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生前贈与に対して遺留分侵害額請求はできる?時効や請求方法を解説

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生前贈与とは、被相続人となる人が存命中に自己の財産を他人へ贈与する行為を指します。

贈与の一種であるため、一見すると、「遺留分侵害額請求」とは関係ないように思われますが、実は配偶者・子ども・直系尊属といった法定相続人の遺留分が侵害されている場合は、贈与された人(受贈者)に対して遺留分侵害額請求をすることができます。

本記事では、生前贈与により遺留分を侵害されている方に向けて、受贈者に対して遺留分侵害額請求ができるかどうか、遺留分の割合や計算方法などの基礎知識、遺留分侵害額請求の方法・手段などを解説します。

また、遺留分侵害額請求を検討している方に向けて、相続問題が得意な弁護士に相談・依頼するメリットについても紹介します。

生前贈与によって遺留分を侵害されているあなたへ

相続の際、生前贈与によって自分の遺留分が侵害されていることがわかり、何とか取り戻したいと悩んでいませんか?

 

結論からいうと、生前贈与に対しても遺留分侵害額請求は可能です。しかし、遺留分の請求ではほかの相続人とトラブルになるケースが多いので、一度弁護士に相談しておくのをおすすめします。

 

弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 自分の正確な遺留分がわかる
  • 遺留分がいくら侵害されているのか教えてもらえる
  • 依頼すれば、請求手続きや親族との揉めごとにも対応してもらえる

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生前贈与に対しても遺留分侵害額請求は可能

生前贈与に対しても遺留分侵害額請求は可能

生前贈与によって法定相続人遺留分が侵害されている場合、法定相続人はその受贈者(侵害者)に対して遺留分侵害額請求をおこなえます。

このときの遺留分侵害額請求のルールは、生前贈与が相続人におこなわれたか、相続人以外の人におこなわれたかで異なります。

まずは、生前贈与に対する遺留分侵害額請求の基本を確認しましょう。

第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。

3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

他の相続人への生前贈与について遺留分侵害額請求ができるケース

相続人に対して生前贈与がされた場合の遺留分侵害額請求の対象は、以下のとおりです。

  • 相続人に対して相続開始前の10年間にされた贈与
  • 贈与者と相続人(受贈者)の双方が遺留分侵害をしていることを認識していた場合の贈与

生前、被相続人となる人(贈与者)から相続人になる人(受贈者)に対して贈与がおこなわれている場合、相続開始前の10年間にされた贈与が遺留分侵害額請求の対象になります。

また、10年以上前の贈与であっても、当事者がほかの法定相続人の遺留分を侵害することを知っていた場合は、遺留分侵害額請求の対象とすることができます。

相続人以外への生前贈与について遺留分侵害額請求ができるケース

相続人以外の人に対して生前贈与がされた場合の遺留分侵害額請求の対象は、以下のとおりです。

  • 相続人以外の者に対して相続開始前の1年間にされた贈与
  • 贈与者と相続人以外の人(受贈者)の双方が遺留分侵害をしていることを認識していた場合の贈与

相続人以外の人(受贈者)に対して贈与がおこなわれた場合、相続開始前の1年間にされた贈与が遺留分侵害額請求の対象になります。

また「相続人に生前贈与があった場合」と同様です。

1年以上前の贈与であっても、当事者が法定相続人の遺留分を侵害することを知って贈与している場合、遺留分侵害額請求の対象とすることができます。

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遺留分とは最低限の遺産取得割合

遺留分の割合

法定相続人の遺留分の割合は民法第1042条に規定されており、配偶者、子ども、直系尊属などの法定相続人の組み合わせによって遺留分は異なります。

なお、兄弟姉妹も法定相続人になり得ますが、遺留分は認められていません。

【法定相続人の組み合わせと遺留分の割合の基本】

法定相続人の組み合わせ

総体的遺留分

各人の遺留分(個別的遺留分)の割合

配偶者のみ

1/2

配偶者:1/2

配偶者と子ども

1/2

配偶者:1/4、子ども:1/4

配偶者と直系尊属

1/2

配偶者:1/3、直系尊属:1/6

配偶者と兄弟姉妹

1/2

配偶者:1/2、兄弟姉妹:なし

子どものみ

1/2

子ども:1/2

直系尊属のみ

1/3

直系尊属:1/3

※子どもや直系尊属が複数人いる場合は、頭数で等分する。

(遺留分の帰属及びその割合)

第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一

引用元:民法 | e-Gov法令検索

相続人が配偶者のみ

相続人が配偶者のみの場合、総体的遺留分(全員の遺留分の合計)は2分の1です。

また、配偶者だけが相続人の場合は、相続財産の2分の1に相当する金銭を侵害者に対して請求することが可能です。

相続人が配偶者と子ども

相続人が配偶者と子どもの場合、総体的遺留分は2分の1です。

配偶者は4分の1に相当する金銭を請求でき、子どもも4分の1に相当する金銭を請求できます。

ただし、子どもが複数名いる場合は頭数で等分する必要があります。

法定相続人の組み合わせ

各人の遺留分(個別的遺留分)の割合

配偶者と子ども1人

配偶者:1/4、子ども:1/4

配偶者と子ども2人

配偶者:1/4、子ども:1/8ずつ

配偶者と子ども3人

配偶者:1/4、子ども:1/12ずつ

相続人が配偶者と直系尊属(父母)

相続人が配偶者と直系尊属の場合、総体的遺留分は2分の1です。

配偶者は3分の1(6分の2)を請求することができ、直系尊属は6分の1を請求することが可能です。

また、父母がともに健在の場合は頭数で等分します。

法定相続人の組み合わせ

各人の遺留分(個別的遺留分)の割合

配偶者と直系尊属1人

配偶者:1/3、直系尊属:1/6

配偶者と直系尊属2人

配偶者:1/3、直系尊属:1/12ずつ

相続人が配偶者と兄弟姉妹

相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、総体的遺留分は2分の1です。

しかし、兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、配偶者が2分の1全てを請求することができます。

法定相続人の組み合わせ

各人の遺留分(個別的遺留分)の割合

配偶者と兄弟姉妹1人

配偶者:1/2、兄弟姉妹:なし

配偶者と兄弟姉妹2人

配偶者:1/2、兄弟姉妹:なし

相続人が子どものみ

相続人が子どものみの場合、総体的遺留分は2分の1です。

ただし、子どもが複数名いる場合は、遺留分を頭数で等分する必要があります。

法定相続人の組み合わせ

各人の遺留分(個別的遺留分)の割合

子ども1人

子ども:1/2

子ども2人

子ども:1/4ずつ

子ども3人

子ども:1/6ずつ

相続人が直系尊属(父母)のみ

相続人が直系尊属のみの場合、総体的遺留分は3分の1です。

また、父母がともに健在の場合は、遺留分を頭数で等分する必要があります。

法定相続人の組み合わせ

各人の遺留分(個別的遺留分)の割合

直系尊属1人

直系尊属:1/3

直系尊属2人

直系尊属:1/6ずつ

生前贈与を加味した遺留分の計算方法

遺留分侵害額は、以下の手順で計算します。

  1. 個別的遺留分を計算する(総体的遺留分×法定相続分)
  2. 基礎財産を計算する(相続時の財産+生前贈与財産-相続時の負債)
  3. 遺留分額を計算する(基礎財産×個別的遺留分)
  4. 遺留分侵害額を計算する(遺留分額-遺贈・特別受益に相当する生前贈与-相続すべき財産額+負担する負債額)

相続人や相続人以外の人に対して生前贈与がおこなわれた場合、遺留分侵害額請求の対象となる「相続開始前の1年間にされた贈与」「侵害することを承知のうえでおこなわれた贈与」「相続人に対して相続開始前の10年間にされた贈与」は基礎財産に加算されます。

それから基礎財産や個別的遺留分などを使って遺留分侵害額を算出します。

遺留分侵害額請求の4つの方法

遺留分侵害額請求の4つの方法

生前贈与によって遺留分を侵害されている場合、その受贈者に対して遺留分侵害額請求をおこないます。

遺留分侵害額請求の主な方法には、当事者同士の話し合い(協議)、内容証明郵便の送付、遺留分侵害額の請求調停、遺留分侵害額請求訴訟の4つがあります。

ここでは、それぞれの遺留分侵害額請求の方法や特徴などを確認しましょう。

①当事者同士で話し合う

受贈者(侵害者)と話し合いができる場合は、まず当事者同士の話し合いで解決を目指すのがおすすめです。

話し合いで請求金額などについての折り合いを付けることができれば、少ない負担で金銭を受け取ることができます。

話し合いがまとまった場合は、当事者全員の署名と押印がある和解書・合意書を作成しましょう。

②内容証明を送付する

日本郵政の内容証明郵便を使い、受贈者に対して遺留分侵害額請求をおこなうこともできます。

請求自体は通常の郵便でも可能ですが、内容証明郵便であれば「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰宛てに差し出されたか」を日本郵便が証明してくれます。

また、内容証明郵便であれば時効の完成が6ヵ月猶予されるというメリットもあります。

③遺留分侵害額の請求調停をおこなう

当事者間の話し合いで折り合いが付かない場合は、家庭裁判所に対して「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てることができます。

調停では調停委員が仲介役となり、当事者双方から話を聞いたり、資料を確認したりして、解決策の提案やアドバイスなどをしてくれます。

調停がまとまった場合は法的拘束力を有する「調停調書」が作成されます。

④遺留分侵害額請求訴訟を提起する

遺留分侵害額の請求調停が不成立となった場合は、家庭裁判所に対して「遺留分侵害額請求訴訟」を提起することになります。

法廷で遺留分侵害額を争う場合、十分に証拠を用意して立証する必要があるでしょう。

相続人ひとりで裁判の準備をするのは大変であるため、相続問題が得意な弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

遺留分侵害額請求権の時効は最短で1年!早めの動き出しがおすすめ

遺留分侵害額請求権には、以下の2つの時効期間が定められています。

短期消滅時効

遺留分権利者が「遺留分の侵害を知ったとき」から1年間

長期消滅時効

被相続人の死亡時から10年間

遺留分権利者が「遺留分の侵害を知ったときから1年間」が短期消滅時効の期間です。

これは、遺留分侵害を知ったにもかかわらず、長期間請求をしない場合に、法的安定性を図るために設けられた期間です。

たとえば、被相続人が死亡し、遺言が開示されて特定の相続人に多くの財産が遺贈されていることが明らかになり、遺留分権利者がその事実を知ったとします。

この「知ったとき」から1年以内に遺留分侵害額請求をおこなわなければ、その請求権は時効により消滅します。

したがって、遺留分が侵害されている場合は、なるべく早く遺留分侵害額請求をおこなうようにしましょう。

また、遺留分侵害額請求をおこなう際には、相手に送る郵便は普通郵便ではなく自分に控えが残る「内容証明郵便」にしてください。

内容証明郵便の場合、書面の内容や相手が受け取った日時を残すことができます。

生前贈与を加味した遺留分侵害額請求は弁護士がいると心強い

遺留分侵害額請求をする場合は、事前に相続問題が得意な弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

相続問題が得意な弁護士に相談すれば「遺留分がいくら侵害されているのか」などを知ることができます。

どの程度遺留分が侵害されているかは、生前贈与を加味すると計算が複雑なることから素人が算出するのは大変です。

しかし慣れた弁護士ならば可能です。

また、正式に依頼をすれば受贈者(侵害者)との交渉などを任せることができ、調停や訴訟に移行した場合でも、依頼者の代理人として対応してくれます。

遺留分侵害額請求が得意な弁護士は「ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)」で探すことができます。

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生前贈与の遺留分に関してよくある質問

生前贈与の遺留分に関するよくある質問とその回答を紹介します。

Q.遺留分を請求されたら必ず払わないといけないですか?

遺留分を侵害する生前贈与を受けた場合、遺留分権利者から請求されたら、原則としてその侵害額を支払わなければなりません

ただし、遺留分権利者が請求しない場合や、請求が時効の場合は支払う必要はありません

また、相続財産が少ない場合や、特定の事情がある場合には裁判で争うことも可能です。

Q.遺留分を請求したら必ず取り戻せますか?

遺留分侵害額請求は正当な権利に基づいておこなわれるものであり、請求された相手は支払う義務があります。

しかし、相手が相続した財産を使い込んでしまうと、資産がなくなり回収が困難になるケースがあります。

こうした事態を回避するためには、時効の前に遺留分侵害額請求をおこないましょう。

Q.自分が生前贈与を受けていた場合には遺留分を請求できますか?

自分が生前贈与を受けていた場合でも、遺留分侵害があれば遺留分を請求することは可能です。

ただし、請求にはいくつかの注意点があります。まず、自分が受けた生前贈与の額は、自分の遺留分の計算に含まれます。

つまり、遺留分を計算する際には、生前贈与を含めた全財産を基に計算し、自分の取り分を超える部分が侵害されている場合に限り請求できます。

たとえば、相続財産が1,000万円で、自分の遺留分が250万円(全財産の1/4)だとします。

自分が既に200万円の生前贈与を受けている場合、さらに50万円を遺留分として請求する権利があります。

しかし、既に250万円以上の生前贈与を受けている場合は、追加で遺留分を請求することはできません。

このように、自分が受け取った生前贈与の額が遺留分を超えている場合は遺留分請求は難しくなります。

Q.生前贈与があれば遺産が無くても遺留分を請求できますか?

遺産が無くても生前贈与があれば遺留分を請求することは可能です。

遺留分の請求は、被相続人の死亡時に存在する遺産だけでなく、相続開始前の一定期間内におこなわれた生前贈与も含めて計算されます。

遺産が全く残っていない場合でも、生前贈与がある場合には、その贈与額に基づいて遺留分を算定します。

そして、遺留分権利者はその侵害分を受け取った受贈者に対して請求することが可能です。

さいごに|遺留分で悩んでいるなら弁護士に早めの相談を

遺留分侵害額請求権は、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知ったときから1年以内に権利を行使しなければ消滅してしまうため、遺留分侵害で悩んでいる場合はできる限り早く相続問題が得意な弁護士に相談しましょう。

特に「ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)」であれば、初回の面談相談無料に対応している弁護士事務所もみつけられます。

相談後に必ず依頼しなければいけないという訳ではないため、まずは弁護士との相談から始めてみることをおすすめします。

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この記事の監修者
葛城法律事務所
葛城 繁 (大阪弁護士会)
相続問題を中心に分野を問わず幅広い法律問題に対応。
『ご依頼者の利益が最大限になるためのサポート』となることを心掛け、的確なアドバイスを伝えられるよう客観的視点を忘れず、日々、業務と向き合っている。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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