子供が免許を取得したあとに、子供に車を買ってあげたいという親も少なくないでしょう。
親が子に高額の贈与をする場合には、贈与税が問題になるのですが、車を買ってあげる場合でも贈与税の問題は生じるのでしょうか。
本記事では、子供に車を買う場合の贈与税について解説します。
贈与税がかかる場合とかからない場合や贈与税を回避する方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
まず一般論としてどのような場合に贈与税がかかるかについて確認しましょう。
贈与税について規定している相続税では、贈与のほか、贈与と同視できるみなし贈与に該当する場合に、贈与税の課税が問題となります。
単純な贈与の場合はもちろん、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合では相続税法第7条で、債務の免除を受けた場合には相続税法第8条で、みなし贈与として贈与税の課税対象となりうることを規定しています。
贈与税は、贈与したものの額が基礎控除額である110万円を超える贈与がされた場合に贈与税の申告・納税が必要です。
贈与税は全ての贈与を対象とするのではなく、基礎控除を超える贈与がされた場合に申告・納税が必要としています。
贈与税の基礎控除額は、その年の1月1日から12月31日までの間に110万円までです。
そのため、1月1日から12月31日までの間に110万円以上の贈与をすると贈与税の申告・納税が必要になるのです。
扶養義務者である親が扶養されている子の生活に欠かせないものとして車を贈与する場合、贈与税がかかりません。
たとえば、通勤や通学などで車が欠かせないような場合は扶養義務として車を贈与しても非課税となります。
ただし、公共交通機関の利用が容易である場合や、贈与する車が高級車であるような場合、生活に欠かせない車の贈与とはいえず、課税の対象になります。
贈与税は、贈与を受けた受贈者が申告・納税します。
贈与税の申告・納税は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に申告・納税をしましょう。
親から子供に車を買う場合、次の場合に贈与税の申告・納税が必要です。
110万円以上の車を買って与えた場合には、基礎控除額を超える贈与となり、贈与税の申告・納税が必要です。
著しく低額で車を与えた場合で、110万円を超える贈与と認定できるものであれば、相続税法第7条のみなし贈与として、贈与税の申告・納税が必要です。
たとえば時価500万円の車を10万円で売買した場合、現実には490万円を贈与したものと同様に見ることができます。
そのため、贈与税の潜脱をしないためにも、みなし贈与として贈与税の対象としているのです。
車の購入代金として、1月1日から12月31日までの間に110万円以上の金銭を子供に贈与した場合にも贈与税がかかります。
車自体を贈与する場合でも、金銭を贈与する場合でも、同様に贈与税はかかるのです。
子供が自動車をローンで購入し、そのローンを立て替えた場合も贈与税がかかります。
立て替える方法として考えられるのが、ローンの支払いのための金銭を贈与する方法のほか、第三者として債権者に対して直接弁済する方法です。
前者の場合は購入代金を与えるのと同様に金銭の贈与なので贈与税の対象です。
後者の場合は第三者のためにする弁済として、相続税法第8条によりみなし贈与と取り扱われます。
贈与税がかかる場合の計算方法は次のとおりです。
贈与した金額の計算方法については、財産評価基本通達によって定められています。
自動車は動産であり、財産評価基本通達129の一般動産として次のとおり評価をします。
一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。(昭41直資3-19・平20課評2-5外改正)引用元:第1節 一般動産|国税庁
売買実例価額とは、実際に市場で取引された場合の価額です。
また、精通者意見価格とは、専門家の意見をもとにした価額を指します。
自動車については中古車販売をした場合の価額や、中古自動車の査定がいくらになるかが明確にわかりやすいため、これらの価額を参考にします。
新車を贈与した場合には新車の価格でそのまま計算します。
親が利用している中古車をそのまま贈与する場合には、中古車として査定額の証明書を発行してくれる業者に査定を依頼し、査定額を計算してもらう必要があります。
証明書を発行してくれる業者がみつからない場合、一般財団法人日本自動車査定協会に査定を依頼しましょう。
次に、新車の価額もしくは中古の査定額から、基礎控除額である110万円を控除します。
もし、車以外にも贈与した金銭・物があるのであれば、これらを加算したうえで110万円を控除しましょう。
贈与税率は、直系尊属(父母・祖父母など)から18歳以上の子に贈与された財産についての贈与税率である特別税率と、それ以外の一般税率に分かれます。
それぞれの税率は以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
---|---|---|
200万円以下 |
10% |
0円 |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1,500万円以下 |
45% |
175万円 |
3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
3,000万円超 |
55% |
400万円 |
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
---|---|---|
200万円以下 |
10% |
0円 |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
600万円以下 |
20% |
30万円 |
1,000万円以下 |
30% |
90万円 |
1,500万円以下 |
40% |
190万円 |
3,000万円以下 |
45% |
265万円 |
4,500万円以下 |
50% |
415万円 |
4,500万円超 |
55% |
640万円 |
親から子に車を贈与した場合は、特例税率が適用されます。
自動車の価値が500万円である場合、基礎控除額110万円を控除すると課税対象額は390万円です。
特別税率によると、600万円以下は20%から30万円を控除するので、「390万円×20%-30万円=48万円」が贈与税額となります。
親から子に車を贈与する際、贈与税の節税をするにはどのような方法があるでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。
子が車に乗れれば良いのであれば、親名義のまま子に利用させるというのが一般的な方法です。
どうしても新車が良いのであれば親が新車を購入し、そのまま子に利用させることもできます。
ただし、この場合には子が交通事故を起こした場合に、親が運行供用者として責任追及される可能性があります。
また、自動車保険が使えない場合もあることにも注意が必要です。
ある程度親が利用して中古にしてから贈与するという方法もあります。
新車のまま贈与すると価値が高いため、より多額の贈与税がかかりますが、中古になると価値は大きく下がります。
そのため、贈与税も低く抑えられるのです。
贈与税の節税には、暦年贈与で徐々に金銭を贈与する方法があります。
贈与税の110万円の基礎控除は、1月1日から12月31日までの間で計算します。
そのため、110万円を贈与した翌年にまた110万円を贈与すれば、贈与税はかかりません。
目標となる金額に達するまで、毎年110万円を贈与して目標となる金額を贈与することで、贈与税を回避できるでしょう。
ただし、毎年おなじような時期におなじ金額の贈与をすると、定期贈与として課税の対象となる可能性があるので注意しましょう。
車の査定を複数の業者に依頼するのは、一つの節税の方法です。
車の査定額が低ければ低いほど、車を贈与した場合の相続税も低くなります。
業者によって査定額は異なるため、複数の業者に査定を依頼し、一番低い査定額の業者の証明書によって申請すれば節税ができます。
車の贈与は申告しないと国税庁にバレるのでしょうか。
車に限らず、高額な財産の移動をする場合、税務署はその取引について調査することがあります。
税務署は銀行取引の内容を確認できますし、車の名義変更をした場合でも自動車税の支払いが必要で名義の変更があったことを確認できます。
そのため、車の贈与について申告をしなければ国税庁にバレて、追徴課税の対象になると考えておくべきです。
本記事では、子供に車を買う場合の贈与税について解説しました。
扶養義務として生活に必要不可欠な車を贈与する場合を除いて、110万円を超える車や車の購入代金の贈与には贈与税がかかります。
なるべく税金をかけずに贈与をしたい場合には、まずは税理士に相談してみましょう。
生前贈与は贈与税を削減するための最も有効な方法ですが、時に贈与税がかかる場合もありますので、今回は非課税とさせる方法をご紹介します。
不動産の生前贈与が贈与税を抑えることに繋がるとして最近注目されている手法ですので、今回は生前贈与で不動産を贈与する際の税金対策をご紹介します。
土地の贈与税を計算するにはいくつか方法があるものの、正直よくわからない部分も多いと思いますので、今回は土地の贈与税の計算とご紹介していきます。
生前贈与は税金対策として有効な手段のひとつですが、対応を誤ると贈与税がかかる場合もあります。この記事では、生前贈与で税金の負担を抑える方法や、贈与税の税率や計算...
贈与税の申告をするための手順をわかりやすくまとめましたので、贈与税の申告が迫っている方は参考にして頂ければ幸いです。
遺産相続の際に遺産を受け取る人を相続人と言いますが、この相続人には遺産をもらえる順番というものがありますので、今回は孫に遺産を残す3つの方法をご紹介します。
生前贈与(せいぜんぞうよ)とは、その名のとおり『生きている間に財産を誰かに贈る』法律行為です。贈与はいつでも・誰でもできるものですが、その中でも特に利用しやすく...
この記事では、生前贈与により遺留分を侵害されている方に向けて、受贈者に対して遺留分侵害額請求ができるかどうか、遺留分の割合や遺留分侵害額の計算方法などの基礎知識...
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母が18歳以上の子ども・孫に財産を贈与する際、2,500万円までは贈与税がかからない制度です。この記事では、相続時...
贈与税には時効があります。つまり、贈与税の時効を超えると納めるべき贈与税が消滅するのです。しかし、簡単に国の税金から逃れられない仕組みがあります。
マンションの贈与は原則として贈与税の課税対象ですが、税金の制度は複雑なので実際にいくらかかるのか、節税できないのかなど、さまざまな疑問を抱えている方も多いはずで...
婚姻期間が20年以上の夫婦が利用できるおしどり贈与には、メリットもあればデメリットもあります。そこで本記事では、おしどり贈与を利用するための3つの要件や、利用す...
特別受益とは、一部の相続人だけが被相続人から特別に得ていた利益のことです。生前贈与や遺贈が特別受益と認められれば、相続財産に加算され、公平な遺産分割をおこなうこ...
親が子供に車を買ってあげる場合、相続税対策でおこなうような生前贈与と同様に贈与税が問題となります。どのような場合に贈与と評価されるのか、贈与と評価されて贈与税が...
2024年から贈与税に関する重要な改正が施行されました。とくに生前贈与を検討している方にとっては、相続税対策の大きな転機となるでしょう。本記事では、贈与税の仕組...
預貯金の生前贈与は、相続税対策として有効な手段です。しかし、生前贈与と認められるためには「名義預金」とみなされないよう注意する必要があります。本記事では、預貯金...
死因贈与契約書とは、自分の死後に財産を受け取って欲しい人と契約する贈与契約です。遺言書とは異なり、両者の合意が必要な点が大きな違いです。本記事では、死因贈与契約...
相続人が被相続人から受けた遺贈や贈与は「特別受益」に当たり、相続財産への持ち戻しの対象となります。本記事では特別受益の持ち戻し免除について、方法・注意点・トラブ...
相続放棄については、市役所の法律相談会で無料相談可能です。しかし、申述は裁判所でおこなう必要があるなど注意点もあります。そのため、できる限り早い段階で相談にいく...
本記事では、相続におけるお金の渡し方を知りたい方に向けて、相続のお金の渡し方に関する基礎知識、生前と死後それぞれのお金を渡す方法、お金の渡し方について相談できる...