち戻しに関する違い】
  相続時精算課税 暦年課税
相続時精算課税の特別控除分 最大2,500万円まで対象になる そもそも対象にならない
生前贈与加算の対象部分 持ち戻しの対象になる 持ち戻しの対象になる

3.贈与税が発生していた場合は相続税から税額控除がおこなわれる

相続時精算課税制度を使っていた場合に、贈与税が発生するケースもあるでしょう。

そのときには贈与税が課されますが、その贈与税額分については相続税額から控除されます

そのため、相続時精算課税制度を利用しても、贈与税と相続税が二重に課される心配はありません

相続時精算課税制度で2,500万円分控除するときの相続税の具体例

以下のケースを参考に、相続時精算課税の選択時に2,500万円の控除額がどう扱われるのかを説明します。

  • 贈与人(被相続人):父親
  • 受贈人(相続人):息子1人のみ
  • 父親の財産:現金1億円(3,000万円を一括で贈与予定)

父親から息子に対して3,000万円の贈与がおこなわれた場合、贈与税と相続税は以下のように計算します。

  1. 贈与税額:{(3,000万円-110万円)-2,500万円}×20%=78万円
  2. 相続税の課税価格:7,000万円+2,890万円=9,890万円
  3. 調整前の相続税額:(9,890万円-3,600万円)×30%-700万円=1,187万円
  4. 調整後の相続税額:1,187万円-78万円=1,109万円

(1)の贈与税額の計算時に2,500万円が控除されますが、(2)で相続税の課税価格に加算されています。

また、(1)のときに課された78万円の贈与税については、(4)で調整されていることがわかるでしょう。

相続時精算課税制度以外に生前贈与で活用できる非課税制度4選

相続時精算課税制度以外にも生前贈与で活用できる贈与税の非課税制度はいくつかあります。

  • 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
  • 教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
  • 結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税制度
  • 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度

ここでは、相続時精算課税制度以外に生前贈与で活用できる贈与税の非課税制度を4つ紹介します。

1.夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|最大2,000万円

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除は、おしどり贈与とも呼ばれる制度です。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産やその購入資金を贈与された場合に利用できます。

なお、同じ配偶者間では一度しか使うことができず、不動産に居住していない場合は認められません。

2.教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度|最大1,500万円

教育資金の一括贈与の特例は、30歳未満の人が直系尊属から教育資金をまとめて受け取る場合に利用できます。

学校への支払い分は最大1,500万円まで、塾や習い事など学校以外への支払い分は500万円まで非課税になります。

なお、同制度を利用するにあたって、教育資金口座の開設や金融機関への申告書の提出などが必要となっています。

3.結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税制度|最大1,000万円

結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、結婚資金や子育て資金をまとめて受け取る場合に利用できる制度です。

直系尊属から18歳以上50歳未満の子どもや孫などに対して資金が贈与された場合に利用することができます。

結婚・子育て資金を最大1,000万円まで非課税にできますが、結婚に関する費用は300万円までとなっています。

同制度を利用する場合も、教育資金口座の開設や金融機関への申告書の提出などの手続きが必要です。

4.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度|最大1,000万円

住宅取得等資金の一括贈与の特例は新築資金、住宅の購入資金、リフォーム資金を受け取る場合に利用できます。

省エネ性能の高い住宅は最大1,000万円まで、それ以外は最大500万円までと非課税枠の上限は異なっています。

贈与された資金を翌年の3月15日までに使い切る必要があるなど、利用するための条件は多く設けられています

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
遺産相続が得意な弁護士を探す

生前贈与の非課税枠に関するよくある質問

最後に、生前贈与の非課税枠に関するよくある質問について回答します。

Q.相続時精算課税制度と暦年課税制度の併用はできるか?

同じ人からの贈与では併用できませんが、違う人からの贈与であれば併用できます

たとえば、父親からの贈与に相続時精算課税を利用し、母親からの贈与に暦年課税を利用することは可能です。

なお、相続時精算課税または暦年課税のいずれかを選択した場合、その後に他方に変更することはできません

Q.相続時精算課税制度とほかの非課税制度は併用できるか?

相続時精算課税制度とほかの非課税制度の併用は可能です。

例えば、父親から省エネ住宅の購入資金を受け取る場合、以下の金額を控除することができます。

  • 住宅取得等資金の非課税枠:1,000万円
  • 相続時精算課税制度の基礎控除:110万円
  • 相続時精算課税制度の特別控除:2,500万円

相続時精算課税制度と住宅取得資金の贈与の非課税枠を併用した場合、最大で3,610万円を控除できるでしょう。

さいごに|生前贈与を検討しているなら非課税制度の活用を検討しよう

生前贈与の2,500万円が非課税枠となる制度は、相続時精算課税制度です。

また、生前贈与を受けた際に利用できる非課税制度には、以下のようなものもあります。

  • 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
  • 教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
  • 結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税制度
  • 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度

これらの多くは家族間(夫婦間)での贈与を対象にしており、それぞれにさまざまな条件が設けられています。

しかし、数百万円から数千万円までの非課税枠が利用できるため、生前贈与の際には積極的に活用すべきです。

できる限り贈与税・相続税を節税したい場合は、税理士に相談しつつ方針や対策を決めることをおすすめします。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
遺産相続が得意な弁護士を探す
この記事をシェアする
この記事の監修者
Yz法律事務所
山本 一貴・山越 勇輝 (大阪弁護士会)
相談者様との信頼関係を大切にし、フットワークの軽さと素早いレスポンスで迅速に対応。弁護士だけでなく従業員もプライベートバンカーの資格を保有し、他士業連携で高額な遺産の相続問題にも対応可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

生前贈与に関する人気コラム

生前贈与に関する新着コラム

相談内容から弁護士を探す
相談員

相談内容を選択してください

金アイコン
もらえる慰謝料を増額したい方
弁護士の方はこちら
損をしない相続は弁護士にご相談を|本来もらえる相続対策も、弁護士が適正に判断|あなたの状況に合った損をしない解決方法を、遺産相続に強い弁護士がアドバイスいたします。