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遺産分割協議における特別代理人とは?選任が必要な場合や手続きの流れを解説

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相続が発生した際、相続人の中に未成年者や認知症などで判断能力が低下してしまっている方が含まれている場合は、遺産分割協議をおこなうに際して特別代理人の選任が必要となる場合があります。

しかし、特別代理人の選任にあたっては、以下のような疑問を持っている方も多いでしょう。

  • 「相続の特別代理人には誰がなれるの?」
  • 「相続の特別代理人はどうやって選任するの?」

本記事では、特別代理人とは誰がなるものなのか、どのように特別代理人を選任するのか、特別代理人の役割について具体的に解説します。

また、特別代理人が必要なケースや手続きの流れなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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特別代理人とは?利益相反のある遺産分割協議の際に選任される代理人のこと

家事事件手続法にいう特別代理人とは、未成年者または成年被後見人について、法定代理人がない場合または法定代理人が代理権をおこなうことができない場合において、一定の場合に選任される代理人のことをいいます。

(特別代理人)

第十九条 裁判長は、未成年者又は成年被後見人について、法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、家事事件の手続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、特別代理人を選任することができる。

2特別代理人の選任の裁判は、疎明に基づいてする。

3裁判所は、いつでも特別代理人を改任することができる。

4特別代理人が手続行為をするには、後見人と同一の授権がなければならない。

5第一項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

遺産分割の当事者の中に未成年者がいる場合には、未成年者の親権者(両親など)も相続人となる場合がありますが、その場合には、親権者は未成年者の代理人となることはできません

親権者と未成年者の利益が相反しているからです。

たとえば、親権者である父が亡くなり、親権者である母とその子が相続をする場合、母と子とのあいだでお互いに利益が相反しています。

母と子は共同相続人として父の財産をお互いに分ける立場にあり、どちらかが遺産を多くもらえば、その反面、どちらかの取り分が減ってしまいます。

このような場合、母が子の代理人となれば、子の遺産を減らし、母の遺産を多くするということも出来てしまいます。

そのような事態を避けるために、利益相反となるケースでは家庭裁判所に対して特別代理人の選任を請求しなければなりません。

このような観点から選任されるので、親権者が共同相続人ではない場合には、親権者は法定代理人として遺産分割協議に関与することが出来ます。

もっとも、この場合であっても、子が複数いる場合に、それぞれの代理人となると、子の間で利益が相反してしまいますので、特別代理人の選任を必要とします。

なお、特別代理人を必要とする相続人が複数いるときは、その人数分の特別代理人が選任されることになります。

特別代理人は、家庭裁判所の審判で決められた行為に関して代理権などを行使することになります。

したがって、家庭裁判所の審判に記載がない行為について、代理などをすることはできません。

特別代理人の候補者を指定することができる

特別代理人になるために、特別な資格はいりません。

相続の当事者に該当しないという条件を満たせば、誰でも特別代理人の候補者になることが可能です。

裁判所に対して申し立てる際に、特別代理人の候補者を指定することもできます。

そのため、叔父・叔母・祖父母などの共同相続人にはならない親族が代理することも可能です。

なお、裁判所から任命を受けた場合は、相続人に代わって法律行為をおこなうことが認められていますが、候補者がそのまま選任されるとは限りません

また、特別代理人候補者を選ばずに申し立てをおこなうことも可能です。

その場合は、家庭裁判所が代理人を選任します。

候補者なしで家庭裁判所が代理人を選任する場合は、弁護士や司法書士などの専門家が選任されるのが一般的です。

特別代理人ができること

特別代理人に選任された方は、未成年者や成年被後見人などの相続人に代わって手続きをおこないます。

具体的には、遺産分割協議へ参加し、相続手続きにおいて必要書類への署名捺印などもおこなうことが可能です。

もっとも、特別代理人は、ある程度の公平な分割によって未成年者の利益が害されないことが確認された段階で選任されることが多いです。

未成年者の利益が確保されているからこそ、非専門家である一般の親族が候補者となることもできるのです。

遺産分割協議において特別代理人が必要になる主なケース2選

ここでは、遺産分割協議において特別代理人が必要になるケースについて詳しく見てみましょう。

主なケースとして、以下2つを紹介します。

1.相続人に未成年者とその親権者がいる場合

相続人に未成年者と親権者がいるときは、相続において特別代理人が必要です。

たとえば、父・母・子ども二人がいる家族だとしましょう。

この家庭で父が死亡した場合、母と子ども二人が相続人となりますが、未成年者である子どもについて、特別代理人の選任が必要です。

そのため、兄は成人していて弟は成人していないという場合には、未成年者である弟にのみ特別代理人の選任が必要となります。

成人している兄は、自分自身が遺産分割協議に参加することができます。

兄も弟も双方が未成年であれば、それぞれ一人ずつ特別代理人の選任が必要です。

兄と弟の代理人を兼任することはできませんので、特別代理人が二人、必要になります。

子どもが何人であっても、未成年者の相続人が複数人いるケースでは、人数分の特別代理人を選ばなければなりません

2.相続人に被後見人と後見人などがいる場合

相続人に成年被後見人とその成年後見人がいる場合も、特別代理人を選任しなければなりません。

そもそも成年被後見人とは、認知症や知的障害などによって判断能力を失っている方で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた方のことです。

成年被後見人には、普段から成年後見人がついています。

成年後見人は、成年被後見人の生活・医療・介護・福祉などに気を配り、不動産や預貯金などの財産を管理したり、契約締結を代理したりする方のことです。

成年被後見人は判断能力を失っているため、何らかの契約をしようとする際、内容をよくわからないまま契約締結してしまい、不利益や被害を受けるおそれなどがあります。

そのため、保護や支援をするために設置されているのが、成年後見制度なのです。

家族が成年後見人になっていて、相続が発したときに成年後見人と成年被後見人の両方が相続人になったときは、親権者と未成年者の関係と同じく利益相反にあたります。

そのため、特別代理人を選ばなければなりません。

たとえば、次のような例で考えてみましょう。

  • 亡くなった方:父
  • 相続人1:認知症で成年後見制度を利用している母
  • 相続人2:認知症の母の成年後見人である子(成人)

この場合、成年後見人である子が被後見人となる母の代理人になることはできません。そのため、特別代理人を選ぶ必要があります。

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相続が発生してから特別代理人を選任するまでの流れ|4ステップ

相続手続きにおいて特別代理人を選任するには、どうすればよいのでしょうか。

相続が発生してから特別代理人を選任するまでの流れについて具体的に確認しておきましょう。

【特別代理人選任手続きの基本事項】

申立人

親権者もしくは利害関係人

申立先

家庭裁判所

申立費用

収入印紙800円分

1.必要書類などを準備する

まずは申し立てに必要な書類を準備しましょう。手続きに必要な書類は以下のとおりです。

【特別代理人選任手続きの必要書類】

  • 申立書
  • 未成年の子や成年被後見人である親など、特別代理人を要する方の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附表
  • 利益相反に関する資料
  • 被相続人の遺産状況がわかる遺産分割協議書案
  • 特別代理人候補者の承諾書

なかでも重要な書類は、遺産分割協議書案です。

遺産分割協議書案には、相続人同士で決めた遺産分割内容を明示します。

遺産分割協議書案に決まった書式はありませんが、遺産分割の対象となる故人の財産が明記されている必要があります。

また、誰がどの財産を相続するかを記載しなければなりません。

特別代理人の選任に際して、遺産分割協議書案を提出して認められれば、遺産分割は基本的にはそれに従っておこなわれます。

というのも、特別代理人の選任申立てにおいては、未成年者の利益が確保されていることが担保として裁判所も選任しますので、その担保の前提となる一度認められた遺産分割協議書案を後から変更すると、未成年者の利益が害されてしまう可能性があるからです。

そのため、まずは相続人全員がきちんと納得できる内容を作成しましょう。

遺産分割協議書の作成に際しては、相続手続きに関する法律専門家である弁護士によるサポートを受けると安心です。

2.家庭裁判所に申し立てをする

申し立ては、裁判所に書類を提出することで完了します。

申立先は、未成年者または成年被後見人である相続人の住所を管轄する家庭裁判所です。

親権者もしくは利害関係人のみが、申し立てをおこなうことができます。

なお、申立てには800円分の収入印紙が必要です。

3.裁判所で審理がおこなわれる

申し立てが完了すると裁判所で審理がおこなわれます。

4.裁判所から審判が出されて特別代理人が選任される

裁判所が審判を終えて結果が決まれば、特別代理人の資格を証明する特別代理人選任審判書謄本という書面が送られてきます。

遺産分割協議書案や候補者自身に問題がない場合は、申し立てから1ヵ月ほどすると交付されるのが一般的です。

遺産分割協議の特別代理人を弁護士に依頼する3つのメリット

特別代理人になるために、特別な資格は必要ありません。しかし、弁護士に依頼するのが最も賢明です。

特別代理人は、候補者を指定して申し立てをすれば、家庭裁判所で審理がなされて決定します。

裁判所の判断によって候補者が選ばれるかどうかはわかりません。

しかし、候補者を祖父母などの親族ではなく、弁護士などの専門家にしておけば、指定した方が選ばれる可能性は高まるでしょう。

以下では、遺産分割協議の特別代理人を弁護士に依頼するメリットについて、具体的に3つ紹介します。

1.特別代理人の選任手続きを任せられる

弁護士に依頼すれば、特別代理人の申し立て段階から全ての手続きを任せることができます。

通常は、特別代理人の問題が生じる前から依頼をしていることでしょう。

相続は、一生のうちに何度も起こることではありません。

とくに特別代理人の選任手続きをしなければならない状況に慣れている方はいないでしょう。

そのため、申立書の書き方や提出方法など、わからないことが多いはずです。

選任手続きから任せることができれば、調べものをする時間や書類不備などに対応するストレスを大幅に軽減することができます。

非専門家であるご自身で手続きをおこなってしまい、問題が大きくなってしまう前に、相続手続きに関する法律専門家である弁護士に相談・依頼をおこなうことが賢明です。

2.遺産分割協議書案の作成も依頼できる

特別代理人の選任申立てをするためには、遺産分割協議書案が必要です。

弁護士に依頼すれば遺産分割協議書案を作成してもらうことができます。

とくに、特別代理人が必要なケースでは、特別代理人を申し立てる際に遺産分割協議書案も提出して家庭裁判所の理解を得なければなりません

裁判所は遺産分割協議書案の内容に不備がないか、未成年者や成年被後見人にとって不利な内容でないかを審査をします。

遺産分割協議書案を作成する際に気をつけなければならないことはたくさんあります。

裁判所との調整や、その他の相続人との関係調整も欠かせません。

弁護士に依頼すれば、裁判官が納得する遺産分割協議書案をスムーズに作成してくれるでしょう。

3.遺族にとってベストな遺産分割案を提案してくれる

弁護士であれば、全ての遺族にとってベストな遺産分割案を提案し、また、裁判所が納得できるような遺産分割協議書案を作成してくれるでしょう。

出来るだけ早い段階で、相続手続きについては信頼できる弁護士に依頼するのが一番です。

遺産分割協議で特別代理人を選任する際の3つの注意点

遺産分割協議をおこなうにあたり、特別代理人の選任の申立てをする際に注意しておくべきことがあります。

次の3つの注意点を踏まえて選任しましょう。

1.相続人ひとりにつき特別代理人がひとり必要になる

特別代理人は、複数の未成年者や成年被後見人の代理をすることはできません。

複数の相続人の代理人をすることは利益相反にあたるからです。

そのため、未成年者や成年被後見人一人につき代理人一人が必要です。

2.法定相続分どおりに遺産分割する場合でも必要になる

法定相続分にしたがって遺産分割をするのであれば、全ての被相続人にとって平等であると考えられます。

しかし、法定相続分どおりに相続をする場合であっても、被相続人に未成年者や成年被後見人がいる場合は、特別代理人を選任しなければなりません。

未成年者や成年被後見人の利益が保護されるかどうかが重要だからです。

3.成年後見監督人がいる場合は特別代理人が不要となる

成年後見人を監督する成年後見監督人が選任されているケースでは、特別代理人を用意する必要がありません。

成年後見監督人は、成年後見人がおこなう事務の内容を監督して、定期的に家庭裁判所に報告する役割を担う方です。

この場合、利益相反行為を成年後見人がおこなう際には、監督人が被後見人を代理することとなるので、特別代理人の選任申立てをわざわざする必要はないためです。

さいごに|相続人に未成年者や被後見人がいる場合は弁護士に相談を!

遺産分割協議における特別代理人は、未成年者や成年後見人を保護するための重要な役割を果たします。

特別代理人の選任が必要な場合は速やかに家庭裁判所に申し立てをすることが必要です。

また、特別代理人の選任申立てを必要とするような複雑なケースで、ご自身で手続きをおこなうことは大変です。

この場合、弁護士による専門的なサポートを受けることで、手続きを適切かつスムーズに進めることができます。

相続人に未成年者や被後見人がいることで不安やわからないことがある方は、ポータルサイト「ベンナビ相続」で弁護士を探してみましょう

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きっと信頼できる弁護士がみつかります。初回無料相談に応じている法律事務所も多いので、まずは相談してみましょう。

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この記事の監修者
虎ノ門法律経済事務所(西宮支店)
亀井 瑞邑 (兵庫県弁護士会)
企業法務・一般民事・刑事など多岐に渡る業務を経験。相続分野では相続トラブルの解決を得意とし、円満な解決へと導いてきた実績があります。皆様の今後の人生が少しでも前向きになるよう、全力でサポートします。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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