二世帯住宅を相続する方は、相続税の計算方法に加えて、小規模宅地の特例について理解するべきでしょう。小規模宅地の特例は、不動産を相続する方の納税額を抑えるための特例ですが、一般の住宅と二世帯住宅への特例の適用要件が異なるため、小規模宅地の特例について理解する必要があります。
今回の記事では、二世帯住宅の相続税を計算するにあたり、相続税の計算方法、小規模宅地の特例の適用要件を踏まえた上で、二世帯住宅に小規模宅地の特例がどのように適用されるのかを説明していきます。
まず、不動産にはどのくらいの相続税が発生するのでしょうか。
相続税の額は、以下の計算式によって求めます。
相続税額=(課税対象価額-基礎控除額)×相続税率-税額控除
基礎控除額は、「法定相続人×600万円+3,000万円」で算出することができます。つまりは相続財産が預金8,000万円、法定相続人が2人の場合、8,000万円-(2人×600万円+3,000万円)=3,800万円に税率をかけて相続税を計算するということです。
「No.4155 相続税の税率|相続税|国税庁」から税率20%、税額控除200万円であるため、相続税額は3,800万円×20%-200万円=560万円になります。
預金財産は、そのままの金額を課税対象額にすることができますが、不動産の場合は、固定資産税評価額や路線面から課税対象額(評価額)を算出しなければなりません。評価額が課税対象額になるため、評価額によって相続税の額が決まるということです。
小規模宅地の特例とは、土地に課される評価額を8割近く減額させることができる特例です。例えば建物の評価額が4,000万円、土地に評価額が4,000万円の場合、4,000万円+4,000万円-4,000万円×80%=4,800万円が課税対象額になります。
つまりは法定相続人が2人の場合、相続税の額は、(4,800万円-3,000万円-600万円×2人)×10%=60万円です。
小規模宅地の特例により、大幅に相続税が減額されることがわかりましたが、特例を適用させるためには以下の二つの要件を必ず満たさなければなりません。
※生計一親族:被相続人と共に生計を立てていた、または養われていた家族
当記事では二世帯住宅を対象としているので、居住用でありかつ敷地内に建物があることから、上の二つの要件を満たしています。
加えて、小規模宅地の特例は、被相続人が相続する不動産に住んでいたかどうかで適用要件が異なります。まず、被相続人が対象の不動産に暮らしていた場合、特例を適用させるために、以下の二つの条件を満たさなければなりません。
また、相続人と被相続人が同居していない場合、以下の要件を満たすことで特例を適用させることができます。
反対に、被相続人が相続させる不動産に暮らしていなかった場合、特例を適用させるためには、相続人を含めた家族が対象の不動産で居住していて、かつ被相続人が扶養していたことが条件です。
相続税の計算方法、小規模宅地の特例について説明したところで、二世帯住宅に課せられる相続税について説明していきます。まず、二世帯住宅とは同一の建物で暮らしているが、別々に暮らしている家族の住宅のことです。
主に、被相続人(親)が所有する建物に、相続人(子供)が被相続人とは別々の部屋で暮らしている場合があげられますが、もし税務署から被相続人と相続人の住まいが別々と見なされた場合、小規模宅地の特例は適用されません。
反対に、同一と見なされた場合、小規模宅地の特例が適用されます。相続税を安く抑えるためには、二世帯住宅の方は小規模宅地の特例を適用させるべきですが、どのような二世帯住宅が特例を適用させやすいのでしょうか。
二世帯住宅は、完全分離型と非分離型にわけることができます。完全分離型は、建物内部で互いの暮らしている空間に行き来することができない住宅です。
完全分離型↓↓↓
それに対して、非分離型は、建物内部で互いの住んでいる空間に行き来することができる住宅になります。
非分離型↓↓↓
非分離型は、共に生活していることを主張しやすいため、完全分離型と比べて小規模宅地の特例は適用されやすいです。
区分所有登記とは、同一の建物でも各部屋が別々の名義で登記されていることを指しますが、各部屋で世帯が分かれているマンションを想像していただくとわかりやすいでしょう。
二世帯住宅では、区分所有登記されていると小規模宅地の特例は適用されにくく、区分所有登記がされていないと小規模宅地の特例が適用されやすくなります。
完全分離型の二世帯住宅でも、区分所有登記がされていないと小規模宅地の特例は適用されますが、平成25年以前まで適用されることはありませんでした。平成26年の税法の改正により、完全分離型の二世帯住宅でも小規模宅地の特例が適用されるようになりました。
また、非分離型の二世帯住宅であれば、区分所有登記されていても適用される可能性は高いです。
上の図のように別々の棟に住んでいる二世帯住宅の場合、小規模宅地の特例は適用されにくくなります。例え建物内部で繋がっていても、また区分所有登記されていても、税務署に別々の住まいと見なされてしまった場合、特例は適用されません。
二世帯住宅の方が相続税を安く抑えるためには、小規模宅地の特例を適用させる必要があります。区分所有登記されていると小規模宅地の特例が適用されにくくなるので、二世帯住宅の方は登記の内容を同一にすることで区分所有登記を解除するべきです。
登記の内容を同一にする方法として、共有登記があります。共有登記とは、複数人(親子の共同名義)で二世帯住宅全体を共有で登記する方法です。
共有登記とは別に、合併登記をすることで登記の内容を同一にすることもできます。合併登記は、同一の建物内で別々の建物として登記された建物を一戸の建物に登記し直す方法です。
共有登記、合併登記をすると、相続する不動産が、相続ではなく贈与と見なされるかもしれません。相続税と比べて贈与税は高くつくため、かえって納税額が高くなってしまいます。
そのため、共有登記、合併登記を用いて小規模宅地の特例を適用させるためには、税理士に依頼するのが確実です。また、相続税は不動産の評価方法によって納税額が異なるので、相続税の申告を専門とした税理士に依頼した方が、相続税を安く抑えることができます。
税理士の選び方について、「相続税申告を依頼する税理士の選び方|相場や依頼すべきケースについても詳しく解説」を参考にしてください。
二世帯住宅の方は、相続税を安く抑えるために小規模宅地の特例を適用させるべきです。二世帯住宅は一般の住宅と比べて特例を適用させることは難しいですが、ご心配な方はまずは税理士に相談してみましょう。
相続税の税率を求める計算は比較的簡単で、相続税の対象となる課税価格が分かっていれば簡単に求めることができます。今回は税率と計算方法、そして非課税に関して解説しま...
相続税には配偶者控除(配偶者の税額軽減制度)があり、配偶者が取得した相続財産のうち1億6,000万円または法定相続分相当額のどちらか高い方が控除できるというメリ...
不動産を相続する際に最も気になる相続税も、やり方次第で大きな節税を行うことができます。今回は相続税の計算方法や不動産を相続する際の注意点などをご紹介していきます...
ここでは相続をする人が知っておくべきことを以下の5つのポイントに沿って説明していきたいと思います。
遺産相続をすると税金がかかるのをご存知でしょうか。二次相続は一次相続と違い、配偶者控除を利用できないので多くの相続税を払う必要があります。ここでは、配偶者控除に...
税理士への相談料の相場と、費用が発生するタイミング、そして費用を抑えて賢く税理士を利用するためにはどうすれば良いのかをご紹介していきます。
遺産相続によって相続税の支払いが必要になることは理解しているものの、何から手をつけてよいのかわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。本記事では、相続税...
相続税の申告手続きは、相続人自らがおこなう必要があります。しかし、相続財産の内訳や相続・遺贈の状況、法定相続人の数によって、相続税の申告手続きは異なります。本記...
相続税対策の代表例としては生前贈与が挙げられます。しかし相続や贈与にはさまざまな非課税枠が設けられており、状況に応じた適切な判断が必要となります。この記事では、...
代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)とは、代襲相続が起こった際に本来の相続人に代わって相続人になった「本来の相続人の子」などのことをいい、代襲者(だいしゅうしゃ...
本来保険契約を履行するもので相続財産とはならない生命保険金ですが、契約形態によっては被相続人から相続人に財産を移したと評価できるものであるため、相続税法において...
相続をする際、相続税と同時に所得税が取られてしまうのではないかと心配な方も多いでしょう。本記事では、相続の際にかかる相続税や所得税について詳しく解説します。
相続税の申告をする場合に相続財産を調べて計算します。このときに借金をしている場合、どのように取り扱うのでしょうか。相続税において借金をどのように取り扱うのかにつ...
相続税対策にはさまざまな方法がありますが、大胆な方法の一つとして海外に移住して日本の相続税法の適用を避けるという方法はそのひとつです。もちろんこれを簡単に認める...
相続・相続税の各種制度において、10年という期間が区切りとなる制度がいくつかあります。本記事では相続・相続税における「10年ルール」について詳しく解説します。
相続問題では、もしも遺産相続で得た財産が年収に該当する場合、翌年の住民税や保険料が増額してしまうのではないかと心配されている方もいるはずです。本記事では、遺産相...
他人から財産を贈与された場合は、贈与税が課されるのが原則です。両親や祖父母などから贈与を受けようとする際には、贈与税の非課税限度額を理解しておきましょう。本記事...
相続税の金額を知るためには、国税庁ウェブサイトに掲載されている「速算表」を利用するのが便利です。本記事では、相続税の速算表の使い方や、速算表を用いた相続税の計算...
亡くなった家族の遺産を相続した場合でも、相続税の申告が必要となるケースは比較的少数です。本記事では、相続税の申告が必要ないケースや、申告の要否を判定する手順など...
相続した遺産に対しては相続税が課されますが、基礎控除額に達するまでは非課税となります。また、基礎控除のほかにも、相続税の負担を軽減できる特例や控除が設けられてい...