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使用貸借は相続の対象外|使用貸借の基礎知識を解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
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使用貸借(しようたいしゃく)とは、目的物を無償で使用・収益できる権利のことをいいます。

例えば、兄弟が使わなくなった自転車を借りて通学する、親の土地を無償で借りて家を建てて住むなどが使用貸借の典型例です。

使用貸借は、貸主(貸す人)と借主(借りる人)の個人的な人間関係・信頼関係に基づく権利であることから、原則として当事者のどちらかが死亡したら契約が終了し、借りたものを返さなければなりません。

今回は、使用貸借と相続について、節税につながる基礎知識をご紹介します。

使用貸借でお悩みの方へ

使用貸借は、贈与税がかからないものの相続税が高くなる傾向があります。

また借主が死亡した場合、原則として相続の対象外になります。

相続において使用貸借でお悩みの方は、弁護士への相談・依頼がおすすめです。

弁護士に相談・依頼すれば、下記のようなメリットがあります。

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この記事に記載の情報は2023年12月05日時点のものです

使用貸借が相続の対象外になる理由

使用貸借契約が成立すると、借主は契約ないし目的物の用法に従って無償収益をおこない、通常の必要費を負担します

使用貸借は、貸主・借主間の個人的な人間関係・信頼関係に基づく権利であることから、借主の一身専属権として捉えられており、その終了原因として借主の死亡が法定されています(民法597条)。

しかし一方で、借主の個人的な人間関係・信頼関係がその相続人にも承継されるような場合(借主である母&その相続人である娘と貸主が家族ぐるみで長年仲良くしてきたケースなど)には、使用貸借が相続の対象となる、あるいは貸主と借主の相続人との間で新たな使用貸借契約が発生するという判断に至った判例もあります。

ここでは、使用貸借の基礎知識と相続の際の注意点をご紹介します。

使用貸借の内容

親の土地を子どもに時価より安い金額で売った場合、みなし贈与として贈与税を支払わなければなりません

基本的には、売却先が子どもであっても赤の他人と取引するときと同じような金額で売却しないと贈与税が掛かると考えてください。

しかし、使用貸借として親の土地に子どもが家を建てた場合、権利金や地代を支払わない無償利用であるならば、借地権相当額の贈与税が課税されることはありません。

ここで地代等を支払ってしまうと、使用貸借ではなく賃貸借(後述)と判断され、贈与税が課税されるおそれがあるので注意が必要ですが、簡単にいえば、このような無償での使用貸借はみなし贈与にならないのです。

賃貸借との違い

「物」の賃借について、法律上は「賃貸借」と「使用貸借」の2つのパターンが考えられます。

賃料が伴う貸借が賃貸借であり、賃料がなく無償の貸借が使用貸借です。

通常は、第三者との取引は賃貸借でおこなわれ、親族間など信頼関係がある人との取引は使用貸借でおこなわれることが多いといえるでしょう。

賃貸借も使用貸借も、「物」の所有権は貸主に留保され、借主は物の返還義務を負う点では共通しています

しかし、賃借権は借主の一身相続権ではなく相続の対象となりますが、使用貸借の場合は借主の一身専属権となっているため相続の対象とならないのが原則です。

 

賃貸借

使用貸借

契約の内容と根拠条文

有償契約(民法601条)

無償契約(民法593条)

賃料

あり

なし(無償)

権利の性質

一身専属権ではない

借主の一身専属権

契約の存続期間

契約で定めた期間(最長30年)
※法定更新可能

返還時期の定めがあるときはその時まで、定めがないときは契約に定めた目的に従い使用収益を終えた時まで。
※ただし借主の死亡によって終了する

相続

貸主・借主ともに相続できる

貸主:相続できる
借主:相続できない(原則)

使用貸借は原則相続の対象外だが相続できる場合もある

先に述べたとおり、原則として使用貸借は相続の対象外になりますが、例外的に相続の対象となったり、貸主と借主の相続人との間で新たな使用貸借契約を結べる場合があります。

貸主の死亡の場合

借主に目的物を使用・収益させるという貸主の債務が相続人に承継されるので、借主に影響はありません。

借主の死亡の場合

<原則>相続の対象とならない

民法597条は「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」と規定しており、使用貸借は相続の対象にはなりません。

原則として、借主の死亡によって使用貸借関係は終了することになります。

<例外>相続の対象となる場合がある

ただし、民法597条の規定は任意規定と解されており、「借主の死亡後も相続人に引き続き使用貸借をさせること」など、別段の定めをすることができます。

また、別段の定めがないときであっても、使用貸借契約の内容(対象物・使用目的など)から当事者間の意思を推測し、借主の死亡により当然に使用貸借関係が終了するとはいえない場合には、相続の対象とできることもあります。

なお、借主死亡後にその相続人が引き続き使用貸借物を使用していることについて、貸主がそれを知りながら特に異議を述べなかった場合は、黙示の承諾があったものとして使用貸借関係が継続する余地があるといわれています。

使用貸借が例外的に相続の対象となる3つのパターン

①別段の定めがある場合

使用貸借契約で、「借主が死亡した場合にその相続人が相続する」「借主の死亡後も相続人が引き続き使用貸借を継続する」等の特約がある場合は、相続の対象となります。

②当事者間の通常の意思解釈による場合

使用貸借契約は口頭によりなされることが多く、ある程度長期にわたることから当初の契約内容が不明確であることも珍しくありません。

このことから、別段の定めがないケースがほとんどかと思いますが、不動産の使用借権(特に建物所有を目的とする土地の使用借権)については、建物の使用収益の必要のある限り土地の使用収益の必要があるのが通常です。

したがって、当事者間の通常の意思解釈として、借主が死亡しても使用収益の必要性が失われないとして、使用借権の相続が認められると判断する裁判例もあります。(東京地判昭和56年3月12日、東京高判平成13年4月18日、最判平成8年12月17日など)

③黙示の承諾

使用貸借中に借主が死亡した際に、引き続きその相続人が使用していることを知っている貸主が特に異議を述べなかった場合は、現状を黙認しているものといえることから、相続人の使用貸借について貸主の黙示の承諾があったものとして使用貸借関係が継続する余地があると考えられています。

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使用貸借と相続税の関係

使用貸借の場合、贈与税が課税されることはありませんが、相続税はかかります

つまり、使用貸借自体には借地権のように非常に大きな財産的価値があるわけではないのですが、権利金や地代分など借地権に相当する資産を相続することになるため、その評価額分だけ相続税が高くなるというわけです。

したがって、使用貸借の際に贈与税がかからない代わりに、後々相続の際には借地権分も含めた自用地(更地)の評価分で相続税がしっかり課税されることになるということに注意しなければなりません。

ここでは、使用貸借の相続税評価と、節税のポイントをご紹介します。

使用貸借の相続税評価

使用貸借がおこなわれていた場合の土地評価は、原則として更地評価(100%評価)です。

なぜなら税務上、使用貸借による土地の使用に関する権利は借地借家法等の適用がなく、借地権と比較して極めて微弱な権利であり、その経済的な価値はないものとされているためです。

子どもが親から土地を借りて子ども名義で家を建てたとしても、更地評価がなされることに変わりありませんし、仮に子どもが建てた家を賃貸に出していても同様です。

節税のポイント

使用貸借は贈与税がかかりませんが、更地評価によって相続税が高くなる場合もあります。

また、賃貸借であっても贈与税がかからない場合はいくつかあり、例えば付近の通常の相場並の地代+権利金を払っているケースや税法で規定された相当の地代を払っているケースなどでは贈与税は課税されません

親子間でも賃貸借契約がきちんと結ばれていれば、相続税を支払う際には土地の評価は約15%、建物の評価も約30%程度減額評価されます(小規模宅地評価の特例が使えればさらに減額されます)。

相続税対策を考える上でポイントになるのは、相続財産を減らすことです。

このとき、土地や建物を売却するのも1つの手ではありますが、その売却代金である現金に相続税がかかることから根本的な解決にはなりません。

したがって、相続税対策を考える際に最も重要なことは、相続税の評価額を下げるということになります。

まとめ

使用貸借は、贈与税はかからないものの相続税が高くなる傾向にあり、また借りている人が死亡してしまった場合に原則として相続ができないという特徴があります。

当事者(特に借主)が亡くなってしまった場合には大きなもめ事に発展する可能性もあるため、使用貸借をする際には相続人が引き続き利用できるよう特約などを考えておくのも大切かもしれません。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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