遺族共済年金(いぞくきょうさいねんきん)とは、平成27年9月30日以前に公務員などの共済組合員・退職共済年金等受給者等であった人が死亡した際に支給されていた遺族年金です。
現在は遺族共済年金というものはなく、遺族厚生年金と一元化された運用がなされており、制度改正以前に受給権を得ていた人以外は遺族厚生年金を受給することになっています。
そのため、新規に遺族共済年金を受給するというケースは稀で、基本的には遺族厚生年金の手続きをおこなえばよいのですが、遺族共済年金自体が完全になくなったというわけではありません。
一家の大黒柱が亡くなったときに、家族の暮らしの支えとなるのが公的年金制度のひとつである「遺族年金」です。
遺族年金だけで残された家族の生活費の全額が賄えるわけではありませんが、生活の基盤になるお金であることに間違いありません。
そもそも公的な遺族年金としては、以前は「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」「遺族共済年金」の3種類が運用されていましたが、現在新しく受給権を得た場合には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類のどちらかの手続きをすることになりますので、従来よりも遺族年金の手続きは簡単になったといえるでしょう。
しかし、制度改正以前に受給権が発生していた遺族共済年金については、現在でも各共済組合に申請をおこなわなければならないため、該当可能性のある方はこちらもきちんと知っておくのがおすすめです。
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今回は、(旧)遺族共済年金をはじめとする遺族年金の制度と手続きの基礎知識についてご紹介いたします。
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以前の遺族年金には、遺族基礎年金・遺族厚生年金・遺族共済年金の3種類があり、亡くなった人の職業によって受け取れる年金の種類が異なっていました。
ここでは、以前の遺族年金を含めた3種類の制度概要についてご紹介いたします。
遺族基礎年金は、主に自営業の方などが亡くなった際に受給できる遺族年金です。
国民年金の加入者が死亡したとき、または以前国民年金の加入者であって日本国内に住所があり、かつ60歳~65歳未満で死亡したとき、その加入者によって生活基盤を維持されていた「18歳未満の年度末までの子ども(障害のある子は20歳未満)がいる配偶者」またはその子どもに支給されるのが遺族基礎年金です。
遺族基礎年金の大きな特徴としては、所定の年齢までの子どもがいない家庭には支給されないという点が挙げられます。
子育て世代に主眼を置いた生活保障としての公的年金のため、18歳の年度末までの子ども(障害のある子の場合は20歳未満)の人数に応じて、年金額の加算もおこなわれるようになっています。
遺族基礎年金の支給条件は、死亡した月の前々月までの国民年金の加入期間の2/3以上保険料が納付または免除されていること、さらに死亡した月の前々月までの1年間に保険料の未納がないことです。
会社員などの厚生年金加入者が死亡したとき、または厚生年金の加入中に初診日のある傷病で初診日から5年以内に死亡したとき、その加入者によって生活基盤を維持されていた遺族に対して支給されるのが遺族厚生年金です。
現在は、公務員等の旧共済年金加入者についても厚生年金の加入手続きが取られているため、自営業等の方を除いた多くの場合では遺族厚生年金を受給することになるかと思います。
遺族厚生年金は、遺族基礎年金の金額に加算されて支給され、その遺族の範囲も遺族基礎年金より広く、「18歳未満の子がいない配偶者」と「その他の人」にも支給されます。
したがって、夫婦や家族を対象とした公的年金として、手厚く遺族の生活保障をしてくれる制度といえるでしょう。
遺族厚生年金の支給条件も、遺族基礎年金の支給条件と同じく死亡した月の前々月までの国民年金の加入期間の2/3以上保険料が納付または免除されていること、さらに死亡した月の前々月までの1年間に保険料の未納がないことになっています。
以前の遺族共済年金は、公務員の方が亡くなった際に受給できる遺族年金で、遺族厚生年金とほぼ同様の内容になっていました。
優先順位 |
1 |
2 |
3 |
4 |
遺族 |
夫(55歳以上) |
父母 |
孫 |
祖父母 |
※これらのうち最も順位の高い人が受給者となります。
死亡した人 |
受給対象者 |
支給種類 |
自営業 |
18歳未満の子どもがいる配偶者 |
遺族基礎年金 |
子どものない妻 |
死亡一時金 |
|
会社員 |
18歳未満の子どもがいる配偶者 |
遺族基礎年金 |
子どものない妻(40歳未満) |
遺族厚生年金 |
|
子どものない妻(40歳~65歳) |
遺族厚生年金 |
|
公務員 |
18歳未満の子どもがいる配偶者 |
遺族基礎年金 |
子どものない妻(40歳未満) |
遺族共済年金(※) |
|
子どものない妻(40歳~65歳) |
遺族共済年金(※) |
※現在(平成27年10月1日以降に受給権が発生した場合)は遺族厚生年金が受給できます。
遺族年金は無条件で支給されるわけではなく、亡くなった本人自身はもちろん、受け取る側の遺族にも受給のための要件が設けられています。
遺族共済年金は、平成27年9月30日以前に亡くなった共済組合に加入していた20歳~60歳までの方(公的年金制度の加入対象の方)はもちろん、死亡当時既に老後の年金や障害年金を受け取っていた方の遺族にも支給されますが、亡くなった本人には、所定の期間きちんと保険料を納めていることが要求されます。
具体的には、加入している期間(保険料を支払うべき期間)のうち3分の2以上の期間を納めている、または免除等の手続きをしていることが必要です。
また、平成27年9月30日以前に既に老齢年金や障害年金を受け取っていた方(または60歳以上で受給資格を持っていた方)については、滞納期間等の要件はありません。
以上が亡くなった本人の要件ですが、受け取る側の要件や受給資格についてはどうなっているのでしょうか。
ここでは、遺族共済年金を受け取るために知っておくべき事を整理してみました。
遺族共済年金を受給するためには、下記のいずれかの場合に当てはまっている必要があります。
※前提条件として、死亡日時が平成27年9月30日以前であることを満たす必要があります。
※平成27年10月1日以降に受給権が発生した場合は、遺族共済年金でなく遺族厚生年金の手続きが必要です。
(旧)遺族共済年金を受給できる人は、公務員等の共済年金に加入している人に生計を維持されていた遺族(年間収入850万円未満の人)で、下記の条件のいずれかを満たしている人になり、この中で順位が一番高い人が遺族共済年金を受給することになります。
(旧)遺族共済年金を受給している人が、次のいずれかに該当する場合は受給権が失われます。
(旧)遺族共済年金の額は、短期要件・長期要件で計算の方法が異なりますが、基本的な計算方法は
【厚生年金相当額+賦課加算額(+妻加算額)=遺族共済年金額】となっています。
遺族共済年金の金額目安は下記の表のとおりですが、これらの金額は加入期間や給与額等によって大きく異なるため、自分が受け取れる正確な遺族年金の金額は、必要書類を揃えて直接日本年金機構または専門家に相談のうえ、確認することをおすすめします。
参考:遺族共済年金支給額 概算額早見表(平成27年12月時点|単位:円)
※月額は参考値で、実際には年額を6等分した金額が2ヶ月ごとに支給されます。
(旧)遺族共済年金の請求先は、亡くなった人が所属していた共済組合で、申請期限は死亡した日の翌日から5年以内となっています。
遺族年金を受給するためには、遺族給付裁定請求書(電話等で共済組合に請求するか、ホームページからダウンロードします)と下記の必要書類を準備し、共済組合の窓口や所定の部署へ郵送で提出します。
このほかにも、請求者の年金手帳や印鑑(認印)、その他の書類が必要になる場合があるので、共済組合にあらかじめ問い合わせておくのが無難です。
なお、遺族基礎年金のみを請求する場合は亡くなった人の住所地の市区町村役場の年金窓口、遺族共済年金のみを請求する場合は亡くなった人が加入していた共済組合、それ以外は基本的に全国の年金事務所または年金相談センターに請求することになります。
平成26年3月までは、遺族基礎年金を受給できる人が「子どもがいる妻」や「子ども」に限られていました。
つまり夫は受給の対象外だったのですが、男女差を解消しようということで、平成26年4月1日から「子どものいる妻」から「子どものいる配偶者」に受給対象者が変更されました。
このため、父子家庭でも遺族基礎年金の受給ができるようになりましたが、実施日以降に該当したケースに限られますので、平成26年3月31日以前に既に父子家庭だった場合は受給できないということになっています。
変更前 |
平成26年改正以後 |
||
夫が受け取る遺族年金 |
夫が受け取る遺族年金 |
||
遺族基礎年金 |
遺族厚生年金 |
遺族基礎年金 |
遺族厚生年金 |
× |
△ |
子どもがいる場合 |
△ |
子どもがいない場合 |
※△:妻の死亡時に55歳以上の夫に支給されますが、60歳までは支給停止となります。
ただし、遺族基礎年金を受け取れる夫(子どものいる夫)で妻の死亡時に55歳以上の場合は、60歳までの支給停止はおこなわれず、60歳前でも遺族厚生年金を受け取ることができます。
この場合の子どもとは、18歳到達年度の末日までの子ども、または20歳未満で1・2級の障害状態のある子どものことをいいます。「死亡当時、生計を維持されていた」と認められるための遺族の年収850万円未満という基準は変わっていません。
です。
遺族厚生年金の注意が必要な点としては、夫の受給については年齢制限があるということです。
妻が亡くなったときに夫が55歳未満の場合は、遺族厚生年金を受け取ることはできません。
ただし、対象年齢の子どもがいればその子どもが18歳到達年度までは遺族厚生年金を受け取ることができます。
遺族厚生年金の大きな特徴としては、対象年齢の子どもがいない妻でも給付金を受け取れるという点が挙げられます。
ただし、夫が死亡したときに30歳未満である妻が受給する場合は、5年間の有期給付しか受け取ることができません。
もっとも、夫が死亡したときに妻が40歳以上であったり、子どもが所定の年齢を超えて遺族基礎年金を受け取れなくなった妻については、中高齢の寡婦加算として65歳になるまで年額58万4500円を受け取れるようになっています。
遺族年金の手続きは、申請する年金の種類によって窓口や手続き方法が異なっていたり、受給要件や必要書類に違いがあるなど不安に思われる点が多いかと思います。
ここでは、遺族年金に関して相談できる専門家をご紹介いたします。
遺族基礎年金や遺族厚生年金については、年金事務所で相談するのが手っ取り早いでしょう。
窓口での相談のほか、ねんきんダイヤルという電話窓口でも相談を受け付けています。
亡くなった人が年金受給者だった場合には遺族年金を受け取る・受け取らないに関わらず、年金事務所へ「年金受給者死亡届」を提出する必要がありますから、併せて必要書類を尋ねてみるのがおすすめです。
年金の基本的な手続きに関しては年金機構に問い合わせるのが吉ですが、時間帯によっては混雑していたり、電話が繋がりにくい場合があります。
事実婚や内縁の妻の遺族年金相談に特化した事務所です。
別居婚の妻や離婚後の妻、近親婚の妻に関しても遺族年金申請サポートをおこなっています。
特徴としては、事実婚・内縁関係の妻である人の遺族年金に関する相談を無料で受け付けており、着手金0円を謳っています。
事務所は大分県ですが、全国どこでも対応してくれるうえ、土日祝日も対応しているので安心ですね。
法テラスでも遺族年金についての相談を受け付けており、電話やメールでの相談のほか、全国各地の事務所でも面談等の利用が可能です。
社会保険労務士や弁護士・司法書士へ相談を考えている場合は、法テラスを経由してみるのもよいかと思います。
遺族年金は、種類によって申請先や手続き方法が異なっており、支給される額にも大きな開きがあるのが現状です。
また、寡婦年金や死亡一時金といった制度が利用できる場合もあるので、どの給付がもらえるのかしっかり確認しておくのがよいでしょう。
本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
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