みなし贈与(みなしぞうよ)とは、本来の贈与ではない形で財産などの受け渡しをすることをいい、贈与税の課税対象にもなります。
例えば、身内から超格安で不動産などの財産を手に入れたときなどですね。
自分では贈与したつもりがなくても、『税率が高い』としても知られる贈与税の対象となるみなし贈与になってしまわないように、どのようなケースでみなし贈与となってしまうのかをきちんと知っておきましょう。
生前贈与について 弁護士に相談するメリットとは? |
生前贈与は、相続前に財産を減らすことで、節税効果が期待できるという大きなメリットがある一方、相続人の間におけるトラブル原因にもなりやすいです。
その点、弁護士は、相続トラブルを解決する立場にあるため、生前贈与絡みの案件も扱うことが多く、豊富な経験を元に「どのような策をとれば良いか」アドバイスをすることが可能です。
・生前贈与に関する相続トラブルを未然に防ぎたい ・生前贈与が絡んだ相続トラブルに悩んでいる
このような方は、まず無料相談などを気軽に活用してみましょう。 |
それではまずは、贈与とみなし贈与の違いについて知っておきましょう。
まず、贈与とは『無償』で財産を与えることです。
上の図の例でいくと、贈与者(あげる人)であるAさんから受贈者(もらう人)のBさんが『無償』で家の不動産を受け取ります。
不動産に限らず、
などを無償で受け渡しすることを贈与といいます。
繰り返しますが贈与は『無償』で財産をあげることでしたね。
しかし、無償で財産を直接渡していないような場合でも、一部贈与税が発生するケースがあります。
これが『みなし贈与』です。
代表的な例が、上のような著しく安い価格での売買をおこなったケースです。
この場合、『無償』であげているわけではありませんので、通常の贈与とはなりません。
しかし相続税法には、
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
引用:「相続税法」
とあります。
このように、相続税法第二節ではみなし贈与についての記述があります。
具体的にどのようなケースでみなし贈与になってしまうのか次の項目で確認していきましょう。
贈与税が発生しないように意図的におこなっていた場合も、知らないうちにみなし贈与になっていた場合もありますが、こちらでは日常でも起こり得る、みなし贈与になるようなケースについてご紹介していきます。
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。
引用:「相続税法」
上記の例でも登場した、『著しく低い価格での売買』はみなし贈与に該当するケースも多いです。
では、「具体的に著しく低いっていくらからだ?」と思われる方も多いでしょう。
実は、『著しく低い』について相続税法で明確な基準は設けてありません。
ただ、平成19年8月23日に判決が出た裁判によって、「時価公示価格と同水準の価格から80%未満である場合、著しく低いという解釈ができる」といわれています。
何らかの事情により当該土地の相続税評価額が時価の80パーセントよりも低くなっており,それが明らかであると認められる場合に限って,「著しく低い価額」の対価による譲渡になり得ると解すべきである。
引用:「税法入門|東京弁護士会」
つまり、上の図でいくと、時価2,000万円の不動産を50%の1,000万円で売買した場合、みなし贈与に該当する可能性が高いといえます。
特に、親族間や仲の良い法人の間でこのような売買がされることもあるでしょうが、あまりにも安すぎる売買では贈与税の課税対象となる可能性もありますので、事前に税理士などに相談することをおすすめします。
債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
引用:「相続税法」
こちらも身内同士で起こり得るケースですが、上の図でいくとAさん(債権者)がBさん(債務者)にお金を貸していて、それを免除した場合にみなし贈与となります。
仮にBさんに200万円の借金があったとして、それが0になったとすれば、相対的にBさんの財産が200万円分増えたことになるからです。
また、Bさんが金融機関などから借金をしており、その借金が返せないからAさんが返済した場合、この場合もみなし贈与となります。
借金問題を自分たちだけで解決させようとすると、余計な税金が発生するおそれもありますから、借金問題を得意とする弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
生命保険契約の保険事故(傷害、疾病その他これらに類する保険事故で死亡を伴わないものを除く。)又は損害保険契約の保険事故(偶然な事故に基因する保険事故で死亡を伴うものに限る。)が発生した場合において、これらの契約に係る保険料の全部又は一部が保険金受取人以外の者によつて負担されたものであるときは、これらの保険事故が発生した時において、保険金受取人が、その取得した保険金(当該損害保険契約の保険金については、政令で定めるものに限る。)のうち当該保険金受取人以外の者が負担した保険料の金額のこれらの契約に係る保険料でこれらの保険事故が発生した時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分を当該保険料を負担した者から贈与により取得したものとみなす。
引用:「相続税法」
保険の契約者(保険料を支払う人)と、保険金の受取人が別の人物だった場合、みなし贈与となって贈与税が発生するケースが多いです。
例えば上の図でいくと、Aさんが30年物の養老保険に入って保険料を支払っていたとします。
30年後に満期になったので満期給付金が支払われますが、この時の受取人がA保険料を支払ったAさん以外の人物だった場合、みなし贈与となるわけです。
例えば、Aさんが死亡して死亡給付金がBさんに支払われた場合、Aさんの死亡によって財産が移動することになりますので、相続税がかかわってきます。
このことを『みなし相続』といいます。
たとえ同じ屋根の下、苦楽を共にする夫婦であってもみなし贈与として贈与税が発生してしまうケースがあります。
夫婦間のみなし贈与の代表的な例は、住宅の契約方法とローン支払い方によって起こり得ます。
例えば、AさんBさん夫妻が住宅を購入し、AさんBさん折半で住宅ローンを支払ったとします。
この時、住宅の所有名義がAさんだけになっていればBさんが支払ったローンの金額はAさんに贈与されたとみなされます。
上記の例に限らず、購入資金を負担した人と所有権名義者が一致していない場合、みなし贈与となってしまうケースもあります。
夫婦間で住宅ローンを折半するような場合は、住宅購入時に不動産関係者や税理士に相談して契約内容を決めましょう。
こちらは離婚の場合のケースです。
そうそう贈与税が課税されるケースも少ないのですが、離婚の際の財産分与でどちらかが得た財産が多すぎるとみなし贈与として贈与税が発生することもあります。
離婚の場合も大きな財産が動きますので、弁護士などの専門家に一度相談するようにしましょう(もちろん財産分与以外でも頼りになる存在になってくれると思います)。
どのようなケースでみなし贈与が発生してしまうのかお分かりいただけましたか?
このようなケースでついうっかりみなし贈与をしてしまい、余計に贈与税を払うことにならないように、以下のポイントを押さえておきましょう。
基本的に大きな金額がかかわってくるときはその道の専門家のサポートを受けることになると思いますが、その専門家にきちんと贈与税についても確認するようにしましょう。
ここでいう
大きな金額とは『110万円以上』 です。なぜ110万円以上かというと、贈与税には年間110万円に満たない場合は非課税となる基礎控除があるからです。
税金のことは基本的に税理士に相談していいでしょうが、上記のようにみなし贈与が考えられるケースは
など、生活のさまざまなシーンであり得ます。
例えば、保険の場合であれば保険会社の人やFPなどその道のプロもいます。
借金問題や離婚であれば、法律のプロ弁護士ですね。
大きな金額がかかわって少しでも「これって贈与じゃ…」と思ったら、専門家に相談しましょう。
贈与税にはいくつかの非課税枠がありますので、それらを上手く使うことでみなし贈与ではあっても贈与税が発生しないもしくは削減することも可能です。
特に、先ほどお伝えした110万円の基礎控除はマストで覚えておきましょう。
また、夫婦間、親子や孫・祖父母間では使える特例もいくつもありますので、それらを利用できないかどうかを知ったうえで贈与なり高額財産の移動なりをおこないましょう。
贈与税の非課税枠には以下のものがあります。
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
最後に、みなし贈与で贈与税の対象になってしまった方に贈与税の計算方法についてご紹介しておきます。
詳しくは貼ってあるリンク先もご覧ください。
率直にいいますと、贈与税の税率はかなり高いです。
不動産などの高額な財産を非課税枠など使わずに贈与してしまったら、約半分が税金になってしまうと思っておいてください。
そのようなことになってしまわないように、繰り返しますが高額な財産を動かす場合は必ず専門家に相談しましょう。
夫婦や兄弟間、親から子供(未成年)への贈与の場合こちらの税率が適用されます。
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
‐ |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,500万円以下 |
45% |
175万円 |
3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
3,000万円超 |
55% |
400万円 |
直系尊属(父母・祖父母)から子・孫(20歳以上)に対しての贈与はこちらの税率です。
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
‐ |
400万円以下 |
15% |
10万円 |
600万円以下 |
20% |
30万円 |
1,000万円以下 |
30% |
90万円 |
1,500万円以下 |
40% |
190万円 |
3,000万円以下 |
45% |
265万円 |
4,500万円以下 |
50% |
415万円 |
4,500万円超 |
55% |
640万円 |
贈与税の計算は基本的に、
A×税率-控除額 |
となります。では、具体的に数字を入れてみましょう。1,000万円の贈与を受けたとします。
そして、税率は上の「一般贈与財産用」を使います。
1,000万円-110万円=890万円 890万円×40%-125万円=231万円 |
この場合、231万円の贈与税が発生することになります。
基礎控除があってもこの金額ですから、贈与税はかなり高いですね。
ついうっかりみなし贈与で贈与税を発生させてしまわないためにも、
この3つを忘れずにしておきましょう。
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