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KL2021・OD・157
養子縁組とは血の繋がりのない親と子を、法律上親子関係があると認めることです。養子となった子は民法上「嫡出子」と同じ身分となり、実の子と同じ扱いとなります。
もし、養子縁組を行った養親が財産を遺して亡くなってしまった場合、養子には相続権があるのでしょうか。また養子縁組を行うことが相続税額に与える影響は何かあるのでしょうか。
今回は養子の相続権と相続税額に与える影響、また、その際の注意点について記載したいと思います。
まず、養子縁組について詳しく見てみましょう。養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、養子縁組で親になった人を養親、子供になった人を養子と言います。以下でそれぞれの詳しい内容について見ていきましょう。
普通養子とは、養子が実の親との親子関係を保持したまま養子縁組を行うことを言います。つまり民法上、普通養子は「実の親」と「養親」の両方と親子関係を持ちます。
普通養子は戸籍上では「養子」「養女」として記載されています。通養子縁組を行う際の条件は民法により規定されており、以下の通りとなっています。
・養親、養子ともに合意していること(民法第802条)
・養親は成人であること(民法第792条)
・養子は養親の直系尊属(親や祖父、祖母等)でないこと(民法第793条)
・養子は養親より年齢が低いこと(民法第793条)
・後見人(未成年などの人の財産などを代わりに管理、保護する人)が被後見人を養子とする場合、家庭裁判所の許可を得ていること(民法第794条)
・配偶者がいる人が、未成年を養子にする場合、配偶者も養親となること(民法第795条)
・配偶者のいる人が養子縁組を行う場合、配偶者の許可を得ていること(民法第796条)
・養子が15歳未満の場合、養子の実親に許可を得ていること(民法第797条)
・養子が未成年の場合、家庭裁判所の許可を得ていること(民法第798条) など
特別養子縁組とは、養子が、戸籍上実の親との関係を完全に断ち切って養子縁組を行うことを言います。民法上実の親との親子関係は無くなり、養親とのみ親子関係を持ちます。
特別養子は戸籍上には「実子」と記載されます。
特別養子縁組を行う場合の条件も民法により規定されており、以下の通りとなっています。
・養子は0~6歳までであること
・養親は成人していること(民法第817条)
・養親は婚姻していること(民法第817条)
・夫婦ともに養親となること(民法第817条)
・養親となる夫婦は、片方が25歳以上、片方が20歳以上であること(民法第817条)
・実の親の同意を得ていること(民法第817条)
・実の親が子を育てることが困難である等、特別な事情があること(民法第817条)
・家庭裁判所の審判をうけ、認可されていること(民法第817条)
養親が財産を残して亡くなり、被相続者となった場合、養子は普通養子、特別養子ともに法定相続人となり、相続権を有します。法定相続人とは、遺産を相続する際に、民法により規定された相続権を有する者の範囲のことを言います。
また、法定相続人の間で、相続額の分配割合の協議が難航する場合もあります。その際に民法により、被相続者との血縁関係から相続する財産の割合に一定の基準を設けています。これを「法定相続分」と言います。
法定相続分による遺産分配の割合は以下の通りとなっています。
配偶者の法定相続分 |
養親の子の法定相続分 |
|
養親に配偶者がいる(生存している)場合 |
遺産の50% |
遺産の50%を子の人数により等分 |
養親に配偶者がいない(既に死亡)場合 |
0% |
遺産の100%を子の人数により等分 |
以下では、普通養子と特別養子の相続権について具体例を出しながら記載します。
先述した通り、普通養子は、養親、そして実の親ともに法定相続人となり、養親、実の親が亡くなった際、両方で相続権があります。
また養親に血のつながった実の子がいても、上記法定相続分の割合の表に従い、法定相続分は血のつながった実の子と養子の人数で等分されます。
以下の例で養子の相続額がいくらになるか具体例を出して見ていきましょう。
配偶者の相続税額は1億2,000万円の50%なので6,000万円となります。養子の相続額は1億2,000万円の50%の6,000万円を子供の数で当分したものになります。
養子の相続額は、養親の実の子と普通養子の人数の合計が3人なので
6000万円×1/3=2,000万円
から2,000万円となることが分かります。
また法定相続分による相続額を以下の表にまとめておきます。
被相続人(養親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
遺産の50% |
6,000万円 |
子供A(実の子供) |
遺産の16.7% |
2,000万円 |
子供B(実の子供) |
遺産の16.7% |
2,000万円 |
普通養子 |
遺産の16.7% |
2,000万円 |
また、もし配偶者がいなければ、法定相続分による相続額は以下の表の通りとなります
被相続人(養親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
0% |
0円 |
子供A(実の子供) |
遺産の33.3% |
4,000万円 |
子供B(実の子供) |
遺産の33.3% |
4,000万円 |
普通養子 |
遺産の33.3% |
4,000万円 |
この場合、養親は法定相続人とならず、法定相続分はありません。また、養子は実の親との親子関係を保っていますので、養子、実の親の子供ともに法定相続人となります。
養子の実の親の配偶者の相続額は、1億2000万円の50%なので6,000万円となります。
養子の相続額は1億2,000万円の50%の6,000万円を子供の数で当分したものになります。養子の相続額は、実の親の子と養子の人数の合計が2人なので
6000万円×1/2=3,000万円 から3,000万円となることが分かります。
また法定相続分による相続額を以下の表にまとめておきます。
被相続人(養子の実の親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
遺産の50% |
6,000万円 |
実の子供 |
遺産の25% |
3,000万円 |
普通養子に出された子供 |
遺産の25% |
3,000万円 |
また、もし配偶者がいなければ、法定相続分による相続額は以下の表の通りとなります
被相続人(養子の実の親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
0% |
0円 |
実の子供 |
遺産の50% |
6,000万円 |
普通養子に出された子供 |
遺産の50% |
6,000万円 |
特別養子は、養親民法上養親の嫡出子と同じ扱いになり、養親が亡くなった場合法定相続人となり、相続権があります。ただし実の親との親子関係は特別養子縁組を行った際にきれますので、実の親が亡くなった場合は法定相続人とはならず、相続権はありません。
先ほど記載した2つの例の際の、特別養子の法定相続分と相続額を以下の表に記載しておきます。
養親に配偶者がいる場合
被相続人(養親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
遺産の50% |
6,000万円 |
子供A(実の子供) |
遺産の16.7% |
2,000万円 |
子供B(実の子供) |
遺産の16.7% |
2,000万円 |
特別養子 |
遺産の16.7% |
2,000万円 |
養親に配偶者がいない場合
被相続人(養親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
0% |
0円 |
子供A(実の子供) |
遺産の33.3% |
4,000万円 |
子供B(実の子供) |
遺産の33.3% |
4,000万円 |
特別養子 |
遺産の33.3% |
4,000万円 |
実の親に配偶者がいる場合
被相続人(養子の実の親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
遺産の50% |
6,000万円 |
実の子供 |
遺産の50% |
6,000万円 |
特別養子に出された子供 |
遺産の0% |
0円 |
実の親に配偶者がいない場合
被相続人(養子の実の親)との関係 |
法定相続分 |
相続額 |
配偶者 |
遺産の0% |
0円 |
実の子供 |
遺産の100% |
1億2,000万円 |
特別養子に出された子供 |
遺産の0% |
0円 |
転縁組(てんえんぐみ)とは、普通養子縁組を行った養子が、別の養親と養子縁組を行うことを言います。またこの転縁組は複数行うことができます。その際すべての養親の相続権を有します。
養子は法定相続人となることについては既に理解していただいと思いますが、相続税には法定相続人の人数により変動する控除額や非課税額が存在します。また法定相続人の人数により相続税自体も変動します。
ここでは養子が相続税に与える影響について見ていきましょう
養子は法定相続人となりますが、法定相続人の人数により変動する控除額と非課税額には以下のものがあります
・基礎控除額
・生命保険金の非課税額
・死亡退職金の非課税額
相続税は被相続人の遺産が一定の額を超えた場合に支払う必要があります。これを基礎控除額と言います。
生命保険金は、被相続人が契約者(保険料支払い者)であり、保険金の受取人が妻などの法定相続人の場合みなし財産とされ、相続税の課税対象になります。ただし、生命保険金には非課税額があります。
死亡退職金は、被相続人が退職する際に受取るべきであった退職金を配偶者などの法定相続人が受け取ったものを言います。この死亡退職金もみなし財産とされ相続税の課税対象となります。ただしこの死亡退職金にも非課税額があります。
以下にそれぞれの計算式を一覧にして記載しておきます。
控除、非課税の種類 |
計算式 |
基礎控除額 |
3000万円+600万円×法定相続人の人数 |
生命保険金の非課税額 |
500万円×法定相続人の人数 |
死亡退職金の非課税額 |
500万円×法定相続人の人数 |
上記の通り、法定相続人の人数が増えれば各控除額、非課税額は増額します。基礎控除に関しては養子1人につき600万円総額、生命保険金と死亡退職金の非課税額は養子1人につき500万円増額します。
また相続税は累進課税制度となっており、課税する財産が多ければ多いほど相続税額も高くなります。養子がいることにより基礎控除額が増額されることで、相続税額が下がることもあります。
法定相続人の人数により、先述した控除額や非課税額が変わってくるため、控除額や非課税額を算出する際の法定相続人に含まれる養子の人数に関して制限を設けています。制限は以下の通りとなります。
・養親に実の子がいる場合は法定相続人の人数として含まれる養子の人数は1人まで
・養親に実の子がいない場合は法定相続人の人数として含まれる養子の人数は2人まで
ただし、養子であっても以下に該当する人は実の子供の扱いとなり、人数の制限にはかかりません。
・被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人
・被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人
・被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人
また、基礎控除額、非課税額を増やす意図で養子縁組を行ったと認められる場合は、基礎控除額、非課税額算定の際の法定相続にとして認めらません。
またこの養子の法定相続人の人数制限は、基礎控除額や非課税額の算定の際のみ限定されるもので、法定相続分には影響を与えません。養親である被相続人の遺産が1億円で配偶者と実の子が1人、普通養子が4人いた場合の基礎控除額、それぞれの法定相続分、相続額は以下の通りとなります。
内容 |
計算 |
計算結果 |
基礎控除額算定の際の法定相続人の人数 |
配偶者1人+実の子1人+普通養子1人 |
3人 |
基礎控除額 |
3,000万円+600万円×3人 |
4,800万円 |
配偶者の法定相続分 |
常に50% |
50% |
配偶者の相続額 |
1億円×50% |
5,000万円 |
実の子の法定相続分 |
50%×1/5 |
10% |
実の子の相続額 |
1億円×10% |
1,000万円 |
普通養子の法定相続分 |
50%×1/5 |
10% |
普通養子の法定相続額 |
1億円×10% |
1,000万円 |
被相続人に子供がいたものの、相続開始時点で子供は亡くなっているが(被相続人からみて)孫がいる場合、孫が相続を行うことができます。これを代襲相続と言います。被相続人の直系卑属(子や孫)への代襲相続は永遠に下の代へ行うことができます。つまり、子がいなければ孫、孫がいなければひ孫が相続を行います。
養子の子に代襲相続が行えるかについては養子縁組のタイミングが起点になっていて以下の通りとなっています。
・養子縁組の成立前に誕生していた養子の子は、代襲相続を行うことができない
・養子縁組の成立後に退場した養子の子は、代襲相続を行うことができる
養子は養親と養子縁組を行った日から血族関係になると民法で定められています。代襲相続を行う場合、被相続人の直系卑属(血族関係にある子や孫)であることが必要ですが、養子縁組前に生まれた養子の子供に関しては、養子縁組後にも直系卑属になりません。
養子縁組を行えば相続税上の控除額や非課税額が増額することは既にお伝えしましたが、養子縁組を行うことによる相続上の注意点もあります。ここでは2つの注意点について記載したいと思います。
被相続人の財産を1親等(被相続人の親及び子)もしくは被相続人の配偶者以外の人が相続する場合、相続税が2割加算されます。
被相続人が孫を養子にしていた場合、戸籍上は実の子供と同じ扱いになりますが、相続税の計算の際には「孫養子」 として、相続税が2割加算されます。
遺産分割を行う際に、相続人の人数が多ければ、相続分の協議が難航してしまう可能性があります。養子は法定相続人に含まれますので、養子が1人増えるごとに、法定相続人の間で主張が食い違い、分割の割合の収集が付かなくなってしまう可能性が高くなると言えます。
話し合いにより遺産分割が成立しない場合は家庭裁判所に調停を申し立てます。調停が成立しなければ家庭裁判所において遺産分割の審判を受けることになります。
遺産分割が難航するということは、相続人間で争いが起こっているということですから、できることなら避けたい行為であると言えると思います。
誰が相続税の申告を行っても、納める相続税額は同じ金額になると思っていませんか? 実は、その考えは間違っています。 税理士業務の中でも「相続税の申告」は非常に特殊なもので相続税の専門的な知識が求められます。税理士ごとに、計算される相続税額が異なることも少なくないのです。 ここでは、「相続税専門」の税理士に依頼することが相続税を抑えることにつながる理由についてご紹介します。 医者に外科や内科などの専門分野があるように、税理士にも専門分野があります。 税理士になるには、「所得税法」「法人税法」「相続税法」「消費税法又は酒税法」「国税徴収法」「住民税又は事業税」「固定資産税」のうち、所得税法と法人税法を含む3つの科目に合格することが求められます。つまり、相続税について勉強せず税理士になった人も数多くいるのです。 一般的な税理士の仕事は法人税や所得税の申告です。全国の年間の相続税申告件数は約10万件なのに対し、税理士は約8万人存在しています。つまり、税理士一人あたりの相続税の申告件数は年間で1~2件程度が実状です。全国に企業が400万社以上あることからも、いかに相続税の申告業務が稀であるか理解できるでしょう。 そのため、相続税の申告を数多くこなしている税理士は少なく、専門的に扱っていない税理士に依頼すると、本来払わずに済んだ税金を支払う事態になりかねません。 相続税を抑えるためには、相続財産(特に土地や家屋)を正しく評価することや、特例・各種控除などを適用させることが必要不可欠です。 相続税の金額を正しく計算するには、もとになる遺産の価値を正しく評価する必要があります。預金や株式といった金銭価値がはっきりしているものであれば問題ありませんが、土地や家屋、さらに車などの一般動産や家財一式などの評価は難しく、税理士や税務署によって解釈が異なることもあり、遺産の価値を過大に評価してしまうこともあるのです。 また、相続税額を抑えるには控除や特例を利用することが不可欠ですが、適用条件が複雑なこともあり、適用できるのに気づかなかったり、適用できるかどうかの判断が困難な場合もあります。 さらに、本来の金額よりも少ない金額を誤って申告してしまうと、税務調査が行われ、延滞税や加算税などの追微課税が発生し、本来よりも高い税金を納めなければならないといった事態になりかねないのです。 あなた自身や経験の少ない税理士では、正しく申告するのが困難な場合もあるでしょう。そのため当サイト編集部では、相続税を専門に取り扱う税理士に依頼することを強く推奨しています。 依頼した場合は税理士報酬を支払う必要はありますが、それを上回って相続税額を抑えられることも少なくありませんし、ご自身での申告書作成から申告までの一連の手間や税務調査に対処する手間も省けます。 相続税を専門とする税理士は、相続問題解決が得意な弁護士と提携しているケースもあります。 相続弁護士ナビでは、税理士・司法書士・不動産鑑定士などと業務提携している事務所も多数掲載中です。 無料相談も可能ですので、まずはご相談ください。 相続税額を抑えて相続税申告するなら、相続税専門の税理士に依頼
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相続税の申告は「相続税専門」税理士に依頼
相続において、養子は養親の実の子と相続額について変わらないことをご理解いただけたと思います。また養子縁組を行うことで基礎控除額や非課税額の増額があり、相続税上もメリットがあることもご理解いただけたと思います。
また、養子となった人は法定相続人となれますので、血族の法定相続人以外で財産を遺したい人がいる場合に、養子縁組を行うことも効果的です。
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