遺留分を渡さなくていい方法はあるのか、気になっている方もいるでしょう。
遺留分は法律で保障された権利なので、相続人から正当な請求があった場合、遺言執行者や他の相続人は遺留分侵害額を支払う義務があります。ただし、生前の対策や財産構成を工夫すれば、遺留分を「減らす」「請求されないようにする」ことは可能です。
遺留分を渡さないための5つの手段や生前にできる具体的なアクション、請求された際の対応策について解説します。
遺留分(いりゅうぶん)とは、亡くなった人の配偶者・子・直系尊属(父母など)に法律で保障された、最低限の遺産取得分のことです。
もし遺言書によって特定の人物に財産を集中させる指定があっても、遺留分を持つ相続人が権利を行使すれば、一定の割合の財産を金銭で受け取れます。各相続人に認められる具体的な割合は、相続人の構成によって以下のように定められています。
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相続人の構成 |
遺留分の合計 |
各相続人の遺留分 |
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配偶者のみ |
遺産の1/2 |
配偶者:1/2 |
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子のみ(1人) |
遺産の1/2 |
子:1/2 |
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子のみ(2人) |
遺産の1/2 |
各子:1/4 |
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配偶者+子 |
遺産の1/2 |
配偶者:1/4、子:1/4 |
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直系尊属のみ |
遺産の1/3 |
均等に分割 |
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配偶者+直系尊属 |
遺産の1/2 |
配偶者:1/3、直系尊属:1/6 |
遺言の内容が上記の割合を侵害している場合、遺留分を侵害された相続人は、財産を多く受け取った相手に対して遺留分侵害額請求が可能です。
遺留分侵害額請求とは、侵害された分を金銭で支払うよう求める権利であり、不動産などの財産そのものを取り戻す権利ではない点に注意が必要です。
なお、兄弟姉妹およびその代襲相続人である甥・姪には、遺留分が一切認められていません。 相続人が兄弟姉妹のみであるケースでは、遺留分を考慮する必要はなく、遺言によって特定の相手に全ての財産を渡すことも可能です。
たとえ遺留分を渡したくない人がいたとしても、基本的に遺留分は渡さなければなりません。遺留分は、遺言書よりも強い法的効力を持つ権利だからです。
相続人がどれだけ丁寧に遺言書を作成しても、遺留分権利者が「侵害された」と主張すれば、法的に無視はできません。「全財産を長男に相続させる」という遺言を残しても、ほかの子どもが遺留分侵害額請求を起こせば、長男は現金で支払う必要があります。
ただし、養子縁組による相続人の増加や生前贈与とセットでおこなう遺留分の放棄といった法的手段を講じれば、遺留分を渡さずに済む可能性があります。
単に「渡さない」と拒否するのではなく、遺留分侵害額請求が発生しないような仕組みを事前に整えておくことが現実的な対策といえるでしょう。
遺留分を渡したくない場合、条件付きではありますが、遺留分の分与を回避する方法はいくつかあります。具体的に解説します。
生前に、相続人本人が家庭裁判所へ申し立てをおこない、遺留分の権利をあらかじめ手放してもらう方法です。放棄が成立すれば、その相続人は将来にわたって遺留分を請求できなくなります。
遺留分の放棄は、被相続人の生前・死後どちらのタイミングでも可能です。放棄が成立すれば、その相続人は将来にわたって遺留分を請求できなくなりますが、時期によって手続きが異なります。
被相続人の生前に放棄を進める場合は、相続人本人が家庭裁判所へ申し立てをおこないます。家庭裁判所から遺留分放棄の許可を得るには、本人の自由意思に基づいているか・放棄に見合う代償が支払われているかといった厳しい条件を満たさなければなりません。
一方、被相続人の死後に放棄する場合は裁判所の手続きは不要で、ほかの相続人らに対して請求しない旨の意思表示をすれば成立します。いずれの場合も、強要や脅迫があったり、生前に裁判所を通さず念書だけを書かせたりした場合は法的に無効です。
事前の丁寧な話し合いと、適切な代償の準備が欠かせない方法といえるでしょう。
相続が発生した後に、相続人本人が一切の遺産を受け取らない相続放棄の手続きを取ってもらう方法です。相続放棄をすると、その相続人は最初から相続人ではなかったことになるため、遺留分の権利も自動的に消滅します。(民法第939条)
注意点として、相続放棄は死後にしかおこなえないので、生前に「相続を放棄する」という念書を本人に書かせたとしても法的拘束力はありません。生前に対策を完結させたい場合は、家庭裁判所の許可を要する遺留分の放棄を検討する必要があります。
遺留分の放棄は、本来遺留分を受け取るはずだった相続人がおこなう手続きです。権利を放棄すれば将来受け取れるはずの財産を失うので、すでに遺留分を受け取りたいと考えている相続人に放棄を納得してもらうのは難しいといえます。
被相続人に対して虐待・重大な侮辱・著しい非行があった相続人を、家庭裁判所の審判によって相続権ごと剥奪する方法です(民法第892条)。廃除が認められれば、遺留分を含む全ての相続権を失わせることができます。
ただし、相続人廃除は自分の意思や遺言状への記載で自由におこなえるものではなく、家庭裁判所への申し立てが必要です。また、相続人廃除が認められたとしても代襲相続が可能なので、相続人の子どもなどには遺留分を分与する必要があります。
相続欠格に該当する旨を主張するのもひとつの手です。相続欠格とは、悪質な行為をした相続人が家庭裁判所の審判を待たずに、当然に相続権を失う制度です(民法第891条)。
該当する事実があれば、遺留分ごと全ての相続権を失わせることができます。廃除のように申し立てや審判を経る必要がなく、事実が証明されれば法律上自動的に効力が生じる点が大きな特徴です。
欠格に該当する行為としては、次のとおりです。
「該当するかもしれない」という心当たりがある方は、まずは弁護士に相談するのをおすすめします。
付言事項(ふげんじこう)を活用すれば、法的手段を使わずに遺留分請求を思いとどまらせる効果が期待できます。付言事項とは、遺言書に存在する法的効力を持たないメッセージ欄のことです。
記載例は、次のとおりです。
なぜこの配分にしたのか・遺留分権利者に対する気持ちを丁寧に綴れば、相続人が感情的に納得し、請求を取りやめる可能性もゼロではありません。法的強制力はありませんが、ほかの対策と組み合わせれば、請求リスクを下げられる可能性があります。
生前の遺留分放棄は、家庭裁判所の許可がなければ成立しません。裁判所はどのような基準で判断するのか、3つのポイントを押さえておきましょう。
最初に厳しくチェックされるのが、本人の意思です。被相続人やほかの相続人から強要・脅迫・誘導されていないか、真に自分の意思で放棄を申し立てているかが審査されます。
家庭裁判所は、申立人(放棄する本人)に対して直接ヒアリングをおこないます。「親に言われたから」「断れる雰囲気ではなかった」という状況では認められないので注意が必要です。
遺留分の放棄に向けた話し合いはおこないつつも、最終的な申し立ては本人が自発的におこなう必要があります。
遺留分を放棄する合理的な理由・必要性があるかも、重視されるポイントのひとつです。「財産を渡したくないから」という被相続人側の一方的な感情は、合理的な理由にはなりません。
裁判所が認めやすい理由の例は、次のとおりです。
客観的に見て、「放棄することに合理性がある」と判断してもらえるように理由を整理しておくことが必要です。
遺留分放棄に対する、十分な代償(見返り)が支払われているかどうかもチェックされます。遺留分は将来もらえるはずの財産的権利であり、その権利を手放してもらうには相応の見返りが必要だからです。
代償が見合っているかを判断する時のポイントは、次のとおりです。
代償が不十分だと判断されると、許可が下りません。遺留分放棄の交渉を進める前に、「遺留分の価値がいくらか」を弁護士に試算してもらい、それに見合う代償を準備することが重要です。
遺留分対策を講じれば、どのようなメリットが得られるのかを具体的に見ていきましょう。
遺留分対策の大きなメリットは、財産を自分の意思通りに特定の人へ集中させられることです。たとえば事業承継の場合、会社の株式や事業用不動産が複数の相続人に分散すると、経営の意思決定が困難になるリスクがあります。
遺留分を生前に対策しておけば、事業用資産を後継者に集中させ、不動産が共有状態になることも防ぐことが可能です。株主が増えて後継者が主導権を持てなくなったり、売却や分割・強いられたりする事態をあらかじめ回避できます。
自分が築いた財産を納得できる形で次の世代へ引き継ぐために、遺留分対策は非常に有効といえるでしょう。
生前対策を打っておけば、相続開始後に突然発生する金銭的負担を軽減できます。遺留分侵害額請求は、原則として現金での支払いです。
相続財産が不動産や自社株式など現金化しにくい資産で占められている場合、支払い原資を捻出するために不動産を急いで売却せざるを得ないケースがあります。焦った状態での売却は安値処分になりやすく、本来の資産価値を大きく損なうリスクがあります。
特に不動産オーナーや経営者にとって、この点は切実な問題です。生前のうちに手を打っておけば、最悪の事態をあらかじめ防げます。
生前対策を完了させておけば、遺された家族が相続をめぐって争わずに済む環境を整えられます。遺留分侵害額請求の調停・訴訟は、解決まで数年かかることも珍しくありません。
その間、家族関係は深刻な緊張状態が続き、当事者全員に精神的・経済的な負担がのしかかるのが現実です。生前に遺留分の放棄を済ませておけば、そもそも請求が起きる余地をなくせます。死後のトラブルをゼロにしたいと考えている方には特に有効な方法です。
一方で、遺留分対策にはリスクや注意点もあります。メリットだけを見て進めると、思わぬ落とし穴にはまることがあるので注意が必要です。
ここでは、遺留分を渡さなくていい方法を取った場合のデメリットを3つ解説します。
遺留分を渡さなくていい方法を選ぶ場合、親族間での感情的対立が深刻化しやすい傾向にあります。「あなたには財産を渡したくない」という意思表示は、当然ながら相手の感情を傷つけるからです。
また、廃除申し立てや遺留分放棄の交渉は、生前の関係をさらに悪化させるリスクがあります。親子間でおこなう場合はとくに、それまでの関係が修復不能な状態になることも珍しくありません。
感情的な摩擦を最小化するには、直接交渉ではなく弁護士を介することが有効です。遺言書の付言事項に「なぜこの配分にしたか」を詳しく書くことや、代償となる生前贈与で経済的な見返りを作っておくことも重要です。
法的に正しいだけでは解決しない問題が、家族間では数多くあります。進め方の丁寧さが対策の成否を左右するでしょう。
遺留分を渡さなくてよいとみなされるには、家庭裁判所の厳しい審査をクリアしなければなりません。廃除が認められるには、虐待・侮辱・著しい非行といった客観的な事実が必要であり、それを裏付ける証拠も必要です。
「仲が悪い」「疎遠だ」「気に入らない」といった感情的な理由をいくら積み上げても、裁判所には通用しないのが現実です。準備から申し立て、審判まで多大な労力と時間がかかるので、法律の専門家によるサポートも事実上必須といえるでしょう。
「簡単にできる対策ではない」という前提を理解した上で、弁護士と方針を立てるのをおすすめします。
遺留分対策として、「とにかく生前贈与で財産を減らそう」と考えるのは危険です。相続開始前10年以内の贈与は遺留分の計算に含まれるからです。
さらに、明らかに遺留分逃れを目的とした贈与は、ほかの相続人から特別受益として主張されるリスクがあります。最悪の場合、贈与の有効性をめぐる別の裁判に発展するおそれもあります。
財産移転の計画は10年以上の長期スパンで考え、弁護士や税理士と連携しながら進めることが重要です。
「まだ元気なうちに動ける」という状況にあるなら、生前対策が最も有効です。相続発生後の選択肢と比べて、格段に多くの手が打てるでしょう。
ここでは、生前から遺留分を渡したくない場合にできる4つの対策を紹介します。
養子縁組で法定相続人の数を増やせば、1人あたりの遺留分の割合を物理的に引き下げることができます。遺留分は「法定相続分の1/2」が基本ですが、法定相続人の構成によって異なります。
相続人が父母や祖父母などの直系尊属のみの場合は遺産全体の1/3、配偶者や子が含まれる場合は遺産全体の1/2が全体的な遺留分です。相続人が増えるほど1人あたりの取り分は減るため、孫を養子に迎えるだけで特定の相続人に渡る遺留分を圧縮できます。
たとえば配偶者と子で遺産を分ける場合、子が2人のときは各子の遺留分が1/8ですが、養子を1人加えて3人にすると1/12まで下がります(配偶者の遺留分は常に全体の1/4)。

ただし、あからさまな遺留分を減らす目的と判断されると、裁判で効力を否認されるリスクがあるので注意が必要です。後継者育成や扶養といった、ほかの目的で進めるのが無難です。
現金を生命保険の死亡保険金に換えて、相続財産の総額を圧縮する方法です。死亡保険金は原則「受取人固有の財産」とみなされ、相続財産には含まれません。
遺留分の計算対象からも外れるので、上手く活用すれば支払う遺留分の金額を大幅に下げることが可能です。資産の大部分を保険に換えるなど、ほかの相続人にとって極端に不公平な場合は、遺留分を算出するための基礎財産に持ち戻される場合があります。
バランスを保ちながら、どの程度まで保険に換えるべきか、専門家と相談しながら進めることが重要です。
できる限り早い段階から計画的に贈与を実行することも重要な対策です。早めに生前贈与すれば、特定の相続人(遺留分を渡したくない相手以外)に財産を贈与し、将来の相続財産をあらかじめ減らしておけます。
遺留分を計算には、相続開始前10年以内の贈与も含まれてしまいますが、10年を超えた贈与は原則として計算から外れます。早めの着手が将来の選択肢の広さを決めるので、「そろそろ相続対策を」と思った時点で迷わず動くことが重要です。
ほかの相続人に生前贈与して遺留分を放棄してもらえば、将来の紛争を防ぐことが可能です。相続放棄してもらうには、「今まとまった財産を渡す代わりに、将来の遺留分を放棄してほしい」という合意を取り付ける必要があります。
生前に相続権を放棄することは法律上できませんが、遺留分の場合は家庭裁判所の許可を得れば生前に放棄することが可能です。十分な生前贈与がおこなわれている事実は、裁判所が放棄を許可するための重要な判断材料となります。
手続きは、本人が家庭裁判所に遺留分放棄を申し立て、審査・許可を得れば完了です。 弁護士が話し合いに同席すれば、合意の質と手続きの確実性が大きく高まるでしょう。
すでに相続が発生し、遺留分侵害額請求を受けた場合でも、支払額を減らすための方法は存在します。
諦める前に、以下の3点を確認してください。
相手方が主張する評価額に対して専門家の鑑定で反論すれば、支払う遺留分を大幅に圧縮できる可能性があります。
不動産の評価基準には、時価・路線価・固定資産税評価額などの種類があり、算出方法によって金額が数百万円単位で変わります。一般的な評価額は、「時価>路線>固定資産税」となるケースが多い傾向です。
相手が高い評価額を主張してきた場合、不動産鑑定士による鑑定を通じて「適正な評価はもっと低い」と反論できます。評価額の差が大きい物件では、鑑定費用を上回る節約効果が十分に期待できるでしょう。
請求権の期限切れ(時効・除斥期間)を確認するのも重要なアクションです。相手の請求が期限を一日でも過ぎていれば、遺留分の支払いを全額拒否できるからです。
遺留分侵害額請求には、2つの期限があります。相続開始と遺留分侵害を知った時から1年で消滅時効が成立し、これを知らなくても相続開始から10年が経過すれば除斥期間により請求権が消滅します。
前者の時効が進むのは、相続が開始したことと自分の遺留分が侵害されていることの両方を知った時点からです。請求を受けたら感情的に対応する前に、まず「いつ知ったか」の日付を弁護士と慎重に確認することが重要です。
遺留分の権利があっても、権利の濫用として請求の不当性を訴えれば、支払いを拒める可能性があります。たとえば、請求者が長年被相続人を虐待していたケースや、生活費の援助も葬儀への参加もなかったようなケースなどが該当します。
請求の不当性が認められるハードルは非常に高く、不当性の訴えのみで勝訴に至るケースはまれです。ただし、個別の事情を積み上げれば和解交渉を有利に進める材料になります。ほかの対策と組み合わせて活用するのが現実的な使い方といえるでしょう。
遺留分対策を進める前に、知っておくべき注意点が3つあります。いざ対策を打つ前に、しっかりと頭に入れておきましょう。
遺言書に「遺留分を請求させない」と書いても、その文言に法的な強制力はありません。遺留分は法律で保障された最低限の権利であり、遺言者の意思よりも優先されるからです。
ただし、遺言書の付言事項に真摯な思いを綴れば、相手が感情的に納得し請求を思いとどまるケースはあります。法的効力はゼロでも、生前対策と組み合わせたうえで精神的な抑止力を狙う価値は十分にあるでしょう。
「将来、遺留分は一切請求しません」という念書を書かせても、家庭裁判所の許可がない限り法的効力は生まれません。被相続人が生前のうちに遺留分放棄が成立するには、本人が自由意思で家庭裁判所に申立てをし、裁判所から許可をもらう必要があります。
親族間の合意書や独自の書面では、相続発生後に「やはり請求する」と言われた際に何の防御にもならないため注意してください。正式な手続きを経ているかどうかを、弁護士に確認するのを強くおすすめします。
廃除や欠格で特定の相続人を排除しても、その人に子どもがいる場合、遺留分の権利は子ども(被相続人からみて孫)へと受け継がれます(代襲相続)。本人さえ排除すれば終わりにはならないので注意が必要です。
たとえば、長男を廃除した場合は長男の子どもが、次女が欠格となった場合は次女の子どもが代わりに遺留分を請求できます。
代襲相続は、親に非があっても子どもには非がないという考え方に基づく制度です。廃除を検討する場合は、代襲相続の可能性まで含めて家系全体を見据えたシミュレーションを弁護士と立てるのをおすすめします。
遺留分を渡したくない相続人がいる場合は、弁護士に相談しましょう。ここでは、遺留分問題で悩んだ際に、弁護士に相談するメリットを4つ解説します。
弁護士に依頼すれば、遺留分を法律に従って正確に算出してもらえます。相手の請求額が過大かどうかを客観的に評価してもらえるので、交渉を進めるうえで正しい遺留分額を把握できます。
遺留分を正確に計算するには、相続財産全体の正確な把握が必要です。生前贈与や特別受益が絡む場合、計算方法はさらに複雑になります。「相手が請求してきた金額は本当に正しいのか」を判断するだけでも、法的知識が必要になるのが現実です。
遺留分額は、数百万円単位の差が生じるケースもあるので、専門家による算出は費用対効果の高い選択といえるでしょう。
弁護士の力を借りれば、遺留分を放棄してほしい相続人への交渉を任せられるのも大きなメリットです。「財産をもらう権利を手放してほしい」という交渉を直接おこなうと、感情的な対立に発展しやすいのが現実です。
親族間ではとくに、言葉の選び方ひとつで関係が修復不能になるリスクがあります。弁護士が代理人として交渉すれば、冷静かつ論理的な話し合いが可能になります。
また、本人同士で話し合うストレスを大幅に軽減でき、合意内容を法的に有効な書面としてまとめてもらえる点も安心です。「うまく話せる自信がない」「直接言ったら絶縁されそう」という方ほど、弁護士への依頼が力を発揮します。
話し合いがまとまらず、調停や訴訟になった場合も安心して任せられるのも弁護士に依頼する大きなメリットです。遺留分に関する紛争は、話し合いだけで解決しないことが多く、調停・審判・訴訟へと発展するケースも少なくありません。
生前から弁護士に相談しておけば、万が一の際もスムーズに対応を引き継いでもらえます。弁護士が仲介となって対応してくれるので、相手方が突然強硬な態度に出たとしても慌てずに済むでしょう。
法的手続きの経験がない方にとって、いざとなれば任せられるという安心感は精神的な支えにもなります。
弁護士にサポートしてもらえば、依頼者の精神的な負担を最小限にすることが可能です。相続を巡る親族間の金銭的な争いは、長期化するほど精神的な消耗が激しくなります。
弁護士に依頼すれば、相手からの連絡や主張への対応や感情的になりやすい場面でのやり取りを全て代行してもらえます。「次に何をすべきか」をその都度指示してもらえるので、先の見えない不安も和らぐでしょう。
自分で抱え込み続けることの疲弊を防ぎ、日常生活に集中できる環境を取り戻せます。弁護士への依頼は、費用以上の価値をもたらすことが多いでしょう。
「どの対策が自分のケースに合っているのかわからない」「今すぐ弁護士に相談したい」という方には、「ベンナビ相続」がおすすめです。
「ベンナビ相続」とは、相続・遺留分問題に強い弁護士を全国から検索・比較できる法律相談ポータルサイトです。オンライン相談対応の事務所も多く、地方在住でも安心して相談できるのもメリットです。
初回無料相談を受け付けている事務所も多いので、「まず話を聞いてもらうだけでも」という段階から気軽に利用してみるのをおすすめします。遺留分対策は早く動くほど選択肢が広がるでしょう。
実際にベンナビ相続を通じて弁護士に依頼し、遺留分問題を解決した事例を2件紹介します。どちらも「難しそう」に思えた状況が、専門家の介入によって解決に至ったケースです。
まず紹介するのは、長男以外の相続人に全て相続させる遺言を作成したケースです。多額の財産を保有する夫婦より、不仲である長男との相続トラブルを避けたいという相談でした。
相談者様の希望は「長男には相続させず、ほかの相続人に全財産を譲りたい」というもので、長男の遺留分放棄を含めた抜本的な対策を希望。弁護士のアドバイスのもと、長男本人が家庭裁判所へ遺留分放棄の許可申立をおこない、無事に認められました。
さらに、夫婦それぞれの遺言書を作成し、全財産を長男以外の相続人に承継させる内容としました。結果として、将来相続が発生した際も長男に遺留分が発生しない状態をつくれました。
特定の相続人に財産を集中させ、将来的な争いのリスクがない相続準備ができた事例です。
次に紹介するのは、ほかの相続人に相続放棄をしてもらうことができたケースです。亡くなった叔父には配偶者や子がおらず、実の息子のように慕っていた相談者が、長年その身の回りの世話を担ってきました。
叔父は生前「全財産を相談者様に譲りたい」と希望されていましたが、遺言書を作成せぬまま急逝。相談者は、法的に全財産の相続は難しいのではないかと悩みながらも、叔父の遺志を尊重したいとご相談に来られました。
遺言書がない以上、ほかの法定相続人全員との合意が不可欠な状況でした。そこで弁護士は、叔父の生前の意向や、相談者が長年尽くしてきた背景をほかの相続人の方々へ丁寧に説明。
その結果、叔父と相談者の想いを深く汲み取ってもらうことができ、親族全員から相続放棄の同意を得られました。遺言書がない状況下でも、相談者が全財産を相続する形で円満な解決に至った事例です。
最後に、遺留分に関して多くの方から寄せられる疑問にお答えします。
遺留分をすぐに現金で支払えない場合、まずは相手方と誠実に話し合い、分割払いや支払い期限の延長を交渉します。それでも解決しない場合は、次のような対策を考えるのもひとつの手です。
注意すべきは、支払いを無視・放置しないことです。無視し続けると、財産の差し押さえ(強制執行)がおこなわれるリスクがあるので注意しましょう。
「支払えない」という状況になる前に、早めに弁護士へ相談することがもっとも重要です。支払い交渉・分割合意・期限の許与申し立てまで、弁護士がサポートしてくれます。
遺留分侵害額請求を受けた場合、まずは請求内容や金額の妥当性を冷静に精査しましょう。計算が誤っていたり、時効が成立していたりするケースも実際にあるからです。
請求を受けたら内容と金額の根拠を確認し、時効・除斥期間の観点から期限が有効かを検証した上で、交渉または調停の方針を決めましょう。
遺留分は法律で保障された権利なので、正当な請求であれば支払いは必要です。ただし、専門家に内容を精査してもらうことが重要です。
兄弟姉妹には、法律上の遺留分は認められていません。遺留分が保障されているのは、配偶者・子などの直系卑属・父母などの直系尊属に限られます。
遺言によって特定の相続人に全ての財産を相続させると指定した場合、相続人が兄弟姉妹のみであれば、遺留分侵害額請求を受ける法的リスクはありません。ただし、遺言書はあくまで誰にどの財産を渡すかという意思表示であり、遺留分を直接消滅させる効力を持つものではありません。
兄弟姉妹が相続人となるケースでは、遺留分の制限を考慮せずに遺言を作成できますが、親族間のトラブルを避けるためにも弁護士に相談するのをおすすめします。
相続人への贈与は、原則として相続開始前10年間になされたものが遺留分の計算に含まれますが、10年より前の贈与は原則対象外です。
ただし、贈与の内容が特別受益に該当すると判断された場合は、10年超の贈与でも問題になるケースがあります。「10年前だから安心」と過信せず、不安な場合は弁護士への確認をおすすめします。
原則として孫に固有の遺留分はありませんが、以下のいずれかのケースに当てはまる場合は、例外的に遺留分が認められます。
たとえば子が被相続人(亡くなった方)よりも先に亡くなっている場合は、孫が子の権利をそのまま引き継ぎます(代襲相続)。この場合、孫は子が本来持っていたはずの遺留分を承継することができます。
また、孫と被相続人が養子縁組をおこなっている場合、その孫は法律上子(第1順位の相続人)としての身分を持ち、実子と同じ条件で遺留分の権利が認められます。
孫だから遺留分はないと自己判断する前に、現在の家族構成や養子縁組の有無をもとに弁護士へ確認するのをおすすめします。
配偶者には法定相続分の2分の1という強力な遺留分があるので、完全に拒否するのは難しいのが実情です。現実的に取り得る手段は、非常に限られています。
いずれも簡単な方法ではありません。配偶者に渡したくないという状況は感情的にも法的にも複雑なケースが多いので、早めに弁護士へ相談するのをおすすめします。
遺産が不動産しかない場合の支払い方法としては、次のとおりです。
なお、2024年4月より相続登記が義務化されました。遺留分を巡る紛争の有無にかかわらず、相続開始を知った日から3年以内に名義変更をおこなわないと過料(罰金)の対象となるので注意しましょう。
はい、本当です。相続放棄をすると最初から相続人ではなかったことになるので、遺留分を請求する権利も一切失われます。
「相続権そのものを手放すか」「遺留分という権利だけを手放すか」によって、その後の立場が大きく異なります。どちらの選択が正しいかは個々のケースによって異なるので、弁護士に相談するのがおすすめです。
遺留分は法律で保障された権利であり、「渡したくない」という気持ちだけでは対抗できません。ただし、生前に適切な対策を講じることで、遺留分を「減らす」「請求されないようにする」ことは可能です。
本記事で解説したポイントは、以下のとおりです。
遺留分対策は、早く始めるほど選択肢が広がります。「まだ元気だから」と先送りにするほど、打てる手が少なくなるのが相続対策の現実です。
遺留分問題は複雑で、一つの対策だけで解決することはほとんどありません。自分のケースに合った方法を見極めるためにも、まずは弁護士へ相談することを強くおすすめします。
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